BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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甚八の圧倒的な威勢に、才蔵は剣の束を持ち構えた。


甚八の流儀

「勝てるかな?小僧」

 

(清海を一発で倒した男……)

 

「さぁて、甚に敵うかな?才蔵」

 

「お前はどっちの味方だ!?明日花!!」

 

「どっちの味方でもないも~ン」

 

「…の野郎!!」

 

 

すると甚八は、傍に置いてあった樽を手に掴み才蔵に向かって投げつけた。

 

才蔵は剣を抜き、投げてきた樽を真っ二つに斬った。真っ二つに斬れた樽から、水が出てきて才蔵達に掛かった。

 

 

「?

 

この匂いは…」

 

「酒だ!!」

 

「あ!?」

 

「クックック……なんだと思ったんだ?

 

剣を交えるだけが、勝負とは限んねぇだろ?」

 

「そう言うこと」

 

 

そう言いながら、明日花は他の船員と一緒に樽を持ってきた。

 

 

「この酒、全部飲み干したら、テメェ等を認めてやってもいいぜ!」

 

「いよっし!!乗った!!」

 

「バカか!!

 

この量を見ろ!!樽十本だぞ!?ベロンベロンに潰れんのが、目に見えてんだろ!!」

 

「是非もなし」

 

「いらねぇところで、カッコつけんな!!」

 

「アタシお神酒しか飲んだことないんだよねぇ……ドッキドキィ!」

 

「オイラなんか初めてだよ!美味しいのかなぁ?」

 

「ガキは駄目に決まってんだろ!!」

 

「えぇえ!!」

 

「えぇじゃねぇ!!

 

絶対収拾つかなくなる!!

 

優助さん、何とか」

「付き合うしかありませんね」

 

「おい!!

 

明日花、何とか」

「よっしゃ!!樽四本、飲み干すぞぉ!!」

 

「オォーー!!」

 

「アホー!!」

 

(キャラ変わり過ぎだなぁ…)

 

「良いじゃねぇかぁ!才蔵ぉ!!」

 

(既に酔ってる奴が……)

 

「さぁあ、飲むぞぉ!!」

 

「オー!!」

 

 

 

 

その一方、上田では……

 

城で留守番をするアナスタシアと佐助……

 

 

「幸村様たちはどうしているかしらねぇ……

 

京女に手ぇだして、痛い目見てなきゃいいけど。

 

 

しかも、鎌之介に清海まで行っちゃって……屋敷は手薄になっちゃうし、何かあったらどうるのよねぇ…」

 

 

不安そうな声を出して言うアナスタシア……

 

 

「何もない。我がいる」

 

(揺るがないわね、この子……)

 

「それに、アナもいる」

 

「……

 

あらそう」

 

 

不敵な笑みを溢して答えるアナスタシア……

 

目には不気味な光が一瞬光って見えたが、それを知る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

酒を飲む才蔵達……

 

 

「ぶっはー!美味ぇ!!」

 

「そうか!飲め飲め!」

 

「おうよ!」

 

 

甚八と飲み合う鎌之介……

 

 

その様子を見ながら、才蔵は幸村の方に顔を向けた。

 

幸村の方は、船員に囲まれ幸村は高笑いをしていた。

 

 

「いやー、強いなアンタ!」

 

「このお付きさんも、綺麗な顔して結構いけるぞ!」

 

「久々に見たなぁ。こんな気持ちよく酒飲む奴ぁ…

 

いやいや美味い酒は進むもんだのう」

 

 

船の上で気を失う清海に、伊佐那海はフラフラと歩きながら言った。

 

 

「お兄ちゃん、こんな所で寝てたら風邪ひくよ!

 

 

お酒もいいけどぉ……お腹もすいたなぁ」

 

 

酔い言いながら、伊佐那海は弁丸がいる所へ行った。弁丸は焼き魚を黒豹とコノハと一緒に食べていた。

 

 

「あ!お姉ちゃん!

 

この大きい猫、猫じゃなくて黒豹で、ヴェロニカって言うんだって!」

 

「ヴェロ?ヴぇロ…ニカ?」

 

 

舌が回らず、弁丸が言っていることを繰り返しながら、伊佐那海はヴェロニカの頭を撫でた。

 

 

「ほれ!もっといかんか、別嬪さん!」

 

「…どうも(何故、私だけどんぶり?)」

 

(人気あんな……六郎さん)

 

「どうだ才蔵!飲んでおるか!?」

 

 

飲んでいる幸村達を眺めていた才蔵に、十蔵は酒瓶を手に持ちながら近寄り隣に立った。

 

 

「筧さん」

 

「さすがは忍。酒には酔わんか」

 

「あったりめーだ。

 

酒と毒にゃ、耐性があるんでね……

 

 

つーか、何で船乗ってんだよ?

 

上田にも帰らずに、お堅い筧さんが、海賊に鞍替えったか?」

 

「バカな!何を申すか!

 

諸国を巡り、見聞を広げながら、新たな銃を探しておったのだ」

 

「ふーん」

 

「ある時、根津なる海賊が、舶来の銃を所有しておると聞き及んでな。

 

方々手を回して、ようやくこの船に潜り込んだのだ。

 

 

しかし、無論簡単に銃を譲ってもらえるわけでもない」

 

「んで?」

 

「そこで、この勝負だ。

 

某もしこたま飲まされてのう……

 

 

樽二本空けたら、『義兄弟!』と言われたわ!!」

 

 

そう言いながら、十蔵は手に持っていた酒瓶を口に着け飲んだ。

 

 

(ザルだ……このオッサン)

 

「で、気前よく銃もくれてなぁ!!ハッハッハッ!!」

 

 

笑いながら、十蔵はそう言った。

 

 

ふと、才蔵は船員と騒ぎ合う、明日花と優助がいる方に顔を向けた。

 

 

「相変わらず飲むなぁ、優助さん」

 

「これくらい楽勝です。

 

明日花にあまり飲ませないで下さい!」

 

「い!」

 

「え~!!樽四本、飲み干しす―!」

 

「何言ってるんですか!!

 

四本飲み干すなら、十八になってからにして下さい」

 

「……もっと頂戴!」

 

「応!」

 

「明日花ぁ!!」

 

 

船員達と騒ぐ二人を、才蔵は飲みながら眺めていた。

 

 

「騒がしいなぁ」

 

「そういや筧さんは、何でさっさと上田に帰ってこなかったんだ?」

 

「無料で貰うわけにもいかんだろう!

 

ここでしばらくの間、労働で支払っておるのだ!」

 

「(相変わらず、堅ぇ……)

 

ま、筧さんがこの船にいてくれたおかげで、助かったけどよ」

 

「岸が騒がしいと思ってみて見たら……肝を冷やしたぞ。

 

 

何だって、あんな軍勢に追われておったのだ?」

 

「……それは、幸村のオッサンに詳しく聞いてくれ」

 

「……」

 

「全くよう、守るにも限度っつうもんがあるだろうに……

 

あの状況で相手を挑発するんだぜ?あのオッサンにゃ、叶わねぇよ」

 

「……

 

お主、柔らかくなったのう」

 

「あん?」

 

 

「なーに楽しそうに話してんだよぉ!」

 

 

二人が話し合っている所へ、才蔵の後ろから酒に酔った鎌之介が抱き着き絡んできた。

 

 

「なあなあ才蔵、何の話だよ?俺も交ぜろって!

 

なってば、才蔵ぉ!」

 

「うっぜぇなあ」

 

「んだよ!」

 

「……

 

女子の様だぞ、鎌之介」

 

「あぁーん?」

 

 

十蔵の言葉にキレた鎌之介は、才蔵から離れ十蔵を睨んだ。

 

 

「久しぶりに会ったオッサンまでもか!!

 

どいつもこいつも、俺を女扱いしやがって!!

 

 

もういい!!この際、ハッキリさせてやる!!

 

俺は、男だ!!」

 

 

そう叫びながら、鎌之介は服の裾を持ち上げ才蔵と十蔵に見せた。

 

その様子に、酒を飲んでいた者は皆鎌之介の方に目を向けた。

 

 

(……何やってんだ?あのバカ男)

 

「へっ!どうだ!」

 

「あ…いや…すまん」

 

「こっち向かんか、鎌之介!!」

 

「あー……」

 

 

鎌之介に近付き見ようとした幸村に、才蔵は鎌之介の服を降ろし幸村の方に鎌之介の体を向かせた。

 

 

「見たって、何もねーよオッサン!」

 

「何をする才蔵!!見せんか!!」

 

「しばらく見ぬ間に、随分懐かれたな才蔵。

 

お前の存在が、遠くに感じる」

 

「違う!!」

 

「せっかく余興になったものを!

 

つまらん!

 

 

六郎!」

 

 

六郎の名を呼びながら、幸村は自分が持っていた扇を六郎に投げ渡した。六郎は扇を受け取り、幸村と扇を交互に見た。

 

 

「舞え!」

 

「は!?」

 

「酒席には付き物だろう!」

 

「た、戯れを……」

 

「何を言う。

 

久方ぶりに見てみたいのだ。

 

 

それとも何だ?もう足腰が立たぬほど酔ったのか?」

 

「……」

 

 

「舞なら、アタシにお任せ!!」

 

 

六郎と幸村の上を飛び越え、樽の上に着地する伊佐那海が酔っ払いながら、皆の前に出た。

 

 

「出雲の神楽舞!とくとご覧あれ!!」

 

「あぁもう……どいつもこいつも」

 

「こうなっては誰も止められまい」

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