BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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永久凍士

凍り付いた川に立つ甚八……

 

 

「(おーお、寒っ……)

 

体内まで、冷えてぇのかい?」

 

「どうかしら?」

 

「(どうにも……)どこまで冷てぇなぁ」

 

「そうよ。

 

 

伊賀亜流氷術槍氷華!!」

 

 

空中に氷の槍を出し、甚八に投げ放った。

 

 

「あらまぁ……簡単」

 

 

冷気の煙に包まれる甚八……

 

その時、霊気の煙から槍が飛び出てきて、アナスタシアの横腹を掠れて通過した。掠れたかと思うと、槍はアナスタシアの横腹を斬ろうと、横へ動き出した。

 

 

その瞬間、アナスタシアは飛び上がりその槍を避けた。

 

 

「悪ぃな……槍なら負けねぇぜ」

 

 

槍を担ぎ、勝ち誇った表情を浮かべる甚八……

 

 

「(ふうん……槍を使うのね…

 

明日花の師なのは、確かの様ね……)

 

 

伊賀亜流氷術獄氷洵」

 

 

甚八の足元から、氷の槍が生え出てきた。その氷を甚八は、何とか避け氷柱に囲まれた場所へ、着地した。

 

 

「つーか、何で俺様が狙われなきゃならねぇんだ?」

 

「勇士だからよ」

 

「それは、殿様が言ってるだけだろ?俺様は…」

「問答無用!」

 

 

氷の柱から姿を現し、甚八目掛けてクナイを投げつけた。その攻撃を瞬時に避け、前髪の飾りにクナイが当たったかと思いきや、今度は足元へ刺さった。

 

 

「勇士皆殺し、至上命令よ!」

 

 

甚八の頭上から、クナイを投げ放つアナスタシア……

 

 

甚八はそのクナイを、構えていた槍で振り払い避けた。

 

 

「命令って、そんなに大事なもんなのかい!?」

 

「……お喋りな勇士ね。

 

その口、閉じなさい」

 

「口を塞ぐなら、唇でお願いするぜ……男と女だろ?」

 

(速攻殺す!!)

 

 

剣を抜き取り、アナスタシアは氷の柱を蹴り飛ばし甚八に体当たりをした。

 

 

「大人しく、死になさい!」

 

「おいおい、何て注文だ。

 

女の頼みでも、それだけは聞けねぇな」

 

「黙れ!!」

 

「……

 

 

何て顔してんだよ、アンタ」

 

 

甚八からその言葉を聞いた途端、アナスタシアは甚八から離れふと横に立っている氷の柱を見た。

 

氷の柱に映る自分の顔……

 

自分の顔に驚き、氷の柱から顔を背けアナスタシアは手で自分の顔を隠した。

 

 

そんなアナスタシアを見た甚八は、ポケットから煙草を取り出し口に銜えて言った。

 

 

「氷の顔が溶けてるぜ?」

 

 

鼓動が速くなり、焦り出すアナスタシア……

 

 

(クソ!!

 

殺る!!殺るのよ!!

 

今までだってそうやって生きてきた!!

 

 

私の氷を、溶かすわけにはいかない!!私の氷(決意)を!!)

 

 

 

 

月が浮かぶある晩……

 

 

『十人揃ったら、離反しなさい』

 

 

服を着るアナスタシアに、命令を出す半蔵……

 

 

『分かったわ……』

 

『クク……奴らの驚く顔が目に浮かぶ……

 

お前が、反間(二重スパイ)だとも知らず、懐深く置いて……』

 

 

アナスタシアを後ろから抱く半蔵……

 

 

『そうそう、離れるときはあの小姓の眼をお忘れなく。

 

いろいろ秘密が詰まっているようですから……』

 

『そう……』

 

『その時まで、可能な限り情報を集めておいて下さいね」

 

「なかなか隙が無いのよ、あの男(幸村)』

 

『股座で、誑かせれば楽勝でしょ?』

 

『私には、興味ないみたいよ』

 

『その気にさせなさいよ……くノ一なら』

 

『「色」が仕事じゃないわ』

 

『お前の仕事は、俺が決める……

 

あの密約を交わした時から、お前は俺のモノだ。

 

 

逃れはしないし、逃しはしない……』

 

『……分かってるわ』

 

 

 

 

(理解っている……)

 

 

思い出しながら、自分に言い聞かせるアナスタシア……

 

 

(今まで、揺るがなかったのよ……

 

 

私は私の目的を果たすためだけに、生きてきた……

 

暗く朱く……冷たい世界の中をたった一人で……

 

温かい安らぎなど求めない……そんなものありはしない!!)

 

 

『アナ!』

 

『かわいいのう』

 

 

思い出す伊佐那海達や幸村の顔……

 

 

「(心地いい場所なんて、どこにもない……

 

全ては、欺瞞(まやかし)よ!!)

 

 

終わらせるわ」

 

 

凍り付いた川を蹴り、甚八に剣を向けながら突進するアナスタシア……

 

甚八は槍を振ろうと動かした途端、氷の柱に当たり柱が折れ、それに気を取られその隙を狙い、アナスタシアは飛び上がり剣を振り下ろした。その攻撃を避けた甚八だが、アナスタシアは剣の機転を変え突いた。

 

 

付いた先……そこは甚八の右足の太腿だった。

 

 

「痛っ!!」

 

 

容赦なく、アナスタシアは剣をさらに深く刺し込み、剣を貫通させ氷の地面へ刺した。

 

甚八は、槍の分解し刃物が付いた柄を持ち、アナスタシア目掛けて刺そうとした。

 

 

その攻撃に気付いたアナスタシアは避け、甚八から離れクナイを投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされたクナイを、避けながらその場を駆ける甚八……

 

 

一歩踏み出した甚八の足へ、アナスタシアは技をかけた。その瞬間、甚八は何かに躓いたかのように、転び足を見た。足には氷が張り付き動けなくなっていた。

 

それを狙い、アナスタシアは甚八の頭を貫こうとクナイを刺した。

 

甚八は、その攻撃を瞬時に避けその代償で、前髪に着けていた飾りが切れ壊れた。そんな甚八を、アナスタシアは膝で首を押さえつけた。

 

 

「これで、外さないわ」

 

「おいおい、冗談じゃねぇ。

 

いい加減、辞めとこうぜこんなこと!」

 

「命乞い?

 

呆れるほど、情けない男ね!」

 

「俺様は、ここで死ぬ予定じゃねぇんだよ。

 

まだまだ、これからやることは山積みなんだ。

 

 

待たせてる仲間共と大海を駆けるんだ。その向こうに国々にゃあ、いい女も大勢いるだろうしな」

 

「悪いけど、あなたはここで死ぬの。

 

それは絶対の決まり事よ?」

 

「絶対?決まり?

 

 

そんなもん(言葉)で、人を縛られるかよ!!」

 

 

槍を後ろから降り、アナスタシアに攻撃した。その攻撃を、アナスタシアは避け氷の柱にぶら下がり、甚八を睨んだ。

 

 

「俺様は、誰の指図も受けねぇ!!自由に生きる!!

 

押し付けられんのは、ゴメンだぜ!!」

 

「自由?ククククククク……

 

 

バカじゃないの?弱い者が強い者に、命を握られるのは当たり前の事よ!

 

弱者(お前)に、自由などありはしない!!」

 

「……

 

アンタも、そうなのか?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、顔色を変えるアナスタシア……

 

甚八は、勝ち誇った表情で、指を鳴らしアナスタシアを指差した。

 

 

「ビンゴ!!」

 

「それ以上、無駄口を叩くな!!

 

 

伊賀亜流氷術奥義!!永久凍士(ヴェーチナ・ミョールズヌチ)!!」

 

 

甚八の足元から、頭の天辺まで氷が張り、甚八は凍り付いてしまった。

 

 

凍り付になった甚八の前に立つアナスタシア……

 

 

「やっと静かになったわね……

 

これで、あなたは永遠に不自由よ。

 

 

自由なんて捨てた……

 

それが私の生き方……

 

冷たく……(ただ、強く(冷たく)あること……)

 

他の術なんて、知らない。

 

 

アンタなんかに、私の氷は溶かせない。返してもらうわよ」

 

 

剣の束を握った時だった……

 

氷の中にいた甚八が微笑み、そして……

 

 

「霹靂咆哮!!」

 

 

右手を中心に、甚八の体中に電撃が走り、剣の束を握っていたアナスタシアは、諸に喰らい電撃の衝動で、束から手を離し倒れ込んだ。

 

電撃で、体中に凍り付いていた氷を粉々に割り、中から勝ち誇った表情を浮かべながら出てきた甚八……

 

 

「痺れるほど、よかったろ?」

 

 

電撃の後遺症か、体中に電気を放ちながら立ち上がるアナスタシア……

 

 

「俺様の電撃(技)を知らなかったのが、運の尽きだ。

 

氷を砕くくらい、ワケないぜ」

 

「くっ!!」

 

 

立ち上がり、攻撃しようと足を動かしたが、アナスタシアはそのまま気を失ってしまい、倒れ込んでしまった。そんなアナスタシアを、甚八が受け止めた。

 

 

「刺激が強すぎて、イッちまったか?」

 

「……」

 

「ま、俺も血ぃ流し過ぎて、勃たねぇからお相子だ」

 

 

そう言いながら、気を失ったアナスタシアを持ち上げた。

 

 

「……何だ。

 

 

意外と、あったけぇじゃねぇか」




その頃、才蔵は……


“キーン”


鋼が弾く音が森中に、響き渡った。


「腕が鈍ったんじゃねぇのか?」

「慣らしですよ。

君とは、ゆっくりじっくりと殺り合いたいのでね」

「願い下げだ!」


目の前にいる半蔵を睨む才蔵……


(野郎、ふざけやがって……

こうしてる間にも、他の連中が……


伊佐那海……無事でいろよ)


「そう焦らなくても、君が助けに行くべき人は……ね?」


不敵な笑みを浮かべる半蔵……

その表情に、才蔵は怒りを覚えた。


「『ね?』じゃねぇつーんだよ!!」


剣を半蔵目掛けて、突き付けた。半蔵はその攻撃を避け、才蔵の背後へ回った。


「ククククク……

まだ、分かりませんか?


氷を懐深く、入れていた君達に勝ち目はありません。

勇士の力は、おおよそ知ってますから。」


束を握り直し、後ろにいる半蔵に剣を振った。だが半蔵は、その攻撃を難なく避けた。


「あの女は、とても従順でしてね。

どんなことでもしてくれるんですよ?」

(……分からねぇ


伊賀の忍が、なぜ同じ忍にここまで従うのか……

アナとコイツ(半蔵)の間に、何がある!?)
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