IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

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どもども、お久しぶりです。


最近本文を作るよりも、
サブタイトルを考えるときが一番時間掛けていることに気が付きました。



そんなことより、本編どぞー。


IS学園編~黙認~

試合開始して数十分、2人(特に青年)は常に剣道と程遠い動きをしながら、互いに打ち合っていた。

青年が打ち、ポニテ娘がそれを捌く。ポニテ娘が打ち、青年がそれを捌く。

それぞれの太刀筋は全く異なるものの、無数に攻守を入れ替えながら竹刀を打ち合う。

 

  「はぁ!」

 

  「……。」

 

  「ズェア!」

 

  「……。」

 

  「ッエエェェェエエイ!」

 

  「……。」

 

時々、奇声も出てきたが…

 

 

 

青年は無言で、相手の剣を余すことなく観察していた。そして、青年はポニテ娘の剣について一つの答えを出す。

 

  「(酷く、酷く純粋だ。)」

 

それは、良くも悪くも純粋だ。と言うものだった。

ただ一人のことを想い、添い遂げる為に自身を鍛え上げる。例え先が見えない道であろうと歩みを止めることをしない。自身の悲願を成し遂げる為に。

 

その先が無いとも知らずに。

 

  「(篠ノ之さんの剣は剣術として殆ど完成の域にある。枠に則っている限りこれ以上の成長は見込めない。もし、それでも成長を望むのであれば、今ある枠を捨てるしかない。)」

 

ポニテ娘は剣道においては才能を持っていた。少なくとも剣道の全国大会で完封勝利できる程度には。ただ一つ足りないとすれば観る眼程度しかないが、その一つが盛大に足を引っ張っている状態だった。

 

  「(あ、来た。)」

 

  「隙有り!」

 

パァン!

 

青年は、見えていたにもかからず竹刀を受け、ポニテ娘の先取を許してしまう。しかし、

 

  「ハァ… ハァ… よし次だ。」

 

  「…そうですね。」

 

本来の剣道ではあり得ない、殆どバーリトゥードのような状態ゆえに疲労が目に見えるようになってきた。

 

  「いくぞ!」

 

  「どうぞ。」

 

休憩を置かず、次の試合に移っていく。

 

なお、この時点で、既に三十分以上経過していた。

 

 

 

 

  「ハッ…ハッ…。」

 

青年の前にはポニテ娘が大の字で地面に寝転がり、下りてこない息を必死に降ろそうとしていた。

 

  「3対1 私の勝ちですね。では、失礼します。」

 

試合は、最初の1本の後、青年が3本連続でとることで決着した。

 

  「ハハッ… 世界はまだまだ広いな…。だが…貴様との試合で何かわかった気がする。感謝するぞ…。」

 

  「………。」

 

  「後片付けは私がしておく。全てそのままにしておいてくれ。」

  

  「篠ノ之さん。」

 

  「…何だ?」

 

  「悪いことは言いません。何を感じ取ったのかはわかりませんが、今日のことは忘れたほうが良い。もし、無理でも感じ取ったそれを生かさないでください。」

 

  「何故だ。これを生かさなければ今日私がした意味が無い!」

 

  「ありますよ。」

 

青年は間髪いれずに、ポニテ娘の言葉を否定していく。まるで聞き分けの無い子供を諭すような穏やかさを持ちながら、残酷な内容を口にした。

 

  「篠ノ之さん。貴方には足りていないものがあります。それを知り、貴方の扱う流派の本質を理解してください。それが出来ないのであれば、貴方はいつか必ず後悔します。」

 

その言葉を聞いたポニテ娘は、ゆっくりと顔を怒りに染めた。それも当然である。真意はどうあれ、出会って数日も経っていない人物に自身が身を粉にして作り上げたものにイチャモンを付けてきたのだから。

 

  「門下生でもない貴様が篠ノ之流を語るか! 一度でも貴様を気にした私が馬鹿だった。やはり、貴様はどうしようもない奴だ!」

 

  「そう思ったのであれば、そう思っていただいて結構です。ですが、忘れないでください。必ずしも手段は一つだけとは限らないんですよ。」

 

  「…今すぐに私の目の前から消えろ。 不愉快だ。」

 

  「……失礼します。」

 

その言葉を最後に、青年は武道場を後にした。

 

 

 

青年は、武道場を出て暫らくすると突如歩みを止めた。

 

  「そこで見ている人、出てきて下さい。」

 

向きを身体の向きを変えることなく、無造作に言い放った。暫らくすると、何とも言えない顔をした生徒会長が建物の陰から現れた。

 

  「何時から気付いていたの?」

 

  「あ、本当に出て来た。」

 

  「……嵌めたわね。」

 

青年から予想外の言葉を聞いて、出てきた時以上に苦虫を噛み潰したような表情になる生徒会長。

監視することで相手の裏をかくつもりが、たった一言で形勢を返されたのだ。とはいえ、青年も完全に気がついていた訳では無い。もし本当に見られていることを知っているなら、その場所まで行けばいいのだから。

青年には以前の事件以来、常にAIに学園のカメラをこっそりハックさせている。その気になれば相手の居場所を見つけることぐらいであればわけないのだ。

それを踏まえると、生徒会長の技術は素晴らしいと言っても過言では無い。何せ周りから一切の関心を持たせないように隠密している事を隠していたからである。カメラの目に写っていたにも関わらず接近を許してしまう。それがAIであっても……

 

だからこそ、青年は疑った。だからこそカマをかけてみた。正直に出てくるのは予想外ではあったが、青年としても確証は一切なかった。

 

ただ、「引っ掛かればいいな〜。」程度にしか思っていなかったのだ。それが、良くも悪くも今回の結果に繋がった。

 

  「嵌めたなんて言い掛かりですよ。ただ、気になっただけです。」

 

  「ふーん。じゃあ、そういうことにしておいてあげるわ。」

 

  「そうですか。で、要件は何です?」

 

  「……本当に性格悪いわね。」

 

  「勘ですよ。」

 

  「本当は?」

 

  「貴方みたいな人が理由も無くただ着いてくるわけないじゃないですか。あ……。」

 

青年もうっかり口を滑らせ、何とも言えない空気が漂いはじめる。

 

  「不毛な争いは止めません?」

  

  「そうね。」

 

お互いに痛み分けという形で落ち着きを取り戻したものの、本題がまだ残っていた為質問を再開するのだった。

 

  「結局要件は何です?」

 

  「あぁ、それね。単純よ。君はあの子に対して何を感じたの?」

 

  「……言わないと駄目ですか?」

 

  「ええ。お姉さん気になるもの。」

 

青年はとても言いにくそうで非常に困った表情をしていたものの、最終的には諦めて話すことにしたのだった。

 

  「このままではちょっと危ないかな? 程度ですかね。それ以上はありませんよ。」

 

  「それで、あの言葉が出てきたのね。」

 

青年の回答に、納得するように頷き始めた。

 

 

 

そもそも、篠ノ之流の基本理念は女性でも扱える自己防衛用の武術であり、特にその根幹は合気と酷似している部分が多い。

力のない女性でも扱える。最小の力を以て最強の力を退ける。

 

その為守式の型が非常に多くなっており、青年はそれを実際に体験している。どの方向からでも、どのような攻撃でも、確実に相手を退けることが出来る様になっている。

事実、青年はポニテ娘に対しカウンターでしか有効打を与えられていない。

 

これは、正しく技術を継承し、技をものにしているという事にほかならなかった。では、青年は何に対して危ないと感じていたのか。

 

それは、ポニテ娘が既に完成に近い状態の篠ノ之流を攻撃用に用いようとしていることだった。

 

合気は絶対に攻者にならない。それは、合気を根幹にしている篠ノ之流も例外ではない。

 

自己を防衛する為の武術で相手を倒してしまえば、確かに防衛は成り立つ。攻撃は最大の防御という言葉もあるくらいだ。しかし、それを一度でも使ってしまえば、それと同時に合気ではなくなる。つまり、篠ノ之流が破綻することを意味している。

 

もし、ポニテ娘が自身の武術が完成したものであることを知り、独学で相手を倒す方法を編み出すのであれば何も問題は無い。しかし、今のポニテ娘はその事に気が付いていないばかりか、彼に追い付くため躍起になっており、周りが全く見えていない状態なのだ。

 

この状態のまま、もし本当に篠ノ之流を攻式に変えてしまえば、力の本質を理解する前に必ず間違いを起こしてしまう。

 

純粋な太刀筋を見た青年としては、そんな下らないことで転げ落ちる姿を見たいはずが無かった。それ故に、声を掛けた。ポニテ娘が少しでも意味を考えてくれる様に祈りながら。

しかし、それも恐らく徒労に終わってしまうであろう。

 

今この場にいるのは生徒会長のみだが、恐らく博士も見ているだろう。二人がどのような感情を持つのかは青年にもわからない。

 

今の青年に出来る事は何も残されていなかった。

 

 

 

  「それにしても、貴方って随分優しいのね。」

 

  「そうですかね?」

 

  「皆貴方を一斉に悪人視しているけど、芯は全くぶれていないし、この状況下でも他人を心配している。これを優しいと言わなかったら、なんと言えばいいのかしら。」

 

  「ただの甘ちゃんか気分屋でしょう。篠ノ之さんに付き合ったのも気まぐれ、生徒会長と会話したのも気まぐれ。いや……ひょっとしたら、もっととんでもない事を腹に抱えているかも知れませんよ?」

 

  「あら、その時は私の専用機の全力を以て貴方を止めるわ。」

 

  「出来ますかね? 貴方に。」

 

  「試してみる? 私は何時でもいいわよ。」

 

  「…いや、止めておきましょう。どうせ、この先何処かで戦うことになります。」

 

  「奇遇ね。私もそう思うわ。」

 

言う事を言い切った青年は身体の向きを変え、移動を再開し始めた。

 

  「では、更識生徒会長、私はこれで失礼します。」

 

  「じゃあね。」

 

青年と生徒会長は、それぞれ全く別の方向へ歩き出し、同時期に二人の携帯が何かを受信した。

 

お互いにそれを見て、次にすべき行動を考えるのだった。

 

 

 

 

夜。

 

青年は、いつも通り今日の復習と予習を終え寝巻き姿で、小説を読んでいた。入浴も既に終え、後は寝るだけの状態なので、青年はそのときをじっと待った。

 

ルームメイトとの他愛の無い会話をしつつ、消灯時間になった。寮では消灯時間以降での外出は原則禁止であり、破ったものは寮長である担任にこっ酷く絞られてしまう。

 

  「では、おやすみなさい。」

 

  「おやすみなさい。」

 

二人も消灯時間になると、大人しくベッドに入り暫くするとそこには静寂が訪れ、時折出てくる妙な寝言以外は、無音となった。

 

 

 

深夜

 

  「………。」

 

皆が既に寝静まり、日付をまたいで暫くしたあと、青年は静かにゆっくりと目を覚ました。

 

  「(いけるな?)」

 

  “準備は整っています。いつでもどうぞ。”

 

青年は、AIからの返答を聞くと、音を立てないようにゆっくり周りを見渡し、ルームメイトが寝ていることを見た後、ゆっくり部屋を後にした。

 

  「(ルート表示。)」

 

  “了解。表示します。”

 

青年の眼には、幾重にも回り道をした複雑な経路が表示されていた。それを見るなり、足音を立てないよう静かに、だが速く移動を開始した。

 

 

 

青年が部屋を退出した後、部屋に再び静寂が訪れた。しかしその直後、それをまるで知っていたのかのようにルームメイトが目を覚ました。そして、流れるような手つきで、電話を取り

 

  「乙、部屋からの脱出を確認。追跡を進言致します。」

 

自身の仕事を実行した。

 

 

 

 

  “マスター、緊急です。”

 

  「(何?)」

 

  “移動がばれました。 監視カメラロジック変更に伴い、ルートを修正します。”

 

  「(布仏先輩、やっぱり起きていたな。)」

 

青年はもたらされた情報を聞き、怒るわけでもなく、落胆するわけでもなく、ただただ事実を認識し行動を再開した。

 

 

数十分後

 

青年は、本来掛かるであろう時間の数倍掛けて目的地である寮の屋上へ一応たどり着いた。そこは、そこは横を見渡せば真っ黒になった海を見渡すことが出来、上を見上げれば余り多くない星を見ることも出来た。青年は、落下防止フェンスから距離を取り、そのときを静かに待った。

 

  「(何とか間に合ったか。帰宅経路も一応準備して置け。)」

 

  “了解。”

 

暫くすると、青年の持つガラケーが反応し、その直後、何も無い空間から

 

  「やっほー、久しぶりだね。」

 

  「そうですね、博士。」

 

前回同様、機械でできた兎耳を装着した博士が現れた。

 

 

 

 

 

  「何時から居ました?」

 

  「ついさっきだよ。この学園程度のセキュリティなんて束さんにはないも同然さ。」

 

  「そうですか。さて、時間もありません、さっさと終えてしまいましょう。」

 

  「そうだね。でもっ!」

 

  「でも゛っ!?」

 

博士は青年にタックルし、

 

  「あぁ~、久しぶりの君の香りだ。やっぱり君の香りは安心できるね~。できるならずっとこうしていたいよ~。」

 

その身体に自身の顔と身体を押し付け、ぐりぐりとしてきた。そのときまでの苦労の報酬と言わんばかりに、次まで絶対忘れることが出来ないように…

 

  「それは別に構いませんが、何の脈絡もなしに突然飛び込んでくるのはやめてもらって良いですか? 痛いわけではないですけど、驚きます。」

 

  「ふふっ、ごめんね。君を見ると束さんは我慢できなくなっちゃうんだ。許してね。」

 

全く反省してなさそうな、笑顔での謝罪を受け、青年も呆れながら受け流していく。

 

  「そのままで良いですから、物資だけでも受け取って良いですか?」

 

  「もう少し…。」

 

数分後

 

  「束さん復活!」

 

満面の笑みで何故かドヤ顔をきめ、

 

  「てゐ!」

 

  「あいたぁ!」

 

青年からチョップを貰っていた。

 

 

 

  「さてさて、君に頼まれていたものだね。ちょっと待ってなよ。」

 

シューと頭から煙とたんこぶを生成しながら、何も無い空間から物を取り出す博士。何も知らないものからすればマジックのように見えるが、

 

  「(リグ、見えるか。)」

 

  “ええ、見えます。人参が。”

 

青年には目視できないものの、AIはその存在を確認していた。ただそれでも、はっきりと見えるわけではなく薄ぼんやりとしたものなってはいるが。

 

恐らく、後ろに携えているであろう人参?は、博士が開発した移動用のISなのかもしれない。所詮憶測でしかないが、青年にはほぼ確信を持っていた。

何故か? 博士が普通に現れるはずがないからである。

 

暫く待っていると、博士が両手に新品の外套と手袋を持って立っていた。

 

  「それが、完成品ですか?」

 

  「現状ではね。まだまだ改善の余地はあるよ。」

 

  「では、またそのときに改修をお願いしますね。」

 

  「まかせんしゃい!」

 

  「ところで、何がどう変わったんです?」

 

  「ふっふっふ。聞いて驚け、まず防弾機能の付与。刺突及び斬撃耐性の大幅向上、前回との比較では凡そ45%程度の上昇。君の要望だったレーザー耐性は回数制限があるものの、ダメージカット率は95%越え。爆風等における、熱耐性も前回に比べ40%程上昇しているよ。」

 

  「ふむ、レーザー耐性における回数制限とは?」

  

  「君の外套には対レーザー用の特殊加工を施しているんだけど、それは消耗品なんだ。攻撃を食らえば食らうほど耐性が落ちていく。その結果、完全に防ぎきれるのは、イギリスのポンコツライフルの最大出力で計測した結果良くて4回、当たり所が悪いと3回になってしまうんだ。束さんとしてももっと出来ると思ったんだけど、外套の使用目的と、君のことを考慮したらどうしてもエネルギーが足りないんだ。」

 

  「では、仮にですけど、リフレインのエネルギーをこの外套に送り込むことを前提としたらどうなります?」

 

  「目に見えて、攻撃を食らっても本体のシールドエネルギー減衰が少ない盾になるよ。だけど、また別の特殊加工を施す必要があるね。」

 

  「うーん、それなら一旦保留ですかね。」

 

  「まぁ、そうだよね。」

 

基本的に青年の機体は一発でも直撃したらアウトなので、ノーダメージで立ち回ることが大前提となっている。なので、外套は保険の役割と機体の秘匿が主な目的となっている。

その機体で、防御に余分なエネルギーを回すくらいなら、機動力と攻撃力に回したほうが良いであろう。という思考を持っている。というより、持たないと勝てないのだ。

端的に言えば【当たらなければ、どうということは無い。】理論ではあるのだが、もしこの機体に他の人物が乗り、この話を聞かせたらまず間違いなく、こう答えるであろう。

 

「出来るわけが無い」と。

 

 

  「さて、次の変更点はなんです?」

 

  「手袋だね、基本的には手袋も外套と似たようなものだよ。違いは、対レーザーよりも、対物理に重点を置いているくらいかな。」

 

  「具体的には。」

 

  「六十口径パイルバンカーで実験すると、ギリ2発耐えたよ。」

 

  「あれ?正式配備されているパイルって、六十九口径じゃあありません?」

 

  「…ごめん。」

 

  「あ、はい。」

 

  「さーそんなことより、此処からが本番だよ。」

 

  「そういうことにしますか。」

 

  「しくしく、束さんを苛めて楽しいのか~」

 

博士は腕で自身の目を覆い、泣きまねのような行動を取るも

 

  「程よく。」

 

青年には効果はなかった。

 

  「まぁ、君がそういう人物だって事は嫌と言うほど知っているからね。さて、これが例の鞄だよ。」

 

ケロッと立ち直り、説明の続きに入る博士。その手には、青年が依頼した鞄があった。

 

  「これは、随分と小さめの物が出てきましたね。」

 

青年の言葉通り、その鞄の見た目は革製のアタッシュケースなのだが、如何せん小さかった。具体的にはA3サイズのビジネスバックをさらに一回り小さくしたようなサイズだった。

 

  「この鞄は、ただの鞄だよ。このままだとね。」

 

そういうとその場で鞄を開け、中を見せてくる。仕切り他のより多いくらいでそれほどの違いが見当たらなかった。

 

  「では、普通の鞄ではなくなる鍵は何です?」

  

  「君のポケットに入っているものだよ。」

 

青年は、ポケットの中に入っているものから答えと、運用法を理解した。

 

  「そう来ましたか。まさか外部電源式のISですか?」

 

  「正解。このままだとただの鞄だけど、君の持つ【リフレイン】と束さんの持つ【アリス】この2つの内どちらかのエネルギーが供給されていて尚且つ、君か束さんの生体情報が読み込めたときのみ、この娘は目を覚ます。だけど、君はISを荒事に持ち込みたくないと言った。だから、自力でエネルギーを生成できないように調整したコアをつくり、搭載した。おかげで使用時といえど、コアネットワークに干渉されることも無いし、エネルギー反応も出てこない。万が一奪われてしまっても、相手には一切使用が出来ない。」

 

  「そのコアは、さっきも言ったとおり自身でエネルギーの生成が出来ない。その代わり、エネルギーの保持能力、消費量、ステルス機能、自己修復に特化しているんだ。だから、エネルギーが切れるまでと言う制限付きではあるけど、この鞄を破壊できる兵器は存在しない。どうかな?」

 

博士が説明を終える。その顔には緊張が走っていて、只ですら少ない博士を知っている人物が見たら驚くであろう。そんな中、青年は

 

  「パーフェクトだ、博士。私の意志を汲み取っていただいてありがとうございます。」

 

シンプルに拍手と感謝の言葉を口にした。

 

博士は青年からその言葉を聞いた瞬間、

 

  「えっへん。もっとほめても良いんだよ。」

 

満面の笑みを浮かべた。

 

  「ありがとうございます。」

 

青年はその博士の姿を見てとても儚いものを感じ取り、無意識の内に博士の頭を撫でていた。すると、顔がほんのりと赤くなり、俯きだし

 

  「…えへへ。」

 

静かに笑い出した。

 

  「どうしました?」

 

  「自分の努力が正当に評価してもらえることがこんなに嬉しいとは思わなかったよ。あ、もっと頭は撫でて~。」

 

  「苦労していたんですね。」

 

博士は今の今まで、自身の行動にも原因があるとはいえ見当違いの評価しかされていなかった。そんな中、自身が最も信頼する人物のために、初めてコアを再作成した。それも、今までの自分からは考えられないような思いを抱きながら。

 

 

 

暫くすると青年は、受け取った外套と手袋を、起動させていない状態の鞄に突っ込んでいた。

 

  「あれ? 動かさないの?」

 

  「ダミーですよ。だって不審じゃあないですか。常に中身が入っていないアタッシュケースを持ち運んでいたら。」

 

  「それもそうだね。」

 

  「普段を含めて、ガンガン使わせていただきますね。」

 

  「うん。そうしてくれると、束さんも嬉しいよ。」

 

 

  「………。」

 

  「………。」

 

会話を終えると、いきなり二人とも無言になった。そして、博士には不機嫌そうな顔が浮かんでおり、青年は溜息を付きながら、眼鏡に映っている情報を見ていた。

 

  「何人ですか?」

 

  「1人。というか、アイツ知ってる。」

 

隠そうともしない声色を聞き、青年は立ち上がり、隠し持っていた小型ナイフを壁に向けて投げた。

 

  「そこに隠れている人、出てきてください。今なら何もしませんよ。」

 

  「そんなことする必要ないよ。出て来い。ブリュンヒルデ。」

 

博士が断言すると、物陰から、スーツ姿の担任が現れた。

 

  「何時から気が付いていた。」

 

  「ついさっきですね。というより、ほんの数分前に来たばっかりでしょう? 織斑先生。」

 

  「束さんは、途中で空気を読んで帰れば何も手出しをするつもりはなかったのに。本当に力はあるくせに物事を見る力だけは無いようだね。」

 

盛大な暴言と共に、担任の目が据わっていく。

 

  「事実だからな、否定はせんさ。ただ四十川、そのISだけは寄越せ。こちらで管理する。」

 

  「お断りします。」

 

  「個人が複数個のISを持つことが許されているとでも思っているのか?」

 

  「ではどうします? 公表しますか? それも良いでしょう。博士と個人接点を持つ人物を学園が秘匿していた。とでも公表しましょうか。」

  

  「ふざけるのも大概にしろ。」

 

  「ふざけているのは果たしてどちらでしょう。今夜の件について知っている部外者は織斑先生だけです。教師として、情報を取りますか? それとも安全を望みますか? 此処まで言えば後は解りますね。」

 

  「お前には、何も聞かなかったことにしてこのまま此処を去るしか無いんだよ。」

 

そこまで言われ、初めて事の重大性を理解し始める。

 

仮にこのまま報告すれば、篠ノ之博士が唯一再開発したコアを入手することが出来る。今後の為にも、態々このチャンスを逃す必要は無い。しかし、地球上においてコアの数は決まってしまっている。正体不明のコアが学園にあることが洩れてしまうのは時間の問題であり、必ずそれについての弁明をする必要がある。その際学園が博士との接触を図ったという有りもしない疑惑を立てられ、各国から批判されることは目に見えている。それだけではない。学園内における秩序の悪化等も容易に予想できる。

 

対して、このまま黙認し、時間外外出の罰のみ与えれば周りも納得でき、必要以上の混乱を防ぐことが出来る。

 

  「っ……。」

 

担任は、暫し悩みだした答えは。

 

  「今すぐに部屋に戻り、明日までに反省文百枚提出しろ。異論は認めん。」

 

  「了解しました。織斑先生。」

 

  「やっと、考えられる頭を持つ様になったんだね。でも、遅過ぎるよ。」

 

担任は判断を下した後、即その場を後にした。その両手は悔しさゆえか握り締められ、赤い雫を廊下に垂らしていた。

 

 

 

その後、部屋に戻り、ルームメイトには教室に忘れていた鞄を取りに行っていた。ということで一応誤魔化しを掛けたものの。お互いに疑念の目を持つことになってしまうのだった。

 

なお、反省文はきっちり提出した模様。

 




ども、最後まで読んで頂いてありがとうございます。


鞄に使われているコアの名称については今後出していく予定です。

ちょっとした補足

アリス
束さんが、自分の身を守るために作ったIS。
たとえ、超至近距離で核ミサイルが爆発しても無傷で核汚染もない。
酸素の供給も可能なので、無酸素空間でも生存可能。
たとえ怪我をしても超速で回復出来る。
つまり、超防御特化型IS


これからものんびりと更新していきますので、
気長にお待ちください!


コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます
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