伊佐那海の部屋の前に立つ才蔵。彼と同じ様に、佐助は明日花の部屋で立ち見張っていた。
その時、口笛がどこからか聞こえてきた。その音に、佐助と才蔵は武器に手を掛け構えた。
「おやおや、俺様スッゴイ警戒されてるね~」
「!?」
「ここが、宝を持ってる巫女の部屋か」
「!?」
それぞれの場所に、義将が姿を現した。二人はすぐに武器を構え、彼に攻撃した。義将は難なく避け、手から硝子の欠片を飛ばし攻撃した。硝子を剣で弾き返した才蔵は、伊佐那海の部屋から離れ、外へと出た。彼が出たとほぼ同時に、佐助も庭へ出て彼を攻撃した。さらに別の場所から、剣を手に持ったアナスタシアも、庭へとやって来た。
「アナ!?なんでお前が」
「それはアナタと同じよ、才蔵!」
「厄介な者がやっと外に出たか」
「?……まさか!!」
誰もいなくなった伊佐那海の部屋へ入る義将。眠る彼女を見ながら、彼は奇魂に目を向けた。
「(これが、奇魂か……さて、頂くと)
!」
何かの気配を感じ取った義将は、後ろを振り返り持っていた刀で、攻撃を受け止めた。
「ガラスで分身を作り、敵をそちらへ誘き寄せている間に宝を奪う……昔と変わりませんね?」
「そう言うアンタも、傷を負っても必ず動ける所は相変わらずだな?隊長さん」
「これでも、結構痛いんですよ?脚」
「そういうところも、相変わらずだな。
それより、いいのか?こんな所で、戦ったら大事な巫女さんが起きるぜ?」
「大丈夫です。先程お出ししたお茶に、睡眠薬を仕込ませたので。
もちろん、他の方々にも。今この場で起きているのは、伊賀の忍二人と甲賀の忍と僕達だけです」
「ほぉ……準備がよろしいようで。
けど、この攻撃は避けられないだろ?」
指を鳴らす義将。それを合図に、突如優助の前をガラスの破片が通り過ぎそして体に突き刺さった。力が緩んだすきを狙い、義将は傷口を抑える彼を蹴り飛ばした。飛ばされた優助は、障子を突き破り庭に転がり倒れ、息を切らしながら義将を睨んだ。
「油断禁物……いつも言ってたじゃねぇか、隊長さん。
戦闘中、如何なる時も気を緩めず決して油断するな。全てを倒してもまだ敵はいると思いなさいって……」
「そう……でしたね」
「そうだ……言い忘れてたことが一つあった。
今隊長の前にいるのは、硝子で出来た俺だ」
「!?」
「本体は今頃、人質に隊長のガキの所だ」
屋根の上に座る明日花……その背後に、義将は降り立ち鎖を彼女の体に巻き付けた。
「大人しく来て貰おうか……!?」
強く引っ張ると、明日花は水となり消えた。
(水分身?!)
「山本流槍術会心突き!!」
その声と共に、義将の背後から何かが突き当たり彼はそのまま屋根から落ちた。そのせいか、才蔵達の相手をしていた義将達が、突如皹が入り粉々に割れてしまった。
「割れた?!」
「親玉を誰かが殺ったのかしら?」
消えた義将の硝子を見る優助……すると屋根から、誰かが飛び降り彼に近寄った。
「……明日花」
「酷い傷……」
「言ったはずですよ。部屋から出るなと」
「っ……
でも、明日花がアイツ倒したから助かったじゃん!」
「そう簡単に、倒せる相手ではありません」
硝子を引き抜き、優助はふらつきながら立ち上がった。
「彼はどこのに?」
「池の方に落ちた」
「……水の音はしましたか?」
「音?してない……」
「ったく、躾のなってねぇガキだ」
声の方に目を向けると、そこには腹を手で撫でる義将がいた。
「ほらご覧なさい。言った通りでしょ」
「う……」
「隊長、お前ガキにどういう躾してんだ?
つか、本当にお前のガキか?」
「この子は副隊長に似ただけです」
「やい爺!父さんの悪口言ってみろ!!
許さないからな!!」
「誰が爺だ!!俺はまだ、三十代だ!!」
「それじゃあオッサン!」
「何でそうなんだよ!!」
「じゃあ」
「そろそろその口、閉じましょうか?」
明日花が喋ろうとした口の前に、優助は笑みを浮かべながら剣先を向けた。剣先を見て、彼女はすぐに黙り込んだ。
「優助!」
声と共に、優助達の前へ才蔵達が降り立った。
「おや無事でしたか、皆さん」
「問題無」
「あの野郎、変な技使うぞ」
「硝子です。
彼は自由に硝子を作り出すことが出来るんです」
「氷かと思ってたけど、硝子だったのね」
「チッ。せっかくバラバラにしてたのに……集まっちまったか……
で~も、人質いれば簡単に殺れるか」
「人質?」
「……佐助、明日花を」
「そうはさせねぇよ」
義将が指を鳴らすと、明日花の元へ行こうとした佐助の目の前に硝子の壁が現れた。そして硝子は彼女を囲うように現れ閉じ込めた。
「明日花!!」
「武器から手を離して貰おうか?
でなきゃ、そのガキの命は無い」
閉じ込められた明日花の背後に、義将が現れ彼女の首に刀を当てた。
「……斬れるものなら、斬ってご覧なさい」
「?!」
「言ったはずです。その子は預かっているだけだと」
「けどガキは、隊長のことを」
「小芝居をしたまでです。
さぁ、斬るなら斬りなさい。その子が死のうが斬られようが、僕には関係ありません」
「隊長がそこまで言うなら……
そうさせて貰う!!」