BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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刀を振り上げる義将……
斬られた明日花の首から、大量の血……


「?!」

「血じゃねぇ……」


首から出たのは、血ではなく水だった。驚く義将の背中から激痛が走り、彼はすぐに振り返り刀を振った。振った刀を背後にいた者は軽々飛び避け、優助の隣りに降り立ち彼の方に向いた。


「明日花を甘く見ない方がいいよ」


勝ち誇った笑みを浮かべながら、明日花はそう言った。


昔の仲間

優助の隣に立つ明日花……そんな彼女に、才蔵達は驚いていた。

 

 

「お!才蔵達も騙されてる!

 

この策、案外使えるね!」

 

「事前に言ってくれれば未だしも、突然使うのはやめて下さい。こちらとしては結構大変なんですから、君に合わせるの」

 

「咄嗟に思いついた事だもん。

 

でも、成功したんだから良いじゃん!」

 

 

「このクソガキ!!大人をからかうのも程々にしろ!!」

 

 

笑っていた明日花に、才蔵は思いっ切り殴った。

 

 

「痛ったぁ……騙される方が悪いんじゃん!!」

 

「良いも悪いもあるか!!」

 

 

二人が喧嘩をしだした瞬間、全員目掛けて義将は硝子の槍を放った。才蔵達はすぐに飛び避け、それぞれの場所に着地した。その直後、各々の背後から硝子で出来た義将が、一斉に攻撃した。全員武器を持ち構え、攻撃を防いだ。本体の義将は、優助目掛けて鎖で繋がれた刀を振り下ろした。彼の刀を優助は、自身の刀で防ぎ受け止めた。

 

 

「部下には手ぇ出すなって言われてるが、もうどうでもいい」

 

「勝利の確証が無くなると、主の命を背いて任務を熟す……そこは昔と変わらないようですね?」

 

「……」

 

「それでよく、喧嘩になりましたよね?特に副隊長と」

 

 

『何で命令に背くの、アンタは!!』

 

『紫苑、落ち着いて』

 

『落ち着けるわけないでしょ!!

 

コイツのせいで、危うく仲間が死にかけたのよ!!』

 

『いや、それは事実だけど……

 

あそこで攻撃してなきゃ、こちら側も危険だったんだよ』

 

『優助!アンタはどっちの味方するの!!』

 

 

「そういや、隊長と副隊長いつも喧嘩してたよな?」

 

「君が毎回、命令違反をするからです」

 

 

刀を振り上げ、優助はその場から離れた義将の後を追い駆けるようにして、屋根へと飛び上がった。

 

 

「父さん!!」

 

「テメェの相手は、こっちだ!」

 

 

硝子の刀を振り下ろす義将を、明日花は槍で受け止め刀で彼を切り裂いた。義将の体は二つに分かれ、明日花は槍を何度か突き硝子の体を粉々にした。

粉々になった義将を見た明日花は、槍をしまい屋根へと飛び乗った。

 

 

足がふらつき蹌踉けた優助目掛けて、義将は刀を振り下ろした。当たる寸前、明日花は優助の前に立ち彼の攻撃を刀で受け止めた。

 

受け止め義将の刀を振り払った明日花の背後から、優助は立ち上がり刀を振り下ろした。義将はその攻撃を食らい、胸を切られた。

 

 

「がはっ!」

 

「これで!」

 

「終わりです」

 

 

いつの間にか義将の背後に回っていた明日花と、彼の目の前にいた優助は同時に刀を振り下ろした。前方と後方から攻撃を受けた義将の体から、大量の血が噴き出した。

 

 

「ククク……

 

 

さすが……隊…長」

 

「もう苦しむことはありません。

 

安らかに眠りなさい」

 

「あぁ……

 

 

眠るよ……もう……誰か…に……仕えるのは……

 

疲れ……た……」

 

 

屋根から地面に落ちた義将……しばらく息はしていたが、やがて息は止まった。それと共に、才蔵達の相手をしていた義将達は、粉々に砕け散った。

 

 

「割れた?!」

 

「どうやら、優助さん達やったみたいね」

 

 

屋根から義将の亡骸を見下ろす明日花……刀に付いた血を払い、鞘へと収めた。

 

 

「アイツ……ねぇ父……!」

 

 

振り返りながら明日花は、優助に話した。振り返った瞬間、彼は刀を落としそのまま力無く倒れた。

 

 

「父さん!!」

 

 

倒れた優助の元へ明日花は駆け寄り、滑り落ちようとした彼を慌てて引き止めた。

 

 

「父さん!!父さん!!

 

佐助ぇ!!父さんが!!」

 

 

明日花の叫び声に、佐助はすぐに屋根に上がった。屋根に登った佐助は、すぐに優助を支え下へ降り地面に寝かせた。寝かせられしばらくした後、優助は目を覚まし起き上がった。

 

 

「父さん!」

 

「……大丈夫です。少々目眩がしただけですから」

 

「硝子野郎は倒したのか?」

 

「倒しました」

 

「そうか……」

 

「戦いは終わりました。

 

皆さんは、もう休んで下さい」

 

「……だな。

 

気配は感じねぇし」

 

 

辺りを見回す才蔵……周りは静まり返り、風と風に靡く草の音が聞こえていた。才蔵とアナスタシアは部屋へと戻り、佐助はしばらく残っていたが、明日花に言われすぐに自分の位置へ戻った。

 

 

三人がいなくなった後、優助は立ち眩みその場に座り込んだ。

 

 

「父さん!」

 

「大丈夫です。また目眩がしただけです」

 

「……父さん」

 

「?」

 

「アイツ、泣いてたよ」

 

「……」

 

「屋根から落ちる寸前、アイツの顔見たんだ。

 

そしたら、アイツの目から涙出てた」

 

「……」

 

「父さん、アイツ……?」

 

 

何かを言い掛けた明日花の頭に、優助は手を置いた。

 

 

「昔の仲間です……

 

これでよかったんですよ」

 

 

『若ぇのに、隊長に昇進とは……』

 

『……何か文句でもあるんですか』

 

『いや、何も』

 

『……』

 

『けど俺は、お前さんが隊長でよかった』

 

『はい?』

 

『俺はガキの頃からお前を知ってる……

 

だから、俺はお前が隊長でよかった』

 

『……』

 

『もし殺られるなら、お前と戦って死にてぇなぁ』

 

 

「父さん?」

 

「……さぁ、休みましょう」

 

 

笑みを浮かべた優助は、立ち上がり明日花と共に部屋へ戻った。その背後の池に落ちていた義将の亡骸は、一瞬笑みを浮かべたかのように口角を上げ、そして硝子の欠片へとなり消えた。




翌朝……


体に包帯を巻いた優助は、縁側で紙に書かれている文字を読んでいた。


(……やはり)

「何読んでるの?」


髪を下ろした明日花は、覗くようにして優助の背後から顔を出し紙を見た。

優助は持っていた紙を、自身で出だした水に入れ消した。


「あ~!」

「君が読む必要はありません」

「意地悪ー!」

「早く髪を結びなさい。それから……

早く服を着なさい!何という格好してるんですか!!」

「いいじゃーん!」

「よくありません!早く着なさい!!」


怒鳴られた明日花は、すぐに部屋へと戻った。彼女にため息を吐きながら、優助は懐に隠していた紙を再び読み返した。


「その文には、一体何と書いておるんだ?」


声に気付き、優助はすぐに後ろを振り返った。そこにいたのは、煙管を手にした幸村だった。


「幸村様……」

「話は佐助に聞いた。

礼を言うぞ。狸の手から、伊佐那海を守ってくれて」

「義将は徳川に就いていません」

「?」

「彼は……


四・五年前に亡くなっているのですから」

「?!」

「徳川に就いている僕の元部下からの情報です。

戦時中、戦場で見かけたのを最後に彼が主の元へ帰ってくることはなかったようです。

その後、彼が身に着けていた小太刀だけが、川で見つかったと……」

「……では、貴方方と戦った者は」

「……生きていて、僕に殺られる為にどこかで手に入れた情報を元で、ここへ来たか……

あるいは……既にこの世にいなく、彼が作った硝子の自分が独りでに動きここへ来たか……」


紙を破り水に浸した優助は、水を消しそれを合図に強い風が吹いた。風はバラバラになった紙を空へと持って行った。



「隙有り!!」


障子を勢い良く開けた明日花は、鞘に収まっていた刀を幸村目掛けて思いっ切り振り下ろした。


「幸村様!!」
「若!!」

「幸村、隙だらけだぞ!」


笑いながら、明日花は伸びている幸村に言った。彼を見ながら六郎は彼女を怒ろうとした時、只ならぬ殺気を感じ黙り込んだ。その殺気に、明日花も気付いたのか怯えた顔で恐る恐る振り返った。


「と、父さん……顔、怖い」

「普段通りの顔ですよ?」


微笑みながら、優助は明日花を見た。


「さぁ、どういうお仕置きがいいですか?」

「えっとぉ……

逃げるが勝ち!」

「待ちなさい!!明日花!!」


逃げた明日花を、優助はすぐに追い掛けていった。

心地良い風が吹き、二人体に当たった。


『アリガトウヨ』


声は確かに、優助の耳に入りそれと共に彼の頭に何かが乗ったような感触があった。優助は足を止め後ろを振り返った。


(……気のせい……でしょうか)

「父さん?どうかした?」

「どうもしません。

それより」


止まっていた明日花の背後に回り、優助のは彼女の頭を思いっ切り殴った。
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