ラブライブ! ~『正しさ』の本質~ 作:k.k.halcyon
日焼けのかゆみが大分収まってきました。
とりあえず、落ち込む海未ちゃんを書くのは、今回で一段落ですね。ふぅ・・・
それでは、どうぞ。
「・・・なあ、海未の言いたいことは、それだけか?」
「・・・・・・ぇ?」
「・・・なら、こっちの番だ」
今から、それを変えてやる。
海未の本心を塞いでいる、奥底にある頑丈な扉を、今から開け放つ。
やるべきは、3つ。
扉の在処を、見つけること。
扉の開けかたを、思い出すこと。
そして、扉を、開くこと。
お前の心の中の霧を、これから1つ残らず、晴らしてやるよ。
(・・・さあ、ここからが勝負だ)
俺も立ち上がって、海未に真正面から向き合う。
・・・今からやることは、タイミングが重要だ。
海未の心が漏れた瞬間、その瞬間に、一気に仕掛ける。
「海未。今から家に戻って、1週間分の着替えと、携帯とその充電器、あと、最低限必要なものを持って、もう一度うちに来い」
「・・・何を、言ってるんですか?」
「単刀直入に言うよ。・・・海未、今日からお前には、家出をしてもらう」
「・・・え?・・・・・・えええええぇぇぇぇっっ!!!??」
流石に驚いたようで、海未の瞳に少し輝きが戻る。
俺が持ち出す提案は、’’海未に家出させて、お見合いをすっぽかし、話をなかったことにさせる’’、だ。
「1週間分の旅行だと思えばいい。誰の家でも良いぞ?俺の家とかなら他に誰もいないし、居座ってくれても構わんから」
この提案が、さて、海未をどう動かすか・・・
「あ、あの、いきなり何を言い出すんですか!?いくら七海さんとは言えど、殿方と同じ屋根の下で暮らすなど・・・は、破廉恥ですっ!!!」
おお、久しぶりに聞いたな、海未の「破廉恥ですっ!!!」。まあ内容や経緯に関わらず、大体直後に俺が殴られるから、あまり良い思い出がないんだけど。
「別に冗談で言っとるつもりはないぞ?さっきからなんか、’’お見合いを受けるのも仕方ない’’みたいなこと言っとるけどさ、お見合いが嫌なら、行かなきゃいい。簡単だろ?」
「なっ!?ふざけないでください!!そんなこと・・・」
「何か問題があるのか?」
「当たり前です!そもそも、七海さんにそんなことまでしていただく理由がありません!!」
・・・・・・お、これは・・・
「・・・ふーん・・・・・・くすっ」
「な、なんですかっ!」
「そっかぁ・・・一応、俺の提案を喜んでくれてはおるんだなぁ♪」
「ど、どうしてそうなるのです!?」
「だって、今自分で『七海さんにそんなことまでしていただく』って言っとったじゃん。本当に迷惑なら、『していただく』じゃなくて、『される』って言うはずだろ?」
「・・・っ」
「多少なりともプラスの感情がなきゃあ、『していただく』なんて使わんよ。
・・・それに、『理由がありません』って言っとったけど、理由ならあるぞ?」
「ど、どんな理由ですか!?」
「分からんか?俺が海未を助けたいから、だ」
「なっ・・・だ、だから何だと言うのですか!」
「え?十分じゃない?」
「意味が・・・分かりません・・・」
「そう?すっごくシンプルだぞ?」
「いい加減にしてください!!・・・さっきから、なんなのですか・・・
もう・・・もう、いいじゃないですか。私は・・・これで・・・
・・・もう、放っておいてくれたって、いいじゃないですか!!!!!」
海未の感情がマイナス方向へと高ぶった、その瞬間、
(・・・ここだっ・・・)
その感情に上乗せし、全てを否定するようにして、
「ふざけたこと、抜かすなあっ!!!!!!」
溜め込んでいた、俺の感情を、爆発させる。
「っ!?」
こいつの揺れた感情を鎮める暇を与えてはいけない。
海未が動揺した今が、チャンスだ。
「死んでも放っとかねぇよ!!俺は何があっても海未の味方でいる!!生半可な気持ちでこんなこと言わねぇよ!!!俺は本気でお前を助けたい!!!文句なんか言わせるか!!!!」
思いの丈を、思いっきり、全身を揺さぶるほどの大音量で、海未にぶつける。
「・・・ぁぁ・・・・・・ぁぁぁ・・・っ、くっ」
海未は何かをこらえきれなくなったのか、また俺に背を向けてしまう。
背中を震わせて・・・泣いているのだろうか・・・涙声になりながらも、彼女は叫ぶ。
「なんで・・・なんでそこまでするんですか!!・・・こんなの私の家の問題なのに!!七海さんには関係のない話でしょう!!?もう構わないでください!!!」
海未の言葉が、心臓にぐさりと突き刺さる。
・・・『関係ない』って・・・くそっ・・・これは結構、つらいもんだな・・・
・・・・・・でも・・・だからこそ、本気で気持ちを伝えられる。
今、きっと彼女は、塞いでいた扉の在処を、見つけられた。
だが、まだ開けかたを思い出せていない。
そして、開けてもいいのかどうか、まだ迷っている。
あと2つ。
だったら・・・
(俺も、海未も・・・・・・もう、逃げるな!!!)
海未の両肩を掴んで、強引にこちらを振り向かせる。
「な、何をすr」
「好きだからだ、このバカぁっ!!!!!!!!」
海未の目をまっすぐ見つめて、
今までで一番大きな声で、一番伝えたいことを伝える。
「・・・・・・ぇ・・・」
・・・海未を追いかけているときに考えていた、相手に自分を信じてもらう方法。
俺は、’’相手を信じていなければできないこと’’をすることだ、と考えた。
だが、それでもまだ条件がある。
1つは、相手にぶつけるものは、『揺るぎないもの』でなければならない。
そのためには、自分の気持ちを見極めて、心の奥底から、そいつを引っ張り出す。それが必要だ。
そしてもう1つは、そいつをぶつけるタイミング。
それは、’’相手が揺らいだ瞬間’’だ。
心の揺らぎを見極めて、一瞬で、全てをぶつける。俺のことを、信じてほしい相手に。
(ぎこちない言葉でも・・・それでも、全部、海未にぶつける!!)
「お前が好きだからだ!!!!お前が好きで、お前の近くに居たいんだよ!!!『関係ない』とか言われたくねぇんだよ!!苦しいなら苦しいって言えよ、言ってくれなきゃ俺が寂しいんだよ、このバカがあっ!!!!下んねぇこと考えんなや!!黙ってお前が抱えてるもんちょっとくらい背負わせろやこのバカ海未があっ!!!!!!」
俺にとっての、今、『揺るぎないもの』は何か。
出てきた答えは、至極シンプル。''寂しさ''と、’’悔しさ’’だ。
なら俺がすべきは、つらいという感情や、どうしようもないほどの我儘な感情を、大きな声で、ありのまま相手に伝える、ということ。
だから、俺の心の中の我儘を、全部残さず、海未に伝えた。
全く、どこまでも見苦しい。スマートさなんてまるでない。嫌なところ全部剥き出しにした、俺の醜い心中だ。
けど、そういう嫌な感情も含めて、俺なんだ。それを海未には、わかってもらいたかった。
この方法が合っているかどうかだって、まだ分からない。全ては海未の返答次第だ。
・・・けど、今回はどうやらこれで、間違っていなかったらしい。
「な・・・なみ・・・さん・・・・・・ぁ・・・ぁぁぁ・・・・・・うぅあぁぁぁぁ・・・・・・」
海未の返答は、溢れるほどの涙だった。
「・・・・・・いいん・・・です・・・か?・・・甘えても・・・・・・
助けて、って・・・・・・我儘・・・言っても・・・・・・いい・・・・・・・ん・・・です、か?」
ぽつりぽつりと、彼女は秘めた思いを、こぼしていく。
巨大な氷塊が、崩れ始めた。
今彼女は、扉の在処に、既に気付いている。
そして今、扉の開けかたを、思い出した。
だが、開けてもいいのかどうか、まだ迷っている。
あと1つ。
もう、ドアノブには手をかけた。
あと、少しだ。
「・・・当たり前だ」
少しだけ、躊躇った後・・・もう半歩だけ近づいて・・・
彼女の手をとり、空いた右手で、頭を撫でた。
「・・・な、なみ・・・さん・・・」
「何回でも言うぞ?
・・・・・・何があっても、俺は、海未の味方でいる」
瞳いっぱいに涙を溜め、こちらを見つめる彼女に、そっと頭を撫でながら伝える。
こぼしつつある秘めた思いはついに、奥底の、彼女がずっと封じ込めていた場所を、こじ開けた。
「たすけて・・・・・・ください・・・なな、み・・・さん・・・・・・たすけて・・・・・・わた、し・・・・・・わたし・・・・・・うぅ・・・」
扉の在処を、彼女は見つけた。
扉の開けかたを、彼女は思い出した。
そして今、扉を、わずかに開けた。
あとちょっとだ・・・頑張れ、海未・・・
真面目で努力家な彼女が、初めて求めた、救いの手。
・・・・・・叶える。絶対に。
海未の頭を撫でながら、ゆっくりと、言葉を紡ぐ。
「・・・つらいことがあって、心の中がぐちゃぐちゃになっちゃったときは、何をすれば良いと思う?
・・・・・・泣くんだよ、思いっきり。
めいいっぱいに泣いて、その『つらい』っていう気持ちを、ありのまま、思いっきり何かにぶつけるんだよ。
だから今、もし海未がつらいなら、それを、俺にぶつけてくれ。
溜め込んでるもの、全部吐き出せ。
・・・俺は他の誰でもない、海未の味方だから」
・・・これが俺の勘違いだったら、すごい恥ずかしいな・・・
海未が今の俺をどう思っているのか、俺には分からない。完全に理解するなんて、絶対にできない。そんなものは思い上がりだ。
(走ったあとですげー汗かいてるし、気持ち悪い、とか思われてたら、これから先どうしよ・・・)
結局、人の心も、先のことも、子供な俺には何も分からない、けど・・・
「・・・ななみ、さん・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」
もし、海未が今、何も考えられないくらいに、苦しんでいるなら・・・
「・・・海未」
もし、俺の思い上がりでないのなら・・・
もし、海未が今、寄りかかる相手として、俺を選んでくれたのなら・・・
・・・・・・俺は、何があっても海未を助けたい。今、そう感じた。
だから、海未に俺の気持ちを、この嬉しさを、まっすぐ伝える。
「俺のもとに来てくれて、俺を頼ってくれて、ありがとうな」
瞬間、海未の瞳に溜まった涙が、一気に溢れだした。
「・・・うぅ・・・うあぁぁ・・・・・・ひっぐ・・・・・・うああああぁぁぁぁぁ・・・・・・」
彼女は俺の胸に飛び込んできて、汗まみれのジャージの背中をぎゅっとつかみ、痛いくらいに抱き締めてきた。
「ぅおっと・・・!」
「・・・ななみ、さん・・・・・なな、み、さんっ・・・・!!」
(・・・はは・・・海未、今俺、すげー汗いっぱいかいてるんだぞ?)
心の中で、軽く皮肉を漏らす。
でも・・・
(・・・間違って、なかったん・・・だよな・・・)
扉は、完全に開かれた。
俺の肩に顔をうずめて、大きな声こそあげないものの、彼女はさっきよりも確実に、感情を外へと押し出している。
ならきっと、もう大丈夫だ。
これで、また戻ってきてくれる。
真面目で優しい、俺達が大好きな、いつもの海未が。
(あのとき、ことりはこうやって、俺のこと抱き締めててくれたのかな・・・)
昨日派手に泣いてしまった記憶を掘り起こしながら、涙が収まるまで、彼女の背中をさすっていた。
とりあえず今回はここまで。
七海くんの台詞が、どう考えても告白のそれにしか聞こえない・・・
次回からは、海未ちゃんのデレも書いていきます。
海未ちゃんに古典の勉強を教えてもらいたい、今日この頃。
ではでは。