「やれやれ……
幸村をこちらの陣営に、引き入れるつもりが……
どこもかしこも、騒がしくて困ったものです」
三成の話を聞きながら、出されていた茶を飲む兼続……
「……んー
不味い」
「……もし…
もしも、幸村が挙兵に応じなかったら、どうする?」
「応じる者は他にもおりましょう……
徳川のやり口に、不満を募らす輩は多い。
そうだな……
ことは急を要する……私が立ち上がれば」
「私(石田三成)が」
そんな二人の会話を、部屋の外から聞く幸村……
(こちらも戦……
あちらも戦か……)
息を切らす十蔵と佐助……
二人を囲う様にして飛ぶ虫の大群……
(この羽音……
邪魔!!気配掴めない!!)
苦戦する二人を、蜘蛛の巣に張り付いた伊佐那海は心配げな表情を浮かべた。
「佐助……筧さん」
「案ずるな!!某と佐助がすぐ助けてやるぞ!!
(伊佐那海が悲しめば)」
「応!!無問題!!
(『闇』生まれる!!)」
(それだけはさせない!!)
(それだけはさせない!!)
二人の目の前に、巨大蜘蛛が突進し二人を前足で攻撃した。二人は寸前で攻撃を避け、佐助は近くの木の枝に乗り、十蔵は地面を転がり、銃を構えた。
「巨体の割に、俊敏な!!
こっちは任せろ!!佐助!!」
「諾!!」
巨大蜘蛛を十蔵に任せた佐助は、自分達を囲って飛ぶ虫の大群の中へ突っ込もうとした。その時大群の中から、佐助目掛けて飛んできた女の足が出てきた。
その足を佐助は、蹴りで弾じ避けた。それと共に、大群の中から灰桜が姿を現し、佐助は地面へ着地し機転を変え、灰桜に攻撃した。佐助の攻撃を灰桜は胸にしまっていた小太刀を取り出し、彼の攻撃を防いだ。
佐助はもう片方の爪で、灰桜を攻撃しようとした時、目の前に虫の大群が攻め寄り、やむ終えずその攻撃を中断し灰桜から離れた。
「ホホホ……
あの小娘には、近付けませんわ!!
伊賀亜流操蟲術千極蟷螂!!」
「蟷螂!?」
灰桜が立つ辺りの地面から巨大蟷螂が無数に姿を現した。
「あなた達は、私という蜘蛛に、捕らえられた贄!
決して逃れませんわよ?」
灰桜の声に、蟷螂の大群は一斉に十蔵目掛けて突進してきた。十蔵は銃を構え、突進してきた蟷螂を一気に打ち放った弾で貫いた。
「あら?意外にやりますわね」
十蔵の攻撃を見ながら、灰桜は小太刀の束を手握り飛び掛かろうとした時だった。
灰桜の後ろから首に爪を翳す佐助……
「伊佐那海、解放(はな)せ!!」
「お戯れを……
捕らえた獲物を手放す蜘蛛がおります?」
「なら、即殺!!」
刃を首に当てる佐助……
その時、灰桜は顔だけ後ろへ振り返り、佐助の唇に自分の唇を触れさせた。佐助は、異様な気配を感じ取り、灰桜から唇を離し後ろへ引いた。
「フフ……
口づけを、拒むなんて……いけず。」
舌を出しながら言う灰桜の舌の上に、小さな毒雲が一匹乗っていた……
その瞬間、佐助は体の異変を感じ、地面へ着地しようとした時、足が滑り地面へ落ちた。
「佐助!!」
「佐助ぇ!!」
痙攣を起しながら、何とか立ち上がろうとする佐助……
「この子が、体中に侵入したらもうおしまい。
ほどなく、心の臓が食い破られますわ」
「さ、佐助ぇ……」
今にも泣きそうな声で、佐助を呼ぶ伊佐那海……
そんな伊佐那海に、佐助は口についていた血をふき取りながら、立ち上がった。
「心配無用!!(伊佐那海、悲しませない、泣かせない!!)
我、万全!!」
「そうだ!!このような虫けら如きに……
すぐに一掃してみせる!!」
「……どうかしら?」
不敵な笑みを十蔵に向ける灰桜……
その時、十蔵の体に激痛が走り声を上げた。激痛に耐えきれなくなった十蔵は、その場に膝を付いた。
「ホホホ……
声を上げるほど、激痛(いた)くて?
貴方は、大きいものに囚われ、小さきものを見落としていた」
十蔵ははっと、自分の脚を見た。足には数匹の毒を持った蟻が歩いていた。
(蟻!?)
「蟲は小さき存在なれど、肉を土に還す死の使い……
それらを操る私こそ、死を司る者!
肉の外から蝕まれて、のたうち踠き死ぬがいい!!」
蟲達の攻撃を次々に喰らう十蔵と佐助……
(か、体が……)
(痺れる!!)
避けきれず攻撃に当たり、血を吐き出し倒れる十蔵と佐助……
「も…
もう嫌……
二人共、死んじゃうよう……」
「問題ない!!」
涙を浮かべて言う伊佐那海に、十蔵と佐助は立ち上がり叫んだ。
「これしきの責め……
痒くもないわ!!」
「即決着!!
目閉じ、しばし待て!!」
(佐助……筧さん……)