気をつけてください。
少年は中学生になり、無難な生活を送るつもりだった。だったのだ。
「何で私が、便利屋紛いのことをせにゃならんのだ!」
「緑色のロボット作れるんだからコレぐらい直せるでしょ!早くしてよ。」
「だからって、ブルスク状態のPC持ってくるんじゃねーですよ。」
「ごちゃごちゃうるさい!男はあたしら女の言うことをただ聞いてればいいのよ!ましてや、あんたみたいな男女みたいな奴でもあたしが有効活用してやってるんだから、逆に感謝してほしいくらいだわ!」
「メンドイ。」プチン
何のためらいもなくPCの電源を切る少年。それを見ていた女生徒は少年の襟首をつかみ、怒りの形相で叫びはじめた。
「あーーーーー!まだ保存してないデータがあるのに!何してくれてんのよあんた!これで、漫研の資料が消えてたら責任取りなさいよ!」
「知らんって。バックアップは重要。教訓になったね。じゃあこれで。」
「ちょっと待ちなさいよ!先生、先生!四十川さんにパソコンを壊されました!なのに、彼謝ってくれないんです!」
「ちょっと、四十川さん。他人のものを壊したら謝罪して、誠意を見せるのが常識でしょ!土下座でも何でも早くしなさい!」
「へーへー、すいませんでした。以後壊されたくないなら、私に持ってこないことをお勧めしますよっと。」
全く悪いと思っていない少年は口だけの謝罪を述べる。そもそも依頼を受けていないので誤る必要が無いのだが、周りはそれを許すことはなかった。
「先生!」
「分かりました、反省の色がないようなのであなたは、1週間自宅謹慎してなさい。学園長には私から報告しておきます。」
想像以上の罰に珍しく驚きの表情を見せる少年。
「おいちょっとまて、1週間って期末テストと被るじゃねーか。」
「それも含めて罰です。自分がしでかしたことについて反省なさい。」
「ザマァwww」
「………」
少年は女尊男卑による被害を被ることが多かった。
少年が中学に上がって半年後ほどに、篠ノ之束が公表したパワードスーツISの登場と、白騎士事件が発生した。内容は
日本に向けて、発射された2341発ものミサイルを白いISが全て迎撃し、各国が送り出した戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を、一人の人命も奪うことなく破壊することによって、ISは【究極の機動兵器】として一夜にして世界中の人々が知るところになった。
というものだった。
一見すばらしい機動兵器には1つだけ重大な欠陥があった。それは、
「(なんで、ISは女性しか動かせないのかねぇ)」
そう、ISは女性にしか動かせない。そして、血の気の多い女性たちが女尊男卑に陥るのはそう遠くない話だった。
その後正式に自宅謹慎を言い渡された少年は、誰もいない家に帰ることになった。
「ただいまー(もう誰もいないのに何してるんだろ…)」
幼少期を支えてくれた親はもういない。自分に関わりを持ってくれる隣人もいない。いるのは、
「オカエリ、オカエリ」
ハロと
"お帰りなさい、マスター"
人工AIのリグの2人?だけだった。
少年はUPEとの初邂逅以来何重もの自己防衛のための防衛線を作ることにした。
現時点での、自分と全く同じ姿形、力も同じ人形。所謂クローンを作成した。普段は地下に眠っていて、起きる鍵は先代の自分の完全死亡。記憶のバックアップは当時未完成だったリグとハロに任せていて、AIが完成してから実行する予定だった。
今のいままで全く使っていなかった、例の力も自分の限界と運用方法について確立し、安定させることに成功した。
しかし、そこで事故が起こってしまう。
世間で知られている白騎士事件では負傷者数0人とされているが、実際には2人死亡していた。その2人こそ少年の両親だった。
白騎士は確かにミサイルによる直接被害の排除に成功していた。が、無力化した後の破片による二次被害を考慮していなかったのだ。逆算してみると織斑千冬は当時中学生、自分の土地を守るのに必死だったのだろう。たまたま、白騎士が斬り捨てたミサイルの破片がまさか人に当たるとは思わなかったのだろう。ひょっとしたら白騎士本人も気づいていないかもしれない。だが、偶然にもその破片が少年の両親を無慈悲にも貫き、少年を転生させる器を産んだ2人は即死した。それが、少年の目の前で起こったのだ。しかし、少年は涙することなく、ただただ、業務的に警察と救急車に連絡し、その後政府に身柄を拘束された。その時の少年の不運は保護された政府の人間が女性だったことだろう。その女性曰く
「ISは今まで虐げられていた女性達の為のもの」
「白騎士事件は被害0で公表することが決まっているから、あなたには黙っていてほしい。」
「新たな歴史の犠牲になれたことをあなたの両親も喜んでいる。」
少年はその女性のあまりにも歪んだ発言に少年は
「じゃあ、その新しい歴史の犠牲者に私も入れておいて」
少年は隠し持っていた果物用のナイフで自分の首に何のためらいも無く突き刺した。
ここで、少年の物語は終わるはずだった。しかし、少年の自害には1つ意図があった。
それは、自分が死んだ際の記憶のバックアップが正確に行われるかどうかである。
なんでもない日に自殺してしまうと、仮に次世代への移行が終わっても、先代の後始末をしなくてはいけなくなってしまう。飛び込み自殺をした際は、自分の名前が広く知られ渡ってしまい、今後の活動に支障をきたす恐れがあるので。この実験だけは、自分が死ぬことができて尚且つ、先代の死体及び死そのものの情報を隠蔽してもらえる状況であることが望ましかった。
少年の目論見は概ね成功し、政府には両親が死亡した事による混乱から自殺したと伝えられた。ただ、1つ問題が発生した。それは、少年本来の目的である記憶の移行である。どうやら、ミサイルの破片は両親だけでなく電線の一部も被害を受けており、自宅のリグへの電力供給が十分でなかったことが原因だった。記録は継承され、自分の死因も全て記録している。しかし、一部の記憶が引き継がれず、額縁の外から自分の景色を見ているような現実味が無い、地に足の着いていない記憶となってしまった。
つまり、今の少年は【四十川 渉】という人物と全く同じ記憶を持つ別人という状態に陥った。電力供給が復活した後、リグによる説明で事なきを得たがもう少し遅かったらどうなっていたことか。
その後、友人に恵まれるわけでもなく、自己主張するわけでもなく。少年はただただ平穏に生きていた。
"随分と早い帰宅ですね。何かありました?"
「とある女生徒に絡まれて、自宅謹慎食らった」
"なんとまぁ、巻き込まれましたね。"
「全くだよ。まぁ、1週間ほどは株の続きでもしてるよ」
"まだ、増やすのですか?既に兆近い額を稼いでいるのに?"
「ただの暇つぶしだよ。」
"それはそうと、再来月から通う高校は藍越高校でしたっけ?"
「そうだけど?」
"貴方の頭なら、もっと上を狙えたはずでは"
「いや、この辺を狙っておいて後はのんびりと暮らして生きたい。もう厄介ごとは御免だ。」
"そうですか。"
1週間後、少年は自宅謹慎で赤点をとってしまった単位の補填に追われることとなった。
中学生編終了
主人公が一度死亡しました。
けど、お話は終わりません。
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