IS ~1人連合艦隊ってすごくね~   作:シトリー

7 / 35
お待たせしました。

お気に入り数が50を突破しましたよ。ありがとうございます。


今後とものんびりと付き合っていただけたら幸いです。




今回は、ISの根幹に関する重要な自己解釈が多数含まれています。
気をつけてください。


高校生編~望まぬ邂逅~

青年はただただひたすらに悩んでいた。腕を組み、座椅子を前後に揺らし、机の上においてあるものをものすごい形相で凝視していた。

 

  「(結局あの時の声はもう聞こえないか。)」

 

青年が見ているものは、元藍色の水晶体。つまり、ISのコアだった。コアは、拾ったときは透き通った色をしていたのだが、今では濁ってしまっていてもはや、藍なのか黒なのかすら判別が付かないほどになっている。

 

 

  「(あの時、もし上に逃げていなかったら。…あのまま殺されていたな。間違いなく。)」

 

 

 

 

青年が空を駆け上がる直前、左手に持っていたコアからあの時と同じ声が聞こえた。

 

  『ソラヘ!!』

 

その時、青年の目には透明な薄い板状のものが多数見えた。咄嗟の判断で、青年はその板を踏み台とし空へと回避したのだ。

 

  「(敵さんには見えてなかったみたいだしなー)」

 

あの女性は、青年を追いかける際に攻撃をしたのは最初と最後のみでそれ以外は追いかけるのみだった。もし、足場が見えていたのなら、それを破壊すれば青年を簡単に引き摺り下ろすことが出来たはずなのだ。

 

  「(あれ以来、こいつからエネルギー反応も出ないし、調べても中身が意味不明過ぎて解読すらできん。これは、あれだな。規格そのものが独自のものだから、篠ノ之博士の持つPCか何かじゃないと、そもそも読み取れないタイプの奴だな。リグに解析させても、正体不明としか帰ってこないし、何より実体があり、手で触れるのに、重さが測れない。うん。意味不明だな。)」

 

コンコン

 

 

不意に部屋がノックされ

 

  「はい?」

 

思わず、疑問系で返してしまう青年。

 

  「失礼します。朝食の準備が出来ました。」

 

そこには簡易的な和装姿の少女。つまり、Mが立っていた。

 

  「お、いいねー。じゃあ、そっちに向かうよ。今朝の献立は?」

 

  「ご飯、味噌汁、焼鮭、納豆ですね。」

 

  「納豆に入れる大根おろしはある?」

 

  「用意してあります。」

 

  「おー、準備万端じゃねーの。」

 

そんな他愛の無い会話をしながら、席を立つ青年。

 

  「前は、凄まじいものしか作らなかったからなー。」

 

  「さすがに、半年もすれば安定はしますよ。」

 

 

 

 

 

 

少女との思わぬ邂逅から、おおよそ半年がたち、青年は最高学年となっていた。

 

 

 

 

 

  「じゃあ、行ってくる。」

 

  「行ってらっしゃいませ。あ、夕飯分の食材がもう無いので帰りに買ってきてください。」

 

  「ん。りょーかい。もう献立は決まってるの?」

 

  「いえ、特に。判断はお任せします。道中気をつけて。」

 

 

 

少女を保護した青年だが、いくらISの世界が18歳で成人の世界とはいえ、高校生に養子が取れるわけも無く、国籍も無い少女は安全の為、青年が卒業するまでの間は家から出ることを禁止されていた。職質なんぞ食らった日には…ね。

 

 

  「案外慣れてしまうものだな、平和とは恐ろしいな。」

 

皿を洗いながら、少女はぼそりと呟き、

 

  「後悔しているのですか?」

 

リグが質問する。

 

  「いや、平和の味を知ると、いかに自分が狂った世界に身を置いていたのかが分かってしまう。それだけだ。それに、」

 

  「それに?」

 

  「あいつらは、まだ諦めていない。またどこかで遭う。必ず。」

 

 

会話をしながら、少女は自分のやるべき仕事を片付けていった。

 

 

 

一方その頃学校では

 

  「やっぱり、進学しないか?」

 

  「いえ、家には親が居ませんし、何より費用もありません。ここに入るための奨学金の返済もしなくちゃいけませんし。何より、アルバイト先から正規雇用の話も持ち上がっているので、その話を受けようと思います。」

 

  「そうか…。残念だが、決めたのなら仕方がないな。主任にはこっちから伝えておく。」

 

  「ありがとうございます。」

 

 

 

進学するか否かで、教員とお話していた。

 

 

 

 

 

 

 

Side ………

 

ある女性は、頭をかしげていた。467ある内のひとつのコアエネルギーが消失したのだ。しかし、コア自体の反応は残っているのだ。

 

  「おーかーしーいーなー。もし、IS以外から強引にエネルギーを抜き取ろうとしたら、コアそのものの反応も喪失し、自壊するように作ってあるはずなんだけど。何でISと共有してないコアのエネルギーが無いのに壊れてないの?」

 

女性は複数あるモニターを使って、外部から干渉しようとしたが、出てくるのは busy という単語のみ。

 

  「やっぱり、コアネットワークにも繋がってないか。じゃあ、最後に喪失した地点の過去映像から、割り出すかー。めんどくさいけど、ちょっとばかし気になったからね。」

 

 

ものの数分で監視カメラの映像を見つけた女性は映像を見ているうちにある地点で目を見開いた。

 

 

  「こいつほんとに人間か?」

 

 

女性は映像を解析した。

防戦一方、相手に対して取った行動は空中からのカウンターのみ。しかし、女性は此処までなら似たようなことを実行できる人物を知っている。女性が驚いたのは其処ではない。

 

  「ISを介せずにコアからエネルギーを取り出し、腕に付与する。ってところかな。」

 

女性は冷静な口調で考察を述べているが、その目と口は笑っていた。自分の考えうる限りの理想を再現している人物が液晶越しとはいえ、其処に居るのだ。存在したのだ。ISに使われていない。純粋な意味でISを使用している人物。

 

  「いやーここまで、出来る奴がいるとはねー。世界は広いや。ここまでのものを見せてもらったお礼はしないとね。君にならもしかして……」

 

女性は、うっとりとした表情でその人物が映っているモニターに手を伸ばす。

 

  「さてっと、彼に会うために色々準備をしないとね。待っててね、四十川君。」

 

自分の理想の体現である人物に遭う為に、女性は準備を進めるのだった。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

青年は凛ととあることで会話をしていた。

 

  「卒業旅行行こうよ。」

 

  「オメーは卒業しないだろ。」

 

  「違うよー、旅行に行きたいだけなんだよ。」

 

  「速攻で本音が出たな。あと、此処図書館だからあとでな。」

 

  「ぶーぶー。」

 

 

凛曰く、青年が卒業式を終えた後どこかに2泊3日くらいでどこかに旅行に行こうよ。とのことだった。

 

図書館で用事を終わらせた青年は凜に駆け寄る。

 

 

  「おまっとさん。じゃあ、早速何処に行きたいか話し合おうか。」

 

青年は移動しながら、凜と会話をしていく。

 

  「ドイツに行きたい!」

 

  「黒リンが、ゲルマン言語を話せるのならいいよ。」

 

  「うぐっ。が、がんばるもん。」

 

  「じゃあ、がんばれ。でも、そのせいで単位を落として春休みに補講とかは、やめてくれよ。」

 

  「うーーーー。」

 

ガスッガスッ

 

  「わかったわかった、頼むから脛を蹴るな。まぁ、卒業まで、あと4ヶ月くらいあるし、出来るんじゃないの?」

 

  「先輩はどうなのさー。」

 

  「え? 話せるけど。」

 

ゴスゴスゴスゴスゴスゴス

 

  「わかったから。頼むから、無言で脛を蹴るな。地味に痛いんだよ。」

 

 

その光景を見たとある男子生徒は呟いた。

 

  「リア充爆発四散しろ。」と

 

 

 

 

会話を終え、凜と別れ帰路に着こうとした矢先、目の前から、不思議の国の何とやらに出てきそうな服装で、やけにメカメカしい兎耳型のカチューシャをつけている女性が歩いてきた。

 

  「(世の中、とんでもないこと考える奴はいるもんだねー)」

 

しかし、青年は違和感を感じていた。

ここまできばt(ゲフン) 個性的格好をしているにも拘らず、

 

  「(何で、周りの奴らは見向きもしないのかね。はぁ、また厄介ごとの臭いがする。)」

 

 

青年と女性がすれ違う瞬間、

 

  「………。」

  

 

女性がほんの少し、口を動かし。何事も無かったかのように去って行った。

 

  「(なんなんだよ、「ありがとう」って。あと、こっそり入れられた紙切れも後で確認だな。)」

 

青年は、感謝の言葉とともに、小さなメモを受け取っていた。その後、夕飯分の食料を購入し、青年はやや急ぎ気味に帰宅した。

 

 

 

 

 

  自宅

 

 

  「ただいまーっと。おーい、材料どこに置けばいい?」

 

  「冷蔵庫ですー。」

 

  「あー、そうだ。私これから別件で暫く部屋に篭るから。」

 

  「夕食はどうなさいます?」

 

  「出来たら呼びに来て。」

 

  「解りました。」

 

食料を置いた後、青年は自室に篭り、先ほど受け取ったメモの解読を始めた。

 

 

  「リグ、お仕事の時間だ。」

 

  "案件は何でしょう。"

 

  「こいつの暗号解読。」

 

  "これは、【アンノウンコード】ですね。"

 

  「解けそうか?」

 

  "お時間を頂ければ。"

 

  「じゃあ、任せた。」

 

  "承知しました。"

 

 

その間、青年は部屋着にしている和装に着替えながら、先ほどの女性の言葉の真意を考えていた。

 

  「(特に、何かしたわけでもないんだけどなー。どういうことだ?)」

 

30分後

 

 

  "マスター、解読が終わりました。"

 

  「内容は?」

 

  "場所と、日時が書いてありました。"

 

  「何処だ?」

 

  "【本日の21時 篠ノ之神社】 です。が、場所の表記方法が地名ではなく、座標で書かれていたので、正確には、篠ノ之神社の敷地内にある森の一角です。"

 

説明を聞いた青年は立ち上がり、頭を掻き毟りながら、

 

  「だーーーー!もう!なんでいつも急な案件ばっか乗り込んでくるんだ!少しは自重しろ!」

 

叫んだ。当然、どたどたとドアの向こうから聞こえてきて、

 

ダァン!

 

襖が勢い良く開けられた。

 

  「どうかしましたか!?」

 

  "マスターによる魂の叫びです。"

 

  「…なるほど、解りました。失礼します。」

 

スーーー…トン

 

 

なんとなく理解した少女はそのまま、襖を閉め、戻っていった

 

気持ちが落ち着いた青年は、

 

  「移動時間を含めて、何時頃に出ればいい。」

 

  "おや、行かれるのですか?てっきり、無視するものだと。"

 

  「なーんかいやな予感がびしばしする。これに関わった時点でもうアウトな気がするが、ここまで来たらいっそのこと、こっちから介入してやる。」

 

苛立ちを全く隠さない青年ははっきりと断言し、

 

  "…そうですか。余裕を持って20時過ぎには出ておいたほうがいいかと。"

 

  「OK。じゃあ、準備するぞ。リグ、何が起こるかわからない。私が出てから、帰って来るまで、厳戒態勢で監視に当たれ。」

 

  "了解。"

 

準備を始めた。和装のまま

 

移動中

 

 

 

  「(ここが篠ノ之神社か。夜だからかスゲー怖いし、何か"お"から始まる影のない物体が出そうだな。何はともあれ、)」

 

  「オーグメントモード起動」

 

  "認証しました。サーチ開始。………… 完了しました。ルート表示します。"

 

 

  「(さて、何が出てくるかなー?)」

 

 

青年は移動を開始し、

 

 

 

  「おい、ここだよな。」

 

  "間違いありません。"

 

 

 

何事も無く到着した。

 

 

  「(驚くほど何もなかったな。しかし、)」

 

メモに記してあったと思われる場所に到着した青年だったが、

 

  「(不自然に切り開いてある事を除けば、他に何もないぞ。ここ。)」

 

青年は周りを見渡し、

 

  「サーチ開始。」

 

その辺りを、探り始めた。すると、

 

  "サーチ開始。……… 完了。南西へ約2m程先の地面に、通信媒体と思われるものが埋まってます。"

 

  「やっと、手がかりかよ。で、ここか?」

 

  "もう少し左です。あと一歩。"

 

 

青年は、手で地面を掘り返し一昔前の携帯電話。つまり、

 

 

  「これか?古くね?ボ○ダフォンとか、何時の時代の携帯だよ。」

 

 

ガラケーと呼ばれるものが埋まってた。

青年は、携帯を開き、中を確認しようとした所。

 

 

  『―――――――――』

 

猛烈な勢いで震え始めた。

 

  「うぉっと!」

 

突然の振動に驚いた青年はつい、携帯を落としてしまう。

 

  「振動だけで動きまわる携帯とか見たことねぇよ。」

 

携帯の状態を例えるなら、ふ○っしー状態といえば伝わるだろうか。それはさておき

 

青年は、暴れる携帯をなんとか回収し、近くにあった木に凭れつつ、

 

  「はい。」

 

電話にでるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「はい。」

 

  『やぁ、3時間ぶりだね。四十川君。』

 

  「どうも、あの時すれ違った、場違いな兎耳さんですか?」

 

  『その返答は悲しいなー、私のことは束さんとよんでくれないかな。』

 

  「そうですか。では、篠ノ之博士。今回、私を呼び出した理由は何ですか?もし、私の所持しているコアの返還を求めるのでしたら、この場でお返しします。あれは、人の身に余るものです。」

 

  『ぶーぶー。束さんって、呼んでくれないよー。』

 

  「手早く行きましょう。で、どうなんです?」

 

  『その前に、幾つか質問。』

 

  「ほう。」

 

  『これに、私の望む答えを出したら。君の質問に全て答えてあげるよ。』

 

  「つまり、望まない答えを出したら、命はない、と?」

 

  『いや、命は取らないよ。そこは保証する。ただ、』

 

  「ただ?」

 

  『私にすれ違ってから、今までの記憶を消させてもらうけどね。』

 

  「なるほど。わかりました。で、質問は何ですか?」

 

  『状況の理解が早いねー。助かるよ。』

 

  「さっさと終わらせたいだけです。で、質問は?」

 

  『君は何者?』

 

  「四十川 渉 男性 18歳 藍越高校所属。ただの一般人だよ。」

 

  『違う違う。そうじゃなくて、君は人間なの?』

 

  「人間です。ホモサピエンスです。」

 

  『ふーん。じゃあ、次。君には今のISがどのように見える?』

 

  「矛盾を抱えた拘束具。」

 

  『何で?』

 

  「初代ISの白騎士と今の2世代型?でしたっけ? それの初速よりも、白騎士のほうが速いんです。織斑千冬って人が乗っていたおかげかもしれないですけど、それにしても他が遅い。」

 

  『そう。じゃあ次。君の持っているコアはどういうものだと思う?』

 

  「人の心を模して作った、感情を持つ高密度の精神エネルギー体。そして、その元となったのは博士自身であり、込められた感情とは博士自身の願いであり、心そのもの。」

 

  『……そう思った理由を聞かせてもらってもいい?』

 

  「事の発端は、あのコアを解析している時です。世間一般的に知られているコアは、競技用にエネルギー出力制限が有るとはいえ、よほどのことが無い限り尽きることが無く、自己修復まで備えている様な代物です。私が使用した際に、全てのエネルギーを渡したとしても、一切の自己修復がないのがおかしいんです。そこで、ある仮説を立てました。」

 

  『仮説って?』

 

  「コアとは、博士の心の中にある感情を再現したもの。という仮説です。」

 

  『………続けて。』

 

  「私が使用したコアは、接触した際に"助けて"と言っていました。結果的に私は、少女の救出に成功し、コアは願いを達成し、機能を停止した。ISという機構を介せずにエネルギーを私に付与出来た点。すべてが終わり、それ以来、何の反応も示さない点。以上から、コアに込められた願いが達成されるまで、動き続けるもの。という結論に至りました。」

 

  『何故、願いだと思ったの? 別に、達成したいのであれば、欲でもいいんじゃないの?』

 

  「願いは、果たされればその効力を失ってしまう。しかし、果したい願いであれば有るほど、その力は強くなっていくものです。欲も確かに、求めているものに対しては、願いにをも超える力を生み出します。しかし、欲は果たされても効力を失わない。つまり、終わりが無いんです。終わりがないってのは、暴走と同義です。それは、オリジナルコアと白騎士を生み出した博士が一番良くわかってるんじゃないですか? 何よりも、今も願っているんですよね?」

 

  『………』

 

  「こちらからの返答は以上です。もう、質問は終わりですか?」

 

  『…最後の質問。』

 

  「どうぞ。」

 

  『君が理想とするISはどんなもの?』

 

  「本当の意味での【インフィニット・ストラトス】。」

 

  『……』

 

  「まぁ、操縦者がいることが前提ですけどね。さて、問答は終わりです。貴方の答えは?」

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

  「まぁ、操縦者がいることが前提ですけどね。さて、問答は終わりです。貴方の答えは?」

 

 

女性は、青年の回答を聴き

 

  「満点。これ以上ないほどの完璧な回答だったよ。」

 

満面の笑みを浮かべ、

 

  「何で君みたいな子がもっと早く生まれてこなかったのかなー。」

 

最後に流したのを忘れてしまった瞳に涙を溜め、

 

  「今度こそ、はじめまして。私が、篠ノ之 束だよ。」

 

突如、青年の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

青年は困惑していた。

 

  「(目の前にいきなり現れたけど、反応なんぞ何もなかったぞ。)」

 

  "対IS用の工学迷彩だと思われます。"

 

  「(探知できそうか?)」

 

  "現時点では不可能です。"

 

青年はAIと脳内会話しつつ

 

  「はじめまして。」

 

目の前の天災と会話を開始するのだった。

 

 

  「じゃあ、今度はこちらの質問に答えてもらいましょうか。」

 

  「いいよ。そういう約束だったしね。けど、」

 

  「けど?」

 

  「場所を変えよう。君との会話にもっと相応しい場所がある。」

 

  「貴方のラボですか?」

 

  「その通り、移動するから私の手を握ってくれる?」

 

 

青年は、若干戸惑いつつ

 

  「これでいいですか?」

 

女性の手を握り返した。すると、

 

 

周りの景色が歪み始め、

 

  「(!?)」

 

気が付いたら、

 

  「おいおい、まじかよ。」

 

  「ようこそ、束さんのラボへ。君は記念すべき1人目だよ。」

 

ラボにいた。

 

 

 

青年は、ラボの隅にあった卓袱台を引っ張り出し、女性は座布団を引っ張り出し

 

  「よっこいしょういち。」

 

  「よいしょっと。」

 

お互いが対面するように座った。

 

 

  「じゃあ、質問の続きだね。何でも聴いてよ。」

 

女性が、質問を促し

 

  「今回呼び出した本題は何ですか?」

 

青年は、質問を開始した。

 

  「それはね、君への感謝の気持ちを伝えたかった。」

 

  「それだけ?」

 

青年はあまりにもシンプルすぎる答えに思わず聞き返し、

 

  「そうだよ。」

 

満面の笑みで女性が返答する。

 

  「特に感謝されるようなことをした覚えがないんですが。」

 

  「君にとってなんでもないことでも、私にとって大きな救いになった。それだけのことだよ。」

 

  「救い。ですか?」

 

  「そう。【インフィニット・ストラトス】という名称は、総称を指す言葉ではなく、コアそのものを指す単語なんだよ。でも、他の馬鹿共は薄っぺらい見た目ばかり気にして、誰も、真意について考えようともしない。自分たちの都合のいいように、物事を解釈し、結局束さんの努力はスポーツという歯車のひとつとして、社会に組み込まれることとなった。」

 

  「………」

 

  「束さんは絶望していたんだよ。全く変わろうとしない馬鹿共、周りに振り回され考えることを放棄したブリュンヒルデや掃除用具。そんな中、君がいたんだよ。」

 

  「このコアを入手したときですね。」

 

  「そう。コアは元々、何も仲介せずにエネルギーを付与することができるんだ。」

 

そこで、青年は1つの疑問をぶつける。

 

  「じゃあ、なぜ白騎士を作り出したんですか?」

 

  「束さんは、白騎士なんてものは作ってないよ。あれを作り出したのは、ブリュンヒルデだよ。」

 

  「まさか…」

 

  「そう、白騎士事件の際に、ブリュンヒルデがコアに願い、その結果が白騎士だよ。束さんは、サンプルケースとして白騎士を公表したけど。一言も作ったなんて言ってないよ。」

 

  「(まじかよ。)」

 

衝撃の事実に思わずめまいがする青年。

 

  「そこで、君が取った行動そのものが束さんの望む限りなく、理想に近い利用法だったんだ。」

 

  「あの、腕に纏わせてぶん殴るあれか?」

 

  「ぶん殴るじゃなくて、纏わせる部分だね。」

 

  「?」

 

  「他の使用者たちは、企業が作ったマニュアルに、国が作った機械に乗せられているだけ。」

 

  「纏うにしても、自分のイメージがそのまま反映される。だから、鎧とか手甲みたいな形が多いんだ。でも、君はエネルギーそのものを腕に付与していたんだ。」

 

  「……」

 

  「少なくとも、束さんの知る限りでは君以上に理想的な運用をしている奴はいないよ。」

 

  「無意識だからなー、なんとも…」

 

青年は冷や汗を流しながら、返答していく。

 

  「束さんもその可能性を考えた。だからこそ、あの問答があったんだ。」

 

  「あー、わかった。博士は自分の考察に答えがほしかったわけだ。」

 

  「そう。そこで、君は私の期待をいい意味で裏切る回答をくれたわけだ。だからこそ、君には感謝の言葉を送りたかったんだよ。ちゃんとその子を見てくれてありがとう。」

 

  「これで、私の質問はひとまず終わりですかね。」

 

  「およ? もう終わりかい? まだ、聴きたいことがあるんじゃないの?」

 

青年は立ち上がりながら、

 

  「確かに聴きたいことはありますけど、もう時間も遅い。それに、」

 

  「それに?」

 

先ほどの問答に使用した携帯を取り出し、

 

  「これがあれば、いつでも連絡は取れそうですけどね。これ、どうせスタンドアロン状態で、ハッキングも出来ないんでしょ?」

 

疲れた顔で、答える。すると女性は、笑顔になり

 

  「其処まで分かっているのなら、大丈夫だね。君の考察どおり、それは束さんとの直通電話だよ。何かあれば電話頂戴ね。」

 

青年は長時間座り続けたコリをほぐしつつ、確認を取った。

 

  「さっきの話から行くと、コアは私が持ったままでいいんですか?」

 

  「いいよ。ただ、その大きさのものをいつも持ち歩くのは辛いでしょ。」

 

  「ええ、まぁ。」

 

  「じゃあ、束さんがそれを元に、改修してあげるよ。」

 

  「結構です。」

 

青年は即答し、

 

  「え、…なんで?」

 

女性は悲痛な声を上げた。

 

  「問答の前に言っていたでしょ。これは人の身には余るものです。偶然使えたからと、その力を欲するのは愚の愚。分不相応な力は身を滅ぼします。いずれ使うことになるとは思いますが、今はまだそのときじゃない。」

 

青年の回答に女性は、

 

  「……分かった。なら、君の望むときに連絡を頂戴。」

 

  「ええ。そのときはお願いしますね。」

 

女性は、帰る準備を始めた青年を送る準備を始めた。

 

移動が始まり、

 

  「そう、泣きそうな顔をしなさんな。これが今生の別れってわけでもないんだし。」

 

  「やっと見つけたんだもん。やっと出会えたんだもん。…絶対連絡頂戴よ。」

 

  「わかってますって。それも、そう遠くない未来の話ですよ。」

 

青年の姿が消え始める。

 

 

 

  「ずっと、待ってるから。」

 

 

 

 

 

  「解りました、そのときはお願いしますよ。束さん。」

 

 

 

 

 

その直後、青年は移動を完了した。

 

 

それを聞いた女性は膝から崩れ落ち、

 

  「最後に言うなんてずるいな。」

 

涙声で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に、移動が終わった青年を待っていたのは

 

  「うっわ。」

 

大量の着信と、リグからの応答履歴だった。

 

  「こりゃ、徹夜コースだな。」

 

 

青年は溜息をつきながら、帰宅し、少女にこっぴどく叱られ、眠りに付いたのは朝方だった。

 

 

翌日

 

休日にも拘らず、少女に叩き起こされ不機嫌になっている青年の頭を冷静にさせるに十分なとあるニュースが流れていた。

 

 

 

  『IS初の男性操縦者発見!』

 

 

そんなテロップを見た青年は思わず、

 

 

  「頼むから、私を休ませてくれ。」

 

溜息をつきながら、呟いた。

 




はい、最後まで読んでいただいてありがとうございます。


天災との邂逅です。

ここでも作者の個人解釈が爆発しているわけですが、

読み返して思ったのは、束さんが別人過ぎるくらいですかね。




コメント(理不尽な批判以外)、質問、代替案、どしどしお待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。