とある魔術と動物擬態《アニマルパワー》   作:確変

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 知ってる人はお久しぶりです。初めての方は、はじめまして。どうも確変と申します。

 以前はにじファンで書かせてもらっていましたが、閉鎖に伴い移転させていただきました。はじめはPIXIVさんに行こうかと思っていましたが、前のサイトでこちらを推していただいたので、こちらにしました。

 とりあえず、一番話数の少なかった“これ”から移転開始です。調子が出てきたら順次移転させていく予定です。

 それでは、何かと至らない身ですが何とぞよろしくお願いいたします。


序章

魔術と筋肉が交差するとき、物語は始まる――――!

 

 

 

「ちくしょう……、一体どうしたらいいんだ!?」

 

 彼、上条当麻は懺悔する罪人の如く目の前に静々と居座る純白の修道服を纏いし少女の前に項垂れる。

 

 少女――――禁書目録(インデックス)と名乗った彼女。

 

 つい数時間前に形容しがたい衝撃的な出会いをし。過ごした時間など極僅か。しかし、今の当麻の脳裏に浮かぶのは、そんなわずかな時間にみた彼女の表情の数々。

 腐りかけの食材で作った料理を「おいしい」といって喜ぶ顔。修道服が彼の右手の力で弾け跳んだ時の驚きの顔。裸を見られて恥じらう顔、怒った顔…………。表情の一つひとつが脳裏に貼り付くその傍らで、彼女が今浮かべているゼンマイの切れた人形のような表情は上条当麻にとって、あまりにも痛々しすぎるものであった。

 

 インデックスは深手を負っていた。それも、今直ぐに治療を受けなければ命に関わるほどの重傷で、前面は白、背は自身の血で濡れて渇いた血液が正反対の黒を彩らせている。

 

―――― 何としても助けたい。

 

 当麻の強烈な想いとは裏腹に、今の彼には彼女を救う手だてがない。

 医療機関に頼ろうにもインデックスが、ここ『学園都市』のIDを保有しているとは思えない。かといってインデックスに最善の治療を施してあげるほどの医療技術を当麻は持ち合わせてはいない。

 

 その時、今まで意識を失っていたインデックスが薄っすらと眼を見開き問い掛ける。

 

「当麻……、どかした? 顔色悪いみたいだけど」

 

 自身の状況を理解できていないのか、己の身よりも当麻の心配をするインデックスに対し、当麻は半ば怒鳴るように云う。

 

「人の心配してる場合か!? はやくその怪我なんとかしねぇと!」

「大丈夫、だよ。とにかく血を止めることができれば……」

 

 グラリ、とインデックスの頭が揺れて重心が傾く。すかさず当麻は倒れ伏しそうになる彼女の体を両手で受け止めるが、意識を失った人が感じさせる不思議な重みが当麻の不安を更に募らせる。

 

「お、おい! おまえの持ってる十万三千冊のなかに傷を治すような“魔術”は無ぇのかよ?」

 

 眼を瞑るインデックスに問い掛ける。

 

 彼女は魔術師に追われていた。彼女は十万三千冊の魔導書を“完璧”に記憶していた。彼女に傷を負わせたのは魔術師であった。

 

 科学が発展しさらなる高みに昇り詰めようとしているこの学園都市で、魔術などというオカルトは俄かに信じ難い。だが、それでも魔術の中にインデックスを救う手だてがあるのならばと、当麻は藁にも縋る思いでインデックスに問いかける。

 

「あるけど、きみには、無理――――」

「え?」

「例え私が術式を教えて、きみが完全にそれを真似したところで『きみの力がきっと邪魔をする』」

「クソッ、またかよ……」

 

 彼の右手には不思議な力があった。異能の力であれば、どんなものさえ打消す力。その力は彼女を救うどころか足枷にしか過ぎないとわかると悔しさが胸底から込み上げてきて、当麻は己の右手を恨めしく睨みつける。

 

「……またこの右手が悪いのかよ!」

 

 まるで不幸をもたらすこの右手の力が、インデックスにまで及んでしまったかの様にすら思えてくる。

 インデックス曰く、彼の右手は神の御加護などの幸福となる要因すら打消している。故に当麻の日常は不幸にしか愛されるとしか云えないようなものであり、事実 彼がインデックスの修道服にかけられた魔術を消してしまった為に彼女は今に至っているのだ。

 

「きみの右手じゃなくて。『超能力』っていうのが、もうダメなの……」

 

 超能力とは才能のある人物が行使するもの。逆に魔術とは「才能がない者が、それでも才能のある者と同じことをしたいという願望から産みだされたもの」だと彼女は語る。

 

「なら、能力開発のカリキュラムを受けているこの街の学生には」

「うん、魔術は使えない……」

 

 インデックスの一言が当麻を更に追い詰める。なぜなら学園都市は、『超能力』の開発を進めるための『学生』の都市なのだから……。

 

「(がく、せい……には?)」

 

 言葉が頭の中で反芻される。そして考えるよりも先に、当麻の口から自然と言葉が飛び出していた。

 

「おい! 魔術ってのは才能のない人間になら誰にでも使えるんだったな?!」

 

 

 

* * *

 

 

 

「ハァハァハァ―――― ッ!!」

 

 インデックスを背中に背負い、夜道をひた走る当麻。

 シャツは夏の暑さが手伝い、とうに汗で濡れぼそり息は既に切れかけている。しかし、当麻は脚を緩めることは決してしない。そうしている間に、インデックスを追う死神が一歩また一歩と、距離を縮められる錯覚に襲われるからだ。

 

「確か、この先に!」

 

 インデックスを救える条件を満たす人物がいる。

 月明かりもささない『林』が造り出す暗闇。聴こえてくるのは真夏の虫たちの奏でる羽音のみ。

 

「あった!」

 

 闇に差し込まれる目的の民家の光が、今の当麻の眼には希望の光のように映る。

 木の根に攫われそうになる脚に喝を入れ、民家……というよりは『ほったて小屋』ともとれる家のドアへと辿り着くと、ドアを叩きつけながら叫ぶ。この小屋には呼び鈴などの洒落たものは備わっていないのだ。

 

―――― ドンドンドン!

 

「この時間でもう眠っているとか、言わねぇだろうな? ……よぅしっ!」

 

 一向に返答のない家屋に悪態と苛立ちを覚えながら、当麻は右足を振り上げた。

 

ドンッ!

 

「ッ~~~!?」

 

 ドアをおもいきり蹴りつけると、つま先から全身に響き渡るように痛みが走り思わず身悶えしてしまう。しかし、その甲斐あってか家屋から反応が返ってきて、当麻の足を痛めつけたドアが開け放たれる。

 

「は~い、ん? どうしたんだい上条くん? こんな夜更けに」

 

 

「ちょっと困ってるんで、失礼します。詳しい話は中でしますんで、“ターちゃん先生”!!」

 

 

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