BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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才蔵達の前に立つ半蔵……


「服部…半蔵」


剣を構える才蔵……

出雲の地下で闘い、倒したはずの敵が目の前にいる……


「ここで殺り合うつもりはありませんよ……

ちょっと君を、誘いに来ただけです」

「ざけんな!!」


束を握り、鞘から引き抜こうとした才蔵に、半蔵は刀を手に取り抜き出そうとした束を止め、才蔵に顔を近付けた。


「人の話は、きちんと聞きましょうか?」


半蔵から離れ、距離を置いた才蔵……


「何を偉そうに!徳川の犬が!!」

「……

この状況、分が悪いことは承知でしょう?


そこのお歴々、確かに用はありませんが……殺してもいいんですよ?」


その言葉に、三成は傍に置いてあった刀を持ち束を握り、半蔵を睨んだ。


「貴様!!徳川の手の者か?!

我等の動向を探っていたな?」

「辺鄙だと思っていたら、意外に客人が多いんですね?」

「うるさいわ、兼続」


半蔵は、刀をしまいながら、話しだした。


「今の話を、聞いていなかったのですか?

貴方方には、用はありません。今のところは……


今日は別件で、伺ったのです」

「……何を企んでいる?」

「企む?

いいえ、もう幕は上がっています。


伊賀異形五人衆と勇士の惨劇の幕が」

(伊賀異形五人衆!!)

「神速、剛力、幻惑、妖術、冷酷……


五つの忍技を極めた我等五人に掛かれば……

勇士など烏合の衆……皆殺しも造作ないこと!


分かるでしょう、伊賀者の君なら……ね?

あ!そうそう、伊賀異形五人衆の他にもう一人助っ人を呼んでいるんです」

「助っ人?」

「徳川に就いている光坂一族の風使い……

一族の中では、裏切り者でしたっけ」


半蔵の声に黙る才蔵……


「オッサン……」

「うむ……行くがいい」


才蔵の声に、幸村は何かを察したのか命を出した。才蔵は出していた剣を鞘にしまい、半蔵に近付き部屋を出た。


「では皆さん、いずれまた」


それを言うと、半蔵は障子を閉めた。


部屋に残った幸村達……


「な、何やら、訳有の様だな……幸村」

「このご時世、物騒なのはどこも変わらぬようですね……」


惨劇の幕開け

場所は変わり、森の中にある滝壺……

 

 

そこでは、滝に打たれ瞑想をする清海と、それが終わるのを待つ弁丸がいた。

 

 

(まさか、我が妹が黄泉の神だったとは……)

 

 

昨夜の話を聞いた清海……

 

頭に蘇る、幼き頃の伊佐那海の姿……

 

 

(信じられん……

 

 

ああ、伊佐那海よ。兄はどうすれば……

 

 

これは、拙僧への試練か!?この心の痛みに耐え、前へ進めと……神よ!!)

 

 

滝に打たれる清海を、遠くにある岩の上から見る弁丸……

 

 

「よくもまぁ、飽きずに滝に打たれてるよ。

 

あれで、何か分かるのかなぁ?余計頭悪くなりそうだけど……

 

 

あぁあ!もう!退屈退屈ぅ!!」

 

 

岩の上で寝そべる弁丸……

 

 

その時、何かを分かったのか清海は大声を上げて、立ち上がった。

 

 

「そうか……そうだ!!

 

 

神仏は皆同じ!!信じた数だけ救われる!!

 

例え、黄泉の者であろうとも……伊邪那美命は紛れもなく神!!

 

 

拙僧は妹を……伊佐那海をただ信ずればいいのだ!!

 

妹こそ我が神!!なんと素晴らしいことか!!」

 

(何か知らないけど、分かったみたい……)

 

「こうしてはおれん!!

 

伊佐那海にこのことを伝えねば!!

 

 

何も悲しむことは無いと!!」

 

 

 

“ドーン”

 

 

突然、清海の真上から黒い鉄球が落ちてきた。

 

 

「せ、清海!!」

 

「おや?避けると思ったのに、トロイねぇ」

 

 

鉄球を投げたと思われる者が、宙に浮かんでいた。

 

 

 

 

同じ頃……

 

 

川で釣りをする甚八……

 

 

釣り糸が引き魚を釣るが、釣れど釣れど小さな魚ばかり……

 

 

「小物しかかからんなぁ……

 

酒の肴にもなりゃしねぇ」

 

 

その時、隣で寝そべっていたヴェロニカが立ち上がった。

 

 

「こんな小魚じゃ、嫌だってか?それとも、お前が代わりに取って来てくれるのか?ヴェロニカ」

 

 

甚八の言葉に、返事をするかのように鳴き声を上げ、そのまま森の中へと姿を消した。

 

 

「ようし!!お前が戻る頃には、大物釣っといてやると!!」

 

 

川へ再び釣糸を川へ投げ入れる甚八……

 

すると、五分も経たないうちに糸が引いた。

 

 

「おお!この手応え、来たか!!」

 

 

強く引っ張る糸に、甚八は大物だと察した。

 

 

「よしよし!!」

 

 

大物の頭が水面から見え、糸を引っ張る甚八……

 

すると水面が凍り、大物を釣っていたも凍ってしまった。

 

 

「ああ!?」

 

 

凍った水面から、氷を踏む足跡と共に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「初めまして、十番目の勇士さん……」

 

「何だぁ?」

 

「私はアナスタシア……

 

お会いできて嬉しいわ」

 

 

アナスタシアの姿を見た甚八は、釣竿を捨てニヤついた顔を浮かべて立ち上がった。

 

 

「ああ、俺様も会いたかったぜ……

 

金髪異人爆乳女……十蔵の言った通りだな」

 

「やっと、お近付きになれるってわけだな」

 

「すぐにサヨナラよ」

 

「連れねぇじゃねぇか。

 

一度くらい、肌合せて見ねぇか?」

 

「触れてごらんなさい……凍るわよ!」

 

 

冷気を放ち、威嚇するアナスタシア……

 

 

 

 

同じ頃……

 

 

城下町を、鎖を回しながら歩く鎌之介……

 

 

「あぁあ!!ヒマヒマァ!!ヒマァア!!

 

なーんも、楽しいことがねぇ!!

 

 

才蔵は小姓に付きっ切りだし、馬鹿女のせいで何か、雰囲気暗ぇし!!

 

 

ったく、面白くねぇ!!

 

にょろ(雨春)を弄って遊ぼうにも緑(佐助)とどっか行っちまってるし!!

 

明日花と殺り合おうと思ったのに、青二才がどっかに連れて行っちまうし!!

 

 

あぁあ!!才蔵と滾り合いてぇ!!……?」

 

 

そんな鎌之介の前に、黒と白の毛並みをした鼬が姿を現した。

 

 

「にょろ!!お前、ちょっと黒くなった?」

 

 

言いながら、近づき抱こうとした時、鼬は危険を察したのか鎌之介から逃げ出した。

 

 

「待てよにょろ!!

 

俺と遊ぼうぜ!!

 

 

逃がさねぇ!!」

 

 

鼬の後を追い駆ける鎌之介……

 

角を曲がった瞬間、辺りが真っ暗になった。

 

 

「?」

 

「何をしているんです?」

 

 

後ろから、男の声が聞こえ鎌之介は後ろを振り返った。

 

 

その男は、不敵な笑みを溢して言った。

 

 

「姫様」

 

 

 

同じ頃……

 

 

優助の膝に頭を乗せ寝息を立てる明日花……眠る彼女の頭を優助は撫でた。ふと吹く風に、何か違和感を感じたのか後ろを振り返った。

 

 

宙で胡座をかく鷲の面を着けた男……

 

 

「お久し振りです、隊長」

 

「味方……ではなさそうですね」

 

「当たり。

 

俺、今徳川に就いているんで。この意味、分かりますよね?」

 

「なるほど……裏切り者と言う事ですか」

 

 

その声で目が覚めたのか、明日花は目を擦りながら起き上がった。

 

 

「父さん、どうかしたの?」

 

「……その子ですか。もう一つのターゲット」

 

 

その声に、明日花は前を向き立っている優助の隣に並び警戒した。

 

 

「戦う気満々ですねぇ……

 

けど、貴女を傷付けるなって上から言われてるんで」

 

「明日花!!!逃げなさい!!」

 

 

彼女の前に立ち、刀の束を握り引きながら優助は叫んだ。明日花は後ろへ下がりつつ振り返り、駆け出した。

 

 

「逃がしゃしない」

 

 

鉄扇を広げ、男は思いっ切り煽り風を起した。風は駆けだした明日花の周りに吹き荒れ、彼女を閉じ込める様にして囲い、男の元へと連れて行かれた。

 

 

「明日花!!」

 

「これでもう逃げられないでしょ?」

 

「早く明日花を開放しなさい!!」

 

「それは出来ません。

 

ただ、一つだけ方法があります」

 

「?」

 

「俺と戦って、もし勝てば大事な娘は解放します。

 

負ければ、このまま貰いますけどね?」

 

「……」

 

 

明日花を見る優助……彼女は、出ようと風の檻を腕で叩くがビクともしなかった。そして叩き終えた瞬間、四方から何かが飛んだのか、彼女の体に痛々しい傷が出来た。

 

 

「あ、そうそう……一つ言い忘れていました。

 

その檻に攻撃すると、反撃来るから気をつけて下さい」

 

「明日花、すぐに開放します!ですから、大人しくしててください!

 

勝てば本当に、娘を開放するんですね?」

 

「まぁな」

 

「……いいでしょう」

 

 

刀を抜き優助は構えた。

 

 

「光坂風介……

 

君が隊長である僕と、互角という自信があるというのであれば相手になります」

 

「そうきませんと」

 

 

 

 

その頃、森では灰桜と名乗る女の前に、武器を構える佐助と十蔵……

 

灰桜の言葉を聞いた佐助はその言葉を繰り返し、何かを思い出したかのように言った。

 

 

「噂、あった」

 

「何がだ?」

 

「裏の忍……

 

伊賀異形五人衆……

 

 

正体不明、能力特殊、忍を抹殺する忍」

 

「何故、そのような者共が、上田に……」

 

「あなた(勇士)達を、皆殺しにせよと頭目が申しましたので……

 

 

それに、私にも、個人的にお二人に死んでいただきたい事情がありまして。

 

我が姉、桜割の仇……討たせて貰いますわ!」

 

「!!」

 

「いざ!」




森の中に建つ鳥居の上に着地する半蔵と才蔵……


「今頃、皆どうしているでしょうねぇ?」

「……何が、狙いだ?」

「狙い?仕事ですよ、仕事!

我等がこの先、気持ちよく生きるためのね!


『力』を手に入れ、誰にも使われずに生きる……実に細やかな可愛らしい願いです。


権勢を翳すだけの、無能な馬鹿どもに仕えるのは飽きました。これからは我ら忍が大名を意のままにする……

闇からこの世を操る……小娘を手に入れれば、それは容易く叶うこと。

強過ぎる力が、絶大な牽制となる」

「なぜ伊佐那海の秘密を知っている?」

「驚くことは無いでしょう……

出雲の巫女には、ずっとそちらにいたのですから、アナスタシアが」

「テメェの駒だったのか……じゃあ」

「徳川も何も関係ありませんよ。あの女は、俺のモノです。ずーっと昔からね。


お喋りはこれくらいに、今は殺し(仕事)の時間です。」


そう言いながら、半蔵は腰に着けている刀の束を握り、鞘から引き抜いた。それに合わせて、才蔵も剣を抜き構えた。


「さぁ、始めましょう!!」
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