半蔵の只ならぬ殺気に怯える弁丸……
その時、立ち上がり自分も参戦しようとする佐助に、幸村は止めた。
「動くな、佐助!
今の二人に、任せる他はない」
(才蔵……頼む!!)
鎖を持ち上げ振り回す、鎌之介……
「腰抜け……腰抜け……」
「か、鎌之介!!」
「誰に言ってやがる!!ふっざけんな!!覆面野郎!!
由利鎖鎌奥義!大追風!!」
鎖を振り回し、風を起こす鎌之介に、才蔵は飛んできた鎖を、頭を下げて避けた。
その時、振り回した鎖から風が起こり、半蔵を後ろから攻撃した。それを狙い、才蔵は地面を蹴り、剣を振り回した。
(とにかく、まずは奇魂を!!)
振り回した剣を、半蔵は飛び上がり避け、奇魂を握ったまま才蔵から離れた。そんな半蔵に、才蔵はクナイを投げつけたが、半蔵は刀を取り出し投げてきたクナイを弾いた。
すると、才蔵の後ろから鎌之介が投げた鎖が、半蔵目掛けて飛んできた。半蔵は手にした刀で、飛んできた鎖の穴に差し込み地面へ投げ刺した。
「あっっんの野郎!!」
「全く……
人の言ってることが、分かんねぇって悲しいですね。
この奇魂さえ取り返せたらっつー魂胆が、見え見えですよ……ていうか、何すかそれ?
んな甘い考えで、この俺と張り合えるとでも?
殺す気で来なきゃ、叶うわきゃねぇでしょ?あ!?」
怒りに満ちた顔で言うと、半蔵は踏んでいた刀の束をけり、地面から刀を抜かせ、鎖を解いた。鎖を引き抜こうと引っ張っていた鎌之介は、急に抜けた鎖を宙に舞い上がらせてしまい、それを狙ってか半蔵はその鎖に術を掛けた。
術を唱えた瞬間、才蔵と鎌之介の体が鎖に絡み、引っ付いてしまった。
「しまった!!」
「ふざけんな!!離せ!!」
「バカ!!動くな!!動けば、この鎖は……」
「もっと食い込む」
半蔵の言葉通り、鎖はさらに二人を強く縛りつけた。
強くなったせいか、鎌之介は気色悪い声を上げ、そのまま倒れてしまった。
「この阿呆が!!」
「ヌルい徒党を組むもんだから、こんなことになるんすよ。
仲間だ同志だと……お優しい関係を求めるから、結局弱ぇっつーね!
複数で当たる任務であっても、忍が恃むは己の身。
いかなる時も、信じられるのは、己の技、己の肉体、己の感覚……
それを忘れた君が、この俺の相手になる?笑えねぇんですよ」
「かわいそうな男だ……」
佐助達と一緒にいた幸村が、その言葉を発しながら前へ出てきた。
「己しか考えられぬ者が、その力を手に入れてなんとする?
何がしたい?」
「あの素晴らしい力を、懐に入れておきながら使おうとしない、ヘタレよりはマシな事をしますよ。
己の事しか、考えてないからこそ、純粋に使えます。
そもそも、あなたには過ぎた力です。上に立つ者なれど、非情さの欠片もない……
実に優柔不断!これは致命的ですよ。
その女……
それが易々と潜り込めたのも、まだ生かしているのも、あなた(真田幸村)の程度の低さを物語ってますよ」
「儂は、懐が広いのでな……
それに、女を甚振る興味はないわ」
「今更あなたが大事にしても、その女は散々酷い目にあって来たんですがね。
ていうかその女……喜んで、いろいろやってくれるんですよ。
こっちがデッチ上げたエサに、まんまと釣られて……
祖国の復興だのと、夢語りに寝言はいて、よーく働きました。使えなくなっちゃ終いですがね。
ま、所詮……くノ一何て道具ですから」
「テメェ!!」
「その口、いい加減閉じな!!」
その声と共に、佐助達の後ろにいた明日花が飛び上がり、半蔵目掛けて刀を振り下ろした。半蔵は刀で防ぎ、後ろへ引き攻撃してきた明日花を見た。
刀を構えた明日花は、怒りに満ちた目で半蔵を睨んだ。
「さっきから言わせておけば、勝手な事ばかり言いやがって……」
「あぁ……そうでしたね……
あなたの母親も、くノ一でしたね?
母親も、昔は道具じゃなかったねですかね。体を使い、多国から情報を奪い、仲間を裏切って、任務を熟したんじゃないんですか?」
「っ……」
「あ、そうそう。
いいこと、教えてあげしょうか?
後ろで倒れている男が、どういう人物か」
「……」
「彼は、君の母親の夢を奪った男ですよ」
「え……」
「戦時中、君の母親は腹に傷を負いその後遺症で、子供を産めない体になってしまった……
その体になってしまった原因こそ、その男ですよ。
確か~、子供いたんでしたよね?真田幸村さん」
「っ!?」
「アンタは知ってるはずだ。
紫苑に子供がいたという事を。それを知っておきながら、そこにいる隊長は、彼女を戦場へ出したんですよ」
「テメェ……ガキの前だぞ!!」
「何がガキですか……
本当の子供でもないくせして……」
「!!」
「半蔵!!テメェ!!」
「そうですよね?
あなたはどこの誰の子かも知らずに、自分を育ててくれた哀れなくノ一と侍を本当の両親だと信じ込んできた。
違いますか?」
「……」
黙り込む明日花……
「……
確かに、明日花は捨て子だよ。本当の親は、どこにいるんだろうって思ったことはあった……
だけど……
産んだ親より、育ててくれた親の方が本当の親だ!」
(……明日花)
「それに……
そんな真実、とっくの昔に教えてもらった……二人の口から、直接!!」
「おや……そうでしたか……
せっかく君を、母親の元へ連れて行こうと思ったのに」
「別にいい」
「なら、話は別です」
「!?」
「首から下げているその幸魂、貰いましょうか?」
「明日花!!」
「気付いていないとでも、思っていましたか?
アンタの能力は全て、あの女から聞いている!!」
その声と共に、明日花の目の前から半蔵が姿を消し、後ろへ回った半蔵は刀を突いた。
“キーン”
「?!」
明日花の刀を手に、彼女の前に立ち半蔵の攻撃を受け止める優助……体の至る所から血を流し、息を切らしていた。
「これ以上……
僕等の娘……傷付けるの、やめて貰いますか?」
「本当に噂通りですね……
瞬光の侍……早いですねぇ」
「父さん……血」
「何も知らない君は、黙っていて下さい。
あの時の戦場にいなかったくせして、一族の裏切り者から変な情報聞いて、有ること無いこと並べて話すのは、やめて貰いますか?」
一瞬笑みを溢しす優助……その顔を見た半蔵は、苛立ち優助を蹴り飛ばした。
「優助!!」
「父さん!!」
「テメェ!!」
「何を怒っているんですか?
忍なら、当たり前でしょ?さっき言ったことは」
「んなことぁ、理解ってらあ!!(そうだ……でも、コイツの口から聞くと、反吐が出る!!
忍は独りだ、殺しは道具だ……俺もそう思ってた、そう育てられた……それが正しい……
でも、そうじゃない生き方がある!!
そこにも、確かに強さがあるはずなんだ!!)
畜生……
クソがぁあああ!!」