BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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冷酷な笑みを溢すアナスタシア……


「佐……助……」


六郎の弱った声を聴いてか、佐助のミミズクが飛んできてアナスタシアに攻撃した。ミミズクの合図に、佐助は六郎の前に立ち武器を構えた。

そんな佐助をアナスタシアは、容赦なく蹴りを入れた。その蹴りを受けて、佐助はようやく理解した。


(この殺気……本気!!)

「邪魔するなら、殺すわよ?」


十の根源と支える根源

その一方……

 

床に就く幸村……

 

 

「……

 

男の夜這いなど、求めてはおらんぞ」

 

 

天井裏に潜む者に、幸村は目を閉じたままそう言った。

 

裏に潜んでいた者は、文句を言い天井裏から降りてきた。

 

 

「気付いてんなら、早く言えよ!オッサン!」

 

「何だ才蔵、閨の相手でもしてくれるのか?」

 

「殺すぞ!!」

 

「では何だ?ん?」

 

「……両手の指の数。

 

十人の勇士ってのは、一体何なんだ?」

 

「……」

 

「のらりくらりと、かわされんのも面倒だからな……

 

一対一で話そうぜ」

 

「最初に言ったではないか……

 

儂が見初めた強者と」

「そりゃ建前だろ」

 

「十人揃えば、天下が取れると」

「できるか、ボケ!!少なすぎだ!!

 

……オッサン」

 

「……

 

 

お前だけの方が、都合がよい」

 

「あん?」

 

「まぁ座れ。若干小難しいんでな」

 

(小難しい?)

 

 

疑問に感じながらも、才蔵は幸村の前に座った。幸村は引出から紙と筆を取り出し、何かを書き出した。

 

 

「おい、何書いてんだよ?」

 

「ほれ。

 

これだ」

 

 

幸村が書いたもの……

 

 

それは、陰陽太極図を囲う様にして書かれている八個の丸と、その二つの絵を囲うようにして大きく書かれた丸を描いた図だった。

 

 

「陰陽太極図じゃねぇか。珍しくもねぇ……

 

 

けど……

 

何だ?この周りの丸と、この大きく書かれた丸は?見たことねぇぞ」

 

「この図はな……

 

森羅万象を形作る、十の根源を表しておるのだよ。

 

 

真田家に伝わる秘文書に、こう記してある……

 

土、金、雷、火、氷、水、草……

 

そして光と闇……

 

 

この十の根源の力を濃く受け継ぐものが、この世に生を受け世を変える力となると……」

 

「……

 

は?」

 

「自分から聞いといて、何だ!その言い草は!

 

よし!終了!帰れ、お前」

 

「ああっっ、悪ぃ!ちゃんと聞いてるって!

 

 

つーか、その秘文書ってどれよ?この間のか?」

 

「いいや、あれは出雲文字を解読するためだけのモノだ」

 

「出雲文字って、俺達が地下で見た奴だろ?

 

あれ、何て書いてあったんだ?」

 

「忘れた」

 

「嘘つけ」

 

「全ては、六郎が記憶しておるのでな。いちいち覚えておらぬわ。」

 

「そうそう!あいつ(六郎)は一体何者なんだよ!?

 

俺の記憶を吸い取ったあの瞳……」

 

「六郎は『水』。

 

水面に映すように見たものをすべて記憶する。

 

真田家に、代々使える術士の一族の者だ」

 

「六郎さんが水なら……

 

アナは氷ってか?」

 

「そうだ。

 

 

全てを凍らせる『氷』のアナスタシア。

 

森を庭とする『草』の佐助。

 

『風』の鎌之介。

 

金の筒の使い手『金』の十蔵。

 

地を揺るがす『土』の清海。

 

火薬に長けた『火』の弁丸。

 

『雷』の甚八。」

 

「そう言われると、当てはまってんな。怖ぇくらい……

 

 

じゃあ、俺は何だ?『闇』か?」

 

「いや、お前は違う」

 

「違うって……他にねぇじゃねぇかよ。

 

あれか?俺だけその十人に入ってねぇとか……

 

それとも、このデケェ丸ってか?

 

 

まあ、別に構わねぇけど……」

 

「そのデカイ丸は別の勇士だ。

 

お主は、これだ。ほれ、ちゃんとあるではないか?」

 

 

そう言いながら、幸村は手に持っていた煙管を紙に叩き、白の方を指し話した。

 

 

「お前は『光』だ。才蔵」

 

 

有り得ない言葉を、幸村から聞いた才蔵は、有り得なさに思わず吹き出した。

 

 

「ワハハハ!そりゃねぇよ!!似合わねぇ!

 

 

じゃあ何だ?残った『闇』が……」

 

 

名前を言い掛けた時、才蔵は今まで見た力を思い出した。それを察した幸村は、才蔵の代わりにその名を口にした。

 

 

「伊佐那海だ」

 

「いや……待て、そんなの……

 

それこそ似合わねぇ!」

 

「お前も見ただろう?伊佐那海のあの力……」

 

「あ……ありゃあ、あの簪(奇魂)の力だろうが!

 

そもそも、アイツは巫女だろ!」

 

「お前は奇魂の本当の意味を知らん」

 

「……

 

 

?!

 

 

ちょっと待て!伊佐那海が本当に『闇』なら、残ったこのデカイ丸……この十の根源を囲ってるこの丸は?」

 

「その十の根源を作り出し、その根源に力を与える勇士だ」

 

「力を……与える…勇士……」

 

「十の根源と言えと、力には限りがある。

 

その力を与え、そして自身も同じ力を持つ勇士」

 

「……!?まさか、その勇士ってのが」

 

「元武田軍隊長、水と雷の力を使う侍・山本優助……

そして、その侍と光坂一族の母を持ち、侍同様、水と雷、更に多数の力を秘めた少女・山本明日花……

 

支える勇士こそ、優助と明日花だ」

 

「あの二人が?

 

けど、明日花も優助も『水』の技しか使ってねぇじゃねぇか」

 

「水だけ使い、他の技は使っていないとしたらどうだ?」

 

「!」

 

 

記憶に蘇る過去……出雲大社で見た、明日花の技。突然木の根が生え、政宗に攻撃した。

 

 

『お主は別の勇士だ』

 

 

あの時幸村が言っていた、別の勇士というの意味が才蔵は、やっと理解した。

 

 

「……

 

 

分かんねぇ!!色々、理解できねぇ!!

 

その秘文書とやらを見せろ!!」

 

「ない。焼いた」

 

「ハア!?」

 

「文書を狙う輩が多くてなぁ……

 

内容は全て、六郎の眼に写し取っておる」

 

「六郎さんか……

 

!!(この気配!!)」

 

 

突然立ち上り、才蔵は幸村の部屋を出て行った。

 

 

「おい、才蔵!どうしたんだ!?」




「ハァ……ハァ……ハァ……」


六郎と共に、森の中へ逃げ込んできた佐助……

六郎を隠すように前に立ち、追い駆けてきたアナスタシアに武器を向けた。


「いい加減、六郎をよこしなさい」

「何故、六郎を!」

「忍の仕事に『何故』はないわ!」


その答えを聞いた佐助は、アナスタシアに攻撃しようと突進してきた。アナスタシアは突進してきた佐助に蹴りを入れようと足を出した。佐助はその蹴りを避け、アナスタシアの下へと周り顔目掛けて、足を上げた。アナスタシアはギリギリで、その子蹴りを避け、飛び上がった佐助目掛けてクナイを投げた。

その攻撃を、佐助は爪で弾き飛ばし、地面へ着地した。着地すると、どこからか白い霧が出てきた。


「伊賀亜流氷術氷葬!!」


アナスタシアの攻撃を受けた佐助の下半身は、氷漬けとなり佐助は身動きが取れなくなってしまった。


「もう逃げられないわ。

心の臓まで、凍りつくわ」


その状況を見た六郎についていた二匹の狼が、アナスタシアに襲うと構えた。


「動くな!!六郎、守れ!!」


佐助の命令に、狼達は動けず心配そうな鳴き声を上げた。


「甘ちゃんのあなたには、分からないのよ佐助……

本当の忍の心なんて……


あなたの事、気に入ってたのに残念だわ」


氷漬けになった佐助の顎を手で持ち、顔を近付けようとした時、どこからか数本のクナイがアナスタシア目掛けて飛んできた。

アナスタシアは、すぐに佐助から離れそのクナイを避け、クナイが飛んできた方を見た。


「……


どういうことだ!?」


そこにいたのは、息を切らした才蔵だった。




「何してるの?」


そこへやってきた伊佐那海と鎌之介……


「何の騒ぎ?」


伊佐那海と鎌之介の後に続くかのようにして、眠い目を擦る明日花がアナスタシアを見ながら言った。

伊佐那海は怯えた顔で、アナスタシアと凍り付けになった佐助を交互に見ながら口を開いた。


「どうしたの?

喧嘩?」


その言葉に、アナスタシアは冷酷な笑みを浮かべた。


「伊佐那海……

心地いい場所なんて、どこにもないわ。


仲間?家族?

あなたが拠り所にしているもの……全ては欺瞞(まやかし)よ!!」


その言葉を言い放ったと同時に、アナスタシアは剣を鞘から抜き取り佐助の胸を貫いた。


「佐助!!」
「佐助!!」

「あ……や……」

「アナ……お前…」


佐助を刺したアナスタシアに戸惑う伊佐那海……

仲間を刺したアナスタシアを見る明日花……


(何で……どうして…)


その時、伊佐那海の髪に着けていた簪、奇魂が黒く光り出しそれと共に伊佐那海の手が黒い痣が浮き出てきた。


その奇魂の光を見た明日花は、居た堪れない恐怖に見舞われ、その恐怖心に答えるかのように、首から下げていた勾玉が白く光り出した。


「!!」


伊佐那海と明日花を中心に、黒いオーラと白いオーラが対立するかのように大きく広がった。
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