BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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朱髪と刺青の姫

暗い部屋にいる鎌之介……

 

 

(ここ……どこだっけ……

 

 

何も見えない……)

 

 

足音が近づく音が聞こえると、扉が開き陽の光が中へ指し込んだ。

 

 

「ここにいらっしゃったんですか?姫」

 

(あ……この黒い影は……)

 

 

目を開け、声の人物に目を向ける鎌之介……

 

扉を開けた者は、笑みを溢して言った。

 

 

「いつまで隠れて、いらっしゃるのですか?」

 

「(そうだわ……隠れていたんだった)

 

どうしても行かなきゃダメ?」

 

 

ドレスを着た鎌之介は、女口調で目の前にいる執事の格好をした男に話した。

 

 

「そんなに、今夜の晩餐会に行くのが、お嫌いですか?」

 

「あれは、晩餐会という名の、お見合いでしょう。

 

私……興味ないわ!」

 

 

文句を言いながら、鎌之介はドレスに着いた埃を掃いながら立ち上がった。

 

 

「姫を気に入っておられる方が聞いたら、悲しみますよ?」

 

「……

 

 

そんな人、いないわ。

 

たいていの男の人は、この朱い髪と……

 

 

一族伝統の刺青を嫌うもの……

 

まぁ、どうでもいいことだけれど」

 

 

髪を指で弄りながら言う鎌之介……

 

すると、執事の男は鎌之介に寄り髪を触った。

 

 

「そうですか?私は綺麗だと思いますよ。

 

その刺青も、この髪の色も……」

 

 

髪を触られる感触……

 

その感触に、鎌之介はどこか懐かしさが体中に蘇った。

 

 

(温かい手……

 

あの時みたい……

 

 

あの時!?)

「姫!!」

 

 

二人のもとへ、ドレスを持った侍女が駆け寄ってきた。

 

 

「散々探しましたよ!!早くお着替えを!

 

 

さぁ、どれになさいます!?お選びくださいまし!!」」

 

 

言いながら、侍女は持っていたドレスを見せた。ところが鎌之介は、不機嫌そうな表情を浮かべた。

 

 

「どれも嫌よ!!苦しいもの!」

 

「姫ぇ!!」

 

「姫は、行きたくないと駄々を捏ねておいでだ」

 

「何を呑気に、ライズ様!!」

 

「では、姫」

 

「何?」

 

「このライズめが、姫の好きな花の湯船をご用意いたしましょう」

 

「ホント!?お風呂、大好きだわ!!」

 

「それは結構。では早速花を摘んで……」

 

「うん!」

 

「時間をかけて、入念に支度いたしましょう」

 

「うんうん!!」

 

「姫が晩餐会からお戻りになる頃、ちょうど良い湯加減になっているかと」

 

「……ズルいわ」

 

「姫……」

 

 

困り果てた表情を浮かべるライズ……

 

そんなライズに鎌之介は、微笑みライズに寄った。

 

 

「良いわ!分かったわよ!

 

じゃあ、お花は薔薇にして頂戴ね!」

 

 

 

 

夜……

 

城では、大勢の者が招待され、賑わっていた。

 

 

その中、鎌之介はそんな空気に飽きたのか、ベランダへ出てテラスに手を乗せ、外を眺めた。

 

 

「(いつも通り華やかで、いつも通り退屈だわ……)

 

皆、そんなに結婚したいのかしら?

 

 

(私には、結ばれたいなんて、思える人がいないわ……でも……

 

 

もし、そんな人が現れたとしたら、どんな人かしら……)」

 

 

月を眺める鎌之介……

 

ふと、脳裏に見覚えのある男の姿が映った。

 

 

「!?……

 

 

何か……何か、大事なことを…」

 

 

「本当変わり者よね!女なのに、目に刺青なんて!」

 

「あら、家訓なんでしょう?」

 

 

自分の悪口を言う、どこかの王族の姫君が、ベランダへ出てきて自分に気付いていないのか悪口を言い合った。

 

 

「とはいえ、下品だわ!!

 

髪の色も、くすんだ朱色で……」

 

「それを言うなら、あの貧相な体!」

 

「あの年齢であれば、殿方にモテなくて当然だわ!!」

 

 

「モテなくて、結構よ!!」

 

 

容赦なく自分の悪口に、我慢が出来なくなった鎌之介は姫たちの前に姿を現し、怒鳴った。

 

 

「この髪も刺青も、気に入ってるわ!!

 

貴方方にとやかく言われる筋合いはなくてよ!!」

 

「まあ!」

 

 

「こちらでしたか……」

 

 

中から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

そこにいたのは、鎌之介を迎えに来たライズだった。

 

 

「姫様」

 

「ライズ……」

 

「お迎えに上がりましたよ」

 

 

笑みを向けるライズ……

 

そんなライズに、鎌之介は駆け出しライズに飛びついた。

 

 

「お風呂の用意が、出来ております。

 

帰りましょうか……」

 

「……うん」

 

 

 

 

家へ帰宅した鎌之介は、ライズが用意した風呂に浸かった。

 

 

「あぁ……

 

温かくて気持ちいい……

 

 

こういうのを幸せって言うのよ……そう思わない?ライズ」

 

 

後ろにいるライズに話し掛ける鎌之介……

 

 

「先程の事を、気にしておいでですか?」

 

「……

 

 

一つだけ、当たってる事があったわ。

 

私、この髪も刺青も好きだけど……女らしくない痩せた体は、気にしているわ」

 

「それはそれは、可愛らしいですよ?

 

私は、どんな姫も大好きです」

 

 

その言葉を聞いた時、鎌之介の脳裏にまたあの男の姿が映った。

 

 

(もしかして……

 

運命の相手って、案外近くにいるのかしら……)

 

「姫?」

 

「私……ここが好きだわ」

 

「私も好きですよ」

 

「(好かれるって、心地いい……)

 

ずっとここにいたいわ」

 

「ずっといれば、よろしいでしょう」

 

「嫁き遅れと笑われるわ」

 

「笑いませんよ。

 

むしろ、嬉しいくらいです」

 

「(心地よくて、動きたくない……)

 

本当に?」

 

「本当です。

 

ここにいてください、姫……」

 

「そうね……

 

幸せに身を委ねて、ずっと……」

 

「そう……ずっと……

 

このままで」

 

 

湯に浸かりながら、床に仰向けに寝る鎌之介の頬を、ライズは手で触れながら鎌之介の目を見た。

 

 

(愛しい瞳……このまま包まれていたい……!?

 

 

いいえ……

 

 

求めるのは、刺すような冷たい瞳!

 

 

ど、どうしたんだろう、私……

 

いつまでもここで、愛しい人と……

 

 

甘い匂いに包まれていたいのに……

 

 

違う!!)

 

 

何かを思い出したのか、鎌之介は飛び起き湯から出た。

 

 

「姫?……!!

 

お怪我を!」

 

 

傍に置いてあったグラスが割れ、その破片で手を切ってしまった鎌之介は、血が出た自分の手を見た。

 

 

「あ(求めるのは……)」

 

 

そんな手をライズは握り、慌てた顔で鎌之介を見た。

 

 

「大事ありませんか!?」

 

(血の匂い……甘い匂い……

 

反吐が出る!!)

 

 

自分の手を握って来たライズの手を振り払い、鎌之介はライズの方に振り返った。

 

 

「アイツの匂いは、血と錆と埃の匂い……」

 

「姫……何を……」

 

 

湯から出た鎌之介は、キャンドルを手に持ちライズを睨んだ。

 

 

「アイツの眼は、痺れる様な人殺しの眼……

 

 

求めるのは至高の快楽!!殺し合う気の昂ぶり!!」

 

 

叫びながら、手に持っていたキャンドルをライズに突き付けた。ライズは間一髪避けた。

 

 

「姫!お待ちを!」

 

「俺は、姫じゃねぇ!!」

 

 

キャンドルを引き、狙いを定めライズの体に刺した。ライズは血を流しながら、フラフラと千鳥足となり、同時に周りの風景に皹が入り、空が見えた。

 

 

目が覚めると、鎌之介は地面に倒れ起き上がると、目の前に黒いマントを羽織った男が立っていた。

 

 

「気色悪ぃ、真似しやがってこの野郎!!

 

縊り殺す!!」

 

「何とも……歪み過ぎた奴よ……」




鎖鎌を構える鎌之介……


「……殺す。


殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!ぶっ殺す!!

一目連!!」


男目掛けて、風を放つ鎌之介……

男は飛び上がり、その攻撃を避けた。避けたと同時に、首に鎖が巻かれ地面へ叩きつけられてしまった。


「逃がさねぇよ!!バッカ野郎!!」

「不覚だ……

私の幻術を覆した者などいなかった。


体験した事のない、桃源郷への誘惑……

誰もが愛しいものに抱かれ、朽ち果てるまで、温かな幸福に浸る……


完璧な快楽を、与えたのに!!」

「あれの、どこが快楽だ!?

あんな生っっヌルいもんじゃ、滾らねぇんだよ!!


俺が求めるのは、酒血肉林!!


戦って、息を切らして、血ぃ流して……

脳味噌が痺れる……この瞬間だ!!」


首に鎖を繋げた男を持ち上げ、宙へと舞い上がらせた。


「由利鎖鎌奥義破裏鎌!!」


宙に浮いた男の体を、鎌を振り回しバラバラに斬った。斬られその衝撃で、空から血の雨が降り注いだ。


「あぁあ……最っ高!!」


自分の体に当たる血の雨に当たりながら、顔に当たる血を舐める鎌之介……


すると、降り注いでいた血が動きを止め、一転に集まり始めた。


「そうか……痛みが好きか」


一点に集まった血は、殺したはずの男へとなった。


「ならば、与えてやろう……

伊賀異形五人衆、朽葉参る!


伊賀亜流忍術血奉!!」


血の雨が槍となり、鎌之介の体中を刺した。
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