BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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ある日の朝……


消えた幸村

「オッサンがいない?」

 

 

幸村がいないと六郎が騒いでいると、才蔵達がやってきて幸村の部屋を見た。部屋はまるで誰かに荒らされたかのように、めちゃめちゃになっていた。

 

 

「誰かに、踏み入られたって感じじゃね!?」

 

「てことは、拉致!?」

 

「嘘!!幸村様が!?」

 

「でも、昨日の夜どこからも物音がしてなかったよ」

 

「何かあれば俺達が気付かねぇはずが」

 

「私達にも気づかれずに侵入したとしたら、かなりの手練れね……」

 

「見張り!!集合!!」

 

 

佐助の呼び掛けに、上田周辺を見張ってたし忍集が佐助のもとに集まった。忍集は佐助から命を受け、それに承知しその場から飛び去った。

 

 

「オッサンを狙う奴って……」

 

「徳川でしょうね」

 

「幸村様……」

 

 

才蔵とアナスタシアの話を聞いた佐助は、顔を青ざめて幸村を捜しに行ってしまった。

 

 

「おい、佐助!!」

 

「明日花は佐助と一緒に、幸村様を捜しなさい」

 

「了解!

 

佐助待って!!明日花も行く!!」

 

「こうしておれん!!某も捜しに行くぞ!!」

 

「私は向こうを探すわ」

 

「伊佐那海は城に残れ!」

 

「え―――!!嫌だぁ!!

 

私も一緒に行くぅ!!」

 

「オメェは足手まといだとよ、クソ女!!

 

才蔵は俺と行くから」

 

「馴れ馴れしいなお前」

 

 

才蔵の肩に、手を乗せながら鎌之介は偉そうに言った。その言葉にカチンときた伊佐那海は鎌之介に向かって怒鳴った。

 

 

「何なのよ!!アンタぁ!!」

 

「お!キレてやんの」

 

「先行くぞ、俺」

 

 

 

 

上田の森を探す、佐助と明日花……

 

 

城外を探す、アナスタシアと十蔵、六郎と優助、そして才蔵達……

 

 

遊郭へ来た六郎と優助。

 

 

「幸村様!?

 

最近は来ておりませんよ」

 

「寂しい事ですわ」

 

「そうですか……」

 

「あの馬鹿殿、どこへ行ったのやら……

 

六郎、行きましょう」

 

「はい。では失礼」

 

「あら、もう帰られるんですの!?」

 

「うち等、たまには海野様と山本様を、御接待したいわ!」

 

「は!?」

 

「なあ皆!」

 

「キャー!」

 

「いえ、僕には妻子がいますので……」

 

「そんな固い事言わずに―!」

 

 

 

上田を見渡せる丘へ来た才蔵達……

 

 

「どこにもいねぇ……(いったいどうしたんだよ、オッサン……

 

あのオッサンに限って、むざむざさらわれることなんてことは……

 

くっそぉ……妙な気分だ)」

 

「幸村様、実はお城のどこかに隠れてたりして!」

 

「オーオー、考えが浅え女!」

 

「何よ!?

 

アンタ、アタシを馬鹿にしてるでしょ?!」

 

「いーや、バカにしてねぇよ。

 

つーか、本当のバカだろ?」

 

「はぁー!!

 

 

バカじゃないもん!!人にバカって言った方がバカなのよ!!バーカ!!」

 

「この!!引っ叩くぞ!!くそ女!!」

 

「(オッサンがいねぇと落ち着かねぇ……)

 

 

うるっせぇ!!

 

犬猫か!!お前ら!!オッサン、捜す気ねぇんなら帰ってろ!!」

 

「……

 

だってぇ……」

 

「だってじゃねぇ!!」

 

「あーん、怒んないでよ才蔵ぉ!」

 

「気色悪い声出すな!!くそ女!!」

 

 

「何やってんのよ!アンタ達」

 

 

どこからかやってきたアナスタシアは、騒いでいる才蔵達に声を掛けながら近くに生えている木に着地した。

 

 

「アナ!」

 

「こっちには、見当たらなかったわ!そっちは?」

 

「こっちもだ」

 

「そう……」

 

 

そこへ、明日花と佐助がアナスタシアがいる木の枝の隣の枝に着地した。

 

 

「佐助達の方は?」

 

「……

 

どこに、いない」

 

「手掛かり無し」

 

「いったい、どういうこと!?」

 

「誰にも見られずに、国境を超えるなんてことは……」

 

「殺して、バラバラの荷物にしちゃえば簡単じゃん」

 

「鎌之介の考えに一票!」

 

「ちょっと、やめてよ!!」

 

「否!!幸村様に限って……」

 

 

すると空から、鳥の鳴き声が聞こえてきた。その鳴き声に気付いた佐助は、上を見上げた。空には飛び回るミミズクの姿があった。

 

 

「蒼刃!!

 

 

そっちか!」

 

「あ!待って!明日花も行く佐助!!」

 

 

飛んでいる蒼刃の方向へ、佐助は駆け出した。その後を明日花は慌てて追い駆けて行った。

 

 

「オッサンいたのかよ?!なら俺も行く!!」

 

「お前必要無し!腑抜け伊賀!」

 

「……腑抜け?」

 

「佐助、機嫌悪いね」

 

「何で、アイツに腑抜け扱いされなきゃ何ねぇんだよ!!甲賀猿が!!

 

待ちやがれコラ!!」

 

 

佐助の言葉にキレた才蔵は、佐助の後を追い駆けて行った。駆けていく才蔵の横を、城外を探していた十蔵が丘を登って来ており、十蔵は走っていく才蔵の背中を目で追い駆けた。

 

 

「面白そう!!」

 

「待ってよ!!アタシも行く!!」

 

 

二人の声に気付いた十蔵は、二人の方に目を向けると二人は十蔵を見向きもせず、才蔵の後を追い駆けて行った。

 

 

「?!

 

お主等!!どこへ行く?!

 

幸村様がおったのか?!」

 

 

 

 

森を駆け抜ける佐助……

 

その後ろから明日花を抜き、佐助の後を追い駆けてきた才蔵……

 

 

「おい、佐助!!さっきの言葉、取り消せ!!」

 

「……」

 

 

才蔵の言葉を無視して走り続ける佐助……

 

その態度にキレた才蔵は、佐助を追い抜き前へ出た。その行動に佐助はスピードを上げ才蔵の隣へやってきた。

 

 

「邪魔!帰れ!女たらし!」

 

「女…たらし?!

 

上等だ!!この野郎!!」

 

 

隣に来た佐助に、蹴りを入れた才蔵。その蹴りを佐助は腕で受け止めた。その様子を後ろから追い駆けていた明日花は、呆れながら二人の戦いを見ていた。

 

 

「ほへー……

 

伊賀と甲賀の忍って、本当に仲が悪いなぁ」

 

「いつ、どこで!!この俺が誰をたらしこんだだって?!」

 

「いつでも!!」

 

「この野郎!!んだよ!!その言い掛かりは!!」

 

「言い掛かり否!!

 

お前、不真面目!!」

 

「どこがだ!!」

 

「全て!!」

 

「!!

 

何で、テメェにそこまで言われなきゃならねぇんだ!!」

 

「真実!!

 

幸村様、一大事!!

 

 

なれど、お前あの二人と遊び半分!!」

 

「あれは奴等が、勝手にやってることだろう!!

 

それで女たらしか?!何だ?!その勝手な理屈は!!」

 

「勝手否!!いつも、キャアキャアうるさい!!」

 

「だから、俺のせいじゃねぇって!!

 

つか、テメェも女を連れているだろ!!」

 

「明日花、うるさくない!!キャアキャア言わない!!」

 

 

「おぉお!!やってるやってる!」

 

 

才蔵を追い駆けてきた鎌之介が、ようやく才蔵に追いつき佐助と戦っている才蔵を見上げながら、興奮している様だった。そこへ鎌之介にやっと追いついた伊佐那海が、息を切らして才蔵達の方へ顔を向けた。

 

 

「二人共、やめようよ!!」

 

「何止めてんだ!!くそ女!!

 

忍び同士の戦いだぜ?!血ぃ見れるかもしんねぇじゃん!!最高!!」

 

「アンタ、やっぱり変!!」

 

「変?だから何だ!?」

 

 

木の枝に着地た才蔵目掛けて、佐助は宙を舞い蹴りを入れてきた。その蹴りを才蔵は腕で防いだが、その腕に切り傷ができよく見ると、佐助の手に自身の武器である爪が装備されていた。

 

 

「お前、腹立つ!!」

 

「そりゃあ、こっちのセリフだ!!

 

くだらねぇことで、突っかかりやがって!!このガキ!!」

 

「うるさい!!お前、かまっている暇ない!!

 

我、幸村様捜す!!」

 

「俺だって、必死で探してんだよ!!テメェには負けねぇ!!」

 

「佐助!才蔵!後ろ!!」

 

「?!

 

うわっ!!」

 

 

明日花の声に、才蔵は後ろを向こうとした瞬間、佐助の蹴りが頭に入りそれを受け止め次の木に移ろうと移動した場には、木など無く二人はそのまま森を抜け地面へ転げ落ちた。

 

 

「何をしている?お前等」

 

 

聞き覚えのある声に、才蔵達はすぐに声がした方に顔を向けた。そこには煙管を口に銜えた幸村の姿があった。

 

 

「オッサン!!」

「幸村様!!」

 

「?

 

なんだ?」

 

「良かった……」

 

 

幸村が生きていたことに、安心したのか佐助は気が緩んだせいか目から涙を流した。そこへ才蔵達の後ろを追い駆けていた明日花が到着し、泣いている佐助に話しかけた。

 

 

「あれ?佐助、どうしたの?涙なんか流して」

 

「な、何でも……」

 

「……?

 

あぁ!!幸村!!」

 

「何だ?明日花まで。

 

どうしたと言うんだ?」

 

「何を呑気なオッサン!!今まで」

「才蔵!!置いてかないでよぉ!!」

 

 

才蔵が言い掛けたところへ、伊佐那海と鎌之介、十蔵が到着した。

 

 

「あぁ!!幸村様!!

 

良かったぁ!さらわれたんじゃなくてぇ……」

 

「儂(ワシ)がさらわれた?!なんでまた」

 

「お部屋が荒らされておりましたぞ!」

 

「荒らされ……あぁ!

 

あれは探し物しておってな、それほど散らかっておったとは思わんが……」

 

「あれほどしておいてですか!?」

 

「賊が入ったかと思ったわ」

 

「つーか、殿様の部屋じゃねぇよなぁ」

 

「汚い部屋だったし」

 

「心配したんだよぉ!」

 

「そ…そうか?」

 

「で、何でこんな所にいんだよ」

 

「探し物のついでに、ここからの景色を眺めておったのだ」

 

 

幸村が見る眺め……

 

 

そこに広がるのは、上田の町……

 

 

「儂は、ここから見る上田が好きでのう……

 

美しいだろう?なあ?」

 

「……押しつけかよ」

 

「そうだ。

 

そう感じないはずがない。

 

 

儂と共に、歩んでいく者たちならばのう」

 

「綺麗!」

 

「本当」

 

 

伊佐那海は前へ行き、上田を眺めた。その後に続きアナスタシアも上田を眺め伊佐那海の感想に同感していた。

 

 

「どんだけの自信家だよ」

 

 

自分の意見を無理矢理押し付けてきた幸村に、才蔵は呆れた顔で言い放った。

 

幸村は口に銜えていた煙管を取り、煙を吐きながら不敵な笑みを溢した。

 

 

「今頃、気づいたのか?」

 

「(……いや

 

最初からそうだったな……

 

 

口悪ぃし柄悪ぃただのオッサンだけど……

 

このメンツ(勇士)まとめ上げる力を、持っている……)

 

 

すげぇ奴だよ。(それに、不思議と惹きつけられる)」

 

「お!?」

 

「幸村様に向かって、何て口の利き方!!」

 

「まぁ良い、佐助」

 

 

「何が、良いのですか!!」

 

 

怒り交った声に驚いた幸村は、後ろを振り返った。そこには、幸村を捜していた代償なのか、体中に女のキスマークや簪、香水を着けた六郎と優助の姿があった。

 

幸村は、二人の姿勢に思わず吹き出してしまった。

 

 

「何だ六郎、優助、その有様は?

 

儂の留守をいいことに、座敷遊びか?」

 

「私がどうして、こうなったと思いですか?」

 

(すげぇ殺気……)

 

「六郎、後始末は頼みました。

 

本当なら、この殿方の首を切り裂きたいんですが……

 

 

明日花来なさい」

 

「は、はいぃ……」

 

(明日花が滅茶苦茶怖がってる?!)

 

「よろしい、篤と聞かせて差し上げます。誰のおかげかを」

 

「……」

 

 

殺気立っている六郎を前に、幸村の顔は見る見る内に青ざめて行った。

 

 

「……

 

さぁて帰るかぁ」

 

「アタシ、お腹空いた!茶屋寄って行こっと」

 

「アラ、良いわね」

 

「俺も!そこの緑は?」

 

「緑?!」

 

「お、お前等……

 

儂も一緒に…」

「若!!」

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