ラブライブ! ~『正しさ』の本質~ 作:k.k.halcyon
毎回毎回、話が長くてすみません・・・
終わりの見えない、この波乱・・・
今日も今日とて、超スローです。
それでは、どうぞ。
「私はっ・・・あなた達のおもちゃじゃないっっっ!!!!!」
園田家の外にいた俺は、海未の泣きそうな、つらそうな叫びをあげていたのを耳にする。
(何だ・・・海未、か?でも今の声・・・どう考えても、いつもの怒った声じゃない・・・)
穂乃果に対して海未が怒鳴る図はよく目にする。穂乃果達の受験勉強のときや、俺が千葉に引っ越した後、ことりも含め4人で出掛けたとき、海未の怒った声はよく聞いた。
けど、今聞いたのは、俺の記憶にある声とは違う。まるで、そう・・・
・・・誰かから、どうしようもない理不尽を、押し付けられたときのような・・・
こちらに・・・というよりは、玄関に向かって走ってくる、誰かの足音が聞こえる。
通りに面した園田家の大きな門から不意に飛び出して来た彼女と、思わずぶつかってしまう。彼女が後ろに倒れそうだったので、肩を掴んで支える。
白のトップスに、パステルカラーのカーディガンを羽織って、下は膝上10㎝ほどの、やや短め、紺色のスカート。サーキュラースカートというやつだろうか。
元々どこかに出かけるつもりだったのだろう。そんな出で立ちをした彼女・・・園田海未は、ぶつかった相手の名前を呟いた。
「あ・・・・・・な、七海、さん・・・くっ!・・・・・・」
「あ、おい!海未っ!!!」
そのまま何も言わずに走り去って行く海未。後ろからも声が聞こえた。
「海未さんっ!!」
出てきたのは、海未の母である、園田朋未(そのだ ともみ)さん。俺の顔を見て、少し驚いていた。
「君は・・・七海くん、なの?」
「・・・お久しぶりです、朋未さん。いきなりで申し訳ありませんが、答えてください。
・・・・・・海未に、何をしたんですか!?」
冷静でいようと努めるものの、思わず語気が荒くなる。
そりゃそうだろ・・・・・・だって・・・・・・
(・・・あいつ・・・・・・泣いてたじゃねぇかっ・・・・・・)
拳を強く握って、暴れそうな怒りの感情を押さえつけながら、朋未さんを睨み付ける。
「・・・・・・っ」
何も答えない朋未さん。今すぐに問いただしたい、けど・・・
今は、海未を追うのが先決だ。
「・・・もう、いいです。海未に、直接聞きますから・・・」
海未が走っていった方向へと駆け出す。まだそんなに遠くへは行ってないはずだ。
*ー*
(・・・・・・さっきの朋未さんの反応・・・)
海未に何をしたのか聞いたとき、朋未さんはまるで苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
(自分のしたことを後悔している、けどどうにか自分を納得させようとしている・・・そんな感じ、か・・・)
海未はさっき、「私はっ・・・あなた達のおもちゃじゃないっっっ!!!!!」って言ってた。
『あなた達のおもちゃ』・・・つまり海未の気持ちを無視して、海未の両親、朋未さんとその夫の園田将臣(そのだ まさおみ)さんが・・・海未に何かをさせようとしている。
少なくとも海未にとって、それは耐え難いことだったのだろう。
それに関しては、間違いないはずだ。
・・・・・・けど、腑に落ちない。
(そもそも、あの2人が、娘である海未に、そんな酷い仕打ちするか?)
以前海未の家で稽古をしていたとき、初めて2人に会った。その後海未の提案で泊まっていくことになって、夕食時に2人と話したけど、2人とも礼儀に関しては厳しいけれども、基本的に娘思いの良い両親だったように思う。
謹厳実直(朋未さんいわく、’’ただ気弱で意地っ張りなだけ’’だそうだ)な将臣さんと、温厚篤実(将臣さんいわく’’まじめで優しい寂しがりや’’だそうだ)な朋未さん。
あの2人が、海未が『あなた達のおもちゃ』と思うようなことを、進んでするとは思えない。
だとすると・・・・・・
(・・・2人にそうさせるような、’’何か’’があった・・・?
・・・・・・なにか複雑な理由がありそうだな・・・だけど・・・・・・)
まだ詳しいことは分からない。
ただ、海未がこうなる原因を、2人が作ったことは、紛れもなく事実だ。
2人はどこかで、間違えている。
今考えるべきは、その’’過程’’だ。
娘思いのあの2人が、娘を追い詰める行動をとった。そこに至るまでの過程。
そこに何か、2人のとった、’’間違えた’’行動が、どこかにあったはず。
それを知らなければ、この間違いは、正せない。
そして、間違いを正すべきは、2人の他にもう2人・・・・・・海未と、俺だ。
『いえ、これはただの日課ですから』
昨日の朝、海未にそう言われた時に、言いかけてやめたことを思い出す。
海未は厳しいことがあっても、決してつらそうな顔を見せない。
けど、たとえ顔に出さなくとも、厳しさをその身に、それも毎日受けてるんだ。つらくないはずがない。
なのに、つらいって気持ちを見せてくれないのがちょっとだけ寂しくなって、「つらいときはつらいって言ってほしい」って言おうとして、止めた。
・・・あのときは、海未の本心を知らないから、踏み込むべきじゃないって理由をつけて、思い止まったけど、
本当は、違ってた。今はそう思う。
あのとき海未に思ったことを言えなかった、その本当の理由は・・・
(・・・なんてこたぁねぇや・・・俺も海未と同じだ・・・)
俺たちはただ・・・・・・怖かった、それだけだ。
海未が俺につらいって気持ちを見せてくれないのが、俺は寂しかった。
だけど・・・・・・俺はその寂しさを、海未には見せなかった。
結局、『こんな嫌なところ、見せちゃいけない』って勝手に思い込んで、お互いに本心を隠しあってたんだ。
相手を大切に思っていたが故に、もっと大切なことを、自分勝手に、脳内から除外していた。
お互い両手を後ろに隠したまま、相手に手を差しのべようなんて、相手の手を取ろうなんて、できるわけがない、ということ。
そんな当たり前のことに気付けなかったことが、海未の・・・・・・そして、俺の、間違いだ。
(でも、もう分かった)
気付けて良かった。間違えた場所も。そして、それを正す方法も。
要は、自分のことを信じてほしいなら、まず自分が相手を信じろ、ってことだ。
なら、海未に対して考えるべきは、俺の信頼の気持ちを伝える方法。
そしてその答えはすぐに出た。"相手を信じていなければできないことをする"、だ。
それはつまり・・・・・・
(・・・・・・なんだよ・・・すげぇシンプルだったんじゃねぇかよ・・・
・・・とにかく、これについて考えるのはここまでだ。
・・・・・・後は、海未を見つけるだけだ)
心を決め、再び走り出す。
とりあえず今日はここまでで。
本当は、今回分と次回分をまとめて1回で出そうかなーと思ってたのですが、6000字を越えるくらいの分量になってしまうので、2回に分けました。
海未ちゃんシリアス回、まだまだ続きます。話長くてほんとすみません・・・どうか気長に待っててください・・・
ではでは。