BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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―――――誰かが、また血を流してる……

―――――!!才蔵!!

お前のせいだ伊佐那海……

―――――?!

我らが死んだのも、出雲が死んだのも……そして、この男が死んだのも


「いやぁぁああ!!」


自分の声で、目が覚めた伊佐那海……


起き上がり、目から出ていた涙を袖でふき取りながら、周りを見回した。


(……ここどこ?

!!)


すぐに何が起こったかを思い出した伊佐那海は、木の格子を叩き叫んだ。


「ここから出して!!アタシを、上田に帰して!!


帰してよぉ……(才蔵……)」


救出行

森の中を駆ける佐助……

 

 

今朝の事……

 

 

幸村は、縁側に座り煙管を吸いながら、空を眺めていた。

 

 

『今日はいい天気だのぉ……

 

こういう日は、一日中空を眺めて熱転がっていたいもんだ』

 

『若はいつも、そうでしょう』

 

『……

 

 

しかし、才蔵達はどうしているやら……

 

連絡の一つもよこさんとは……』

 

『何もないから、連絡もないんじゃないの?』

 

 

 

幸村の後ろの部屋から、襖に手を掛けて出てきたアナスタシアがそう幸村に答えた。

 

 

『お!アナ!

 

ちょうど良い!膝枕してくれ!』

 

『嫌よ!

 

私、膝折るの嫌いだもの』

 

『ならん!命令だ!』

 

『酷ーい!!』

 

 

『朱刃!!』

 

 

佐助の元に一匹の梟が近づいてきた。佐助は朱刃を自分の腕に止め、朱刃の脚に巻いてあった紙を取り広げた。

 

 

『!!』

 

『どうした?金の無心でもしてきたか?』

 

『あれだけのお金を上げたのに、もう使い果たしたのですか?』

 

『そう固い事を言うな、優助』

 

『幸村様!』

 

 

目を見開いて驚いている佐助の顔に疑いを持った幸村は、佐助の手から紙を取り内容を確かめた。

 

内容を読んだ幸村は真剣な目付きで紙に書かれている文字を眺めた。

 

 

『出しゃばってきおったのぅ……

 

派手好きの風雲児め」

 

『伊達政宗ですか……』

 

『そうだ……』

 

 

手に持っていた紙を握り締めながら、幸村は銜えていた煙管を手に取り口から離し煙を吐き出した。

 

 

『佐助!アナスタシア!』

 

『何!?どうかしたの!?』

 

『伊佐那海が連れ去られた。

 

何としても、うちの仲間を取り戻して来い!!』

 

『諾』

 

『!?明日花は……あの子は!?』

 

『心配するでない。

 

さらったのは、伊佐那海一人だ。明日花は無事の様だ……だが』

 

『?』

 

『帰りたいと、ずっと言っているそうだ』

 

『……』

 

 

 

 

場所は変わり、伊達政宗の邸宅……

 

 

家では、大あくびする政宗に小十郎は少々キレ気味で話し出した。

 

 

「さて、事の成り行きをお聞かせいただきましょうか?」

 

「あー?

 

 

女一人、連れて帰ったから何卒よろしく」

 

「ほー……

 

 

留守を、人に押し付けて出雲まで言った挙句、女性まで連れてきておいて、それだけですか?」

 

「何事も、お前が仕切ってくれたんだろ?」

 

「もちろんです!

 

あなた様がいなくとも、私がおりますれば」

 

「だったら良いじゃねぇか?

 

俺ぁ、風呂に入りてぇし……」

 

「そうでなくてですね!!

 

あの女性は、どこの誰かと申しておるのです!」

 

「出雲からの、大事な客人だ!」

 

「客人?!

 

客人ならば、なぜ座敷牢へ?!まさか、多国のお尋ね者じゃないでしょうね?」

 

「お尋ね者?!ありゃ『宝』だ。」

 

「宝?(また厄介な……)」

 

「徳川は諸国に、根回しするばかりで動こうとしない。

 

このバカげた小康状態を、ひっくり返すための『宝』だ。破壊しようかとも考えたが、面白い使い道があるかもしれん……

 

それまでは、大事な客だ。丁重に扱えよ?」

 

「そう言いますが、以前にも似たような子を連れてきましたよね?

 

武田に仕えていた光坂一族の一人、光坂紫苑と山本優助の子供」

 

「あのガキか……」

 

「一晩で一族の力を発動させ、座敷牢をぶっ壊してそのまま行方知れず……

 

やっとの思いで足取りを見つけたものの、その場所はすでに焼け落ち何も残っておらず……

 

それから、十年の月日が流れ……」

 

「そのガキは、いずれ俺がもう一度この手の中に収める!

 

十年も経てば、聞き分けのいいガキになっているはずだ……

 

 

それに、ガキが持っていた『宝』……あれも手に入れば、さらに面白い使い道があるかもしれんしな……」

 

「『宝』となれば、誰ぞに狙われるのでは?」

 

「あそこに侵入できるやからなんて、早々いねぇよ!」

 

 

 

 

 

時が経ち、暗くなった空に月が現れた……

 

 

森の中に生えている枝に、身を潜めるアナスタシアと佐助……

 

二人の目に映るのは、目の前に建っている屋敷。

 

 

「あの屋敷、怪しいわね……

 

あそこに伊佐那海がいるとすると……

 

 

相当、厳重な警備をしているはずだけど……」

 

「月隠れたら、我行く!」

 

「私は退路を、確保するわ」

 

 

「何の相談かな?」

 

 

後ろから聞こえた声と、人の気配に気づいた二人はすぐに後ろを振り向いた。そこには伊達の忍であろう、忍集がいた。

 

忍の数で、あの屋敷に伊佐那海がいることは確実だと二人は察した。

 

 

この場を去ろうとするが、忍集がそれをさせまいと二人に攻撃をしてきた。アナスタシアと佐助はそれに対抗するように、武器を持ち攻撃を防いだ。

 

攻撃をしてきた忍に、佐助はすぐに体の向きを変え敵の首を刺殺した。それを合図にか後ろに構えていた忍集は、一斉攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「(下は霧……)

 

伊賀亜流氷術!絶海!!」

 

 

下の霧を利用したアナスタシアは、氷の壁を作り忍たちの動きを封じた。

 

 

「氷?!」

 

「ここは通さないわ!」

 

「任せた!」

 

「承知」

 

「しばらく、私と遊んでもらうわよ」




「伊佐那海!!」


屋敷に忍び込んだ佐助は、すぐに伊佐那海がいる座敷牢を見つけ、窓にかかっている格子から覗きこみ伊佐那海の名を呼んだ。

伊佐那海は佐助の声に気付いたのか、泣いていたのか眼に涙を溜めんだ顔で佐助の方に顔を向けた。


「佐助?」

「無事?」

「……うん」

「ちょっと待って!今助ける!

幸村様、心配している。上田に帰ろう」

「……


才蔵と筧さん……明日花ちゃんは?」

「才蔵達、帰路途中。伝達来た」

「……


佐助……

アタシ、上田には帰らない」
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