「待っておれよ!!伊佐那海!!」
「即刻終了!!」
泣かせまいと、平気な顔をしながら戦う佐助と十蔵……
そんな二人に、申し訳ないという気持ちになり、目から涙を流す伊佐那海……
「ウフフフフフ……
頼もしい殿方達だこと!胸が弾みますわ!
けれど……
私の蟲に侵されたら、息絶えるまでもって半刻……
その前にあの小娘を、助け出すことが出来るかしら?
私が、濡れるくらいの素敵な争いを、見せて下さいまし!!」
佐助に突進する蟷螂の大群……
(甲賀転身術鎌鼬!!)
突進してくる蟷螂の大群に突っ込み、中心に来た佐助は片足を軸に、回転しながら爪を振り回した。
だが、体に突如激痛が走り、佐助はその場に倒れ込んでしまった。その瞬間、佐助の服を貫き、貫いたかと思いきや今度は佐助の横腹を鎌が掠った。
「佐助!!」
一大事になった佐助を助けに行こうとした時、目の前に巨大蜘蛛が前に立った。十蔵は銃を構え、蜘蛛の下に滑り込み銃弾を放った。
「大人しく、死んでおれ!!」
煙を吐き、倒れて行く蜘蛛だが、煙が晴れるとそこに蜘蛛の姿が無くあるのは術式が一つ浮かんでいた。
「な!?」
「雨が降りますわよ?
伊賀亜流操蟲術蛛霰弾!!」
灰桜の言う通り、術式が溶けそこから黒い雨が降り出し、十蔵を攻撃した。攻撃を喰らった十蔵は、力なく倒れてしまった。
「蟲礫のお味はいかが?
ご堪能頂けまして?
さあさあ御二方!まだまだでございましょう?
もっと私を愉しませて下さいませ!」
灰桜が立つ前には、蟲達の餌食となり倒れてしまった十蔵と佐助……
(佐助……筧さん……)
「ホホホホ!
倒れたままでは、蟲に食べ尽くされてしまいますわよ!」
「(もうやめて……死んじゃうよ……
アタシなんて放っといて)逃げて!!」
「あらあら、とんだお姫様ですわね。
殿方に、自ら醜態をさらせと、申されますの?
あなた(女)を守るのが、彼等の使命……
侍(男)なれば、決して逃げませんわ」
灰桜の言葉に従うかのように、倒れていた十蔵と佐助がゆっくりと起き上り、ふら付く足で立ち上がり武器を構えた。
「あぁ、素敵!
だからこそ、濡れるというもの!
姉様の仇……
甚振れるだけ甚振って、差し上げますわよ!」
「……うっ
ううっ……(アタシのせいで……)」
「泣かないで下さいまし。
小娘の泣き声など、興醒めですわ!乾いてしまいます」
泣きながら、自分の弱さに絶望する伊佐那海……
(アタシが弱いから!!皆の様に戦えないから!!
何も出来ない役立たず……
……力があれば……)
『力が欲しい?』
自分の中から聞こえる声……
その声に、伊佐那海は振り返り泣きながら訴えた。
(欲しい……)
『強い力が?』
(欲しい)
『圧倒する力が?』
(欲しい!!)
『ならば、その簪を打ち捨てなさい……
さすれば……
得られるでしょう』
蜘蛛の糸で拘束されていた腕を、無理矢理持ち上げ糸を切った。自由になった手で髪を纏めていた簪に手を掛けた。
「(まさか!?)伊佐那海!!」
「(奇魂を!?)やめろ!!」
二人の叫ぶ声が入っていないのか、伊佐那海は簪を手に取り、投げ捨てた。
「欲しい!!
力が!!」
投げ捨てられた簪を、佐助が落ちる寸前でキャッチした。
灰桜は何事かと後ろを振り返ると、伊佐那海の体に巻き付いていた蜘蛛の糸が、いつの間にか切れており、伊佐那海はそこからゆっくりと降りたった。それと共に伊佐那海を中心に辺りが暗くなり出し、空に浮かぶ太陽が少しずつ黒く蝕していった。
その頃他の皆は、それぞれの闘いに決着をつけていた。
鎌之介……
地面に大の字になって倒れる鎌之介……
「望み通り『痛み』を与えてやったぞ。
もう聞こえては無いだろうがな」
「……
クヒ!
カ……カカカカカ!!」
高笑いをしながら、起き上がる鎌之介……既にイっているような目をしながら。
「あっはぁあ!!久しぶりだぁ!!この感覚!!
悦いぜ!悦いぜ!悦いぜ!!
たっまんねぇなぁ!!この朱い世界!!
テメェにも、見せてやんよ!!」
錘の着いた鎖を投げ放つ鎌之介……
朽葉は同じ手かと思い、投げつけてきた錘を避けた。その瞬間、肩に鎌の先端が突き刺さった。ハッと前を見ると目の前に、目のイった鎌之介が居た。
「たっまんねぇ!!あっはっ!!」
(こいつ、血を見た途端……なんて力だ!!)
圧倒的な力に成す術もなく、倒れ込む朽葉……
逃せまいと、鎌之介は朽葉の刺した手を踏みつけ目の前に立った。
「予めから言っといたろ!?
縊り殺すって!!」
殺そうとした瞬間、朽葉は術を唱えその場から煙のように姿を消した。
「クソ!!逃げやがったか!!
?」
暗くなった空に気付いた鎌之介は、空を見上げた。そこに浮かぶ太陽は先程より黒く蝕されているようにも見えた。
清海と弁丸……
爆発と共に、姿を消した白群……
「あの白群とやら、爆発で粉微塵になったようだな!」
「……
何か、空がおかしいよ!清海のオッチャン!」
「?
何だ?あれは」
弁丸の言葉に空を見上げると、空に浮かぶ太陽が黒く蝕されていっていた。
甚八とアナスタシア……
アナスタシアを抱えて歩く甚八……
「(太陽が、欠けていく……)
何が起きてやがる……
夜としゃれ込むにゃあ、早すぎる(何だこの底冷てぇのは)」
優助と明日花……
「……父さん、太陽が…!」
欠けていく太陽を見た明日花……その脳裏に、出雲で見た光景が蘇った。
「明日……花」
「父さん……
早く止めないと、大変なことに」