大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


第三百九十六話 俺達の戦いはこれからだ

ヒエンside

 

 

 

インターミドルの都市本戦が終わってから予想外な事が起きたらしい。

 

らしいと曖昧なのは、その時俺は意識を失っていたので人伝にしか聞いていないのだ。

 

俺の記憶は閉会式を終えてからプツリと途絶えているのだが、事が起こったのはその後である。

 

なんと、大規模テロが起こったのだ。

 

突如、会場全体を覆う結界が発動。

 

数千名もの黒い装束を纏った謎の集団が、突然襲いかかってきたのだ。

 

そいつらの正体はプレデッドと呼ばれる犯罪組織だった。

 

プレデッドの目的は俺を拉致すること。

 

決勝戦を終えた後なら、容易に行えると踏んだんだろう。

 

そして俺以外の若手選手も拉致するために、このような規模のテロを起こしたらしい。

 

だが、この場には将来有望な魔導師達が大勢いた。

 

彼らは一般客を守るために黒魔導師達に戦いを挑んだ。

 

チームヒエンの面々も協力して黒魔導師達の撃退に力を貸した。

 

当初はあまりの戦力差に不利だったものの、なのは達の助力もあって、徐々に流れはこちらに傾きつつあった。

 

しかし、ここで予想外な事が起こる。

 

ガジェット・ドローンが攻めてきたのだ。

 

ガジェットを引き連れてやってきたのは、【黒影】と呼ばれる広域次元犯罪者、ガナン・バーンと呼ばれる男。

 

黒いコートに身を包んだ黒衣の巨漢で、黒刀を操る召喚魔導師だ。

 

近接戦闘の腕は驚くべき事に、あのリニスをも上回る。

 

フルドライブのサンダーフォームを使っていたリニスを真正面から撃退したのだ。

 

余程悔しかったのだろう。

 

リニスはそれ以降、さらなる強さを求めて武術の修行と、自身の使うオーバードライブシステムの開発に勤しんでいる。

 

オーバードライブに至っては、もうある程度の目処が立っているのか、あとは細かい微調整をするだけだと言っていた。

 

いや、早いよ。

 

展開が早すぎるよ。

 

まあ、リニスの事は置いといて、問題はこのガナン・バーンである。

 

こんな奴、俺は知らない。

 

さらに問題なのが、こいつのバックにいる存在が明らかにジェイル・スカリエッティだということだ。

 

ガナンも俺を捕らえるために来ていたらしいが、すぐに撤退したらしい。

 

恐らくだが、ガジェットの戦闘データ取りのために会場へ来たのだろう。

 

俺の拉致はそのついでと見た。

 

ガジェットの登場で多くの魔導師達がAMFの影響で魔法が上手く使えなくなるというハプニングが起こったものの、そこはチームヒエンの面々が率先してガジェットを破壊していったおかげで戦線を維持する事に成功する。

 

なのは達に至っては、直ぐ様順応してガジェットを撃墜するほど。

 

いや、本当対応力あり過ぎる。

 

そんなこんなでなんやかんやあったものの、奇跡的に犠牲者が出る事もなく、この最悪の大規模テロは終結したのである。

 

まあ、怪我人は多かったけど……命あっての物種だ。

 

そして、肝心の俺はというと……

 

 

「う、うおおお……か、身体が痛くて指一本動かせん……」

 

 

全身筋肉痛の痛みと極度の疲労感、魔力ゼロの反動に襲われ、ホテルのベッドで悶えていた。

 

インターミドルの都市本戦が終わってから翌日になるのだが、俺は未だに動けないでいた。

 

 

「ま、まさか零地点突破・(あまつ)の反動がこんなにも響くとは……」

 

 

ヴォーラスに追い詰められ、極限の状態だったあの時、俺は俺だけの零地点突破……零地点突破・天を習得した。

 

 

 

零地点突破・(あまつ)

 

 

 

両手を三角形に構えることで、俺自身の属性である“夕”の炎を周囲に放出させて、空気中の魔力を安定させ、自分の魔力に近づけることで空気中の魔力を自在に操る技だ。

 

いわば俺の周りを、俺専用の無限魔力機関にする。

 

これはAMFのようなフィールド系魔法に対しての効果が凄まじく、発動した瞬間にフィールド系魔法の効果が消えて使った魔力や、本来使われるはずだった魔力が全て俺の支配下に置かれる。

 

だが、この技の真価はそこではない。

 

この技の真価は、己の領域とした空間の『世界の全て』を己の手足として使役する事にある。

 

あの時、俺は確かに支配していた。

 

重力や気流、熱圧に微細な魔力干渉すら、俺を中心に緩やかに、完全に“調律”されていた。

 

まるで俺の呼吸に合わせて世界が応じるかのように。

 

しかし、膨大なエネルギーを一身に留めるようなもののため、俺自身にかかる負担はとてつもなく凄まじい。

 

その負担の大きさからか、極限まで強化するオーバードライブ時でなければ使えない諸刃の剣でもある。

 

恐らく、(あまつ)の範囲を広げれば広げる程、その負担は大きくなる筈だ。

 

広げられる範囲の限界はリングの大きさからして約100mってところか。

 

 

(あまつ)は本当に追い詰められた時の最後の切り札で使うしかないな……」

 

 

さすがに毎度こんな反動で襲われるのは堪ったものではない。

 

しかし、そのおかげで額の炎の色をオレンジ(大空)とピンク(夕)の二種類に切り替える事が出来るようになったのは僥倖である。

 

さっそく色々検証したいところなのだが、身体が痛くて動かせないのがもどかしい。

 

 

「ヒエン君、ごはんだよ〜」

 

 

そんな時、なのは達がトレイを持ってやって来た。

 

どうやらお昼ごはんの時間らしい。

 

勿論、自分では食べられないのでなのは達に食べさせてもらうことになる。

 

小学生にお世話される高校生って、字面にするとやばいねこれ。

 

 

「ベッド起こすね」

 

 

フェイトがリモコンを操作して俺を起き上がらせる。

 

 

「エプロンつけますね」

 

 

続けてすずかが食事用エプロンをつけてくれる。

 

 

「お昼は、はやてちゃん特製の健康野菜スープだよ」

 

 

なのはが机の上にトレイを置くと、料理の説明をしてくれる。

 

どうやらはやてお手製らしい。

 

 

「お昼は私が食べさせてあげるから感謝しなさいよね!」

 

 

アリサがツンデレしつつ、スプーンを持ってスタンバイする。

 

 

「いやあ、お兄ちゃん……相変わらずハーレムしてるね」

 

 

そんな様子をアリシアはニヤニヤしながら見ていた。

 

そして俺は死んだ魚の目をしながら、この状況を甘んじて受け入れていた。

 

ちなみにはやてはこの場にいない。

 

レティ提督に呼び出されて、リインフォースと共に本局へと行っている。

 

あと、ハーレムというなら大人のお姉さんがいいとです。

 

小学生はさすがに守備範囲外である。

 

そしてお昼ごはんである野菜スープを時間をかけて食した後、来客があった。

 

 

「よお、良いザマじゃねえか。ヒエン・オオゾラ」

 

 

「やっほ〜」

 

 

なんとクリストファー兄妹が俺の元へと訪ねてきたのだ。

 

俺はびっくりし過ぎて開いた口が塞がらなかった。

 

 

「いや、え?何しに来たんだ??」

 

 

「テメェとの約束を果たしに来たんだよ」

 

 

「約束?」

 

 

俺は首を傾げる。

 

はて?

 

約束なんてしたっけ??

 

そんな俺をヴォーラスは呆れたような目で見る。

 

 

「試合中に言ってただろうが。俺に勝てたらテメェの疑問に全て答えてやるってよ」

 

 

「ん?あ、ああ!!」

 

 

ようやく思い出した。

 

そういえば試合中にそんな事を言っていた気がする。

 

 

「いやまあ、それはありがたいんだけどさ……」

 

 

俺はヴォーラスをジッと見る。

 

 

「あ?なんだ?言いたい事があるならハッキリ言いやがれ」

 

 

「なんでお前……もう動けるの?」

 

 

俺は未だにこんなんなのに?

 

 

「ハッ!そんな事かよ。テメェとは鍛え方が違うと言いてぇところだが、そうじゃねぇ。俺とお前の違いは使った技の反動の大きさだ」

 

 

隣にいるダイヤモンドが続く。

 

 

「貴方の使った技……零地点突破・天だっけ。その技の反動が特別大きすぎたってだけ。兄貴は炎熱の魔眼を完璧に使いこなせるだけの力量とその下地がある。だから、いくら身体に負荷のかかる大技を使っても、その負担は常に最小限に抑えられるの」

 

 

「逆にテメェのあの技、あの時初めて使っただろ?どうやら俺に追い詰められた影響で使えるようになったみてぇだが……空間を支配するなんて馬鹿げた能力だ。テメェにかかる負担も相当なもんだろうよ。むしろ納得だ」

 

 

すると二人はベッドの近くにある椅子へと座る。

 

 

「それじゃあ、前置きはおいて、どうして俺達兄妹がテメェに注目してたのか……その全てを話してやる」

 

 

ヴォーラスは話す。

 

実は、クリストファー兄妹は“魔眼計画”という極秘人体実験で生み出された存在であり、その目的は、魔導殺しと呼ばれるエクリプスウイルス、エクリプスドライバーへの対策として魔眼保持者の育成と制御をする事だった。

 

魔眼能力は強力だが、不安定で暴走のリスクが高く、実験体の大半が廃棄・死亡した。

 

ヴォーラスとダイヤモンドは、数少ない成功体であったが、プレデッドでは人間性を無視した管理下に置かれていた。

 

彼らは数年前、とある内通者の協力で研究所から脱走する事に成功すると、それ以降は裏世界で潜伏しながら、魔眼計画に関わる組織の殲滅および、過去の自分たちの存在を終わらせる準備を進めてきた。

 

そのために力をつけ、表の世界での地位と権力も手に入れると、プレデッドがとある少年に注目しているという情報を得る。

 

それが俺だった。

 

クリストファー兄妹は俺がインターミドルに出場するように部下を使い、俺の知り合い達を利用することでそう誘導したのだ。

 

今思えば、インターミドルに出るよう進言されたのはクイントさんとメガーヌさんに言われたからだし。

 

恐らく、二人にそう言うよう誘導した者達がいたのだろう。

 

そう考えると、プレデッドに注目され始めたのはPT事件が解決してからと考えるのが妥当か。

 

そしてクリストファー兄妹は、インターミドルの大会を“釣り餌”として俺を利用することで、プレデッドの組織員、実験協力者、他の闇組織を一斉に炙り出す計画を立てた。

 

なぜ俺が狙われていたのか、それは俺のレアスキル『調和』と、死ぬ気の炎にプレデッドの連中が目をつけたのだ。

 

兄妹はそれを逆手にとることで、俺を囮として大会に出場させたのだ。

 

ただ予想外だったのは、二人とも俺に負けた事。

 

まさか兵器として作られた自分達が負けるとは欠片も予想していなかったのだとか。

 

その話を、俺は若干ドヤ顔しながら聞いていた。

 

具体的には、パーフェクト城之内君みたいな。

 

 

「……そのドヤ顔が無性にムカつく」

 

 

「ああ。こんなにも屈辱的な気分は生まれて初めてだ……」

 

 

ダイヤモンドとヴォーラスが額に青筋を立てながら呟く。

 

そんな兵器として生み出された二人に俺は勝った。

 

勝ってしまったのだ!(愉悦。

 

いや、本当なんか申し訳ないなぁ!!(快感。

 

マジで俺が強すぎてごめんねぇ!!!(恍惚。

 

いや〜辛ぇわ!!!!(喜悦。

 

マジで強すぎて辛ぇわ!!!!!(享楽。

 

 

「テメェ……ヒエン・オオゾラ。冬の大会は覚悟してろよ」

 

 

「そのドヤ顔を絶対に泣き顔に変えてやるから」

 

 

「え?冬、出ないと駄目?俺、勝ち逃げしようと思ってたんだけど」

 

 

「「絶対に出ろ」」

 

 

「ア、ハイ」

 

 

兄妹の人を射殺すような視線を前に、首を縦に振ることしか出来なかった。

 

 

「……話に戻るが、奴らのアジトと思われる拠点は一斉摘発。研究者とその組織員も全員捕まえた。捕らえられていたインターミドルの選手達も無事保護した。これでもうプレデッドは事実上壊滅したわけだ」

 

 

「そっか」

 

 

「だけど気は抜かないで。貴方を狙う輩はまだまだたくさんいる。寝首を掻かれないように注意して」

 

 

「ああ。気を付けるよ」

 

 

そうして二人は話す事は話したと言わんばかりに席を立つ。

 

 

「それじゃ、俺達はもう行く」

 

 

「今から現場検証にいかなきゃならない」

 

 

「あ、そういえば二人とも秘密捜査官だったな」

 

 

俺は二人を見送る。

 

 

「またな二人とも。気を付けて行けよ」

 

 

二人は返事をせずに手を上げると、スッと部屋を出ていった。

 

俺は一人になると、思考する。

 

まさかエクリプスウイルスがこの世界に存在するとはな……。

 

エクリプスウイルスは別名魔導殺しとも言われており、感染し適応出来ると魔法を無効化させる分断(ディバイド)と言う能力を持てるようになる。

 

その前に、ウイルスに適応出来なければ死ぬだけなのだが。

 

だが、問題なのはそこではない。

 

AMFや魔導殺し、魔法を無効化する相手にどう対応するのかが問題となってくる。

 

恐らくだが、俺であればAMFや魔導殺しにも対応出来ると思う。

 

この二つには、死炎魔法はきっと有効である。

 

根拠ならある。

 

虚数空間でも死炎魔法は使えたからだ。

 

 

「ここはリンディさん達に相談した方が良いかもしれないな」

 

 

魔法を無効化する奴らと戦うなんてことになれば、今のなのは達では為すすべなくやられてしまうだろう。

 

まあ、今は一刻も早く身体を治さないとな。

 

あ〜早く身体動けるようになりたい。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

クリストファー兄妹と会ってから数日後、俺はようやく動けるようになった。

 

自分で食事が出来る、トイレに行ける、お風呂に入れる……なんと素晴らしき事か。

 

ちなみに俺が動けない間のトイレやお風呂のお世話は、リニスとリインフォース、冷火の三人がしてくれた。

 

三人には頭が上がらないというか、もう何も言えない(白目。

 

特にリニスは斬られて怪我をしていたはずなんだが、理由を聞けば治癒魔法でその日の内に完治させたとの事。

 

ウチの使い魔がアグレッシブ過ぎて怖い。

 

そうそう。

 

クリストファー兄妹から聞いたことは、そのままリンディ提督とレティ提督に報告した。

 

当然、二人は頭が痛そうな表情で俺からの報告を聞いていた。

 

クリストファー兄妹が関わっていた魔眼計画に、魔導殺しと呼ばれるエクリプスウイルスの秘密、俺を囮にしたプレデッドを潰す計画などなど……うん、これは頭を抱えたくなるな。

 

報告を聞いた二人は、「「本当に貴方は……」」と一言一句違わず同時に呟いた。

 

いや、ちょっと待って。

 

別にこの事に関しては俺、特に悪くないよね?

 

むしろ被害者なんですけど……?

 

そう言うと、毎度毎度とんでもない爆弾を持ち込まれるこっち側の気持ちも考えなさいと真顔で言われてしまった。

 

そう言われると何も言えねぇ!

 

本当マジですみません……。

 

二人への報告を済ませた後は、チームヒエンの面々に協力をしてもらいながら、リハビリを兼ねた軽いトレーニングへと移る。

 

都市本戦決勝戦を終えてから数日間、完全休養に充てたとはいえ身体はまだ本調子ではない。

 

調子が戻るまでは基礎的なメニューを中心にこなす事になる。

 

日数は空くが、しばらくしたらインターミドルの都市選抜が行われる。

 

参加者は俺を含めた三名で、この三名で世界代表を決める。

 

つまり、たった一人の枠を求めて他の二人と潰し合うのだ。

 

まあ、二人とも倒してしまえば確実だ。

 

そして基礎的なメニューをこなしながら、しばらく過ごしていると、ふとテレビのニュースに目がいく。

 

当然、あの日のテロはニュースで報じられ管理世界中でも知られている。

 

中止を呼び掛ける声も上がったのだが、参加選手達からの大バッシングがあったため、その手の声はすぐに下げられた。

 

俺としても大会の中止は御免被りたい。

 

苦労して勝ち上がったのに、中止になったら全て水の泡になるからだ。

 

それからは警備や防犯対策を厳重にするという事になり、観客達への手荷物検査なども強化される事となった。

 

ちなみに、このテロはインターミドル事件、略してIM事件と呼称された。

 

毎度思うんだけど、安直すぎへんか?

 

それから俺はチームヒエンの面々が手に入れた他の二人の対戦相手の対策をしながら、トレーニングをする。

 

対戦相手の二人の印象としては、強そうではあるが別に警戒する程ではない……だ。

 

むしろ物足りないくらい?……である。

 

まあ、今までの対戦相手を考えればそう感じるのも無理はないか?

 

特に記憶に残るのは、拳法使いのオカマに女剣豪、魔眼を使うチャンピオン兄妹……うん、今までの相手が異常だっただけだな。

 

そして、都市選抜を控える数日前にようやく身体が思い通りに動くようになってきた。

 

都市本戦決勝戦を終えてから実に約一週間である。

 

長い一週間だった……(切実。

 

しかし、ようやく試したい事が試せる。

 

夜、俺はホテルの敷地内にあるトレーニングを行うエリアに一人足を運んでいた。

 

周りには誰もいない。

 

 

「セットアップ」

 

 

俺はスーツ型バリアジャケットに換装すると同時に死ぬ気モードとなる。

 

そして、目を閉じて集中すると額の炎がオレンジからピンク色へと変わった。

 

 

「ふむ……」

 

 

試しに両腕に炎を灯すと、桃色の炎が優しく灯る。

 

 

「特に体調に変化はないな」

 

 

さっそく射撃魔法であるシュートバレットを使ってみる。

 

桃色の炎のスフィアがひとつ出た。

 

 

「うん?魔法光の色がオレンジじゃない……??」

 

 

どうやら炎の色を変えると、魔法光の色も変わるようだ。

 

そして俺は額の炎の出力を上げて、魔法を強化しようと試みる。

 

 

「あれ?」

 

 

だがシュートバレットに全く変化は起きなかった。

 

ならばと思い、自由に動かしてみるが……

 

 

「スピードがいつもと違って遅い」

 

 

より詳細に言えば、通常状態で使う時の射撃魔法の状態だった。

 

 

「どういうことだ?」

 

 

額の炎の色をピンク色からオレンジに戻すと、炎のスフィアもオレンジへと戻る。

 

もう一度、炎の出力を上げると今度はちゃんと強化されたのか、スフィアのスピードも上がっていた。

 

 

「まさかピンク色だと魔法の強化が出来ないのか?」

 

 

そこから俺はひとつひとつ検証を重ねていった。

 

それから分かった事は二つ。

 

ピンク色の状態だと炎の出力を上げても魔法の強化は出来ない事、その代わり魔力運用の操作性が格段に上昇している事が判明した。

 

より詳細に言えば、射撃魔法や砲撃魔法は魔力の続く限りどこまでも出せるが、攻撃力は低くなっており、防御魔法や捕縛魔法の耐久性も通常値並みに下がっていた。

 

逆に幻影魔法や分身魔法などは、魔力の配分がコンマ数ミリ単位まで完璧に配分出来るようになっており、集束砲撃や集束打撃といったブレイカー、果てにはイレイザーまでも短時間で生成出来るようになっていた。

 

 

「なるほど……これが夕の炎の『安定』の効果か」

 

 

要は強化は出来ないが、より繊細な作業が可能になったということだ。

 

 

「でも魔法の強化が出来ないのは正直痛いよな……」

 

 

俺の魔力適正は全て平均値並だ。

 

夕の炎に切り替えると、魔法は軒並み弱体化してしまう。

 

 

「そう考えると(あまつ)は、夕の炎の力を最大限に発揮するための技だな」

 

 

周りの全てを俺の支配下に置く事で、その力を真に発揮するのだ。

 

正直、使い方を考えれば今のままでも使えない事はないのだが……ぶっちゃけ、もう一手何か手札となる物が欲しい。

 

 

「うーん……」

 

 

俺は腕を組んで考える。

 

そして、ハッと思い付く。

 

 

「そうだ……死ぬ気の到達点……」

 

 

俺は以前、一度だけ死ぬ気の到達点へと至った事がある。

 

アダム・カドモンとの戦いで、奴に追い詰められた時、奴の神の力を直接吸収したことで死ぬ気の到達点へと至った。

 

それ以降は一度もなる事が出来なかったが、夕の炎なら、『安定』の効果で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()が出来るんじゃないか?

 

 

「試してみる価値はある」

 

 

俺はさっそくとばかりに、目を閉じて精神を集中させる。

 

 

「スゥー……フゥー……」

 

 

俺は深呼吸して心身を落ち着かせる。

 

 

「思い出せ」

 

 

あの時の感覚を。

 

 

「全身の細胞が死を覚悟する感覚を……」

 

 

死ぬ気とは、迷わないこと、悔いないこと。

 

 

そして……

 

 

自分を信じることなのだから。

 

 

 

 

 

 

ゴォオオオオオオ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

全身からピンク色の炎が湧き出た。

 

 

「で、出来た……」

 

 

身体中から力が湧いてくる。

 

 

「名付けるなら、疑似・死ぬ気の到達点ってとこか。だけど、あの時ほど力は湧いてこないな」

 

 

感覚で分かる。

 

パワーの出力は、あの時の死ぬ気の到達点の半分もない。

 

それもオーバードライブ時にも劣る。

 

 

「でもフルドライブ時よりは、パワーの出力は確実に上がってるんだよな」

 

 

オーバードライブは魔力消費の事を考えれば、使えるのは一日に2回が限度だ。

 

だがこの疑似・死ぬ気の到達点であれば、長期戦もいける気がする。

 

軽く動かしてみるが、身体への負担もスタミナの消耗も特に見られない。

 

 

「ちょっと試してみるか」

 

 

それから俺は魔法を使いながら、調子を確かめるように身体を動かしていく。

 

この疑似・死ぬ気の到達点を使えば、夕の炎の弱点である魔法の弱体化をカバーする事が出来る。

 

ある程度の攻撃力が下がるのは否めないが、そこは魔法の手数でフォローすればいい。

 

射撃魔法や幻影、分身の数に限界数は見られないので、必要な所に必要な分だけ魔力を適切に運用すれば相当な武器になる。

 

一時間ほどで調整を済ませると、俺は疑似・死ぬ気の到達点を解除する。

 

 

「うん。特に疲れもない」

 

 

解除しても疲れが残っていなかった。

 

 

「これは思った以上に使えるぞ」

 

 

俺は夕の炎の検証を終えると、ウキウキ気分で部屋へと戻っていった。

 

ちなみにオレンジの時でも、死ぬ気の到達点出来るかなって思ったけど、やっぱり無理だった。

 

泣いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

あれから数日が経って、いよいよ都市選抜が行われる。

 

会場はこれまた大きな所で、出店の数が尋常ではなかった。

 

俺達はさっそく会場入りすると、チームヒエンの面々と分かれて控え室へと入る。

 

今日の試合は三人それぞれの選手の総当たりで行われ、一番勝ち数が多い者が世界代表に選ばれる。

 

勿論、対戦相手の二人の対策はバッチリだ。

 

相手の二人も俺の対策に力を入れていたのか、練習時に情報収集に来ている人達がチラホラいた。

 

皆がどうするか聞いてきたが、俺は特に気にする事もなく放っておいた。

 

正直、別に気にする程でもないしな。

 

そうして行われた都市選抜であったのだが……

 

 

 

 

 

 

勝った。

 

特に苦戦する事もなく、あっさりと勝った。

 

こうして俺はあっさりと世界代表になったのである。

 

新戦法の疑似・死ぬ気の到達点を使うまでもなかった。

 

正直、自分でも驚いている。

 

だけど、仕方ないじゃない。

 

相手の手応えが思ったよりなかったんだもの。

 

いや、強かったよ?

 

強かったんだけど、どうしても都市本戦常連組と比べるとさ……ね?

 

そうして戸惑っている内に、あれよあれよと月日が経ち、気が付けば世界代表戦の日を迎えていた。

 

え?

 

展開が早い??

 

いや、だって仕方ないじゃない(二回目。

 

語る事なんて特にないんだもの。

 

強いて言うなら、対戦相手の対策を取ってたくらい?

 

そして、いよいよ行われる世界代表戦。

 

相手も都市選抜を勝ち抜いて、世界代表を勝ち取った猛者である。

 

その結果は……

 

 

 

 

 

 

またしてもあっさりと勝ってしまった。

 

 

『インターミドル世界代表戦終了!優勝者は──ヒエン・オオゾラ選手です!!世界新チャンピオンの誕生だあああぁぁぁ!!!』

 

 

「えぇー……」

 

 

周りが盛り上がるのを他所に、俺は内心戸惑っていた。

 

なんでだろう?

 

なんか思ってたのと違う。

 

 

「まあ、いいか」

 

 

俺は笑顔を向けながら、周りに手を振る。

 

遂に目標にしていた次元世界最強の10代男子になれたのだから。

 

だが俺の心はどこかなんとも言えない空虚感に襲われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「新チャンピオン、おめでとうー!!!!!」」」」」

 

 

数多のクラッカーが鳴る。

 

俺達は現在、宿泊してるホテルのパーティールームで祝賀会を開いていた。

 

チームヒエンの面々と、対戦した選手達、お世話になった人達を中心に招待した。

 

机の上には豪華な料理の数々に、色取り取りの飲み物。

 

パーティールームもかなり広く、前の方にはグランドピアノまで置いてあった。

 

一体いくらするのだろう?と、内心戦々恐々としながら料理を口に運ぶ。

 

滅茶苦茶美味い。

 

 

「はぁ……」

 

 

だけど、ため息が出る。

 

なぜだろう?

 

何か物足りない気がする。

 

 

「なんだか浮かない顔をしていますね」

 

 

すると、妹の冷火がやって来た。

 

 

「ここ最近のお兄様は、心ここにあらずと言った感じですね」

 

 

「まあな」

 

 

俺は少しぶっきらぼうに答える。

 

当たってるだけに、何も言えないのだ。

 

 

「……都市選抜と世界代表戦、やはり物足りませんでしたか?」

 

 

「……やっぱり分かるか?」

 

 

「見れば分かりますよ。妹ですから」

 

 

冷火がドヤ顔で答えるのを、俺は苦笑いしながら答えた。

 

 

「地区予選と都市本戦が激戦続きだった反動かな……なんだか拍子抜けしちゃってさ。内心戸惑ってる間に、気付いたらチャンピオンになってた」

 

 

「一種の燃え尽き症候群でしょうね。地区予選や都市本戦は本当に強い人達ばかりでしたから。後は、準決勝と決勝でクリストファー兄妹に勝ったのも大きいでしょう」

 

 

冷火が冷静に分析する。

 

 

「お兄様は今、目標を叶えてしまったことで、どうすればいいか分からなくなってしまったんですよ。でも、そんな時だからこそ原点に戻らなくては……」

 

 

「原点?」

 

 

「お兄様はなぜ、インターミドルでチャンピオンを目指したんですか?」

 

 

「え?それは最強のストライカー……史上最強の魔導師になる事が目的で……」

 

 

「ではその最強のストライカー、史上最強の魔導師にはなれたのですか?」

 

 

「いや、インターミドルの世界チャンピオンになったって言っても、まだまだ俺より強い人なんてたくさんいるし……何より、インターミドルは通過点だし」

 

 

「だったら、ここで呆けている暇などないのでは?通過点と言うのなら、お兄様がやらなければならない事は、正直、まだまだたくさんあるのではないですか??」

 

 

「あ……」

 

 

そうだ。

 

よくよく考えれば、やらなきゃならない事なんてたくさんあるじゃないか。

 

AMFや魔導殺しに対する対策や、ジェイル・スカリエッティやガナン・バーンのような広域次元犯罪者の捜査……もしかしたら、Forceに登場した『凶鳥』フッケバインファミリーだってこの世界には存在しているかもしれない。

 

そう考えたら、確かに呆けている場合じゃない。

 

 

「あー……すまん、冷火。あと、ありがとう。おかげで色々目が覚めた」

 

 

「やっと、少しはまともな顔になりましたね」

 

 

「ああ」

 

 

俺は頬をパチンと叩く。

 

腑抜けていた意識が、切り替わった気がした。

 

 

「……なんだか急に腹減ってきたな。まずは腹ごしらえといきますか」

 

 

俺は皿とトレーを持って席を立つ。

 

 

「お兄様、お供します。ついでにチームヒエンの皆さんにもお声掛けした方が良いですよ。皆さんもだいぶ心配なさってましたから」

 

 

「そうする」

 

 

そして俺は料理を求めて冷火と共に歩き始める。

 

歩きながらも、俺は自身のやるべき事をまとめていた。

 

 

(AMFや魔導殺しに関してクロノやティーダ、ゼストさん達とも情報を共有。それと新型武装の開発に携わってくれそうな企業のリストアップ。あとは人脈の形成。世界チャンピオンになったのを生かして使えそうな人材はどんどんスカウトする)

 

 

近々、新宿に管理局の新しい支部が出来るそうなので、地球でも手を貸してくれそうな人には積極的に声をかけていこう。

 

手始めに、まずはすずかとアリサのご両親にお声掛けしようか。

 

あとは、夜の一族とさざなみ寮の皆さんにもご協力いただこう。

 

人の手というのはどれだけあってもいいからね。

 

そう考えると、なんだか楽しくなってきたぞ。

 

俺の、俺達の戦いは……これからだ!!




はい。

これでインターミドル編本当に終わり。

あとは軽く後日談書いた後、番外編へいきます。

まずはヒープリ終わらせんと。

では、またく(`・ω・´)
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