死の王と黒い剣士《OVERLOAD×ベルセルク》 作:y=ー( ゚д゚ )・∵.ターン
素晴らしいゲームでした(関係ない話してすいません)
最期の日
《ユグドラシル》と名付けられた世界の終末の日
残された全ての民たちは最期の時を謳歌しようとしていた。
《ユグドラシル》のサービスは今宵ここまで
そうであるなら、今を謳歌する事に誰が異論を唱えようか
街中では花火が大輪の華を咲かせ、その下ではあらゆる者達が踊り惚けている
まるで別れを惜しむように
ここで過ごした時間を忘れてしまわないように
存在の証を遺すかの様に
その喧騒から離れることを何里か先、街などは彼方にすら見えぬ場所
およそ誰も近寄らぬ大墓地
墳墓に見えるソレは『ギルド』の本拠地
嘗て《ユグドラシル》に覇を唱えた『ギルド』…《アインズ・ウール・ゴウン》
その『ギルド』の奥深く、最も奥の階層に『彼』は居た。
髑髏…荘厳な衣装に身を包んだ玉座に腰を掛ける男
彼の者こそ、この《ギルド》のリーダー『モモンガ』である
街などで騒ぐ他者とは対照的に、彼はこの場所で最期を迎えると決めていた。
始まりがこの場所であるなら、終わりもこの場所でなくてはならない
そう考えているが故の行動か
「…」
唯々無言
もしかすると、もしかするとと期待をしていた。
嘗ての仲間達が集合し、最期の瞬間を皆で祝えるのではないかと
モモンガはその淡い期待を胸に、この玉座に腰を掛けていたのだ。
嘗て共に時代を駆けた仲間達、盟約を結んだかけがえのない友
もう一度、皆で談義に花を咲かせたかった。
もう一度、皆でダンジョンを攻略したかった。
もう一度、一度だけ
「…はぁ…」
叶わぬ夢に思いを馳せつつ、髑髏の王はため息をついた。
「結局か…」
結局、全ては無為だったと言う事か
皆が集まるなど、もう有り得ぬ事となってしまった。
もう…誰とも会えない
髑髏の王は最期を迎えるこの世界の中にあって孤独だった。
本人の意を無視しつつ、最期の瞬間は刻々と迫ってきていた。
「…もう、誰も…」
不甲斐のない自分に涙が出そうになった。
それなりに頑張って、それなりの結果を出して、それなりに皆を引っ張って来たつもりだった。
なのに、これはなんだ?
誰も最期を共に迎えてはくれないではないか
こんな墓場にたった一人ぼっちの骸骨
世界から切り離されたようなこんな場所でたったの一人だ。
そんなのが、本人の意思であっていい筈がなかった。
「皆で…皆で創ったのに…」
独りではなかった、少なくとも過去では
楽しかったのだ。嬉しかったのだ。
皆が笑っていて…皆が楽しくて…
「皆で創った…ナザリック地下大墳墓だろ…?」
広すぎる玉座の間に、寂しげな呟きが溶けてゆく
それが虚無を助長し、孤独を増幅させた。
「なんでだよ…!!」
王の孤独が臨界に達した。
怒気よりも虚しさと哀しさに包まれた王は、ただただ震え黙するのみ
(畜生…ちくしょう…!)
叫びだしたい衝動を抑えるのが精一杯だった。
そうすることが、王たる彼の自尊心を保つ方法だった。
ここで叫び散らす事に何の意味がある?
そんな事は皆に失礼だ。
皆にも現実がある、生活があるのだ。
それを踏まえて、誰が彼らを責めれようか
たかがゲーム…そんな虚しい単語が、王の脳裏をよぎった。
「…たかがゲーム…かぁ…」
そう、ゲーム
これはたかがゲーム
現実ではない
「は、はは…ははは…はははは…」
何かに気がついてしまったかのように、髑髏の王は乾いた笑いを上げた。
気が付きたく無かった――――想像したくない妄想に
「みんな…どうでも良かったのか…?」
ナザリックなどどうでもいいと?
ユグドラシルなどどうでもいいと?
――――モモンガなど、もう、どうでも、いいと?
「違う!!絶対に!!」
だが、もしもそうだとすると…?
今日皆が揃わなかったのは…?
「そうだとしても…違う…!」
お前なんてどうでもいいヤツなんだ。
お前は王に相応しくない
お前は居なくてもいい
お前は消えてしまえ
お前は邪魔
お前はナザリックに不要
「俺は…俺は…!」
今まで信じてきた世界に裏切られたような錯覚
ただの被害妄想だと、そう言い切る気力は、最早無い
「う、ぅう…!」
不意に画面が揺らいだ。
涙に揺らぐ画面が、無人の空間を映した。
「もっと…話したかったなぁ…」
もっと…この世界を…
「楽しみたかったなぁ…」
この世界が終わるまで、後、数十分
もうログアウトしてしまおうかと、王は考えた。
ここに居ても、幸せな過去が刃となり現在の自分を刺し傷つけるだけだと
「…終わりかぁ」
改めて、その実感が溢れた。
「ナザリックも…アインズ・ウール・ゴウンも…ユグドラシルも…」
モモンガの、モモンガという存在の全ては――――此処に終わる
「…ログアウトするか」
出現させたコンソールパネルを弄ると、見慣れたボタンが出現した。
ログアウト
酷く寂しいその単語が、王の瞳を包み込む
お終いだ、これで、お終いだ。
何もかも、ナザリックは
「…あぁ、楽しかった…なぁ…」
涙で揺れる視界の中、ただそのボタンを押そうと指を伸ばす
その瞬間、指がボタンに触れそうになったその瞬間であった。
――――誰かの声がした。
『宴も酣ってところか?』
「…え?」
ぼやけた視界が、ほんの少しずつクリアになって行く
玉座の間のドアに…誰かがいる
その形が徐々に露になって行く
黒い鎧、ベルトに提げたナイフの束、黒いマント、銀に鈍く輝く義手、そして――――背負われた鉄塊
髪を立てた巨躯の男が、獰猛に笑っている
『なぁ…そんなところだろ?』
「ガ…!」
思わず、その名が口から漏れた。
『ガッツさん!!!』
《鷹の団の切り込み隊長》
ユグドラシルの古参プレイヤー達にその単語を聞かせると、大半はソレに震え上がるだろう
人間種族で構成された傭兵集団ギルド《鷹の団》
ギルドの長である白き鷹の名を冠する男…『グリフィス』の右腕にして、立ち塞がる邪魔者をその大剣で叩き潰す事で恐れられたプレイヤー
その名は『ガッツ』
対人戦闘において異常な勝率を誇り、豪快な立ち回りで知られる男
その噂は、無論ナザリックにも届いていた。
いや、届いていたと言うより…邂逅したと言った方が正しいか
――――嘗てアインズ・ウール・ゴウンは、鷹の団と激突した。
頂と頂を極めた者達の激突
当時のユグドラシルは、その一大イベントに震えた。
特に『ガッツ』と『たっちみー』の壮絶な激闘は、今にも語り継がれる伝説であろう
血で血を洗う闘争、誰も退かず、誰も譲らず、誰もが熱狂した。
正に実力伯仲の大大戦
互いの全ての戦力、プレイヤーにNPCにアイテムに時間…全てを賭けたその闘いは、引き分けに終わった。
それ以来、アインズ・ウール・ゴウンと鷹の団は和平を結び、友好関係を築いていた。
――――鷹の団が、崩壊するまでは
『久しぶりですね!!ガッツさん!!』
嘗ての旧知の友を目にしたモモンガの回復は凄まじく、今にも小躍りしそうな動きで玉座から立ち上がりトコトコとガッツの元まで駆け足で寄って行く
ガッツは一瞬ほくそ笑むと、それに返した。
「あぁ…久しぶりだな。モモンガ」
『本当に!本当にお久しぶりです!』
モモンガがガッツの手をがっしりと掴むと、ブンブンと上下に振り始めた。
異様な速度が災いしてか、妙な蜃気楼が見える
「…喜ぶのは勝手だが、そろそろやめとけ」
ガッツにそう声をかけられるまで、モモンガのシェイクハンドは続いていた。
玉座から場所を移し、巨大な円卓の広間へと二人は移動した。
『懐かしいなぁ!ガッツさん!』
熱狂冷めやらぬモモンガは、興奮しつつウキウキと着席する
対するガッツは、影のようにゆらりと着席した。
『最後に会ったのいつでしたっけ?凄く前の気がしますよ?』
「…七年前だ。」
『七年!もうそんなに前かぁ!』
「…グリフィスとお前の一騎打ちは、今でも覚えてるさ」
『あ!そんな事もありましたねぇ!…相討ちでしたけど』
「…そうだな」
昔話に花が咲いてゆく
アインズ・ウール・ゴウンと鷹の団、両者は険悪な関係から一転し、かなり友好な関係を築いていたのだ。
『七年…七年かァ…』
「…黄昏てんじゃねぇぞ、モモンガ」
『あ、あぁ…すいません…』
「…謝んなよ」
何気ない会話
モモンガにとって、それは正に飢えていたモノであった。
『そ、そうだ…ガッツさん?なんでナザリックに…?』
夢中になりすぎていて本題を忘れてしまっていたモモンガが、そう切り出す
「…最期だしな、少しだけでもお前と話がしたかった。」
ガッツが儚げな顔で笑うと、モモンガの意識が急激に冷めやっていく
最期…そうか、そうだったと
『あぁ…そう言えば最期でしたね、今日で』
「…よく言うぜ、さっきまで凹んでた癖によ」
『あ…や、やっぱり分かっちゃいました?』
「…丸わかりだ。バカ」
『酷くないですか!?』
「…まぁ、本題はもう一つの方なんだが」
『スルーっすか、そうっすか…』
ゆっくりと話すガッツとは対比的に、モモンガはしょぼくれるように肩を落とした。
ガッツの口から、その言葉が聞こえるまでは
「――――ベヘリット」
『…!』
「それに《蝕》…聞き覚えがあるだろ?モモンガ…」
ベヘリット
多色の物が存在するとされ、何らかの条件を満たすと取得可能とされるワールドアイテム
その中でも赤いベヘリットは、他者の経験値を強制的に奪い取る《蝕》と呼ばれるイベントを発動させるキーアイテムとされていた。
モモンガも『偶然とは思えない経緯』で赤のベヘリットを取得した経験はあったが、ただの奇形の石と言う印象しか受けなかった。
もしも自分が《蝕》を起こしてしまっていたらと考えると、心が冷える
『…聞き覚えは、勿論』
「じゃあこの噂は知ってるか?…グリフィスの件だ。」
息を呑む
まさかここで、最期が迫るこの時のその話をするつもりか
モモンガの静かな焦りは、ガッツには伝わらない
「…単刀直入に言おう、鷹の団が消滅した日に起こったことだ。」
『ガッツさん…?』
「なに、単純さ…本当に、単純だ。」
今まで頑なに語られなかった真実
誰もが踏み入ってはならぬと、勝手に線を引いていた話題
ガッツは、淡々とそれを口にした。
「アイツは《蝕》を起こした、そして――――」
ガッツが、おもむろに項をモモンガに見る
そこには焼印が浮かび上がっていた。
わずかに血を滲ませる不気味な印が、モモンガには何より不気味に見えた。
『そ、それは?』
「烙印、生け贄の烙印…コイツを刻まれたら最後…いつでもどこでもモンスターに狙われる厄介なブツだ。」
『じゃあ、ガッツさんは…』
「グリフィスの生け贄…《蝕》の生け贄にされたのさ、そしてその唯一の生き残り、それが俺だ。」
無傷とは行かなかったがなと、ガッツが続けた。
「今の俺をユグドラシルに駆り立てるのは一つだけだ。グリフィスへの復讐、それだけだ。」
『が、ガッツさん…!』
「それが最期の瞬間だとしてもだ。俺はそれを諦めない」
ゆらりとガッツが立ち上がる
幽鬼を思わせる佇まいに、モモンガの肝は再び冷え始めた。
「聞かせろ、今グリフィスはどこにいる」
恐れていた問だ。
この流れからなら間違いなくそう言われると思っていたのに、実際にそれを聞くと酷く恐ろしい
怨嗟の混ざった声色が、電子の世界を震わせた。
「なんでもいい、なんでもいいんだ。ヤツのことを…知っている事があれば教えろ」
殺意の眼光
何かに取り憑かれた様な不気味さに、モモンガは首を横に振った。
『し、知りません』
「本当に?」
『本当です!!』
「…分かった。そうか…邪魔したな」
要件は済んだとばかりに、ガッツが席を立つ
そこからの動きは早く、ガッツはあっという間に円卓の間から出ていく為のドアに手をかけた。
だが、モモンガにはそれが我慢ならなかった。
『ガッツさん!』
「…なんだ?もう時間がねぇんだ。」
――――ヤロウを見つけ出して、ブチ殺すには
「邪魔すんな、邪魔するなら…」
――――叩き潰す
『ガッツさん…そんな…』
「達者でな」
最早言うべきことはない
黒の剣士の背中が、モモンガにそう告げていた。
『…なんだよ』
結局、結局だ。
『独りぼっちで終わりかよ、俺』
モモンガの手の中で『赤い奇形の石』が震えた。
モモンガは嘘をつくようなヤツではない
ガッツはその事を良く理解していた。
鷹の団との友好が深かった頃から、それは充然に感じていた。
もしやとは思っていたが、やはり空振りか
「クソが…!」
終わってしまう、この世界が
それよりも早くヤツを見つけなければならない
なのに何故だ?
何故何処を探してもヤツは居ない?
俺達を踏み台に『神の手』に至ったあの男は、必ずこの世界のどこかにいる筈なのに
もうゲームから離れたかもしれない?
馬鹿馬鹿しい、そんな事は最も有り得ない
ヤツに限って、途中でやめるなんてことは有り得ないのだから
「どこに…どこにいやがる…!?」
ナザリックの周囲の毒の沼を越え、途方もない草原を見渡す
どこかに居るはずヤツが此処にいるかもしれない
何処かで俺を見ているのか?
俺のことをせせら笑っているのか?
俺のことを蔑んでいるのか?
巫山戯るな
「グリフィいいいいぃス!!!!!」
怒声を上げながら草原を走る
邪魔者など居ない、最期の時が近づいているこの瞬間に、邪魔なモノなどこの場には存在しない
「出てきやがれ!クソッタレ!!!」
満天の星空に咆吼し、四方に視線をばらまく
まるで野生の狼か
「まだ終われねぇぞ!俺はお前をブッ殺す事を七年間!!七年間考え続けてんだよ!!」
それだけが糧だった。
それだけが支えだった。
現実の許される時間も全て捧げた。
唯一の親友と信じた裏切り者を見つけ出す為に、全てを捧げたのだ。
「出てこい畜生!チクショウがぁ!!!」
黒き獣が疾走する
終わりが近づく草原で
――――運営からのウィンドウが表示される
《ユグドラシルをお楽しみいただきありがとうございました。間もなくサービス終了です》
「おおおおおおお!!!!!!」
絞り出した怒りが、大地を踏みしめる両脚に込められた。
――――終われない
こんな所で、終われない
許せないヤツがいる、オレ達を裏切ったヤツがいる
まだ終わっていない、『鷹の団』は…まだ終わってない
まだ俺が、残っている
これは戦だ。
俺が残っている限り、ヤツが残っている限り
この戦は終わらない
たかがゲーム?笑わせるな、そんな一言で片付けるな
家族同然だった…仲間だった。
鷹の団は、俺達の家だった。
それを『ゲーム』で片付けることは、俺にはできない
俺の、俺の大切な一部分、俺の心の在り処を…『ゲーム』で終わらせたくない
一矢報いたい、仇を討ちたい
――――ただ、それだけ
「畜生畜生畜生!クソッタレがぁあああああ!!!!!!!」
《それでは皆様、ありがとうございました。》
意識が、途切れた。
《俺は俺の国を手に入れる》
《だからもう、お前の相手をしている時間は無くなったよ》
《俺が俺を裏切らない様に、夢は俺を裏切らない》
この世界には人の運命をつかさどる何らかの超越的な「律」
神の手が存在するのだろうか
少なくとも 人は
自分の意思さえ 自由には出来ない
(`Д´)ワージッ! パーパパパパパッパパッパパー
ベルセルクのキャラもちょこちょこ出していきたいと思ってます