ラブライブ! ~『正しさ』の本質~ 作:k.k.halcyon
今回は、ことりsideの番外編です。
会話はありません。ことりの一人語りです。
「ことりの思う『子供』と、七海の思う『子供』は、違う」
テーマはそんな感じです。
それでは、どうぞ。
「・・・ヨシッ。・・・みーくん・・・・・・今日、家でご飯食べない?」
私、南ことりには、好きな人がいます。
みーくん・・・三橋七海くん。今、ことりの目の前で、ぽかんとした顔をしている、彼です。
*ー*
これって、一目惚れ、っていうのかな。
修学旅行で助けてもらって、そのあと一緒に宮島を歩いて・・・多分あのときから、私は彼のことが、好きだったんだと思います。
そのあと、連絡先を交換してから、当時受験生だった私は、『勉強を教えてほしい』って建前で、彼に何回も電話しました。学校の勉強で分からないところなんてほとんどなかったけど、分からない、って嘘をついて。
ことりと1つしか違わないのに、彼の声はとても低くて、落ち着いていて。時々出てくる広島弁も、最初はなんだか面白くて。これまで男の人はすっごく苦手だったのに、彼だけはそんなもの感じなくて、むしろ彼の声で、私はとっても安心できた。だから、勉強のあと、彼とお話ができる5分ほどの時間が、私は大好きでした。
それから、お母さんの高校に無事合格したあと、みーくんが千葉に引っ越してきて、時々ではあったけど、一緒にお出かけとかもしたりして。思い切って、手を繋いだこともあった。彼は少し驚いていたけど、ちょっとだけ顔を赤くしながら、それでも離さないようにぎゅっと握り返してくれて・・・私のほうが真っ赤になっちゃったよー、もう///
けど、みーくんのお父さんが亡くなってからは、しばらく会えなくなってしまいました。頑張って励まそうと、みーくんに電話してみようかとも思ったけど、何て言えばいいんだろうって・・・何か話して、無責任だって、嫌われたらどうしよう、そんな恐怖が広がって、結局一度も通話ボタンを押せませんでした。
そんなとき、音ノ木坂学院が廃校になるって、お母さんから聞きました。そして、共学化の話も、試験生として、みーくんを呼ぼうとしている、という話も。
嬉しかった。彼とまた会える。それも今度は同じ学校に通える。廃校の話を聞いたあとで、お母さんには失礼かもだったけど、そのときは廃校のことなんてどうでもよかったんです。みーくんとまた会える。その事実だけが、ただひたすらに私の頭の中を、喜びと共に駆け巡っていましたから。
春休み、みーくんが東京に引っ越してきました。穂乃果ちゃんと海未ちゃんも呼んで、廃校や共学化の話は言えないから、形上は『学校は変えずに、家だけ東京の方へ引っ越す』という体でしたけど。
久しぶりにお話したみーくんは、私達にいつもの低音、けれど元気な声で、「久しぶり!」って言ってくれました。みーくんの前では悲しい顔は見せないって、穂乃果ちゃん達と決めてたけど、そんな心配はいらなかった。
・・・そう、思ったんですけど・・・
彼の言葉をよく聞いてみると、電話で聞いてた広島弁が、聞こえない。そのときは気のせいかもって思ったんだけど、なんだか、少し寂しかった。
それともうひとつ、気づいたことがあったんです。
前に会った時にも感じたけれど、彼は私のことを、妹みたいに思ってる。・・・私と違って。
私と話しているときのの彼の目から、何となく、分かっちゃった。
それがなんだか、悲しかった。
もっと私のことを見てほしい。もっと私に触れて、彼に触れさせてほしい。・・・好きだから。
だから、今日・・・・・・
「・・・ヨシッ。・・・みーくん・・・・・・今日、家でご飯食べない?」
・・・・・・私は、彼に告白します。彼に、私を『女の子』として意識させるために。
*ー*
お母さんにも協力してもらって、夕ごはんを私の家で一緒に作って、一緒に食べて、そのあとめいいっぱい甘えて、みーくんの瞳に私という女の子を映す。少しでも濃く、長く。そう予定をたてました。
『妹なんかじゃないんだよ?』って。『私はあなたが好きです』って。
だけど、告白は・・・・・・できませんでした。彼の漏らした言葉、
「・・・そう・・・だな・・・うぅ・・・うああああああああぁぁぁぁあぁあぁああっぁぁぁああ!!!!!!!!!!!!」
スーパーに向かう途中、泣いているみーくんを見て、分かっちゃったことが、あったから。
私は、彼のことを知らなすぎる。声が低くて、広島弁で、身長は私とあまり変わらない。優しくて、頭が良くて、ことりが困った時には、助けてくれて。心配してくれて。怒ってくれて。
それまでは、頼りになるお兄ちゃん、って感じだったけど・・・でも、違った。
彼がお兄ちゃんだったんじゃない。
私達が、彼に、そういう’’役’’を、背負わせていたんだ。
みーくんは、私が思っていたよりも、ずっと、ずっと、弱かったんだ。
一生懸命強がって、私達の前ではいいお兄さんでいようって。
けど、違う。彼がお兄さんとして振る舞っていたのは、彼の意思じゃない。
彼に’’頼りになるお兄ちゃん’’っていう理想を押し付けた、レッテルを張り付けた、私達の身勝手だ。
自分の父親を亡くして、ひとりぼっちになってしまって。本当なら、私達が彼を助けないといけなかったのに、私達は踏み込むことが怖くてなにもできず、それどころか、逆に彼に助けられてばっかりだった。
そして、そんな彼に気付けなかった私は・・・・・・最低だ。
『妹』なんかじゃない。私は、『子供』だ。妹じゃあ嫌だ、なんて言っておきながら、自分の理想を勝手に押し付けて、彼に’’お兄ちゃん’’っていう役を担わせていた、なんて。
彼はきっと、「なに言ってんだ?別にそんなこと思ってないんだが・・・」とか言うに決まってる。けど、だめなの。あなたの言葉に甘えたくなってしまうから。
どうしようもない『子供』だ。今の私には、彼に告白する資格なんか、ない。こんな子供が、彼のことを好きになっては、いけない。彼に、これ以上重荷を背負わせては、いけない。
この気持ちは、胸の中に、しまわなければ、いけない。
・・・・・・けど・・・・・・
・・・・・・けど、消えない・・・・・・諦めきれない・・・・・・
・・・・・・だめだよぉ・・・やっぱり、好きだよ・・・・・・
・・・・・・あなたが・・・みーくんが、好き、だよぉ・・・・・・
あなたの前では、言葉には出さないけど。表情にも出さないけど。
苦しい。
好きだって自覚して、告白する覚悟もして迎えたその日に、告白する資格がないって気づいて。
なら、この気持ちは、どうすればいいの・・・?
・・・苦しいよ・・・助けてよ・・・・・・
・・・・・・助けてよ・・・みーくん・・・・・・
悩んだ末に、私が選んだ選択肢。
それは、私が子供でなくなるまでは、『妹のような友達』として、彼のそばにいること。
今はまだ告白はしない。できない。けれど、だからと言って彼から離れるなんてこと、『子供』である私には、到底できそうにない。
出てきたものは、呆れるほどにわがままな答えだった。
『彼の近くに寄り添いながら、私は『子供』から、『妹』から、卒業する』
今は女の子として見てくれなくてもいい。みーくんの『妹』でいい。だから・・・
・・・いつか、言うね。好きです、って。
私、頑張るから。あなたに支えられるだけじゃない。あなたの隣に立って、あなたを支えられる、そうなれるように頑張るから。
だから、時々でいいから・・・
「・・・・・・頭、撫でてほしいな?」
・・・・・・あなたのそばで、あなたに触れたい・・・・・・ね、お願い♪
ひとまず、これでプロローグは、完全終了です。
次回から、新章に突入します。
といっても、相変わらずの超スローですが・・・
シリアスも多めに入れていこうと思いますので、これからもよろしくお願いします!
ではでは。