「勝てるかな?小僧」
(清海を一発で倒した男……)
「さぁて、甚に敵うかな?才蔵」
「お前はどっちの味方だ!?明日花!!」
「どっちの味方でもないも~ン」
「…の野郎!!」
すると甚八は、傍に置いてあった樽を手に掴み才蔵に向かって投げつけた。
才蔵は剣を抜き、投げてきた樽を真っ二つに斬った。真っ二つに斬れた樽から、水が出てきて才蔵達に掛かった。
「?
この匂いは…」
「酒だ!!」
「あ!?」
「クックック……なんだと思ったんだ?
剣を交えるだけが、勝負とは限んねぇだろ?」
「そう言うこと」
そう言いながら、明日花は他の船員と一緒に樽を持ってきた。
「この酒、全部飲み干したら、テメェ等を認めてやってもいいぜ!」
「いよっし!!乗った!!」
「バカか!!
この量を見ろ!!樽十本だぞ!?ベロンベロンに潰れんのが、目に見えてんだろ!!」
「是非もなし」
「いらねぇところで、カッコつけんな!!」
「アタシお神酒しか飲んだことないんだよねぇ……ドッキドキィ!」
「オイラなんか初めてだよ!美味しいのかなぁ?」
「ガキは駄目に決まってんだろ!!」
「えぇえ!!」
「えぇじゃねぇ!!
絶対収拾つかなくなる!!
優助さん、何とか」
「付き合うしかありませんね」
「おい!!
明日花、何とか」
「よっしゃ!!樽四本、飲み干すぞぉ!!」
「オォーー!!」
「アホー!!」
(キャラ変わり過ぎだなぁ…)
「良いじゃねぇかぁ!才蔵ぉ!!」
(既に酔ってる奴が……)
「さぁあ、飲むぞぉ!!」
「オー!!」
その一方、上田では……
城で留守番をするアナスタシアと佐助……
「幸村様たちはどうしているかしらねぇ……
京女に手ぇだして、痛い目見てなきゃいいけど。
しかも、鎌之介に清海まで行っちゃって……屋敷は手薄になっちゃうし、何かあったらどうるのよねぇ…」
不安そうな声を出して言うアナスタシア……
「何もない。我がいる」
(揺るがないわね、この子……)
「それに、アナもいる」
「……
あらそう」
不敵な笑みを溢して答えるアナスタシア……
目には不気味な光が一瞬光って見えたが、それを知る者は誰もいなかった。
酒を飲む才蔵達……
「ぶっはー!美味ぇ!!」
「そうか!飲め飲め!」
「おうよ!」
甚八と飲み合う鎌之介……
その様子を見ながら、才蔵は幸村の方に顔を向けた。
幸村の方は、船員に囲まれ幸村は高笑いをしていた。
「いやー、強いなアンタ!」
「このお付きさんも、綺麗な顔して結構いけるぞ!」
「久々に見たなぁ。こんな気持ちよく酒飲む奴ぁ…
いやいや美味い酒は進むもんだのう」
船の上で気を失う清海に、伊佐那海はフラフラと歩きながら言った。
「お兄ちゃん、こんな所で寝てたら風邪ひくよ!
お酒もいいけどぉ……お腹もすいたなぁ」
酔い言いながら、伊佐那海は弁丸がいる所へ行った。弁丸は焼き魚を黒豹とコノハと一緒に食べていた。
「あ!お姉ちゃん!
この大きい猫、猫じゃなくて黒豹で、ヴェロニカって言うんだって!」
「ヴェロ?ヴぇロ…ニカ?」
舌が回らず、弁丸が言っていることを繰り返しながら、伊佐那海はヴェロニカの頭を撫でた。
「ほれ!もっといかんか、別嬪さん!」
「…どうも(何故、私だけどんぶり?)」
(人気あんな……六郎さん)
「どうだ才蔵!飲んでおるか!?」
飲んでいる幸村達を眺めていた才蔵に、十蔵は酒瓶を手に持ちながら近寄り隣に立った。
「筧さん」
「さすがは忍。酒には酔わんか」
「あったりめーだ。
酒と毒にゃ、耐性があるんでね……
つーか、何で船乗ってんだよ?
上田にも帰らずに、お堅い筧さんが、海賊に鞍替えったか?」
「バカな!何を申すか!
諸国を巡り、見聞を広げながら、新たな銃を探しておったのだ」
「ふーん」
「ある時、根津なる海賊が、舶来の銃を所有しておると聞き及んでな。
方々手を回して、ようやくこの船に潜り込んだのだ。
しかし、無論簡単に銃を譲ってもらえるわけでもない」
「んで?」
「そこで、この勝負だ。
某もしこたま飲まされてのう……
樽二本空けたら、『義兄弟!』と言われたわ!!」
そう言いながら、十蔵は手に持っていた酒瓶を口に着け飲んだ。
(ザルだ……このオッサン)
「で、気前よく銃もくれてなぁ!!ハッハッハッ!!」
笑いながら、十蔵はそう言った。
ふと、才蔵は船員と騒ぎ合う、明日花と優助がいる方に顔を向けた。
「相変わらず飲むなぁ、優助さん」
「これくらい楽勝です。
明日花にあまり飲ませないで下さい!」
「い!」
「え~!!樽四本、飲み干しす―!」
「何言ってるんですか!!
四本飲み干すなら、十八になってからにして下さい」
「……もっと頂戴!」
「応!」
「明日花ぁ!!」
船員達と騒ぐ二人を、才蔵は飲みながら眺めていた。
「騒がしいなぁ」
「そういや筧さんは、何でさっさと上田に帰ってこなかったんだ?」
「無料で貰うわけにもいかんだろう!
ここでしばらくの間、労働で支払っておるのだ!」
「(相変わらず、堅ぇ……)
ま、筧さんがこの船にいてくれたおかげで、助かったけどよ」
「岸が騒がしいと思ってみて見たら……肝を冷やしたぞ。
何だって、あんな軍勢に追われておったのだ?」
「……それは、幸村のオッサンに詳しく聞いてくれ」
「……」
「全くよう、守るにも限度っつうもんがあるだろうに……
あの状況で相手を挑発するんだぜ?あのオッサンにゃ、叶わねぇよ」
「……
お主、柔らかくなったのう」
「あん?」
「なーに楽しそうに話してんだよぉ!」
二人が話し合っている所へ、才蔵の後ろから酒に酔った鎌之介が抱き着き絡んできた。
「なあなあ才蔵、何の話だよ?俺も交ぜろって!
なってば、才蔵ぉ!」
「うっぜぇなあ」
「んだよ!」
「……
女子の様だぞ、鎌之介」
「あぁーん?」
十蔵の言葉にキレた鎌之介は、才蔵から離れ十蔵を睨んだ。
「久しぶりに会ったオッサンまでもか!!
どいつもこいつも、俺を女扱いしやがって!!
もういい!!この際、ハッキリさせてやる!!
俺は、男だ!!」
そう叫びながら、鎌之介は服の裾を持ち上げ才蔵と十蔵に見せた。
その様子に、酒を飲んでいた者は皆鎌之介の方に目を向けた。
(……何やってんだ?あのバカ男)
「へっ!どうだ!」
「あ…いや…すまん」
「こっち向かんか、鎌之介!!」
「あー……」
鎌之介に近付き見ようとした幸村に、才蔵は鎌之介の服を降ろし幸村の方に鎌之介の体を向かせた。
「見たって、何もねーよオッサン!」
「何をする才蔵!!見せんか!!」
「しばらく見ぬ間に、随分懐かれたな才蔵。
お前の存在が、遠くに感じる」
「違う!!」
「せっかく余興になったものを!
つまらん!
六郎!」
六郎の名を呼びながら、幸村は自分が持っていた扇を六郎に投げ渡した。六郎は扇を受け取り、幸村と扇を交互に見た。
「舞え!」
「は!?」
「酒席には付き物だろう!」
「た、戯れを……」
「何を言う。
久方ぶりに見てみたいのだ。
それとも何だ?もう足腰が立たぬほど酔ったのか?」
「……」
「舞なら、アタシにお任せ!!」
六郎と幸村の上を飛び越え、樽の上に着地する伊佐那海が酔っ払いながら、皆の前に出た。
「出雲の神楽舞!とくとご覧あれ!!」
「あぁもう……どいつもこいつも」
「こうなっては誰も止められまい」