BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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伊佐那海の舞を見る船員達……


「いいぞぉ!!かわい子ちゃん!!」

「アー!伊佐那海ズルいぃ!

明日花も舞うぞー!」


飛び上がり、伊佐那海の隣に降りた明日花は脚のケースから鉄扇を取り出し彼女と共に舞った。


海賊の生き様

「うおー!!盛り上がってきたぜ!!」

 

「明日花嬢!!最高だぁ!!」

 

「さすが伊佐那海、それに明日花。

 

舞は絶品だのう」

 

 

手を鳴らしながら、笑う幸村……

 

 

そんな幸村を煙草を銜えながら見つめる甚八……

 

 

甚八の目線に気付いたのか、幸村は伊佐那海と明日花の舞を見ながら口を開いた。

 

 

「儂の顔に、何かついておるのか?」

 

「!」

 

「ん?」

 

「いや……

 

 

十蔵と優助から、上田の若君だって聞いたが……

 

とても、そうは見えねぇな。

 

 

どう見ても、遊び人とその仲間ってとこだ」

 

「はは!全くだ」

 

「ほら、怒んねぇし……

 

お偉いさんって感じがしねぇんだよなぁ……」

 

「そりゃどうも」

 

「……

 

アンタ、あの時どうしようと思った?

 

 

あんな軍勢に囲まれてよう、逃げ場もなくて……

 

行けるのはもう地獄か極楽しかねぇだろ?」

 

「さて……どうしたろうなぁ」

 

「呆れたな!

 

何も考えてなかったんじゃねぇだろうな?」

 

「ふーむ……

 

あ奴らがおるなら、何とかなる……

 

でなければ、ここで新しい出会いがあるか……と思ったのよ」

 

「アンタ、大物か馬鹿か?」

 

 

甚八の言葉に、鼻で笑う幸村……

 

 

「そういうお前は何者なのだ?何故、『海賊』なのだ?」

 

「……

 

 

自由だからよ」

 

「……」

 

「陸の上は、見えねぇ線で誰のもんかキッチリ区分けされてやんがろ?

 

そこにいる限り、自分も誰かのモノ(所有物)ってわけだ。

 

 

俺様は誰のもんでもねぇ……俺の主は俺自身。

 

 

やれ年貢を納めろだの、戦になりゃ手を貸せだの……息苦しいったらありゃしねぇ。

 

 

楽しく酒飲んで暮らすためにゃ、これ(海賊)が一番って訳なのさ。

 

広い海の上、無限の空の下にいる限り、俺様は自由であり続ける」

 

「縛られるのが嫌か?」

 

「ああ、ゴメンだね。」

 

「どこに存在しようと、縛られるものは縛られるし、自由なものは自由なのだがな……」

 

「あん?」

 

「誰に仕えようと、どこでどの様に生きようと、それが己の意志ならば『自由』だろう。

 

心は、縛られることは無い」

 

「人をはべらせてる若君が、何を言う」

 

「人聞きの悪い事を言うな」

 

「優助と明日花以外の連中は、金で雇ってんだろ?」

 

「生憎、うちは貧乏でな。

 

ついでに言うと、領土もちっぽけなもんだ……

 

 

それでもあ奴等は、それぞれの意志で、ここにいる」

 

「……

 

 

アンタ、タチ悪ぃな……」

 

「ん?」

 

 

「甚!勝負―!」

 

 

横から駆けてきた明日花は、どこからか持ってきた槍を甚八目掛けて勢いよく振り下ろした。その攻撃を、甚八は難なく受け止めた。

 

 

「俺様に勝とうなんざ、百年早いわ」

 

「う~」

 

「どこから持ってきたんですか!!その槍!!」

 

 

腕を組み怒りの形相をした優助は、彼女を睨みながら怒鳴ってきた。

 

 

「あ!酔っぱらい父さん」

 

「酔ってません。

 

それより、その槍どこから持ってきたんです?明日花」

 

「倉庫!」

 

「明日花!!

 

倉庫の物を持ち出すなとあれ程」

「いーじゃねぇか、優助」

 

 

怒鳴ろうとした優助の肩に、甚八は腕を乗せ酒瓶を差し出した。

 

 

「ガキは伸び伸びと育てる…だろ?」

 

「っ……」

 

「紫苑がいたら、そう言うぜ?」

 

「いくら伸び伸びと言えども、躾はするものです!」

 

「相変わらず、堅ぇなぁ」

 

「堅くて結構です!」

 

 

“ゴトン”

 

「!!」

 

 

突然、大きく揺れた船……

 

 

船の外を見ると、船を襲う一匹の巨大蟹……

 

 

「うわあぁ!!蟹坊主だ!!」

 

「わー!!おっきい蟹さんだー!」

 

「蟹ー!!」

 

「でかすぎだろ!!」

 

「大湖(オオウミ)の主だ!!人食いの化けものだ!!」

 

「逃げるんだ!!急旋回!!」

 

「美味そうだな」

 

 

言いながら、鎌之介は船首の所まで行き鎖鎌を出した。

 

 

「そういや、つまみが無かったよな?食えんじゃねぇか?これ」

 

「ホント?!わーい!おつまみおつまみ!

 

 

才蔵、殺っちゃって!」

 

「ば、バカな!!死ぬぞ!!

 

逃げろ!!」

 

「大丈夫ですよ」

 

 

騒ぐ船員に、優助は得意げな顔で言った。船員達は彼が何を言ってるかが分からず、互いを見合っていた。

 

 

「見てなさい」

 

「仕方ねぇなぁ……」

 

「え!?」

 

「ま、腹も減ってたし、ちょうどいい」

 

 

剣の束を手に取り、攻撃してきた蟹の足を飛んで避けた。

 

 

「気の荒え蟹だなあ!!」

 

「そらよ!!」

 

 

才蔵に続いて、鎌之介は風を起こし蟹を攻撃した。

 

 

「随分、身が詰まってそうじゃねぇか?」

 

「若も、召し上がりたいのですか?」

 

「うむ、そうだな!腹が減ったしな」

 

「父さん、参戦していい?!」

 

「好きにしなさい」

 

「やっほー!!」

 

 

腰に着けていたケースから槍を出し、蟹の攻撃を飛び避け蟹の頭に槍を振り下ろした。そんな明日花を見ながら、才蔵は船の縁に着地し、もう一度飛び上がり剣を振った。

 

 

「忍法霧隠式陽炎斬!」

 

 

攻撃が当たった蟹は、足を斬り落とされそのまま水の中へと消えて行った。

 

そんな戦いを見る甚八……

 

 

足をキャッチし船の上に降りた才蔵は、甚八に足を突き出した。

 

 

「さっきの電撃で、一丁焼いてくれよ、海賊のオッサン」

 

「……

 

滅茶苦茶だなぁお前等……

 

 

気に入った!!」

 

 

大声で叫びながら、甚八は才蔵から受け取った蟹の足を雷で焼いた。

 

 

「オー、いい匂い!」

 

「食うぞ!!」

 

「アタシもアタシも!」




翌朝……


目的地へ上陸した船から、才蔵達は降り陸へ上がった。


「んじゃあ、ちょっくら行ってくらぁ!」

「あーい!

お気をつけて、お頭!!」

「明日花嬢!優助の旦那!お頭を頼んだぞ!!」

「応!任せとけ!」
「分かりました」

「テメェ等、俺様達がいねぇからって、手ぇ抜くんじゃねぇぞ!」

「ちゃんと直しときますって!」

「お土産よろしく!」

「おう、任せとけ!」

「そういや甚、ヴェロニカ連れてくの?」

「もちろんだ」


船の船員と言い合う甚八に、才蔵は疑問を感じながら甚八を見た。


「……いつの間に、たらし込んだんだ?あのオッサン」

「あの海賊の人も上田に行くの?」

「らしいな」

「なあんか、どんどん人が集まるねぇ!不思議!


最初は才蔵にあって……


それから上田の皆に、鎌之介、お兄ちゃん、弁ちゃんに、海賊のオジサンって!賑やかぁ!」

「そういや、そうだなぁ」

「うむ、そうだな」


伊佐那海の話を聞いていたのか、十蔵はマントを羽織りながらその話へ入るかのように話してきた。


「人の縁とは、実に面白いものよ」

「お。

いつもの筧さんって感じだな」

「そうか?」

「うん!そうそう!」


「さーて……


上田に帰るか!」
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