「いいぞぉ!!かわい子ちゃん!!」
「アー!伊佐那海ズルいぃ!
明日花も舞うぞー!」
飛び上がり、伊佐那海の隣に降りた明日花は脚のケースから鉄扇を取り出し彼女と共に舞った。
「うおー!!盛り上がってきたぜ!!」
「明日花嬢!!最高だぁ!!」
「さすが伊佐那海、それに明日花。
舞は絶品だのう」
手を鳴らしながら、笑う幸村……
そんな幸村を煙草を銜えながら見つめる甚八……
甚八の目線に気付いたのか、幸村は伊佐那海と明日花の舞を見ながら口を開いた。
「儂の顔に、何かついておるのか?」
「!」
「ん?」
「いや……
十蔵と優助から、上田の若君だって聞いたが……
とても、そうは見えねぇな。
どう見ても、遊び人とその仲間ってとこだ」
「はは!全くだ」
「ほら、怒んねぇし……
お偉いさんって感じがしねぇんだよなぁ……」
「そりゃどうも」
「……
アンタ、あの時どうしようと思った?
あんな軍勢に囲まれてよう、逃げ場もなくて……
行けるのはもう地獄か極楽しかねぇだろ?」
「さて……どうしたろうなぁ」
「呆れたな!
何も考えてなかったんじゃねぇだろうな?」
「ふーむ……
あ奴らがおるなら、何とかなる……
でなければ、ここで新しい出会いがあるか……と思ったのよ」
「アンタ、大物か馬鹿か?」
甚八の言葉に、鼻で笑う幸村……
「そういうお前は何者なのだ?何故、『海賊』なのだ?」
「……
自由だからよ」
「……」
「陸の上は、見えねぇ線で誰のもんかキッチリ区分けされてやんがろ?
そこにいる限り、自分も誰かのモノ(所有物)ってわけだ。
俺様は誰のもんでもねぇ……俺の主は俺自身。
やれ年貢を納めろだの、戦になりゃ手を貸せだの……息苦しいったらありゃしねぇ。
楽しく酒飲んで暮らすためにゃ、これ(海賊)が一番って訳なのさ。
広い海の上、無限の空の下にいる限り、俺様は自由であり続ける」
「縛られるのが嫌か?」
「ああ、ゴメンだね。」
「どこに存在しようと、縛られるものは縛られるし、自由なものは自由なのだがな……」
「あん?」
「誰に仕えようと、どこでどの様に生きようと、それが己の意志ならば『自由』だろう。
心は、縛られることは無い」
「人をはべらせてる若君が、何を言う」
「人聞きの悪い事を言うな」
「優助と明日花以外の連中は、金で雇ってんだろ?」
「生憎、うちは貧乏でな。
ついでに言うと、領土もちっぽけなもんだ……
それでもあ奴等は、それぞれの意志で、ここにいる」
「……
アンタ、タチ悪ぃな……」
「ん?」
「甚!勝負―!」
横から駆けてきた明日花は、どこからか持ってきた槍を甚八目掛けて勢いよく振り下ろした。その攻撃を、甚八は難なく受け止めた。
「俺様に勝とうなんざ、百年早いわ」
「う~」
「どこから持ってきたんですか!!その槍!!」
腕を組み怒りの形相をした優助は、彼女を睨みながら怒鳴ってきた。
「あ!酔っぱらい父さん」
「酔ってません。
それより、その槍どこから持ってきたんです?明日花」
「倉庫!」
「明日花!!
倉庫の物を持ち出すなとあれ程」
「いーじゃねぇか、優助」
怒鳴ろうとした優助の肩に、甚八は腕を乗せ酒瓶を差し出した。
「ガキは伸び伸びと育てる…だろ?」
「っ……」
「紫苑がいたら、そう言うぜ?」
「いくら伸び伸びと言えども、躾はするものです!」
「相変わらず、堅ぇなぁ」
「堅くて結構です!」
“ゴトン”
「!!」
突然、大きく揺れた船……
船の外を見ると、船を襲う一匹の巨大蟹……
「うわあぁ!!蟹坊主だ!!」
「わー!!おっきい蟹さんだー!」
「蟹ー!!」
「でかすぎだろ!!」
「大湖(オオウミ)の主だ!!人食いの化けものだ!!」
「逃げるんだ!!急旋回!!」
「美味そうだな」
言いながら、鎌之介は船首の所まで行き鎖鎌を出した。
「そういや、つまみが無かったよな?食えんじゃねぇか?これ」
「ホント?!わーい!おつまみおつまみ!
才蔵、殺っちゃって!」
「ば、バカな!!死ぬぞ!!
逃げろ!!」
「大丈夫ですよ」
騒ぐ船員に、優助は得意げな顔で言った。船員達は彼が何を言ってるかが分からず、互いを見合っていた。
「見てなさい」
「仕方ねぇなぁ……」
「え!?」
「ま、腹も減ってたし、ちょうどいい」
剣の束を手に取り、攻撃してきた蟹の足を飛んで避けた。
「気の荒え蟹だなあ!!」
「そらよ!!」
才蔵に続いて、鎌之介は風を起こし蟹を攻撃した。
「随分、身が詰まってそうじゃねぇか?」
「若も、召し上がりたいのですか?」
「うむ、そうだな!腹が減ったしな」
「父さん、参戦していい?!」
「好きにしなさい」
「やっほー!!」
腰に着けていたケースから槍を出し、蟹の攻撃を飛び避け蟹の頭に槍を振り下ろした。そんな明日花を見ながら、才蔵は船の縁に着地し、もう一度飛び上がり剣を振った。
「忍法霧隠式陽炎斬!」
攻撃が当たった蟹は、足を斬り落とされそのまま水の中へと消えて行った。
そんな戦いを見る甚八……
足をキャッチし船の上に降りた才蔵は、甚八に足を突き出した。
「さっきの電撃で、一丁焼いてくれよ、海賊のオッサン」
「……
滅茶苦茶だなぁお前等……
気に入った!!」
大声で叫びながら、甚八は才蔵から受け取った蟹の足を雷で焼いた。
「オー、いい匂い!」
「食うぞ!!」
「アタシもアタシも!」
翌朝……
目的地へ上陸した船から、才蔵達は降り陸へ上がった。
「んじゃあ、ちょっくら行ってくらぁ!」
「あーい!
お気をつけて、お頭!!」
「明日花嬢!優助の旦那!お頭を頼んだぞ!!」
「応!任せとけ!」
「分かりました」
「テメェ等、俺様達がいねぇからって、手ぇ抜くんじゃねぇぞ!」
「ちゃんと直しときますって!」
「お土産よろしく!」
「おう、任せとけ!」
「そういや甚、ヴェロニカ連れてくの?」
「もちろんだ」
船の船員と言い合う甚八に、才蔵は疑問を感じながら甚八を見た。
「……いつの間に、たらし込んだんだ?あのオッサン」
「あの海賊の人も上田に行くの?」
「らしいな」
「なあんか、どんどん人が集まるねぇ!不思議!
最初は才蔵にあって……
それから上田の皆に、鎌之介、お兄ちゃん、弁ちゃんに、海賊のオジサンって!賑やかぁ!」
「そういや、そうだなぁ」
「うむ、そうだな」
伊佐那海の話を聞いていたのか、十蔵はマントを羽織りながらその話へ入るかのように話してきた。
「人の縁とは、実に面白いものよ」
「お。
いつもの筧さんって感じだな」
「そうか?」
「うん!そうそう!」
「さーて……
上田に帰るか!」