ラブライブ! ~『正しさ』の本質~ 作:k.k.halcyon
昨日めっちゃ日焼けして、両腕がかゆいです。
日焼けは火傷。冷やすのが良いみたいですね。
今日も今日とてめっちゃ遅いです。
それでは、どうぞ。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・っ・・・・・・はあっ、はあっ、くそっ・・・」
一刻も早く海未を見つけなければいけないのに、足がなかなか前に進まない。
当然だ。かれこれ一時間はランニングを続けていたのだ。その上、神田明神のあの階段を本気で登っていた。そんな状態で、海未を探しに全力ダッシュ。いつ体力が尽きてもおかしくない。
(こんなときに・・・・・・こういうときのために、今までずっと努力してきたんだろうが!!
・・・まだ行ける・・・まだ走れる・・・・・・ここで、止まるな!!!!)
どれだけ疲れていようが、今だけは足を止めたくない。息を荒げながら、どうにか前へ進む。
大事な友達が泣いてたんだ。今動かなくて、どうする。
(・・・絶対に、見つけてやる・・・)
しかし、思いとは裏腹に、海未はなかなか見つからない。
「はあっ、はあっ・・・・・・くそっ!考えろ!海未はどこだっ!」
あいつが行きそうな場所はどこか・・・可能性があるとしたら・・・
穂乃果の家、ことりの家、あとは近くの公園、それから・・・・・・まだ多すぎる。
考えろ。考えろ!考えろ!!
(海未が家を飛び出して、真っ先に考えること・・・『一人になりたい』と思うのか・・・?
・・・・・・いや、『誰かに見つけてほしい』って思うんじゃ・・・?
・・・くそっ!!!何か絞り込めねぇのかよ!!!!)
『あの子、今日海未ちゃんと朝から遊びに行くって言ってたし・・・今から起こしてこようかしら』
今朝の穂むらでの会話が本当なら、海未が穂むらに向かう可能性は、ゼロではない。けど・・・・・・
(・・・だめだ!それでも確証はない!・・・近いところからあたって行くしかないか・・・
・・・そうだ、恐らく出ないとは思うけど・・・)
念のため、海未に電話をしてみる。可能性は低いが、出てくれたら一番楽だ。
prrrr...
コール音が続く。
(・・・・・・だめか・・・仕方ない、とにかく探しに行こう!)
ここから一番近いのは・・・ことりの家・・・いや、穂むらだ・・・なら、まずは穂むらに向かうぞ。
(確か、あそこの公園を横切って行けば、店に着けるはず・・・)
去年、海未の家に泊まった翌日に、穂むらに寄って行ったから、大体の道順は覚えてる、と思う。
その頃の記憶に従って、公園に進む角を曲がると、
「あれは・・・」
幸運にも、ひとつ向こうの角を曲がろうとする、青みがかった綺麗な黒髪の少女を見つけた。
「見つけたっ・・・」
公園とは違う道だが、海未が見つかったのなら問題はない。そのまま彼女の後を追いかける。
「うm、かはっ、こほっ・・・海未!!」
咳き込みながらもどうにか彼女の名を呼ぶが、気付いていないのだろうか。足を止める気配はない。
「くそっ・・・はぁ・・・はぁ・・・くそっ・・・・・・」
もう、体力も限界が近い。走るスピードも、次第に下がっていく。
しかも、海未は普段から鍛えているだけあって、かなり足が速い。このままじゃあ・・・
(どうする・・・どこかで先回りするか?・・・いや、もうそんな体力はない・・・
・・・そもそも、あいつがどこに向かってるかなんて見当も・・・・・・って、あれ?)
さっきまで足を止めていなかった海未が急に速度を緩め、誰かの家の中へと入っていく。というか・・・
(あそこって・・・・・・俺の、家?・・・・・・)
*ー*
俺が家の前まで来ると、海未はスカートが汚れるのも気にせず、家のドアの前で座り込んでいた。
海未の表情は見えない。膝を抱えて座り込み、顔を埋めている。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・海未・・・」
俺が近づいても、海未は反応を示さない。
(・・・なんで、海未は俺の家に・・・・・・)
横から顔を覗こうとすると、彼女は俺とは反対側に体を向けてしまった。
「・・・どうして、こんなに早く来ちゃうんですか・・・・・・」
こちらに背を向けたまま、僅かに聞き取れるほどの声で、海未は呟く。
「・・・どこかに逃げようとしたら、七海さんの家が浮かんで・・・
・・・・・・七海さんが来るまでに、いつも通りの私に戻ろうって、考えてたのに・・・
・・・・まだ、見せられませんよ・・・・・・こんな顔・・・
・・・ははっ・・・・・・惨めですね、私・・・・・・」
・・・・・・微かに、肩が震えている。すすり泣くような声も聞こえる。
海未をここまで追い詰めた直接の原因を作ったのは、恐らく将臣さんと朋未さんだろう。
そして、こうなるきっかけを作った人間には・・・・・・俺も含まれている。
昨日の海未に何も言わなかった自分を、今すぐにでも殴ってやりたい。
(もう隠さない。俺も海未も、こんな惨めな隠し合いは、これっきりで終わりにする)
海未が横を向いたことで空いた背中に、そっと寄りかかって、俺も玄関に腰かける。
今は、背中合わせのほうが、お互いに話しやすいと思ったから。
「もういい。自分をそんなに傷つけるな」
「穂乃果みたいに自由に生きられなくて、ことりみたいな女性らしさもなくて・・・七海さんみたいに、強くもなくて・・・・・・」
「もういいから・・・」
「それでも必死で頑張っていたのに・・・・・・あんなこと言われるなんて、思ってもいませんでした・・・
・・・昨日、お婆様がやって来て、お見合いの話をいただいたんです」
「・・・お見合い?」
由緒正しい園田の家なんだ。お見合いだって普通にあるのかもしれない・・・けど・・・
「いくら何でも、早すぎないか?」
「・・・・・・私が今年で16歳になるから、園田の家にふさわしい婿を連れてくると、そう言われました。
・・・高校を止めさせ、来年には結婚させるつもりのようです」
「なっ!!?」
流石に驚いたな・・・婿って・・・結婚って・・・
それに、高校をやめる、なんて・・・
「いつの時代の話だ、って思いますよね。私だって、こんなの絶対に嫌です・・・それなのに・・・」
「・・・・・・」
「その夜、お婆様が、お母様に話していたのを、こっそりと聞いていたんです。そうしたら・・・ぐすっ・・・・・・お婆様が・・・・・・」
昨日のことを思い出しているのだろうか、泣くのを必死でこらえながら話す海未から聞いた話は、こうだった。
朋未さんの母、つまり海未の祖母である園田信子(そのだ のぶこ)さんは、海未を名家の男と結婚させることで、園田の家の繁栄を図ろうとしている。
園田の家の娘として産まれた朋未さんは、一般の男性である将臣さんと婚約を交わしたが、信子さんはそれを『失敗』と話していたそうだ。
女に学問の才など不要。名家のご子息を捕まえ、立派な男の子を産み、育てることが、女としての最高の誇り。そういう考えの人らしい。
だから、自分の娘が平凡な男性と結婚し、しかも女である海未しか産まなかったせいで、園田家は大きな危機を迎えている。
せめて孫である海未には、家柄のある男性と婚約を交わし、立派な男の子を産んでもらわなければいけない。
そう考え、櫻庭家という、かねてから親交のあった家と、独断でお見合いの約束を交わしたのだという。しかも今日から6日後、今週の日曜日に。
海未の気持ちなんてまるで汲んじゃいない。ただの横暴だ。
「それに・・・・・・ひっぐ・・・
『あの子の容姿なら、大抵の男は釣れます。櫻庭の方々も大層気に入ることでしょう』って・・・・・・ぐずっ・・・・・・」
「・・・・・なんだよ、それ・・・」
・・・・・・家を守るために、そのためだけに、自分の孫を生け贄にするってことかよ・・・・
「朋未さんはそれを聞いて、なんて答えたんだよ・・・」
「・・・・・・分かりません。そこまで聞いて、耐えられなくなって、自分の部屋に戻りましたから。
・・・だって・・・・・・お婆様にとっての私の価値って、なんなんですか・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・その話を、今朝お母様から聞いたんです。お父様もすでに知っているようでした。
当然断るつもりでしたよ。絶対に嫌ですもの。
・・・でも・・・お父様が・・・・・・
『あの櫻庭のご子息と結ばれるんだ。素晴らしいじゃないか』って・・・」
「・・・・・・」
・・・・・・そっか、将臣さんがそんなことを、ねぇ・・・
「・・・それを聞いたとき、私、分かっちゃいました。
お父様も・・・お母様も・・・お婆様も・・・・・・
この家の人は皆、私がそうなることを望んでいるって。
私の気持ちなんて、あの人たちにとっては、大した問題じゃあないんです。
それよりも、家を守ることの方が、よっぽど大切なんです。
けど・・・・・・きっと、うちにとっては、それが普通なんでしょうね。
いいんです。娘が我儘なんか言って、皆を困らせてはいけないんです。
・・・もう、仕方ないんです」
俺が振り返った先で、海未はゆっくりと顔を上げる。
彼女の顔には、もうさっきまで流していた涙は残っていなかった。
残ったのは、何もかも諦めたような、乾いた笑顔だけだった。
「もう、高校には行けませんね。せっかく七海さんとも会えて、学校にだって、一緒に登校できるかも、って、ちょっと期待していたんですよ?
でも、お見合いが終わったらきっと、良き妻になるためのいろはを、お婆様から仕込まれるんでしょうね。・・・花嫁修行って、もっと楽しいものだと思ってました。
穂乃果とことりにも、きっとなかなか会えなくなるでしょうね。・・・ちょっと、寂しい、です。
・・・・・・・・・ねぇ、七海さん?」
不意に、海未が立ち上がった。
「・・・なんだ?」
「最後に、1つだけ、お願いします。
・・・・・・私のこと、どうか忘れてください。
もう、これから先、思い出さないでください。
それが、私のお願いです。
・・・・・・こんな惨めな姿なんて、覚えていてほしく・・・ありませんから・・・」
海未はさっきの乾いた笑顔のまま、そう呟いた。
海未の話は聞いた。海未が何を考えているのかは、分かった。
けどさ・・・
(海未、気付いてるか?お前はもう、自分の’’やりたいこと’’を、とっくに見つけてんだぞ?)
『お婆様にとっての私の価値って、なんなんですか・・・・・・』
『お父様も・・・お母様も・・・お婆様も・・・・・・
私の気持ちなんて、あの人たちにとっては、大した問題じゃあないんです』
『もう、高校には行けませんね。せっかく七海さんとも会えて、学校にだって、一緒に登校できるかも、って、ちょっと期待していたんですよ?
でも、お見合いが終わったらきっと、良き妻になるためのいろはを、お婆様から仕込まれるんでしょうね。・・・花嫁修行って、もっと楽しいものだと思ってました。
穂乃果とことりにも、きっとなかなか会えなくなるでしょうね。・・・ちょっと、寂しい、です』
言葉から滲み出たものは、2つの願いだった。
’’園田家の跡継ぎ’’としてではなく、ただありのままの自分を見てほしい。
穂乃果やことりと・・・多分俺のことも・・・これからもずっと一緒にいたい。
それがきっと、海未の願い。
たった2つだ。それも、願って当たり前のこと。
そんな当たり前のことに、誰も向き合っていなかった。
『いいんです。娘が我儘なんか言って、皆を困らせてはいけないんです。』
自らの願いに背を向けられた海未は、『これは願ってはいけないことなんだ』と思ってしまった。
それがきっと、海未の間違い。
多分これが、何より海未を追い詰めた。
消えるはずのない気持ちを消し去ろうとして、心の奥底に封じ込め、頑丈な扉を建てて、強く、強く塞いでいた。
時が経ち、いつしか彼女は、扉の在処も、扉の開けかたも、忘れてしまった。
それなら、俺は・・・・・・
「・・・なあ、海未の言いたいことは、それだけか?」
「・・・・・・ぇ?」
「・・・なら、こっちの番だ」
今から、それを変えてやる。
今回はここまでで。
なんだか書いててつらくなってきた・・・
海未ちゃんのデレを早く書きたいよぉ・・・・・・真姫ちゃんたすけて・・・
ではでは。