幸村を捜しだし、城へ戻ってきた才蔵達……
城へ戻った幸村は、皆を自分の部屋へ呼び出した。
幸村の部屋へ来た才蔵達……
幸村は手に書物を持ちながら、その場に腰を下ろした。
「ようやくスッキリするなぁ……
モノも揃ったことだし」
「それか?
オッサンが探してたものってのは」
「これは、真田家に代々伝わる古文書でな……
筧からの報告にあった、出雲の地下に記されていたという古代文字。
それを解読するためのものだ」
「?
文字?
!あの岩の?!でも、暗くて見えなかった……」
「某は全然……」
(何か見えたような感じはするけど、覚えてないし……)
「見たってだけで、読めなかったし……
つか、そんな文字もう覚えてねぇぞ」
「何、問題ない。
六郎」
「御意」
幸村の命で、六郎は立ち上がり才蔵に顔を近付けさせた。
「な、何だ?!この距離!
近えっ!近えって!!」
「うるさいぞ、才蔵」
「近えぇ!!」
「往生ぎわが悪い!」
何をされるか疑問に思ったのか、十蔵を始め鎌之介と伊佐那海が才蔵に近付こうとした。その途端、幸村が二人を隠すように、羽織に裾を持ち上げさらに持っていた扇子を広げた。
「皆、しばし待たれよ。
黙っていろ、才蔵」
すると六郎は、右眼に巻いていた包帯を外した。その眼は左眼とは明らかに違っていると思った才蔵は思わず声を出そうとした。
その瞬間、六郎は才蔵の口を押さえ右眼を才蔵の目に近付けさせた。
才蔵の眼に近付けさせた六郎の眼は光を放ち出し、六郎の眼に無数の文字が浮かんできていた。
(何だ?!
お、俺の記憶が……吸い込まれる!)
出雲へ行った才蔵の記憶はすべて、六郎の眼の中へと吸い込まれていき吸い終ると、才蔵は素早く六郎から離れ左眼を押さえた。才蔵の記憶を吸いこんだ六郎は、すぐに紙を広げそこへ才蔵から吸い取った記憶を書き写していった。
写し終えた紙を、幸村は持ち上げその文字を呼んだ。
「どれ……!」
文字を読んだ途端、幸村は顔色を変えて紙を眺めた。
「何々?何て書いてあったの?幸村様!」
「オッサン?」
「『こっから先には、入れません。
つーか、よく降りてきたね。ご苦労様!』だと」
「えぇ!!何それぇ!つまんなーい!」
「あんな地下まで下りて、それだけですか……」
「肩すかしね」
「(散々戦って、頭ン中見られてそれだけか?)
クソ!!やってらんねぇ!!」
「あ、才蔵!!待ってよぉ!」
「なあなあ才蔵、お前片眼に何されたんだよ?!なぁ!才蔵」
先に出て行った才蔵を伊佐那海と鎌之介は後を追い駆けて行った。
「明日花、お前は残れ。話がある」
「え~!」
「優助も残ってくれ。
その他の者は、戻っていいぞ。呼びつけてしまって悪かったな」
「では」
明日花と優助以外、皆幸村の部屋を出て行った。
幸村の部屋に残った明日花は、不機嫌な顔のまま頬杖をついた。
「で、話って何?」
「明日花」
「お前にも、才蔵と同様の事をさせてもらう。六郎」
「御意」
「は?何で、才蔵がやったことを明日花がやんなきゃいけないの?!」
「才蔵の記憶に、お前が出雲の地下にあった文字を見た時、何かが見えたそうじゃないか」
「見たけど、何も覚えてない……」
「お前が覚えてなくとも、頭の奥底にはしっかりと記録されている」
「けど……!!」
反攻しようと、立ち上がろうと途端六郎は明日花の肩を押さえ立ち上がらせなくさせ、明日花に顔を近付けさせ右眼を開こうとした時だった。
「!!」
突然六郎の目の前に、水の弾が現れ六郎の頬を掠った。六郎はそれに驚き、眼を閉じ慌てて明日花から顔を離した。
離れた隙を狙い、明日花は部屋から出て幸村達を睨んだ。
「覚えて無いもの覚えて無いもん!!」
「明日花!!」
そう叫ぶと、明日花はそのまま幸村の部屋を後にした。彼女を追い駆けるようにして、優助は部屋を出て縁側を覗いた。
「明日花!!
すみません六郎……あの怪我は?」
「ご心配なく。無傷です」
「あの子が何か思い出したら、お伝えします」
「その方がいいのかも知れんな……
出雲であの竜に会ったのを、思い出したくないのだろう……」
「……」
「もうよい。
下がっていいぞ、優助」
一礼し、優助は部屋を出て行き明日花の後を追い駆けた。
幸村はため息をつきながら、六郎がいれた茶を啜り、煙管を口に銜えた。
「若…」
「仕方ない。
ここは、明日花の記憶が戻るのを待つしかない」
「……」
「しかし……
皮肉な運命だ」
「若!」
「言うな、六郎。
一度抱えたものだ。儂は放り出さんぞ?」
「しかし……
これが真実であれば、あまりに危険」
「そうだ…
だが、そればかりではない。
真田の地へ辿り着いた伊佐那海……
それと共にやってきた才蔵……
そして、四年振りに帰ってきた明日花と優助……
そして我等……」
「若!!」
「早々に、両手の指の数だけの同志が欲しい……
そして、その同志に力を与える勇士……
あの竜も狙っておるのだ。黙ってはいないだろう……
知っているのは、儂とお前のみ……
その右眼……誰にも触れさせてはならんぞ、六郎」
「御意」
町中を歩く明日花……辺りをキョロキョロと見回し、そして裏へ回ろうとした振り向いた。その瞬間、何かにぶつかり鼻を押さえながら顔を上げた。彼女の前にいたのは、腕を組んだ優助だった。
「げっ!父さん……」
「全く……」
「っ……」
腕組みを崩し、手を伸ばす優助……明日花は叩かれると思い、固く目を瞑り手を強く握った。
「……?」
恐る恐る目を開けた明日花は、優助の方に目を向けた。優助は彼女の頭を叩かず、手を置きしゃがみながら口を開いた。
「ゆっくりでいいですよ」
「?」
「出雲で見えたもの……
思い出すのが怖いのは、よく分かります」
「……」
「だからゆっくりでいいです。
思い出したら、言いなさい」
「うん……」
「……
気分晴らしに、茶屋でも行きますか?」
「うん!」