大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

外伝書けたで候。

主人公の過去の戦いがヒーリングっどに知られる回です。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


ミラクルリープ 皆との不思議な一日②

ヒエンside

 

 

 

俺は動物病院へと向かった冷火を追いかけていた。

 

動物病院は確か商店街の近くにあったはずなのでそう遠くはないはずなのだが、何分初めて来る場所なので詳細な位置が分からない。

 

こうなったら誰かに聞こうと思い、俺は前を歩いている一人の少女に声をかけた。

 

 

「あ、すみません」

 

 

「はい?」

 

 

少女は声をかけると振り向く。

 

その少女の第一印象は、とても可愛らしい女の子であった。

 

ピンクがかった茶色のボブカットで、右前髪にはヘアピンを付けており、優しげな雰囲気を醸し出している少女であった。

 

 

「ちょっと道をお尋ねしたいんですけど、この近くに動物病院があると思うんですが……どこかご存知ないでしょうか?」

 

 

すると少女は答えてくれた。

 

 

「知ってますよ。もしよろしかったらご案内しましょうか?」

 

 

「え?いいんですか??」

 

 

「はい、私もその近くに用事があるので」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

少女が案内してくれることになった。

 

ありがてぇ。

 

俺達は世間話をしながら歩いていく。

 

少女の名前は、花寺のどかというらしい。

 

()()()()()で、三月にこっちに引っ越してきたらしい。

 

中学三年生といえば、つぼみ達と同い年か。

 

俺も軽く自己紹介しつつ、こちらには観光で旅行に来たことを伝える。

 

あと「のどかでいいですよ?」と言ってくれたので呼び捨てにしている次第である。

 

いきなり馴れ馴れしくないかと不安に思ったものの、名前を呼ぶと花の咲いたような笑顔で喜ぶものだから後に引けなくなった。

 

ちなみに敬語もやめてタメ口で話している。

 

何この子?

 

天使?

 

あれだ。

 

きっとこの子も天然で世の男達を翻弄するに違いない。

 

現に今、俺はかなり翻弄されている(吐血。

 

 

「あ、見えてきましたよ。あそこです」

 

 

見ると黄色い建物が一つあった。

 

えらくオシャレというか、ハイカラな建物であった。

 

英語で【HIRAMITU ANIMAL CLINIQUE】と書いていた。

 

平光アニマルクリニック。

 

ドッグランも併設されており、まさに動物のための施設と呼べるところであった。

 

見れば隣には、カフェワゴンもあった。

 

色は同じく黄色で統一されている。

 

恐らく冷火はここにいるはず。

 

というか見覚えのあるメイド服姿が見えた。

 

あ、いた。

 

どうやら茶髪のツインテールの少女とお茶しているようだ。

 

冷火の腕の中には元気になったであろう小型犬の姿があった。

 

二人はカフェワゴンに近付く俺達に気付いたのか、こちらへ視線を向ける。

 

 

「あ、お兄様!この子元気になりましたよ!!」

 

 

「あれ?のどかっちじゃん。聞いてよ、この子がラテを助けてくれたんだよ〜」

 

 

俺とのどかは、顔を見合わせる。

 

 

「……説明した方が良さそうだな」

 

 

「あははは……お願いします」

 

 

________

______

____

 

 

 

俺達は席につき、飲み物を注文してから話すことに。

 

 

「はい。こちら特製グミのフルーツジュース四つです〜」

 

 

丁度飲み物がきたので、お互いに軽く自己紹介することになった。

 

 

「改めて自己紹介しますね。私は花寺のどか、この子はラテです」

 

 

「ワン!」

 

 

「初めまして〜!私は平光ひなた!中学三年生でぇす!!」

 

 

「では、こちらも自己紹介を。私は小道冷火、メイド見習いです」

 

 

「俺は大空氷炎、そこにいる冷火の兄みたいなものです。よろしく二人とも。さて、事情を説明しないとだな」

 

 

そこで俺は説明する。

 

展望台を観光しているとき、ラテが急に茂みから出てきたこと。

 

そして体調が急に悪くなったので保護し、先に冷火に動物病院に向かわせたことを話した。

 

そのときに冷火が動物病院の場所を聞こうと、声をかけたのがひなたさんだったというわけだ。

 

すると、突然のどかがお礼を言ってきた。

 

 

「あの、ヒエンさん、冷火ちゃん。改めてラテを助けてくれてありがとうございます」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

それに釣られてひなたさんもお礼を言う。

 

 

「い、いえいえ!困ったときはお互い様ですし、ラテちゃんに何事もなくて良かったです。ねぇ、お兄様?」

 

 

「うん、そうだな」

 

 

俺はラテに視線を向ける。

 

つぶらな瞳でこちらを見ていた。

 

つい頭を撫でる。

 

もちろん調和の波動を流すことも忘れずに。

 

 

「ワゥ〜」

 

 

ラテはへにゃりとなる。

 

ちょっと面白い。

 

のどかとひなたさんは、ラテの反応を見て驚いている。

 

 

「ふわぁ〜、ラテがリラックスしてる」

 

 

「ええぇ!?ヒエンさんのナデテクすごっ!?」

 

 

「ふっふっふっ。お兄様の手にかかればどんな動物もこのようにお茶の子さいさいなのですよ!!」

 

 

冷火が我が事のように自慢する。

 

あの冷火さん?

 

ちょっと恥ずかしいからやめてくれない?

 

すると冷火が何か思い出したかのように話し始めた。

 

 

「そういえばお兄様?()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

ここで超直感が軽い警鐘を放つ。

 

あ、この感じは何か面倒事が起きるタイプのやつや。

 

 

「「()()()()()()?」」

 

 

のどかと、ひなたさんが首を傾げる。

 

 

「はい。ラテちゃんが苦しむ前に急に()()()()()()()()()()()んですよ」

 

 

「変な女性と……?」

 

 

「怪物……?」

 

 

ここでのどかとひなたさんが勢いよくこちらを向く。

 

ちょっと怖いよ君達。

 

 

「確か……()()()()()()()とか言ってませんでした?」

 

 

そして冷火がそう言った瞬間……

 

 

「「メ、メガビョーゲン!?」」

 

 

二人が大声を上げてこちらに身を乗り出してきた。

 

 

「おおう!?」

 

 

俺は思わずビックリしてのけぞる。

 

 

「そ、それ大丈夫だったんですか!?怪我とかしてないですか!?」

 

 

「そのメガビョーゲンとかいうの、この辺で最近出没してる怪物のことだよ!?ヒエンさん襲われたの!?」

 

 

慌てる二人に俺は説明しようと試みる。

 

だが馬鹿正直にセットアップして浄化したなんて言えない。

 

なので誤魔化すことした。

 

 

「あー……いや最初は暴れてたんだけど、なんか急に慌てて帰ってったから大丈夫だぞ?」

 

 

うん。

 

一応、嘘は言ってない。

 

暴れてたけど(鎮圧してちゃんと浄化したので)、(逃げるように)慌てて帰っていったからな。

 

俺は冷火にジト目を向ける。

 

すると冷火は自分の失言に気付いたのか、冷や汗をかきながら目を逸らしていた。

 

 

「えっと、それなら良いんですけど……」

 

 

のどかは俺の反応に少し戸惑いながらも、渋々納得したかのような感じであった。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

俺はなついてくるラテのお腹をワシャワシャと撫でていた。

 

確か犬が仰向けになってお腹を向けてくるのは信用して甘えてくるからだと聞いたことがある。

 

 

「ワフゥ〜」

 

 

「ラテが完全にヒエンさんに懐いてる……」

 

 

「めっちゃ安心仕切った顔してる〜」

 

 

「初対面から結構心を許してましたもんね」

 

 

たぶん調和の能力が関係していると思われる。

 

そのおかげでプリキュア世界の妖精達にも懐かれる。

 

まあ、その分密集してくるので暑苦しいのが難点であるが。

 

 

「ん?」

 

 

そのとき()()()()()を感じた。

 

 

「どうしましたお兄様?」

 

 

「いや、どこからか見られてる気が……」

 

 

俺は目を閉じて気配を探る。

 

 

「ふむ。気配の大きさからして小動物三匹か?あっちから視線を感じる」

 

 

俺が指を差す方向には茂みがあった。

 

 

「ふわぁ〜すごぉい。気配なんて分かるんですか?」

 

 

「ああ、武道やってるからそれなりにな」

 

 

のどかが何やらキラキラした視線を向けてくる。

 

ちょっとやりづらいとです。

 

 

「あっちになんかいんの?」

 

 

と、そこにひなたさんが茂みの方に行き、様子を見に行く。

 

 

「…………あははははは。野良猫が三匹いただけだったよ」

 

 

冷や汗をかきながら、ひなたさんが言ってきた。

 

思ってた反応と少し違うな……。

 

何か焦っている?

 

あの茂みの向こうに何かあるのだろうか?

 

 

「ひなたさん、何か焦ってないか?」

 

 

「ふ、ふえぇぇ!?な、何言ってんのヒエンさん!?」

 

 

「いや君からは焦燥の感情が伝わってくるから、あの茂みに何かあるのかと思ってな……」

 

 

「しょ、焦燥の感情って、そ、そんなの分かるの!?」

 

 

「ああ、俺には超直感っていう能力があるから視線や気配、感情の察知なんかには結構敏感なんだ」

 

 

「「ちょ、超直感!?」」

 

 

二人が声を揃えて驚く。

 

そこで冷火が補足する。

 

 

「別名『見透かす力』。お兄様はそういった物事を感じ取ることに特化しているんです。戦闘になれば相手の動きを見切り、話をすれば相手が嘘をついてるかどうかも判断できます。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚いわゆる五感から得られる全ての情報を脳の中で統合し、第六感、すなわち直感として処理することによって、ある種の未来予知をも可能としているんです」

 

 

「いや、未来予知とかさすがに無理だから」

 

 

「でもこのまま訓練していけば、それも可能だと思いますよ?お兄様が超直感を極めれば、いずれ数秒先の未来をも見えるようになると思います」

 

 

「「未来を見る……」」

 

 

ねぇ、やめて。

 

二人ともなんか唖然としてるから。

 

と、それよりもさっきから茂みが気になって仕方がない。

 

ジーッ………と見ていると急にラテが俺のズボンの裾を噛み、鳴く。

 

まるでこっちに来いと言わんばかりに。

 

 

「ん?あー……はいはい。行くからズボンを噛むのはやめなさい。伸びるから」

 

 

とりあえずラテが走りたそうにしているので、付き合うことに。

 

 

「あ、お兄様だけずるいです!私もラテちゃんと遊びたいです!!」

 

 

「いや別に一人占めとかしてないから」

 

 

すると、こちらを苦笑いしながら見ていたのどかに声をかける。

 

 

「ちょっとラテと遊んできてもいいか?」

 

 

「あ、はい!ぜひ遊んであげて下さい!!」

 

 

飼い主の許可ももらったところでラテと遊ぶことに。

 

ふっ。

 

俺と追いかけっこなんぞ十年早いぞラテよ。

 

全力で刈り取ってくれるわ!!

 

というわけで俺と冷火でラテと全力で遊ぶことになった。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

少年とメイド見習いの少女がラテと走り回っている姿を見たひなたは、大きく溜め息をつく。

 

 

「はぁ……びっくりした。もう出てきて大丈夫だよ〜。あっちからだと見えないし」

 

 

すると茂みから三匹の小さな生き物が姿を現す。

 

 

「ヤ、ヤバかったラビ。今のは今まで一番ヤバかったラビ……」

 

 

「な、なんで僕達の気配が分かるペエ!?っていうか、もうその時点であのお兄さん普通じゃないペエ!!」

 

 

「スッゲエェェ!なんだよ超直感って!滅茶苦茶格好いいじゃねえかよおおおぉぉぉ!!」

 

 

そこから出てきたのは小さなウサギのラビリンに、ペンギンのペギタン、トラのニャトランであった。

 

彼らはヒーリングアニマルと呼ばれる動物で、緑豊かな秘密の世界【ヒーリングガーデン】に暮らし、地球のお手当てを使命としている。

 

地球の生態系のバランスを保つために、地球自らの意志によってヒーリングガーデンが生み出され、そこに暮らすヒーリングアニマル達が人知れず地球を癒やすことでその環境が保たれているのである。

 

しかし、ヒーリングガーデンはビョーゲンズと呼ばれる組織の襲撃に遭い、環境が破壊されてしまう。

 

ヒーリングガーデンの女王で、ラテの母親でもあるテアティーヌが、ビョーゲンズの長、キングビョーゲンと戦い、なんとか引き分けたもののその代償は大きかった。

 

テアティーヌは力を失い、ラビリンたちにラテを託し、地球に行ってプリキュアを見つけ出すように伝える。

 

なぜなら最初に誕生したヒーリングアニマルこそがテアティーヌであり、かつては、すこやか市に住んでいた古のプリキュアのパートナーとして共にビョーゲンズと戦った過去を持っているのだ。

 

ラビリン達はテアティーヌの言葉通り、日本のすこやか市に降り立ち、そこでそれぞれのパートナーである花寺のどか、沢泉ちゆ、平光ひなたと出会う。

 

そう。

 

偶然にも少年が出会っていた少女達が、ヒーリングっど♡プリキュアであったのだ。

 

するとそこへ旅館の仕事を終えたちゆがやってくる。

 

 

「どうしたの?皆揃って」

 

 

「あ、ちゆちゃん!」

 

 

「ちゆちー、ハロハロー」

 

 

ちゆが挨拶を終えると、ラビリンが我に返る。

 

 

「あ、こんなところでグッタリしている場合じゃないラビ。のどか!ちゆ!ひなた!三人に伝えなきゃいけないことがあったラビ!!」

 

 

「ど、どうしたのラビリン?そんなに慌てて」

 

 

のどかは慌てるラビリンに飲み物を渡し、落ち着かせる。

 

ラビリンはストローに口をつけると、一気に飲み干す。

 

 

「けぷ……。驚かないで聞いてほしいラビ。あのお兄さん、さっきメガビョーゲンをたった一人で浄化しちゃったんだラビ!!」

 

 

のどかとひなたは顔を見合わせ、大声をあげる。

 

 

「「え、ええぇぇぇぇ!?」」

 

 

「あのお兄さん?」

 

 

ちゆだけは言葉の意味が分からず、首を傾げる。

 

 

「あそこにいるラテ様と走り回ってるお兄さんが、さっき出たメガビョーゲンを一人で浄化しちゃったんだペエ」

 

 

「あの人は……大空様?」

 

 

「ちゆ、あの人のこと知ってるペエ?」

 

 

「知ってるも何も今日ウチの旅館に泊まりに来てくれたお客様よ?」

 

 

「ペエェェェェ!?」

 

 

今度はペギタンが驚く。

 

 

「そ、それにしても大空様がメガビョーゲンを浄化しただなんて本当なの?」

 

 

「本当だペエ!シンドイーネに通りすがりの魔導師、魔法使いだって自分で名乗ってたペエ!!」

 

 

「ああ!それに額に炎つけてさ、デッカイビームだして、あっという間にメガビョーゲンを浄化しちまったんだ!!」

 

 

「服装もなんだかスーツみたいなのに変わってたラビ」

 

 

三匹の説明を聞いて衝撃を受ける三人。

 

 

「やっぱりヒエンさん、メガビョーゲンに襲われてたんだ……」

 

 

「ってことは、あの冷火ちゃんも魔法使い?」

 

 

「その可能性は高いでしょうね。それにしても私としては、貴方達が大空様と知り合ってたことにも驚きなんだけど」

 

 

ちゆが二人に話を振る。

 

 

「えっとね……」

 

 

のどかが今までの経緯を説明する。

 

 

「なるほど。そういうことだったのね」

 

 

すると、ニャトランがひなたの様子がおかしいことに気付く。

 

 

「どうしたんだよ、ひなた?」

 

 

「いや〜ヒエンさん、どっかで見たことあるなあって思って………ううん……どこだっけなあ……魔法使い……魔導師……ああああ!思い出したあぁ!!!!」

 

 

「ニャアアァァ!?いきなりデッカイ声出すニャよ!?」

 

 

「ああ、ごめんごめん。ふ、二人とも、ちょ、ちょっと私の部屋に来て?」

 

 

「え?でもヒエンさんと冷火ちゃんがまだラテと一緒に……」

 

 

「すぐに戻ってくるから!先に私の部屋に行ってて!!」

 

 

のどかとちゆは、ひなたの迫力に押されてラビリン達を連れて渋々平光家へと入っていく。

 

 

「と、そうだ!オネェ!ヒエンさんと冷火ちゃん、もしここに戻ってきたら引き止めといて!!」

 

 

「え、ええ、それは別にいいけど……」

 

 

「じゃあよろしくぅ!!」

 

 

そしてひなたもカフェワゴンの店長である姉のめいに頼むと、急いで自分の部屋へと向かったのだった。

 

 

 

________

______

____

 

 

 

ひなたの部屋にやってきたのどか達であったが、ひなたは部屋に来ると同時に何やら探し始める。

 

そして探し始めて数分後、目的の物を見つけたらしく、皆に見せる。

 

 

「それは……」

 

 

「DVD?」

 

 

二人は首を傾げる。

 

 

「ふっふっふっ。皆、きっと驚くよ〜」

 

 

さっそくひなたはDVDをデッキに入れてテレビをつける。

 

そこには一つのニュースが映っていた。

 

 

『突如、クリスマスの聖なる夜に世界中を襲った怪物デザートデビル、その襲撃を指示したと思われる砂漠の使徒の黒幕デューン、そして世界を守るために戦ったプリキュア、一人の魔導師の少年についてのドキュメントをお送りしたいと思います』

 

 

「このニュース……確か去年の」

 

 

「ええ、一時期ワイドショーを賑わしてたやつね……」

 

 

映像は続き、ある放送が流される。

 

 

『人間共よ……お前達の地球は我々「砂漠の使徒」によって征服された』

 

 

緑髪の青年デューンが映される。

 

 

『海も川も森も、お前達人間も……全て砂に埋もれるがいい。ククククク……ハッハッハッ。アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!!!』

 

 

笑い続けるデューン。

 

そこにある一人の少年の声が響く。

 

 

 

 

 

 

『ずいぶんごきげんじゃないかデューン……力を取り戻してハイにでもなったか?』

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある声にのどか達は驚く。

 

 

『ハッハッハッハ…………なに?』

 

 

そしてヒーリングアニマル達も映像にかじりつき、目を見開いた。

 

 

『貴様は……魔導師!?』

 

 

そこには先程の少年が映っていたのだ。

 

 

『こころの大樹を滅ぼして……デザートデビルも降下させ地球への侵攻もできて……そのうえキュアフラワーへの復讐もできて……気分がいいか?』

 

 

少年は額に炎を灯し、黒スーツを着て鋭い眼光でデューンを睨み付けていた。

 

 

『なぜ貴様がここにいる?』

 

 

『お前がキュアフラワーを狙っていることは分かっていたからな。だからキュアフラワーの側には、常時俺の使い魔をつけていた』

 

 

「キュアフラワー?」

 

 

「この人が……」

 

 

そのときキュアフラワーと思われる女性の横姿が遠目ではあるが映された。

 

そして再び映像は少年とデューンに変わる。

 

二人は会話を続ける。

 

 

『そのおかげでキュアフラワーの居場所は最初から分かっていた。あとはお前が動き出すタイミングを見計らって、転送魔法でこの場所にやってきたって訳だ』

 

 

『転送魔法ね。相変わらずなめた真似をしてくれる。よほど死にたいとみえる』

 

 

『そっちこそ力を取り戻したからか、ずいぶん上から目線じゃないか。さっきまで俺にやられていた人物とは思えないな』

 

 

『あのときは封印された状態だったからね。力が出しきれずにいたのさ。今の私はあのときより……格段に強いぞ?』

 

 

両者は軽く挑発を繰り返しながら話す。

 

デューンは半笑いになりながら余裕を見せるように大きく手を広げて……少年は変わらずデューンを鋭く睨み付けていた。

 

 

『そうみたいだな。あのときよりも感じられるパワーが半端じゃない。今の俺じゃ、お前に触れることもできなさそうだ。だから限界を超えさせてもらう。限界突破(リミットブレイク)……オーバードライブ……』

 

 

少年は黒いロングコートを纏う。

 

その迫力にのどか達は思わず息を飲む。

 

 

『あのときの姿か、丁度いい。あの時の貴様を……いままさに……叩き潰したいと思っていたところだ』

 

 

『光栄だな。だが調子に乗るなよ、砂漠の王。なんでもかんでもお前の思い通りになると思ったら大間違いだ』

 

 

『その言葉そっくりそのまま返そう、魔導師。今は地球を守っていたこころの大樹も枯れ、砂漠の種であるデザートデビルも世界中にばらまかれた。これでもまだ言えるかい?たかだか人間風情が……「砂漠の使徒」に勝てると?本当にそう思っているのかい?』

 

 

デューンの問いかけに少年は言い切った。

 

 

 

 

 

 

『勝てるさ』

 

 

 

 

 

 

すると偶然カメラに少年の顔が映ることになり、少年の顔がドアップで映される。

 

 

『地球には……最後の希望が残ってる。まだ「プリキュア」がいる』

 

 

それを聞いたデューンはさらに笑う。

 

 

『アッハッハッハッハッハ!これは傑作だ!君の頼みの綱がプリキュアだったとは……だがもう終わりさ。プリキュアがこっちにやってくる頃には地球の砂漠化はもう完了している。見たまえ……この青い色も』

 

 

すると少年がポツリと呟く。

 

 

『まだ気付かないのか?』

 

 

『…………なに?』

 

 

そのとき通信らしきものが映像越しに聞こえる。

 

 

『デューン様!デザートデビルの数が物凄い勢いで減っています!!』

 

 

『なに!?』

 

 

デューンは大きな声をあげる。

 

 

『それが……プリキュアです!!プリキュアが世界各国に現れ、デザートデビルを倒して回っています!!』

 

 

『プリキュア……だと?バカな……プリキュアは奴ら以外にいるはずが!?それになぜ地球に生命がまだ存在している!?こころの大樹は枯らしたはずだ!?』

 

 

『だから言っただろう。お前の思い通りにはならない……と』

 

 

少年の言葉にデューンは反応する。

 

 

『貴様が原因か魔導師!?一体何をした!?』

 

 

『逆に聞くがデューン……お前がこの地球にくることが分かっているのに、お前の狙いが分かっているのに……俺がなんの対策をしていないとでも思ったか?』

 

 

『…………どういう意味だ?』

 

 

『お前にも分かるように言ってやる。お前が枯らしたものは本当にこころの大樹か?プリキュアはお前が知ってる人間以外に本当に他にいないと思ったか?』

 

 

その言葉を聞いてデューンの顔色が変わった。

 

 

『まさか……全て貴様が仕組んだのか?』

 

 

『さぁな。そこまで答えてやるほど俺もお人好しじゃない。どうしても答えてほしかったら……答えさせてみろよ砂漠の王様』

 

 

少年はグローブに炎を灯し、構えた。

 

 

『サバーク……映像はそのままにしておけ。決めたよ魔導師君。まずはプリキュアからと思っていたが……気が変わった。全世界の人間が見ている前で……君をなぶり殺しにしてあげよう』

 

 

デューンも身体に赤いオーラを纏わせ、構えた。

 

 

『上等だ。あんたには色々借りがあるからな。それも全部まとめて返してやるよ。デューンあんたは、いや貴様は……死ぬ気でぶっ飛ばす!!』

 

 

『それはこちらのセリフさ。ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ。せいぜいあがけ……人間!!』

 

 

そして始まる激しい戦い。

 

両者共に一進一退の攻防であった。

 

その戦いをのどか達は真剣に見る。

 

そして少年は問う。

 

 

『……なぜお前はそこまで地球にこだわる?』と。

 

 

デューンは返答した。

 

 

『地球は僕の憎しみを増幅させるのにふさわしい星だからさ』と。

 

 

デューンは語る。

 

それは自身を殺そうとした父親へのある意味での復讐であった。

 

デューンは幼少期、惑星城の王であった父親に殺されかけ、義兄弟からも命を狙われていた。

 

しかしそのことを察したデューンの乳母が城の外へと脱出させるが、追っ手に見つかり、デューンの目の前で殺されてしまった。

 

そのとき彼は適当に逃げた教会で震えていた。

 

そんなとき、幼い彼は崇められていたデビルの像に願った。

 

『僕の魂を捧げるから、父を殺す力をくれ』と。

 

デューンはそこで無限の力を手に入れると、父と義母と腹違いの弟を直接手にかけ殺した。

 

砂漠の使徒の王となったデューンは地球へと侵略を開始する。

 

全ては忌まわしき父親を超えるために。

 

そのデューンのあまりの過去に三人とも悲痛な面持ちで見ていた。

 

特にのどかは目に涙を溜めてその映像を見ていた。

 

そして再び始まる少年とデューンの戦い。

 

激しい攻防の末、どちらもそれなりのダメージを受けていた。

 

 

「な、なんて激しい戦い……」

 

 

「うん……」

 

 

「久し振りに見たけど、やっぱりこれって夢じゃないんだよね……」

 

 

皆は心配そうに映像を見続ける。

 

さらに戦いは激しくなる。

 

 

『おおおおおおお!!!!』

 

 

『ぬああああああ!!!!』

 

 

いつしか両者共に雄叫びをあげながら壮絶な殴り合いをしていた。

 

だが映像はここで終わる。

 

 

「って滅茶苦茶気になる所で終わりかよおおぉぉ!!」

 

 

ニャトランが吠える。

 

 

『映像はここで終わりですが、この魔導師の少年とプリキュアのおかげで世界は守られました。我々はこの魔導師の少年と接触しようと、何度もコンタクトを試みましたが、このクリスマスの決戦以降、彼の姿を見た者はいません。信じたくはありませんが、彼はあの決戦で命を落としてしまったのかもしれません』

 

 

ナレーションは語る。

 

 

『我々は決して忘れてはいけません。彼やプリキュアという少女達のおかげで今があるということを。我々は何度でも言います。世界を守ってくれてありがとう……我々を助けてくれてありがとう……。この番組を、世界を守ってくれたヒーロー達が見ていることを……そしてあの少年が生きていてくれることを……心の底から祈ります』

 

 

そこで番組は終わった。

 

 

「ひなたちゃんが見せたかったのってこれだったんだね。でも私、知らなかった。ヒエンさん、あんなに傷だらけで戦ってたんだ……。それに他のプリキュアの皆も必死で世界を守るために……」

 

 

「それは仕方ないラビ。のどかはまだこのとき……入院してたラビ」

 

 

「うん……」

 

 

するとひなたが話を切り出す。

 

 

「それでその、皆にヒエンさんに私達の正体言おうかどうか相談しようって思ってたんだけど……どうしよう?」

 

 

「言わないでおこう」

 

 

のどかが即答する。

 

 

「それは……どうして?」

 

 

ちゆが質問する。

 

 

「ヒエンさん、世界を守るためにあんなにボロボロになって、傷ついて、必死に戦ってた。きっと物凄く優しい人なんだと思う」

 

 

「ラテ様もすごくなついてるラビ」

 

 

「相談したらきっと力を貸してくれると思う。でも、だからこそ私達の事情に巻き込むのはダメ。絶対ダメ」

 

 

力強い瞳で皆を見る。

 

ちゆは苦笑しながら話を振る。

 

 

「分かったわ。皆もそれでいい?」

 

 

「「「「うん」」」」

 

 

話はこれで終わりであった。

 

三人が外へ出ると、丁度遊び終わったらしく、飲み物を飲んでゆっくりしている少年とメイド見習いの少女の姿があった。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

ラテと遊び終えてゆっくりしていると、のどか達がこちらへ戻ってきた。

 

そこには、ちゆさんの姿もあった。

 

 

「お?ちゆさんも一緒だったのか」

 

 

「はい。この子達とは友達なので」

 

 

「へぇー」

 

 

「それと私達のことは呼び捨てで構いませんよ?ねぇひなた?」

 

 

「うんうん!全然構わないよ!!」

 

 

「あ、そう?じゃあ遠慮なく呼ばせてもらうよ。それと俺達も名前で呼んでくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

そこでしばらく話してから解散する流れとなった。

 

明日から観光すると言うと、なぜかのどか達がすこやか市を案内してくれる流れとなった。

 

申し訳ないと断ろうとしたのだが、のどかが頑なに案内します!と妙な迫力で言ってきたので、渋々受けることに。

 

ちょっとつぼみと同じくらいの恐怖を感じたのは俺だけの秘密である(震え声。




次回から本格的に調査に。

では、また∠(`・ω・´)

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