大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも|д゚)チラッ

外伝書けたで候。

調査という名のほのぼの回。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


ミラクルリープ 皆との不思議な一日③

ヒエンside

 

 

 

「朝ですよ〜起きて下さいお兄様〜」

 

 

冷火のそんな声で目を覚ます。

 

俺はモゾモゾしながら布団を被り直す。

 

 

「ううん……あと二時間」

 

 

「微妙に長いですよ……ほら、良い天気ですよ?早く起きてトレーニングに行きましょう」

 

 

冷火がカーテンを開くと、朝日が俺の顔を照らす。

 

 

「ぐおおお……眩しい……目が……目があぁぁ」

 

 

「ムスカ大佐のモノマネはもういいですから、早く起きて下さい」

 

 

「モノマネじゃないよ……素だよ……ふわあぁ〜ねみぃ」

 

 

俺は目をこすりながらトボトボと洗面所まで歩いていく。

 

そして備え付けの歯ブラシで歯を磨き、顔を洗うとようやくシャキッとする。

 

部屋へと戻ると、冷火がオレンジのジャージを用意してくれていたので、それに着替える。

 

時刻は六時前であった。

 

タオルとスポーツドリンクをポーチに入れると準備完了だ。

 

冷火は白いジャージを着終わったのか、既に障子戸の前で待機していた。

 

俺と冷火は部屋を出て入口へと向かう。

 

その際に旅館の受付に少し走ってくる旨を伝えておく。

 

食事の時間は八時からなので、それまでに戻って来ればいいらしい。

 

そして二人で道を歩いていく。

 

まずはゆっくりウォーキングだ。

 

道はまだそんなに覚えていないので近場で動けそうな所を探す。

 

すると冷火が提案する。

 

 

「お兄様、浜辺に行きましょう。あそこなら近いですし、迷いません」

 

 

「だな。海も見えるし」

 

 

俺達は浜辺に向かう。

 

十数分歩くと、浜辺が見えてきた。

 

見渡すが、人は居らず貸し切り状態だ。

 

さっそく俺達は、柔軟とストレッチを時間をかけてしていく。

 

適度に身体がほぐれると冷火が話しかけてくる。

 

 

「調査もありますし、軽い組手だけにしておきましょう。やりすぎて動けなくなっても本末転倒ですし」

 

 

「そうだな」

 

 

そして俺達は距離を開けて向かい合う。

 

冷火とはたまにこうして組手を行っている。

 

彼女の扱う武術は、主にカンフーとエクストリームマーシャルアーツの二つだ。

 

言うなればカンフーアーツといったところか?

 

とりあえず俺は死ぬ気化して構える。

 

俺は中段構えで、冷火は螳螂拳(とうろうけん)のカマキリを模したような構えを取った。

 

 

「いきます!」

 

 

先に仕掛けてきたのは冷火であった。

 

素早いスタートダッシュで俺に迫る。

 

 

「フッ!」

 

 

「おっと」

 

 

息をつかせぬカンフー技で攻撃してくる。

 

対してこちらも防御しつつ、攻撃を仕掛けるが冷火は小柄なため、どうしても懐に潜り込まれやすく、攻撃は常に彼女が有利な状態だ。

 

冷火が回し蹴りを放ってくる。

 

丁度俺の顔に当たる高さにあるので、俺はそれをしゃがんでかわし、反撃としてこちらも回し蹴りを放つが、しゃがんでかわされる。

 

そこからは互いに素早い蹴りの応酬が続く。

 

ヒュンヒュンヒュンと言った風切り音が耳に残る。

 

俺は蹴りを歩法で回り込むようにかわすと、ひじ打ちを繰り出すが、首をひねりかわされ、同じく出されたひじ打ちで攻撃される。

 

それをかわすと、今度は回転しながら後頭部に蹴りを繰り出してくる。

 

俺はそれをバックステップでかわすが、さらに蹴りの連撃がくる。

 

それらを両手で受け流しながら、必死に防御していく。

 

エクストリームマーシャルアーツの蹴りは、普通の技とは違い、攻撃リズムが不規則なためやりづらい。

 

しばらく防御に徹しながら反撃の機会を伺う。

 

 

「ハッ!」

 

 

そして攻撃直後の僅かな隙を狙って掌打を放つが、腕を取られてしまう。

 

 

(しまった!?虚実か!?)

 

 

虚実とは高度なフェイント技のことを言う。

 

相手に攻撃すると見せかけて、実際はせず、死角から別の攻撃をする武術の高等技術だ。

 

俺はそのまま投げ技をかけられ、背中から落とされる。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

鷹爪脚(ようそうきゃく)!」

 

 

そして顔面を踏みつけられるのを、咄嗟に横に転がることでかわす。

 

 

「えげつない攻撃をするな!」

 

 

「寸止めするので大丈夫です!」

 

 

俺は悪態をつきながら起き上がり、横蹴りを繰り出すが腕でガードされる……が、強引にパワーで姿勢を崩す。

 

 

「くっ……」

 

 

夫婦手(めおとで)

 

 

そこから空手の技に切り替えて素早い連撃で追い詰めていく。

 

 

「古流空手の技ですか……!」

 

 

冷火は受け流していくが、流れは俺にあった。

 

そして防御の合間を縫って、正拳突きを冷火の胸に繰り出す。

 

 

「くぅ!?」

 

 

冷火は両手で受けるが、体格の差も合って彼女は吹き飛んだ。

 

 

「シッ!」

 

 

そして俺はトドメの正拳突きを放ち、彼女の眼前で拳を止めた。

 

 

「ま、参りました……」

 

 

「おう」

 

 

冷火は不貞腐れながら起き上がる。

 

 

「また敗けました……」

 

 

「いや、途中何度もヤバかったから」

 

 

今は俺の方がまだ強いが、一本取られるのも近い気がする。

 

そのとき……

 

 

「ふわぁ〜二人ともすご〜い」

 

 

「まるで映画の撮影みたい……」

 

 

「めちゃくちゃ動くじゃん……」

 

 

声が聞こえた。

 

見ればのどか、ちゆ、ひなたの三人がこちらを驚愕の表情で見ていたのだ。

 

 

「あ、いたのか三人とも」

 

 

「お兄様ご挨拶しないと。おはようございます、お三方とも」

 

 

「悪い。おはよう」

 

 

三人が返す。

 

 

「「「おはようございます」」」

 

 

三人ともジャージを着ているのでランニングをしていたのかもしれない。

 

ちなみにのどかはピンク、ちゆはブルー、ひなたはイエローのジャージをそれぞれ着ていた。

 

なんというか見ててしっくりくる。

 

 

「ヒエンさん!冷火ちゃん!いつもさっきみたいなのしてるんですか?」

 

 

のどかがテンション高く聞いてくる。

 

目がキラキラと輝いていることから大分興奮しているらしい。

 

あと君、ちょっと近くない?

 

滅茶苦茶良い匂いするんだけど。

 

フローラルな花の匂いするんだけど。

 

あと俺の方が身長が高いせいか、必然的にのどかが上目遣いとなるのでやりづらい。

 

 

「あ、ああ。結構な」

 

 

俺は簡潔に答えながらプイッとそっぽを向く。

 

 

(何か俺、この子にしたっけ?)

 

 

俺は考える。

 

なぜかのどかは……この子は……

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

俺は彼女から感じられる圧倒的善意?好意?の感情に戸惑う。

 

そんな俺の様子など露知らず、のどかは首を傾げながらこちらを見る。

 

俺は平静を装いながら話しかける。

 

 

「それにしても三人とも早いんだな」

 

 

俺の質問にちゆが答えた。

 

 

「身体を鍛えるために走ってるんです」

 

 

「へぇ。朝から頑張るなあ」

 

 

立派じゃないか。

 

 

「そういうヒエンさんと冷火ちゃんも凄いことやってんじゃん!」

 

 

ひなたの言葉に冷火が答える。

 

 

「まあトレーニングの一環といいますか。お兄様とは、たまにこうして組手をしてるんです」

 

 

「私、組手って初めて見たよ〜!」

 

 

「私生活では、なかなか見るものでもありませんしね」

 

 

女子達が元気よく話す。

 

朝早いのにこの子達、元気だな。

 

そこからは女子達の話が弾み、気付けば一時間半は経っていた。

 

急いで旅館に戻ることになったのは言うまでもない。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

朝ごはんを食べ終えた後、のどか達を待つ。

 

旅館に直接迎えに来てくれるのだ。

 

すると準備を終えたちゆが実家から出てくる。

 

この子の家は旅館の隣にあるのだ。

 

 

「お待たせしました。のどかとひなたは、まだ来てないんですね……」

 

 

「まあ、まだ10時になってないし」

 

 

すると五分前になると、のどかがやってきた。

 

 

「お待たせしました〜」

 

 

「全く待ってないぞ?」

 

 

「はい、全然待ってません」

 

 

そして最後はひなたになったのだが……

 

 

「来ないな」

 

 

「来ませんね……」

 

 

約束の時間を過ぎてもひなただけ来ない。

 

 

「やっぱりこうなったわね……」

 

 

「あはははは……ひなたちゃん」

 

 

ちゆは額に手を当て、のどかは苦笑いする。

 

 

「やっぱり?」

 

 

「ひなたってばその、約束の時間によく遅れるんです。もう少ししたら来ると思うんですけど」

 

 

すると……

 

 

「ごめ〜ん!準備に手間取っちゃった〜!!」

 

 

10分過ぎた頃、ひなたがやってきた。

 

 

「遅れてごめんなさい!ヒエンさん!冷火ちゃん!」

 

 

「10分ぐらいどうってことないさ」

 

 

「はい。全然大丈夫ですよ」

 

 

「うぅ〜……二人とも良い人過ぎて涙が出てきそうだよ……」

 

 

いや、既に出てね?

 

とまあ、無事全員揃ったので、すこやか市の調査という名の観光ツアーに出かけることになった。

 

色々なところに行った。

 

景色を一望できるすこやか山に、永遠の友情を誓い合う『永遠の大樹跡地』、すこやか商店街の店巡りに、癒やしの店のアロマショップ、独特なセンスを持つマスターがいるハーブ店などなど。

 

特にハーブ店のマスコットキャラクター、『ラベンだるまちゃん』はいかすキャラクターであった。

 

なんと六回行くとラベンだるまちゃんのぬいぐるみがもらえるので、なんとしても手に入れようと思った。

 

その関係でハーブ店のマスターとは、すっかり仲良くなってしまった。

 

ラベンだるまちゃんは、ラベンダーの花をモチーフにしたキャラクターであるらしい。

 

のどかもこのラベンだるまちゃんを持っているらしく、今度良かったら見に来て下さいと誘われてしまった。

 

あれ?

 

これいつの間にか、のどかの家に遊びに行くことになってね?

 

そして休憩も兼ねてひなたのお姉さんがやってるカフェワゴンでお茶していると……

 

 

「おや?」

 

 

丸眼鏡をかけた中学生くらいの少年がやってきた。

 

 

「花寺さん達ではありませんか。奇遇ですね」

 

 

「あ、益子(ますこ)君?」

 

 

益子少年というらしい。

 

カメラを首からぶら下げていることから、新聞部とかに入ってそう。

 

 

「丁度、近くを通りがかったもので飲み物でも買おうかと思いまして。それと先程から気になっていたのですが、そちらの方々は?」

 

 

俺と冷火は会釈する。

 

ここでのどかが紹介してくれる。

 

 

「えっと、紹介するね。こちらは大空氷炎さんと小道冷火さん。すこやか市に旅行に来てて、今日はその案内をしてたんだ」

 

 

「ほほう。旅行者の方々でしたか。申し遅れました。僕は、すこ中ジャーナル編集長兼記者、益子道男(ますこみちお)と言います。よろしくお願い致します」

 

 

またキャラの濃さそうな子が来たな(確信。

 

すこ中というのは、のどか達の通うすこやか中学校の略称である。

 

俺達も自己紹介する。

 

 

「これはご丁寧に。俺は大空氷炎。高校三年生です」

 

 

「私は小道冷火、メイド見習いです」

 

 

すると益子少年は興味深そうにこちらを見る。

 

 

「お気を悪くさせたらすいません。お二人はどういったご関係なのですか?ジャーナリストを自称している以上、気になると聞かない訳にはいかない質でして」

 

 

俺と冷火は顔を見合わせ、念話で確認を取る。

 

 

『いとこという設定で』

 

 

『却下。私はお兄様のメイドということで』

 

 

『おい』

 

 

待って!?

 

それだと社会的な問題があるから!!

 

なんかこう色々とややこしそうだから!!!!

 

 

『大丈夫ですよ。それに私はお兄様のマテリアル、ベルカ風に言えば守護騎士みたいなもの。メイドは私にとって天職なのです。まあ、私に任せて下さい』

 

 

不安しかないのですが!!!!!!

 

 

「私はお兄様のいとこで、メイドです。主にお兄様の身の回りのお世話をさせてもらっています」

 

 

「ほほう。身の回りのお世話……ですか」

 

 

「はい。そのために本格的なメイド研修も受けているところです。この旅行は、その実地訓練も兼ねているのです」

 

 

「なるほど。確かに貴女からは上品な佇まいと、高貴なる雰囲気が感じ取れます。これは一朝一夕で身につくものではありませんね」

 

 

「ほう。分かりますか」

 

 

「ええ。これでも洞察力と観察眼には自信がありますので」

 

 

冷火の目が少し細くなり、益子少年の丸眼鏡がキラリと光る。

 

なんかゴゴゴゴゴゴ……っていう文字が見えてきたのは気のせいですよね?

 

のどか達もただならぬ雰囲気に息を飲んでいる。

 

勿論、俺も息を飲んでいる。

 

あと何気に俺の提案した、いとこを入れてくれたことが地味に嬉しい。

 

 

「ふっ、失礼しました」

 

 

「いえ」

 

 

「冷火さん……と言いましたか。貴女とは気が合いそうですね」

 

 

「奇遇ですね。私もそう思っていたところです、益子さん」

 

 

二人の間になぜか友情が芽生えたらしく、握手していた。

 

なんだこの茶番。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

「時にお二人は、プリキュアというのはご存知ですか?」

 

 

「「「ぶっ!!」」」

 

 

益子少年も混じって六人でお茶をしているとき、益子少年の言葉にのどか、ちゆ、ひなたが思わず吹き出す。

 

大丈夫かいな?

 

 

「ま、まままま益子君!?」

 

 

「い、いきなりどうしたのかしら!?」

 

 

「な、なに聞いてんの益子っち!?」

 

 

三人が妙に慌てているのを尻目に益子少年は、ニヤリと笑いながら話し出す。

 

 

「このすこやか市には、メガビョーゲンという怪物が時折現れましてね?そのメガビョーゲンと戦うある少女達がいるのですよ」

 

 

「それがプリキュア……ですね」

 

 

「その通り。僕は以前メガビョーゲンに襲われたことがあるんですが、そのプリキュアに助けられましてね。それ以来ずっと、メガビョーゲンと戦うヒーリングっど♡プリキュアのことを調べているのですよ」

 

 

「ヒーリングっど♡プリキュア……」

 

 

それがこの街を守るプリキュアの名前か。

 

俺はジュースを飲みながら耳を傾ける。

 

 

「地道に調べていく中で色々なことが分かりまして。お二人がすこやか市に滞在するなら、念の為にお教えしておこうと思いまして」

 

 

「「ふむふむ」」

 

 

「興味がおありの様ですね」

 

 

すると益子少年は懐から三枚の写真を取り出し、テーブルの上に置いた。

 

写真には三人の女の子が写っていた。

 

 

「ピンク髪の少女がキュアグレース、青髪の少女がキュアフォンテーヌ、黄色髪の少女がキュアスパークル、この三人でヒーリングっど♡プリキュアです」

 

 

俺はしげしげと写真を見る。

 

そしてポツリと呟いた。

 

 

「三人とも可愛らしいな」

 

 

俺の言葉に冷火が反応する。

 

 

「そうですね。グレースさんは天然で癒やし系、フォンテーヌさんは華麗でお上品、スパークルさんは明るい元気娘って感じがします」

 

 

「お二人とも話が分かりますね。この三人はすこやか市でも人気がありまして、ファンクラブもある程なのですよ」

 

 

「「「ファ、ファンクラブ!?」」」

 

 

するとまたしてものどか、ちゆ、ひなたが声を上げる。

 

見れば三人とも顔が真っ赤である。

 

気になった俺は三人に話しかける。

 

 

「なあ三人とも、なんか顔赤くないか?」

 

 

「「「へ!?」」」

 

 

「いやだってさっきから口をパクパクさせてるし、様子が変だぞ?」

 

 

「な、ななななななんでもないですよ!?」

 

 

「え、ええ!なんともないです!ないです!」

 

 

「だ、大丈夫大丈夫!私達は大丈夫!!」

 

 

……正直、全然大丈夫そうには見えないのだがツッコむのは野暮か。

 

 

「話を続けますよ。そのファンクラブのメンバーの協力もあってヒーリングっど♡プリキュアの敵対組織、ビョーゲンズについても色々分かったのです」

 

 

「「ビョーゲンズ??」」

 

 

「はい。ビョーゲンズとはこの地球を蝕むために実体化した病原菌といったところでしょうか。そしてビョーゲンズを率いる三人の幹部の名前も発覚しました」

 

 

さらに益子少年は三枚の写真を出す。

 

 

「このクールそうな少年がダルイゼン、派手な女性がシンドイーネ、ガタイの良い男性がグアイワルと言います」

 

 

益子少年はさらに進める。

 

 

「最近は、この三人やメガビョーゲンが出てくる頻度は落ち着いていますが、もし仮に出くわした場合は、必ず逃げて下さい。普通の人間が敵う相手ではありませんので」

 

 

「「…………」」

 

 

俺と冷火は無言で話を聞いていた。

 

いや、それにしても益子少年、よくこれだけの情報を集めたな。

 

関心するわ。

 

 

「僕がお伝えしたいのは以上です。すこやか市は良い街なのでぜひ楽しんでいって下さい。ここでは温泉巡りがオススメですよ?」

 

 

「おお、いいなそれ」

 

 

温泉巡りは興味があるな。

 

時間のループの件が無事解決したらやってみようかな。

 

そして俺が益子少年とこの街のことで盛り上がっていると、冷火が未だヒーリングっど♡プリキュアの写真をジーッと見ていることに気付く。

 

 

「どうしたんだ冷火?三人の写真をジーッと見て」

 

 

「いえ、お兄様の好みの子は誰かなと思いまして」

 

 

「ぶぅ!?」

 

 

俺はジュースを吹きそうになる。

 

 

「お前いきなり何言ってんの!?」

 

 

「ふむ。特にこのグレースさんなんて、お兄様の好みに合致しているのではないですか?」

 

 

「いや、だから何言ってんだって!?」

 

 

話、聞けよ!?

 

 

「以前忍さん、さくらさんと話してたんですけど、お兄様に似合うのは、先を引っ張てくれるタイプの女性か、後ろを付いてきてくれるタイプの女性かなって話してたんですよ。それでグレースさんは後者のタイプかなと、そう思っただけです」

 

 

「いや話の脈絡の無さよ……」

 

 

「だってお兄様、こういう素直そうな人が好みでしょ?」

 

 

「なんで断定?」

 

 

「メイドの勘です」

 

 

「余計根拠ねぇじゃん」

 

 

「で、好みかどうかどうなんです?今後の嫁探しの参考にするので答えてください」

 

 

「おい、ちょっと待て。なんだ嫁探しって」

 

 

「だってもう高校三年生ですよ?それでまだ彼女の一人もいないなんて、お兄様があまりにも不憫で不憫で……これでは将来婚活にも困るだろうと思いまして、少々お力添えをと」

 

 

「全く持って余計なお世話なんですけど!?」

 

 

「それより早く好みかどうか答えて下さい」

 

 

「お前が本当にメイドなのか、今更ながら疑問に思えてきたわ」

 

 

「いいから早く答えて下さい」

 

 

「あぁ、分かったよ!答えればいいんだろうが!好みですよぉ!滅茶苦茶好みですよぉ!これでいいかコンチクショウッッ!!」

 

 

「なるほど、分かりました。ありがとうございます」

 

 

俺は一気にジュースを飲み干す。

 

なんだか無性に疲れた……。

 

今日は早目に旅館に戻って寝ようと、切に思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシャリ

 

 

「楽しい方達ですねぇ」

 

 

益子は、少年とメイド見習いの二人を写真に収める。

 

二人は未だに盛り上がってるのかギャーギャーと騒いでいた。

 

と、ここで益子はあることに気付く。

 

のどかが何やら撃沈していたのだ。

 

目をグルグルと回し、頭からは湯気を出していた。

 

ちゆとひなたの二人が、濡れタオルをのどかの頭に乗せて必死に熱を冷ましていた。

 

 

「花寺さんは一体どうしたのです?」

 

 

ちゆとひなたが苦笑いしながら答える。

 

 

「今はそっとしといてあげて……」

 

 

「うん。そっとしといてあげて益子っち……」

 

 

そういう二人の顔もどこか赤かったそうな。

 




次回から黒幕が動き出します。

その関係でHUGっと組と、スタートゥインクル組と会う……かも。

では、また∠(`・ω・´)

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