大暴れしていた清海を止めた才蔵達……
そこへやってきた伊佐那海を見た清海は、突然涙を流しながら自分は彼女の兄貴だと自称した。
固まる才蔵達……
「うおぉーーーーーん!!
捜したぞ!我が妹よ!」
「アンタみたいな、ムッサイオッサンなんか、知らないってば!!」
「何、昔みたいに抱き合えば思い出す!いざ!!」
「ギャーー!!変態!!」
「伊佐那海、触れる不可!!」
「拙僧は、伊佐那海の兄だ!
触れ合って、何の不都合があろうか!なぁ?」
「何が“なぁ”よ!
いきなり抱き付こうとするなんて、おかしいでしょ!」
「お前みたいなムッサイ男に、こんな妹不釣合いだ!」
「明日花ちゃんの言う通り!!」
佐助の後ろから、才蔵のもとへ行き腕を掴む伊佐那海……
才蔵は、そんな伊佐那海に目を向けながら話し掛けた。
「お前、確か天涯孤独だって、言ってなかったけ?」
「こんな人知らない!アタシ、嘘なんかついてないもん!!」
「フーン……」
「あ!何、その反応!?」
才蔵の腕を掴む伊佐那海……
それを見て不愉快になったのか、清海は鉄棍棒を才蔵と伊佐那海の間を割る様にして、振り下ろした。
「ぎゃあ!
いきなり何すんのよ!?」
「兄として、当然のことだ!!
男に近寄り過ぎるな!!汚れるぞ!!」
(お前に近寄った方が、よっぽど汚れると思うけど……)
「何でアンタに、そんなこと言われなきゃいけないのよ!」
「兄だからだ!」
「ハァーー?!」
「伊佐那海」
伊佐那海を手招きしながら名を呼ぶ才蔵……
彼女は、才蔵の元へ近付き耳を貸した。才蔵は何やらコソコソと話をした。
「……な?」
「う……うん」
「近いと……言っただろうが!!
貴様、許さん!!」
伊佐那海がまた才蔵にくっ付いたのを見た清海は、鉄棍棒を上げ才蔵に振り下ろそうとした。
「ダメ!!」
伊佐那海の叫ぶ声で、振り下ろそうとした鉄棍棒を止めた。
「アタシの兄だっていうなら、暴力はやめて!!
皆大切な仲間なんだから!!傷付けたら許さないから!!」
「う…うん…」
「それに何?この有り様!!
これじゃあ、ただの無法者じゃない!!恥ずかしい!!」
「は…恥ずかしい…」
「そうよ!!反省しなさい!!
ちゃんとここを片づけて!そしたら、話くらいは聞いてあげる。ね?」
「おう!!」
(妹には、弱いってか?)
「いよっし!!そうとなれば、早々に片付けよう!
お主等も、手伝え!!」
「ふざけんな!!」
「一人でやれ!!」
穴の開いた壁に板を着け、修理にかかる清海……
その間、アナスタシアは気絶している十蔵を起こした。十蔵は目を覚ましたが持っていた銃を見て、ため息を付き負のオーラを放った。
才蔵と明日花は、伸びている鎌之介を見ていた。
「起こす?こいつ」
「うーーーん……
激しく迷う」
「だよなぁ…」
(しっかし……
変なのばかり集まるなぁ……)
壁を直す清海……
それを見張る伊佐那海……
折れた銃を見てため息をつく十蔵……
十蔵を見つめるアナスタシア……
屋根の上で、ミミズクを手に止める佐助……
手に持つ棍棒を分解し、ケースへしまう優助……
伸びている鎌之介の頭を指で突っつく明日花……
地面で伸びている鎌之介……
皆を見ながら、才蔵は頬杖をついてそう思った。
「ぐわ!!」
「うわ!!」
「おわ!!」
突然起き上がり、辺りを見回す鎌之介……
「あのタコ入道は!!
ぶっ殺す!!」
そう叫びながら、鎌之介は口から大量の血を吐き出した。
「鎌之介!!口から血ぃ!!」
「お前!!それ、肺イってんじゃねぇのか?!」
壁の修理を終えた清海は、才蔵達と共に幸村の元へ行った。
幸村の部屋へ連れてきた清海を、才蔵は先程の事を一通り話した。
「お前が、伊佐那海の兄だと?!」
「だから、幸村様!!兄じゃないってば!!」
「いかにも、伊佐那海の兄三好清海入道と申します!」
(三好?)
「しかし、全然似とらんなぁ……(つーか、ムサイ)」
「でしょう?!
だから」
「似てなくて当然!血の繋がりはない!
拙僧も伊佐那海も孤児でな。出雲大社の神主様が、育てて下さったのだ」
(神主様……)
(出雲?
けど、あの人とは別人だし……)
「ちなみに鳥居の下に捨てられていた、こいつを見つけたのは八歳の頃拙僧だ」
「嘘?!」
「(まぁ、怪しい奴ではなさそうだな……)
しかし僧というには、いささか格好がおかしいな」
「十五の時に出雲を立ち、諸国を回りあらゆる神仏を学んだ末、拙僧は一つの結論に辿り着きました。
即ち、神仏は皆同じ!信じた数だけ救われる!」
「……」
(神仏バカだ……こいつ)
「節操なさすぎだろ」
「何を罰当たりが!!
その神々のおかげで、こうして伊佐那海に出会えたのではないか!!
だいたい、何で貴様がここにおるのだ!!公智神社の巫女と巫覡はともかく!!
部外者だろうが!!」
「知らねーよ。
オッサンがいろっつーからいるだけだ」
「しかし、長い間会っておらぬようだが、なぜすぐに伊佐那海だと分かった?」
「そんなのは簡単だ。
ほれ」
そう言いながら清海は、伊佐那海の簪に指を指した。
「その簪、それを見れば一目瞭然。
奇魂の守り巫女は伊佐那海しかおらん」
(本物か)
「でもアタシ、本当に覚えてないよう……」
「長い旅路で、拙僧も随分逞しくなったゆえ、分からずとも無理はない。
自分でもよう変わったと思っている」
清海は、懐から一枚の紙を出し、皆に見せた。その紙には青年の人相書きが描かれていた。
「十五歳の頃の拙僧だ」
(え!!)
「あー!!
お兄ちゃん!確かにいた!」
「やっと思い出したか!!
いざ、再開の抱擁を!!」
「ギャー!!」
抱き着こうとした清海に、伊佐那海は顔面を殴り拒否った。
「なぜに!?」
「ムサイ!!」
「……思い出しました!
君、あの時来た出雲の清海ですか」
「おぉお!公智神社の巫覡も、思い出してくれたか!」
「何だ?お主、優助と明日花に会ったことがあるのか?」
「拙僧が十七歳の時、公智神社へ訪れた時に会ってな!いやぁ、あの頃はまだ幼く、まるで伊佐那海を見ている様だった!
しかし、なぜ修羅の道へ行ったのだ!!」
「こちらにも、色々事情があるんですよ」
「明日花、巫女の職なんて就いた覚えない」
「お主の母はどこだ?!直接言って、お主をすぐに巫女の職に」
「母さんなら、別の場所だよ」
「何!?」
「というより、紫苑も僕も元は忍と侍です」
「何だと!!
やはり、拙僧があそこに留まっておればぁ!!」
「余計なことはしなくていい!!」
「ならば、公智神社へ行き神主様に」
「すみませんが、公智神社は既にこの世にありません。
二年ほど前、出雲と同様に燃やされて今は何も残っていません」
「何だと!!」
「伊佐那海、このムッサイ男いっぺん殺していい?」
「ダメぇ!!」
「よし分かった!」
「?」
「これも何かの縁だ。
お主が望むなら上田にいても良いぞ」
「か、忝い!」
そんな幸村たちの会話を隣の部屋で、聞いていたアナスタシア達……
「召し抱えたわよ、幸村様……
あのヌルっとしてるの」
「なあ!!あいつ殺していいよな?!なあ!!」
「そうだ!
清海の歓迎も入れて、明日は儂の穴場、温泉に連れて行ってやる!」
「わーい!温泉だ!」
「とか言って、どうせアナの裸目当てじゃないの?」
「明日花!」
「変なことを考えるな!お主は!
儂は、日頃の感謝をこめて言っておるのだ!」
「どうだが……」
「おっ風呂!おっ風呂!」
喜ぶ伊佐那海の後に清海、才蔵、明日花と部屋を出て行った。