BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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一時の休息

大暴れしていた清海を止めた才蔵達……

 

 

そこへやってきた伊佐那海を見た清海は、突然涙を流しながら自分は彼女の兄貴だと自称した。

 

固まる才蔵達……

 

 

「うおぉーーーーーん!!

 

捜したぞ!我が妹よ!」

 

「アンタみたいな、ムッサイオッサンなんか、知らないってば!!」

 

「何、昔みたいに抱き合えば思い出す!いざ!!」

 

「ギャーー!!変態!!」

 

「伊佐那海、触れる不可!!」

 

「拙僧は、伊佐那海の兄だ!

 

触れ合って、何の不都合があろうか!なぁ?」

 

「何が“なぁ”よ!

 

いきなり抱き付こうとするなんて、おかしいでしょ!」

 

「お前みたいなムッサイ男に、こんな妹不釣合いだ!」

 

「明日花ちゃんの言う通り!!」

 

 

佐助の後ろから、才蔵のもとへ行き腕を掴む伊佐那海……

 

 

才蔵は、そんな伊佐那海に目を向けながら話し掛けた。

 

 

「お前、確か天涯孤独だって、言ってなかったけ?」

 

「こんな人知らない!アタシ、嘘なんかついてないもん!!」

 

「フーン……」

 

「あ!何、その反応!?」

 

 

才蔵の腕を掴む伊佐那海……

 

それを見て不愉快になったのか、清海は鉄棍棒を才蔵と伊佐那海の間を割る様にして、振り下ろした。

 

 

「ぎゃあ!

 

いきなり何すんのよ!?」

 

「兄として、当然のことだ!!

 

男に近寄り過ぎるな!!汚れるぞ!!」

 

(お前に近寄った方が、よっぽど汚れると思うけど……)

 

「何でアンタに、そんなこと言われなきゃいけないのよ!」

 

「兄だからだ!」

 

「ハァーー?!」

 

 

「伊佐那海」

 

 

伊佐那海を手招きしながら名を呼ぶ才蔵……

 

彼女は、才蔵の元へ近付き耳を貸した。才蔵は何やらコソコソと話をした。

 

 

「……な?」

 

「う……うん」

 

「近いと……言っただろうが!!

 

貴様、許さん!!」

 

 

伊佐那海がまた才蔵にくっ付いたのを見た清海は、鉄棍棒を上げ才蔵に振り下ろそうとした。

 

 

「ダメ!!」

 

 

伊佐那海の叫ぶ声で、振り下ろそうとした鉄棍棒を止めた。

 

 

「アタシの兄だっていうなら、暴力はやめて!!

 

皆大切な仲間なんだから!!傷付けたら許さないから!!」

 

「う…うん…」

 

「それに何?この有り様!!

 

これじゃあ、ただの無法者じゃない!!恥ずかしい!!」

 

「は…恥ずかしい…」

 

「そうよ!!反省しなさい!!

 

ちゃんとここを片づけて!そしたら、話くらいは聞いてあげる。ね?」

 

「おう!!」

 

(妹には、弱いってか?)

 

「いよっし!!そうとなれば、早々に片付けよう!

 

お主等も、手伝え!!」

 

「ふざけんな!!」

 

「一人でやれ!!」

 

 

 

穴の開いた壁に板を着け、修理にかかる清海……

 

 

その間、アナスタシアは気絶している十蔵を起こした。十蔵は目を覚ましたが持っていた銃を見て、ため息を付き負のオーラを放った。

 

才蔵と明日花は、伸びている鎌之介を見ていた。

 

 

「起こす?こいつ」

 

「うーーーん……

 

激しく迷う」

 

「だよなぁ…」

 

(しっかし……

 

変なのばかり集まるなぁ……)

 

 

壁を直す清海……

 

それを見張る伊佐那海……

 

折れた銃を見てため息をつく十蔵……

 

十蔵を見つめるアナスタシア……

 

屋根の上で、ミミズクを手に止める佐助……

 

手に持つ棍棒を分解し、ケースへしまう優助……

 

伸びている鎌之介の頭を指で突っつく明日花……

 

地面で伸びている鎌之介……

 

 

皆を見ながら、才蔵は頬杖をついてそう思った。

 

 

「ぐわ!!」

 

「うわ!!」

「おわ!!」

 

 

突然起き上がり、辺りを見回す鎌之介……

 

 

「あのタコ入道は!!

 

ぶっ殺す!!」

 

 

そう叫びながら、鎌之介は口から大量の血を吐き出した。

 

 

「鎌之介!!口から血ぃ!!」

 

「お前!!それ、肺イってんじゃねぇのか?!」

 

 

 

 

壁の修理を終えた清海は、才蔵達と共に幸村の元へ行った。

 

 

幸村の部屋へ連れてきた清海を、才蔵は先程の事を一通り話した。

 

 

「お前が、伊佐那海の兄だと?!」

 

「だから、幸村様!!兄じゃないってば!!」

 

「いかにも、伊佐那海の兄三好清海入道と申します!」

 

(三好?)

 

「しかし、全然似とらんなぁ……(つーか、ムサイ)」

 

「でしょう?!

 

だから」

「似てなくて当然!血の繋がりはない!

 

 

拙僧も伊佐那海も孤児でな。出雲大社の神主様が、育てて下さったのだ」

 

(神主様……)

 

(出雲?

 

けど、あの人とは別人だし……)

 

「ちなみに鳥居の下に捨てられていた、こいつを見つけたのは八歳の頃拙僧だ」

 

「嘘?!」

 

「(まぁ、怪しい奴ではなさそうだな……)

 

しかし僧というには、いささか格好がおかしいな」

 

「十五の時に出雲を立ち、諸国を回りあらゆる神仏を学んだ末、拙僧は一つの結論に辿り着きました。

 

 

即ち、神仏は皆同じ!信じた数だけ救われる!」

 

「……」

 

(神仏バカだ……こいつ)

 

「節操なさすぎだろ」

 

「何を罰当たりが!!

 

その神々のおかげで、こうして伊佐那海に出会えたのではないか!!

 

 

だいたい、何で貴様がここにおるのだ!!公智神社の巫女と巫覡はともかく!!

 

部外者だろうが!!」

 

「知らねーよ。

 

オッサンがいろっつーからいるだけだ」

 

「しかし、長い間会っておらぬようだが、なぜすぐに伊佐那海だと分かった?」

 

「そんなのは簡単だ。

 

ほれ」

 

 

そう言いながら清海は、伊佐那海の簪に指を指した。

 

 

「その簪、それを見れば一目瞭然。

 

 

奇魂の守り巫女は伊佐那海しかおらん」

 

(本物か)

 

「でもアタシ、本当に覚えてないよう……」

 

「長い旅路で、拙僧も随分逞しくなったゆえ、分からずとも無理はない。

 

自分でもよう変わったと思っている」

 

 

清海は、懐から一枚の紙を出し、皆に見せた。その紙には青年の人相書きが描かれていた。

 

 

「十五歳の頃の拙僧だ」

 

(え!!)

 

「あー!!

 

お兄ちゃん!確かにいた!」

 

「やっと思い出したか!!

 

いざ、再開の抱擁を!!」

 

「ギャー!!」

 

 

抱き着こうとした清海に、伊佐那海は顔面を殴り拒否った。

 

 

「なぜに!?」

 

「ムサイ!!」

 

「……思い出しました!

 

君、あの時来た出雲の清海ですか」

 

「おぉお!公智神社の巫覡も、思い出してくれたか!」

 

「何だ?お主、優助と明日花に会ったことがあるのか?」

 

「拙僧が十七歳の時、公智神社へ訪れた時に会ってな!いやぁ、あの頃はまだ幼く、まるで伊佐那海を見ている様だった!

 

しかし、なぜ修羅の道へ行ったのだ!!」

 

「こちらにも、色々事情があるんですよ」

 

「明日花、巫女の職なんて就いた覚えない」

 

「お主の母はどこだ?!直接言って、お主をすぐに巫女の職に」

「母さんなら、別の場所だよ」

 

「何!?」

 

「というより、紫苑も僕も元は忍と侍です」

 

「何だと!!

 

やはり、拙僧があそこに留まっておればぁ!!」

 

「余計なことはしなくていい!!」

 

「ならば、公智神社へ行き神主様に」

「すみませんが、公智神社は既にこの世にありません。

 

二年ほど前、出雲と同様に燃やされて今は何も残っていません」

 

「何だと!!」

 

「伊佐那海、このムッサイ男いっぺん殺していい?」

 

「ダメぇ!!」

 

「よし分かった!」

 

「?」

 

「これも何かの縁だ。

 

お主が望むなら上田にいても良いぞ」

 

「か、忝い!」

 

 

そんな幸村たちの会話を隣の部屋で、聞いていたアナスタシア達……

 

 

「召し抱えたわよ、幸村様……

 

あのヌルっとしてるの」

 

「なあ!!あいつ殺していいよな?!なあ!!」

 

 

 

「そうだ!

 

清海の歓迎も入れて、明日は儂の穴場、温泉に連れて行ってやる!」

 

「わーい!温泉だ!」

 

「とか言って、どうせアナの裸目当てじゃないの?」

 

「明日花!」

 

「変なことを考えるな!お主は!

 

儂は、日頃の感謝をこめて言っておるのだ!」

 

「どうだが……」

 

「おっ風呂!おっ風呂!」

 

 

喜ぶ伊佐那海の後に清海、才蔵、明日花と部屋を出て行った。

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