IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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ども、お久しぶりです。

今回で高校生編最終話であり、序章の最終話です。


今回の話は
・重い
・長い
・読みづらい
の三拍子そろったものです。

それでも良いという心の優しい方はこのままどうぞ。





では本編です。



高校生編~旅立ち(後編)~

ドイツ フランクフルト

 

 

  『遂に来たぞー!』

 

もはや雄たけびにも等しい声を上げる少女を、

 

  「しゃーしいわ、周りを見ろ。んで、落ち着け。」

 

チョップしつつ一先ず予約していたホテルへのチェックインを済ませるのだった。

 

  「すいません。予約をしていた四十川なんですけど、チェックインをお願いします。」

 

  『かしこまりました。ただ今確認を取りますので少々お待ちください。………お待たせしました。四十川 渉様と黒岩 凜様ですね。この度当ホテルをご利用いただきありがとうございます。ドイツ語は、話せる方ですね。こちらが、部屋の鍵です、失くさないようお願いします。当ホテルの詳細はこちらのパンフレットに全て書かれていますので、ご覧になってください。それでは良い旅行を。』

 

  「ありがとうございます。」

 

部屋の鍵を手に入れた青年は少女を連れて、部屋に行くのだった。

 

  『そういえば、先輩の荷物は?』

 

  「もう来る。」

 

  『?』

 

コンコン

 

 

  「どうぞ。」

 

青年が呼び入れると、スタッフが入ってきて、青年との会話をして、

 

  『失礼します。四十川様、配送されていた荷物が先ほど到着しました。このまま部屋にお持ちしてもよろしいですか?』

 

  「ええ。お願いします。」

 

  『かしこまりました。あと、こちらに連絡があったのですが、車両の運送が完了したとの事です。こちらがその詳細と、引き換えの書類です。』

 

  「ありがとうございます。後は現地ですればいいですかね。」

 

  『そうですね。どうか楽しんできてください。』

 

  「ありがとね。あと、これチップ。」

 

  『これはどうも。』

 

用件が済んだスタッフは、失礼しますと言いながら去っていった。

 

  『準備良過ぎでしょ先輩。』

 

  「オメーが悪過ぎるだけ。」

 

  『ひどい。』

 

ベッドに倒れこみながら言う少女見つつ、青年はプランの説明をするのだった。要約すると、

 

初日 

コブレンツで博物館を見つつ、現地で昼食。

その後、ニュルブルクリンクへ移動し、サーキット走行。

フランクフルト付近へ戻り、夕食をどこかで取り、ホテルへ帰還する。

 

二日目

朝食をホテルで取り、昼食時に到着できるよう調整しつつリューデスハイムへ移動し、現地のリューデスハイマーカフェを飲む。

ドレスデンあたりを経由しつつぶらぶらと観光。その後、ホテルへ帰還。

 

三日目

朝食をとった後、フランクフルト付近でお土産を物色する。

昼前にチェックアウトをして、空港に移動し、日本へ帰還する。

 

四日目

早朝、日本の空港に到着し、入国処理後、凜を家まで送り届け終了。

 

というものだった。

 

 

少女もプランに不満が無かったのでそのまま実行することになり、予定通りコブレンツへ移動を開始した。

 

  『先輩、何で電車で移動なんですか? さっき車両がどうのって話してたじゃないですか。』

 

  「あれは、別案件。この後のニュルで使う。」

 

  『そうですか。』

 

という他愛の無い会話をしつつ、目的地へ移動していく2人。そして、

 

 

  『こ、これが、コブレンツ軍事技術博物館。』  ぷるぷるぷるぷるぷるぷる

 

最初の目的地であり、少女の目的であった【コブレンツ軍事技術博物館】へ到着した。

 

 

 

念願の目的地に着いた少女は、ひどく興奮していた。少女の様子を形容するのは些か億劫なので割愛させていただくが、一言でたとえるなら【蕩けて】いた。

 

  「君のそんな顔始めてみたよ。よっぽど来たかったんだね。」

 

  『先輩! 立ち止まってないで早く行きましょう! 時間は有限ですよ!』

 

  「へいへい。ま、たまにはいいか。」

 

青年は建物内に勢い良く入っていった少女を追いかけるのだった。

 

 

 

  『ふぁー。』  キラキラキラキラ

 

  「(めっさキラキラしとる…)」

 

 

 

2人(特に少女)は建物内をくまなく見学し、少女に至ってはデジカメで写真を撮っていたのだが、あまりにも連射のし過ぎで係員に注意を食らっていた。楽しみ方は人それぞれということで、個人で好きなエリアに移動し各々自由に過ごしたり、団体行動しつつそれぞれが持つウンチクを披露しあったりしていた。そして、2人が建物を出る頃、青年には結構な疲れが溜まっていたが、それに見合う価値はあったと青年は感じていた。

 

  『先輩!連れて来てくれてありがとうございます! もうこの旅行で思い残すことは無いです!』

 

  「まだ、終わってねーよ。今生の別れみたいな台詞を言うんじゃあねーですよ。」

 

2人は昼までたっぷりと博物館を見学し、最寄のフードコートに限りなく近い何かに寄り、簡易的に昼食を済ませてからニュルへと移動を開始した。

 

 

移動中

 

 

  『先輩。ここですか? さっき言ってた【にゅる】って場所は』

 

  「おう。あっとるぞ。ニュルブルクリンクってのはサーキットのことなんだよ。ここで新車の性能を試す。」

 

  『あー、それで。ホテルでの車両どうこうっていうのはこれのことだったんですね。』

 

  「モチコース。ということで準備してくるから持ってて。」

 

  『待ってるの暇なので、ついていきます。』

 

  「さいですか。」

 

 

さて、ここからは青年のターンである。青年は配送された車両を受け取り、動作確認を行った。その後、必要手続きと少女が同乗するため初回説明を聞き、たっぷり2時間後ようやくサーキットに入るのだった。

 

 

  『せんふぁい、ふぁなひにふいでふ。(先輩話しにくいです)』

 

  「慣れろ。」

 

初めてのフルフェイスヘルメットに不満げな少女。それを見つつ、青年は走行を開始するのだった。

 

2週ほど周った後、青年はあまりにも会話が成り立たないので1度ピットに戻り少女のヘルメットをジェット式に変更し、青年はフリップアップ式に変えるのだった。

 

  「さて、全開走行をするとしますか。」

 

  『え? まだ、全力じゃないんですか? 僕からしたらジェットコースターと殆ど変わらないんですけど…』

 

  「冗談でしょ? レクサスのLFAがこんなトロい訳無いじゃん。」

 

絶句する少女が再度質問をかけてくる。

 

  『この車の最高速度どのくらいですか?』

 

  「知らん。スペック上では325km/hって書いてある。」

 

  『あの長いストレートで出すつもりですか?』

 

  「まぁ、そうなるな。じゃあ、逝こうか。」

 

  『先輩、多分ですけど字が違います。』

 

溜息を付きながらも最後まできっちり付き合ってあげた少女だった。ちなみに瞬間最高速度は318km/hを記録したのだった。

 

 

その後、2人はホテルに帰還し泥のように眠ったという。

 

 

2日目

 

ホテルで朝食を食べた後、移動するまでの空き時間に青年はもう使わないLFAを日本へ配送依頼を出し、少女は自分の取った写真を見てニヤニヤしていた。

 

  『さー、先輩。今日は何処に行くんでしたっけ?』

 

  「リューデスハイムに行ってから、後はノープラン。」

 

  『雑ですね。』

 

  「喧しい。予定なんかこの程度でいいんだよ。後でいくらでも修正できるように余裕を持たせてるんだから。」

 

 

昨日と同じく電車で移動をしていたのだが、何故か、話し合っているのか口論しているのかよく判らない状態に陥りつつも、2人は無事リューデスハイムに到着し近場の喫茶店で昼食にするのだった。

 

 

  『あら、リューデスハイマーカフェを注文したのは貴方?』

 

  「あ、私です。」

 

  『じゃあ、準備してくるから少し待っててね。』

 

暫くすると、店員が小瓶と、コーヒーセットを持って現れすぐに作り始めた。

 

  『へー、卒業旅行に海外かー。中々勇気あるわね。普通は国内じゃないの?』 カランカラン カキュッ とぽとぽとぽとぽ

 

  「まぁ、色々あったんです。でも、来てみて正解だったとは思ってますよ。今はね。」

 

  「先輩? 色々って何ですか?」

 

  『あらあら、仲が良くて羨ましいわ。』 ポンッ カチャカチャ

 

  『あ! 火がついてる。消さないと。』

 

  『あらあら、』

 

  「消さんでいいって、こういう作り方なんだから。」

 

  『そうなんですか?』

 

  『「そうなの。」よ。』  カチャカチャ

 

  『さてこの位かしらね……… はい、完成。リューデスハイマーカフェよ。』

 

  「どうも。」

 

渡されたブツを受け取り、丁度少女が頼んでいた食べ物等も運ばれてきたので、2人は

 

  「じゃあ、『いただきます。』」

 

昼食を開始し、程よく満足した2人は周りを観光しつつフランクフルトへ戻るのだった。

 

 

 

3日目

 

今日は実質最終日である。今日の昼には飛行機で飛び立たないといけないので数時間の間にお土産を物色する必要があった。のだが………

 

 

  「オイ! そんなでかい物が持って帰れる訳無いだろうが! 自分のトランクの空きスペースを考えろ!」

 

  『いざとなれば別ルートで送ってもらうもん!』

 

  「手配する時間なんぞあるわけ無いだろうが!」

 

  『なら、先輩のトランクに入れさせてよ!』

 

  「できるかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

前途多難だった。

 

 

最終的には、配送手配も完了し出発時間には間に合わせる事に成功していた。しかし、空港では青年が少女と2人の荷物を載せたカートでガンダッシュする姿が目撃されていた模様。

 

 

飛行機内

 

  『さらばドイツ! 僕がお金を貯めたらまた来るよ。』

 

  「…………。」

 

  『おぉー、もうあんなに小さくなってる。』

 

  「…………。」

 

あまりに無言な青年に対し少女は忘れていた言葉を掛けた。

 

  『先輩。お疲れ様でした。』

 

  「お前、ふざけるなよ。途中で脚挫くわ、荷物の重量制限は超過してるわ、切符失くすわ、時間の余裕が無いんだから頼むからもう少ししっかりしてくれ。頼むから。いやまじで。」

 

  『最後に小言とかないですよ。終わりよければ全てよしって言うじゃないですか。』

 

  「その最後に、空港の端から端まで荷物を複数抱えてガンダッシュさせられたんですけどねぇ。」

 

  『…すいません。』

 

  「…まぁ、いいや。後は帰るだけだから各々自由に過ごそう。」

 

  『そうですね。』

 

 

一先ず、青年は咽につっかえていたものを吐き出し、走り回った疲れから青年は眠りに付き、少女は眠くなかったのか、暇つぶしとして持ってきていた小説と、ドイツで買ったペンを2つ出し、青年と自身の胸ポケットにつけるのだった。

 

  『旅行連れてきてくれてありがとうございます。』

 

恐らく聞こえていないであろう青年に語りかけ、恥ずかしくなったのか、CAに水を貰い、それを飲んでから、小説を読み始めるのだった。

 

数時間後、眠りから覚めた青年はお手洗いに行くため一度席を立とうとした。が、

 

  『お客様、どちらに行かれるんですか?』

 

CAに呼び止められてしまった。

 

  「え、お手洗いに行きたいんですけど…」

 

  『そちらの通路はビジネスクラスへ通じています。お客様では入ることが出来ませんので、そこから先には進まないで下さい。お手洗いでしたらこちらへ。』

 

近くにお手洗いがあるにも関わらず、何故か別の場所へ案内され、青年は少し疑問を持ちつつも早く済ませたかったため、指示に従い指定された場所で用を足すことにした。

 

用を足し元の席に戻ろうとする時に座席を見渡し、青年は先程よりも大きい違和感を感じた。

 

  「(何で、殆どが男性なんだ?)」

 

青年が感じたとおり、エコノミー席にはCAと少女を除いて両手で数えられる程度の数しか女性が居なかった。確かに、今の御時世ではビジネスクラス、ましてやファーストクラスを座ることができるのは女性か、一部の裕福な男性のみだった。しかし、それを差し引いても、ここまでの偏り方は見たことがなかった。

 

  「(何だ? この違和感は。考えたくないけど嫌な予感がする。)」

 

そう思い、青年は何が起こっても対応できるように例の眼鏡と、音楽機器を鞄から取り出したのだった。

 

 

そして、元の席に戻ると少女がほんのりと顔を赤くして寝ていた。笑顔でよだれを垂らしながら。青年は溜息を付きつつも額に手を当て、体温を確認してみた。すると少し温かく感じる程度だったため、CAに水を貰い少女にバファ○ンを飲ませた。そして、青年はもう一度眠りについた。

 

その数時間後、青年は起こされた。少女にではなく、周りの咳で目が覚めた。

 

  「五月蝿いな。」

 

  『そうですね。先輩。』

 

そう言い、青年が少女の方へ振り向いたその時、

 

  「…………。」

 

言葉を失った。

 

  『どうしたんですか? 先輩?』

 

 

青年の顔を触ろうとしたのか、少女がふと手を出すと…

 

  『え? 何ですか? コレ。』

 

 

 

 

 

 

 

少女の顔が、青年がバ○ァリンを飲ませる前より遥かに赤くなっていて、

 

 

 

 

  「ヤバイ…」

 

 

 

 

 

 

少女の手首と首に赤黒い模様が浮き出ていたのだった。

 

この時、フライト開始から既に8時間以上経過していた。

 

 

 

 

 

 

周りも異変に気付き始めたのか、CAの呼び出しを繰り返し行なっていた。しかし、青年が気付いてからCAが1度たりとも来ることはなかった。

 

  「オーグメントモード起動。及びサーチ開始。 リグ、聞こえるか。緊急だ。ラーイング578の乗員全てとそれに関する情報を集めろ。どんなことでもいい、全て集めろ。」

 

  “認証しました。サーチ開始。”

 

  『承知しました。』

 

青年は、眼鏡と音楽機器を起動し、状況の把握を始めた。すると、驚きの事実が判明した。

 

 

  “サーチ完了しました。報告します。マスター付近の大多数が何かに感染しています。恐らく、ウイルスかと思われますが、前例が無いため断言できません。”

 

  『収集完了しました。報告します。ラーイング578における客室乗務員全員及びビジネス以上を女性利権団体が借りきっています。そして、ファーストクラスに女性利権団体の横井沙也が搭乗しています。』

 

 

青年は驚く、しかし驚いているだけでは何も進展しない。状況を打開しようと動き始める。

 

  「凛。落ち着いて聞け。今ここでは、ウイルスによるバイオハザードテロが発生している。」

 

  『嘘…、やだやだやだy「落ち着け。騒いでも何も変わらない。今私達がすることは何をするのが最善か考えることだ。」』

 

衝撃の事実を聞かされた少女は、目に大粒の涙を浮かべ声を上げようとするも青年が周りに混乱を広げないようにするため、少女の口を手で覆った。

 

  「凛、私の言っていることがわかるな。」

 

  『』フルフル

 

少女は口を青年に抑えられているため、顔を横に振った。

 

  「じゃあ、深呼吸しよう。手は放さないから、鼻でしてくれ。」

 

  『』 ふー、ふー、ふー

 

青年の指示に従い、深呼吸を始めた少女。ようやく落ち着き始めたのか、涙が止まり始めていた。そして、青年は少女の口から手を離した。

 

  「よーし、いい子だ。」

 

  『先輩はどうしてそんなに落ち着いていられるんですか?』

 

  「命に関わる修羅場を乗り切ったことがあるからね。慣れた。」

 

  『先輩、やっぱりおかしいです。』

 

  「いつものことだ。気にするな。」

 

青年はいつも通りの態度で少女と会話していた。しかし、集まってくる情報は、

 

  “対象の感染率70%、この症状に該当するウイルスは発見できませんでした。新種のウイルス、もしくはナノマシンによるものと思われます。”

 

  『恐らくですが、感染経路は空気ではなく経口、もしくは粘膜接触によるものだと思われます。そして、原因が特定できていないため、このままだと感染者の死亡率は100%です。』

 

青年を絶望に叩き落とすには十分過ぎるものだった。

 

 

それでも青年は必死に模索した。何か打開策はないかと。しかし、時間のみが無情に過ぎていき青年に取れた行動は、少女が落ち着いていられる様にずっと手を握り続けることだった。

 

  『先輩。』

 

  「どうした?」

 

熱が下がらず、意識も朦朧としてきたのか少女の眼の焦点が合わなくなってきていた。

 

  『喉が、渇きました。』

 

  「わかった。何がいい? CAがいないからな何でも飲めるぞ。」

 

  『じゃあ、アク○リ。』

 

  「わかった。今すぐ取ってくる。ちょっと待ってろ。」

 

青年が席を立ち、飲み物を取りに行ったのを見た少女はぎこちない動きで、自分の胸元に入れたペンを取り出し、不自然に付いている側面のボタンを押して…………

 

 

 

 

 

 

 

青年がア○エリを求めて、CAの待機場所に潜入するとそこには、

 

  「なんだよ、これ。」

 

  『た すけ て く だ さい。』

 

少女より更に酷い状態のCAいや、元CAがいた。皮膚は赤黒いなんて言葉が生温いほど黒くなっており、模様も異様に広がっていて、なにより

 

 

 

CAには下半身が無かった。

 

 

  「おい、生きてるか?」

 

  『な んで、な んで、よこ いさま、た すけ て く れな い ので す か』

 

CAはうわ言の様に横井様、横井様といっていた。

 

  「(リグ、横井って奴は何者だ?)」

 

  『女性利権団体の長です。ドイツに来ていた理由は不明です。今回のテロは、運悪くたまたま発生したテロにエコノミークラスのみ巻き込まれたと見るか、女性利権団体の計画的無差別テロととるか。』

 

  「(考えたくは無いが、今回は後者だろうな。利権団ってここまでするのか。)」

 

  『仮に利権団が犯人だと仮定しても、ここまで大きく動いたことは無いです。』

 

会話をしつつ、目的のアク○リを見つけ出し帰ろうとする青年がふと気づく、何故下半身が無いのに血が出ていないのか、と。

 

  「サーチ開始。」

 

  “サーチ開始。……………完了しました。報告します。対象の付近に落ちている大量の破片が対象の体組織であることが判明しました。”

 

それを聞いた青年はひとつの仮説を立てた。それは、

 

 

今回のテロに用いられたものは、そのものが細胞を破壊するものではなく、細胞を自壊させるよう働きかけるようなものではないのか。つまり、意図的にアポトーシスを発生させる。というものだった。

 

 

正直、信憑性も、確実性も全く無い完全に予測の粋を出ないものだった。しかし、

 

  「(リグ、アポトーシスを阻害させるワクチンの作成は可能か?)」

 

  『材料さえあれば可能です。』

 

  「(雫を使って、急いで作成しろ。空港に到着後、キューブでそっちに移動する。)」

 

  『承知しました。しかし、先ほどの人物を見る限り彼女に残された時間は、後2時間程度です。』

 

  「(ここから、空港までどれくらいだ。)」

 

  『順当に行けば、1時間程度かと。』

 

  「わかった。」

 

 

青年はその可能性に縋り付いた。それほどまでに追い詰められていたのだった。正しいのかどうかも判らない仮説が、ほんの少しだが青年には希望の光に見えたのだ。

 

 

 

 

青年は元の席に戻ると、少女の具合が悪化したようで、もうまともに会話をすることが難しくなっていた。青年が少女にア○エリを飲ませていると、ふと妙な浮遊感を感じた。いやな予感がし、青年が窓から外を見てみると、顔が再び絶望に染まった。

 

 

  「下がってる………。」

 

  『せん ぱ い?』

 

  「まさかあいつら、海に不時着する気か? だとしたらまずい。非常にまずい。」

 

青年の言っていたとおり、飛行機は空港の遥か手前で速度と高度を落としていて、このままだと日本海へ不時着するのは誰の目にも明らかだった。青年はこの先が予想できてしまい、落胆し席に戻るのだった。

 

  『ふ じ ちゃく な ら きゅう じょ が くる ので は?』

 

  「あぁ、来るさ。感染してない生存者の救助にな。」

 

  『………。』

 

  「その証拠に、不時着なんて予定外のことが起こっているにも関わらず、アナウンス1つ来ないんだ。ごめんな、私と関わったせいでこんなことに巻き込まれて、」

 

 

 

青年が絶望に駆られて、思考を停止しようとした矢先、

 

  『せ んぱ い あ きら め ないで く ださい。きゅう じょ は き ます。ぼく の かん は あ たるん で す よ。え へへ』

 

 

少女が突如青年を励まし始めた。内容は少し考えればありえないと思える内容だった。しかし、青年はその言葉を聴き、

 

  「何で、そんな言葉が言えるんだ? 私より遥かに君のが辛いはずだ。なのに、」

 

疑問をぶつけた。すると、少女の手が伸びてきて、青年の顔を撫でる。

 

  『ぼく は せん ぱい に た く さん た すけ ら れた ん です。にち じょう で、 か ん がえ かた で、 ひと と の かか わりかた で。 そ んな ひと を た す ける のに りゆう な ん て ひつ よう で す か?』

 

その言葉を聞いた瞬間青年の目が見開かれ、少女の手を握ろうとした。

 

そのとき、少女の指先から手が崩れ始めた。末期症状である。

 

青年は、少女の頭を撫でながら一言つぶやいた。

 

  「ありがとう。」

 

  『え へ へ、ど うい た しま し て。』

 

 

青年は立ち上がった、この少女をなんとしても生かすために。

青年は考えた、これ以上ないほどに。

しかし、出てくるのは不可能という予想のみ。

しかし、それでも思考は止めなかった。

 

青年は救いこそしてきたことはあっても、救われることは今回が初めてだった。

 

そして青年はやっと気づき、理解した、自身が少女のことを愛しているということに。

自身にとって掛け替えのない存在になっていることに。

 

 

  「だめだ、正攻法では時間が全く足らない。移動中に転送は出来ないし、可能性があるのは海水でのキューブの起動のみだな。」

 

もはや策といって良いのかどうかわからないようなものだが、現状で少女を助けることが出来るのはコレしかなかった。

 

キューブとは 以前、雫を救出する際に使用したものであり、展開した場所から自室まで転送することが出来る道具だが、使用条件が少々厳しく、条件とは

 

条件

使用条件 水を掛ける事。

起動条件 起動後対象のそばで指を鳴らす。

 

 

デメリット

慣性は消えない。

本来地上專用道具のため、地上以外で使用するとどうなるかわからない。(青年が空中で使用した際、転送の衝撃で左腕が千切れそうになった。)

海水で起動するかどうかわからない。

起動してから、転送するまでにラグがある。

転送終了するまで動かせない。

 

というものだった。

 

 

しかし、成功させなければ少女は助からない。青年はこの作戦に全ての希望を乗せた。

 

しばらくして、飛行機が不時着し前の席から客が脱出していく。しかし、こちらのドアはCAがいないため一切開くことなく、また感染者の多数が砂状化の症状を出していて、自立できないものが殆どだった。

 

青年は自身の荷物と少女を抱きかかえ、脱出を開始した。

 

  「凜。私にまかせとけ。必ず助けて見せる。」

 

  『ふふ お ね が い  し ます ね。』

 

救助隊が来るまでに脱出をしなくてはいけないため、急いで非常ドアを手動で開け外に脱出し飛行機の翼の上で転移の準備を始めた。すると、

 

 

  『五時の方向から急速に接近する物体あり。UPEです。数1。』

 

ISが突如やってきた。

 

それを聞いた青年は焦った。多数の救助に向かないIS一機で来る理由はただ1つ。

 

 

 

後始末だった。

 

 

 

しかし、海水では起動はするものの分裂スピードが非常に遅く、影に隠れているとはいえ、このままでは飛行機とともに沈められてしまうのは明らかだった。

 

青年がどうしようか考えていると、少女が突如話し始めた。

 

  『せん ぱ い、ぼく は せ ん ぱい と であ え て しあわせ だった。 くる し い とき もあ った け ど、 せ ん ぱい と は なし て いる と、そん な きも ち が ふ きとん で むね が わく わく し て た んだ。』

 

  「おいおい、こんな所で終わらせる気はねーですよ。あきらめるなって言ったのは君でしょーに。」

 

  『ふふ、 そう で し た ね。でも こ れ だ けは い わせ て く だ さ い。せ ん ぱ い、 ぼく は あ な たの こ と が

 

 

 

 

 

青年が話を聞くために意識を少女に戻した矢先、

 

 

 

 

 

 

ジュッ

 

 

 

 

 

 

 

光が少女をえぐり、自分が愛した者の最後の言葉を聴くことなく、暴虐の光が飛行機を貫き、希望を奪っていった。

 

 

 

 

ワンテンポ遅れて、海面から着弾音がし、辺りを海水の雨が降り始める。

 

 

 

 

青年は認識できなかった。

 

 

  「あ、」

 

 

理解できなかった。

 

 

  「ああああ、」

 

 

いや、理解したくなかった。

 

 

 

  「あああああああああああ、」

 

 

だが、焼け焦げた金属の臭い、肉の焼ける臭い、ありとあらゆる物が青年に現実を突きつける。

 

 

  「あああああああああああああああああああああああ、」

 

 

 

青年の大事なものに亀裂が入り、それが広がり、無残に、無慈悲に、壊されていく。

 

 

 

  「ああああああああああああああああああああああああああああああ、」

 

 

 

そして、最後の欠片が青年から零れ落ちた。

 

 

 

  「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

青年は叫んだ。心の底から、涙を流しながら、足場にしている翼に頭を打ちつけながら。

血が飛び出るが痛みはない。

自分の相棒が何か言っているが聞こえない。

青年からありとあらゆる感情が飛び出していった。

 

じぶんじしんでもなにをしているのかわからない。とにかくからだがあばれる。

じぶんのせいぎょができない。

 

 

 

頭が痛い。    翼に頭を打ち付けたから?

 

口の中がしょっぱい。    海水を被ったから?

 

涙が止まらない。    目にゴミが入ったから?

 

身体が痛い。     何故?どうして?

 

むねがいたい。    わからない。 

 

シンゾウガガイタイ。    あぁ、そうか

 

ココロガイタイ。    これが、

 

ココロノイタミガ…トマラナイ。    喪失の痛みか。

 

 

 

 

 

 

しばらくして、青年は相棒に1つの指示を出した。

 

  「(リグ、ISの通信回線にハッキングしろ。手段は問わない。)」

 

  『…承知しました。フル稼働で、20秒間プライベートチャンネルに割り込みます。』

 

  「さっさとしろ。」

 

  『準備できました。5秒後に繋ぎます。』

 

  

 

 

Side ………

 

  「何で私がこんなことをしなくちゃいけないのよ。」

 

  『私語は慎しんだほうがいいわよ。日本のイメージアップにも必要な行為だし。それにヒーローと呼ばれるのも悪くは無いと思うけど?』

 

  「それもそうね。それにしても、男がウイルステロなんて馬鹿な真似をするからよ。幸い、中にいた女性は全員救出済み、後は役立たずのごみどもを藻屑にするだけね。」

 

突如ISの無線にノイズが入り始め、聞いたことの無い声が聞こえ始めた。

 

  『ザー…やぁ、始めまして。』

 

そして、会話が始まった。

 

  「あんた誰よ。馴れ馴れしく話しかけないで頂戴。」

 

  『私はラーイング578のエコノミーに乗っていた男性だよ。』

 

  「ハッ、あんたら男どもがテロなんて起こすから借り出されたじゃないの。」

 

  『男…? テロ…? フッ、ハハハハハハハハハハハハハ、コレは傑作だあんた何も知らされずに派遣されたんだな。あんた下っ端だろ。』

 

  「黙って聞いてればふざけた事言ってくれるじゃないの。私は現日本代表の山本 莉子よ。いずれブリュンヒルデにもなる者の名よ覚えておきなさい。」

 

  『そうか、じゃあ私は今回の事件の真実を知る者だ。覚えておくといい。…ザー』

 

  「ちょっと、どういう意味よ。」

 

  『莉子、貴方何言ってるの?』

 

  「え?」

 

  『20秒ほど貴方とのプライベートチャンネルが途切れたの、一体何があったの?』

 

  「…」

 

 

代表は無事飛行機の解体を終了し、世間にはウイルステロから生存者を全員救うことに成功したヒーローとして、名を馳せるのだった。

 

 

Side out

 

 

 

 

その後、青年は展開したキューブで帰還し、自室に閉じこもり、次の日には散歩に行くといい、外出したのだった。帰ってくるときには血塗れになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青年はある場所に向けて移動していた。移動を終えた目の前にある表札には黒岩と書かれていた。そう、青年は彼女の親に全てを伝えに来たのだった。

 

 

 

呼び鈴を押し、いつものように出てくる年配の女性。しかし、女性が気づく。少女がいない事に。

 

話を聞くため、家に入り事の本末を全て話す青年。以前とは違うのは女性の目に怒りが映っていることだった。

 

全て聞いた女性はやり場の無い怒りを青年にぶつける。

 

  『お前も、私から家族を奪うのか! ねぇ、答えてよ。』

 

女性は台所に移動し包丁を手に戻ってくる。

 

  『私はこれから何を生きがいにして生きていけばいいのよ! 答えなさい!』

 

女性が青年の腹部めがけ包丁を突き刺す。しかし、青年は避けるわけでもなく、反撃するわけでなく、それを受け入れた。

 

  『如何して避けなかったの?』

 

  「貴方の怒りは正当な物です。ならば、私はその怒りを全て受け止める義務がある。」

 

青年の言葉を聴き、理性が戻ったのか包丁を抜き青年に言い放つ。

 

  『私は貴方が憎い。私から最後の家族を奪った貴方が憎い。このままこれを突き刺して、貴方を殺してしまいたい。爪先から微塵切りにしてあの子と同じ苦痛を与えて殺してしまいたい。でも、あの子はそんなことを絶対望まない。そんなことしたら、向こうで会ったときに怒られちゃう。』

 

  『私は貴方を一生許しません。でも、貴方の死因は私が決めます。【あの子に会うときに恥ずかしくないような人生を歩んで老衰で死んでください。】それ以外での死は一切許しません。それが私とあの子に対する唯一の贖罪です。判ったらさっさと帰りなさい。このまま貴方を見ていたら殺してしまいそうです。』

 

 

  「解りました。必ず達成して見せます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

青年は帰ってきて服の内ポケットにペンが入っていることに気づいた。黒塗りの高級そうなボールペンだった。キャップを取るとそこに、【Made in Germany】という文字のそばに追加で小さく【Danke schön】と彫られていた。真意に気がついた青年は部屋で号泣したのだった。

 

 

 

 

数日後

 

 

青年の家に黒塗りの車と数人の女性が現れ、青年を拉致して行った。

 

  「あんたら誰?」

 

  『口に気をつけなさい。現代表の前よ。』

 

 

拉致された理由はISの通信回線に割り込みが出来る人物を野放しにしておけない、というのと、そこまでISを理解しているのだったらISが操縦できるかもしれない。とのことだった。

 

 

正直どうでも良かった青年は終始無言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ4月 IS学園

 

  『皆さん始めまして、このクラスの副担任をすることになった山田真耶です。これから1年間よろしくお願いしますね。』

 

緑色の髪をした童顔な教師が挨拶をするも、

 

  『『………………。』』

 

皆無反応だった。約1人を除いて

 

  『お願いします。』

 

 

先ほど返事をした生徒は、早速返事をしたことを後悔した。何故なら、全生徒の視線を受けているからである。

 

  (気まずい、これはさすがにきっつい。)

 

この生徒こそが、世界で唯一の男性操縦者 織斑一夏だった。

 

 

  『そ、それではまず自己紹介をそれぞれお願いします。相川さんからお願いしますね。』

 

呼ばれた生徒が起立し自己紹介をしていく。

 

  『はい! 相川清香です。趣味はスポーツ観戦とジョギングです。部活はハンドボール部に所属する予定です。これからよろしくお願いします。』

 

  『どうも、四十川雫です。趣味は料理です。これからお願いします。』

 

 

といったふうに次々と自己紹介が終わっていき、お、つまり彼の出番なのだが…

 

  『は、はい!』

 

緊張して全く聞いていなかったようだった。

 

 

  『えーと、織斑一夏です。』

 

それだけ?とでも言いたそうな視線が彼を貫く、それに耐えかねた彼が取った行動とは、

 

  『以上です。』

 

 

終わらせることだった。

 

 

 

直後、教室のドアが開き、黒髪ツリ目でスーツ姿の女性が現れた。

 

  『お前はもう少しましな自己紹介をしろ。』

 

  『千冬姉。』 スパァン

 

いつの間にか持っていた出席簿で彼の頭を叩き、

 

  『織斑先生だ。』

 

  『はい…。』

 

 

スーツの女性が教卓へ移動し、自身の自己紹介を始めた。

 

  『諸君、私が織斑千冬だ。遅くなってしまったが入学おめでとう。君たちは努力をし、超倍率のIS学園に入ってきたのだろう。君たちにもそれぞれの目的があると思う。操縦者になり国家代表を目指す者、整備に携わり操縦者を支えることを目指す者。色々な考えを持っていると思う。私たち教師の仕事は、君たちひよっこを一年で使いものになるように育てていくことだ。ここにあるISは競技用にカスタムされているが、兵器としては十二分だ。その危険性、扱い方、知識を教えていく、我々は向上心のあるものは歓迎する、ほんの少しでもわからないことがあればいつでも聞きに来い。逆にやる気の無い奴は置いていく、周りに置いて行かれたくなければ死ぬ気で学べ。なぁに、私は死を覚悟するほどのスパルタだがきちっと最後まで見てやるぞ。逆らっても良いが、その際の命の保障は一切しないぞ。以上だ。』

 

女性が話を終えた後、一泊置いて

 

『キャ~~~~~! 本物の千冬様をこの目で見ることができるなんて!』

 

『私、お姉様に憧れてこの学園に北九州から来ました!!』

 

『千冬様!僭越ですがご指導いただけるとは本望です!』

 

もはや音響兵器と何が違うのか解らないレベルの騒音を聞き、眉間にしわを寄せるスーツの女性。そのあまりの量に

 

「……はぁ。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿者共がたくさん集まるものだ。ある意味感心させられる。それとも何か? どこぞの誰かが私のクラスにだけ馬鹿者だけを集中させるように仕組んでいるのか? ちょっと話し合いが必要かも知れんな。」

 

こっそりと愚痴を漏らす女性。

 

ちなみに彼はヘッドショット(物理)と音響兵器でノックアウトしてたとさ。

 

 

  『さて、もうすぐSHRが終わるわけだが、自己紹介がまだ終わっていない。なので、業務連絡後5分ほど時間を与えるので各々自由に紹介しあうといい。』

 

生徒たちが一斉に首をかしげる、業務連絡とは何があるのだろうか?と

 

  『ちなみに業務連絡は少々そこの馬鹿とは事情が違うが、転入生だ、男性のな。』

 

女性の一言に生徒がフリーズし、彼が復活しかけた頃に

 

  『えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

もう一度ノックアウトされるのだった。

 

1度退出したスーツの女性に連れてきた人物を見て全生徒は絶句した。

 

その人物が、身体をベルトでガチガチに拘束され、項垂れた頭に袋を被され、車椅子に乗ってきたからだ。

 

スーツの女性が頭の袋を取り、自己紹介をするように促す。

 

  「…………。」

 

ゆっくり、とてもゆっくり頭を上げ、その人物は、答える。

 

  「八夜法次。」スパァン!

 

  『本名を言え、次は無いぞ。』

 

  「…はぁ、ども、四十川渉です。ISが動かせないのに、拉致されてここに来ました。以上です。」

 

 

見た目と内容どちらもとんでもないインパクトを残し、青年はIS学園に入学(強制)することとなった。

 




はい、最後まで読んでいただいてありがとうございます。

2人目です。


そして、青年がIS学園に入学しました。


やっとの思いで原作合流です。長かった。



コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。

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