BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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鎌之介を睨む才蔵の目……


だが、その目には光が無かった……


信じる気持ち

鎌之介の言葉に、何かを呟いた才蔵……

 

 

聞き取れなかった鎌之介は、耳を傾けようとした時、隙を突かれ才蔵の剣が鎌之介の腹部に当たった。

 

 

「キレましたってか?!

 

背中が、ガラ空きなんだよ!!」

 

 

鎌之介が振り下ろしてきた鎌を、才蔵は持っていた剣を持ち替え、鎌の攻撃を防いだ。防いだと同時に、腰からクナイを取り出し鎌之介目掛けて投げ放った。

 

 

クナイに気付いた鎌之介は、攻撃を防ごうとしたが気づいたのが遅く、足や腕、腹部に当たった。

 

 

攻撃が当たっていない足で、鎌之介は才蔵に踵落としを喰らわせようとした。だが才蔵はすぐに避け、後ろへ下がった。

 

 

「おもっしれぇ!!

 

そのやる気、上等だ!!

 

 

その血生臭え殺気を放つ奴が、女守って、チャラチャラ旅してるなんて、似合わねぇんだよ!!

 

血を見んのが好きなんだろ?!

奪うのが好きなんだろ?!

殺し合いが好きなんだろ?!

 

 

同類同士、楽しもうぜ?」

 

「さっきからベラベラと、喋らせとけば……

 

うるっせぇな!!

 

 

黙って、死んどけ!」

 

 

才蔵は持っていた剣の束に巻いてあった布を取った。

 

 

「オンマリシエイソワカ!!

 

瞬光!!」

「巨旋風!!」

 

 

才蔵が仕掛けた攻撃と、鎌之介が放った技が激しくぶつかった。攻撃の衝撃で二人は、後ろへ引き下がり、鎌之介はすぐに体制を整え錘が着いた鎖を、才蔵に投げつけようとした時だった。

 

突然、鎖が砕け散りそれと同時に鎌之介の体から、血が噴き出した。

 

 

「!!」

「やったか?!」

 

 

傷を負い、そのまま地面に倒れた鎌之介……

 

鎌之介は、ゆっくりと顔を上げながら、近寄ってくる才蔵を睨んだ。

 

 

「……まさか……

 

速過ぎ……だろ……

 

 

見えねぇっつの…

 

 

あぁあ……

 

何だこりゃ?

 

 

温ったけぇのがぼたぼたと……」

 

 

腹部から出てくる血を押さえながら体を起こし、鎌之介は近寄ってきた才蔵の目を見た。

 

 

「クッ……

 

ハハハハハハハ!!

 

 

予想通りだ!!

 

たっまんねぇぜ!その眼!!

 

 

血を見ても、全然揺るがない眼!!

感情なんて、一切ねぇ!!

ただ斬ることを実行する!!

 

 

素敵だ!!素敵過ぎるぜ!!たまんねぇ!!

 

もうイキそうだぜ!!この野郎!!

 

 

女を餌に釣ったかいが、あったってもんだ!

奪っても犯しても、何か足りなかった気持ちが……

 

 

やっと今、満たされていく!クハァ!

 

冷えていく体……

この高揚感……

 

 

さあ、その先をくれよ!!

 

俺に、その白刃を突き立てろ!!

 

 

そして、極楽(イカ)せてくれ!!」

 

 

鎌之介が叫び続けている中、才蔵は剣を上げた。

 

 

――――そうだ……突き立てればいい。

 

こんなクソ野郎、斬っちまえば…

 

 

 

 

才蔵が剣を振り下ろそうとした……その時。

 

 

 

 

「ダメ!!」

 

 

突然、伊佐那海の声が才蔵の耳に届いた。

 

 

「!!」

 

「この人、もう戦えないんでしょ?

 

だったら、もうおしまいにしようよ!

 

 

アタシ、平気だから、ほら!

 

 

才蔵!!」

 

 

自分の目を見つめながら、必死に訴えてくる伊佐那海……

 

 

才蔵は木に吊るされている伊佐那海に近付き、彼女の縄を切った。縄が解けた彼女は、才蔵の顔を見上げ彼の顔を覗き込んだ。

 

 

「伊佐那海……」

 

「?」

 

「……助かった」

 

「え?

 

助けてもらったのは、アタシだけど……」

 

「もう大丈夫だ」

 

 

「才蔵ぉ!伊佐那海ぃ!

 

無事ぃ?!」」

 

 

山道を登ってきた明日花と、その後から十蔵が二人を呼び掛けながらやってきた。

 

 

「筧さん!」

「明日花ちゃん!」

 

「し……心配して、着てしまったわ!」

 

「十蔵、遅い!」

 

「山道を走って登るのはキツ……」

 

 

顔を上げた十蔵は、伊佐那海の傷だらけになった体を見て、突然怒鳴り出した。

 

 

「何だ!伊佐那海、その傷は?!(嫁入り前なのに!)

 

だからあれほど、肌をさらすなと申したのだ!!」

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

「それに才蔵!!

 

戦いに酔い痴れて、女子を放っておくとは何事だ!!」

 

「十蔵、叱る前に言うことあるでしょ?」

 

「しかし……

 

簪が無事でよかった」

 

「あ……」

 

 

十蔵に言われた伊佐那海は、自分の髪に着けていた簪を手で触った。簪に触れた伊佐那海は、あの時の力を思い出し、顔を曇らせた。それを見た十蔵は伊佐那海の頭に手を乗せた。

 

 

「何、あの力の事も出雲に行けば全て分かろう。

 

 

それより、痛かったであろう?よく、我慢したな!伊佐那海」

 

「……うん

 

大丈夫……」

 

「あー……

 

俺の借りも、まだツケだな……

 

怖い思いさせて……

 

 

悪い」

 

 

才蔵の言葉に、伊佐那海は目から涙を流し着ていた服の袖で顔を覆い隠すように、涙を拭いた。そんな伊佐那海を見た十蔵は、才蔵と伊佐那海の肩を叩いた。

 

 

「な、泣くでない!!」

 

「俺は泣いてねぇよ!」

 

「十蔵、女と子供の涙には弱いもんねぇ」

 

「うるさい!

 

 

さあ、早く山を下りて、先を急ごう!!」

 

 

 

 

「ふざっけんな!!」

 

 

その怒鳴り声に、才蔵達は後ろを振り返った。怒鳴り散らしたのは、体中から血を流して座り込んでいる鎌之介だった。

 

 

「こんな良いところで、終わらすな!!

 

殺るなら、早く殺れ!!」

 

「……

 

 

残念だが、俺はもうお前と同類じゃねぇ。胸糞悪い快楽に、付き合ってられっか!」

 

「せっかく母さんが逃した命を、薄々無くす気か?」

 

「黙れ!!白ガキ!!

 

それ以上喋ったら、ぶっ殺すぞ!!」

 

「母さんに負けた山賊が、偉そうな口を叩くな!!」

 

「うるせぇ!!

 

早く、俺を殺」

「女なんか、後味悪くて、殺れねぇよ」

 

「は?!

 

女?!俺が?!」

 

「生きて大人しく、役人にでも捕まっとけ」

 

「バカ野郎!!

 

んな、ダセェのはごめんだ!!今ここで殺れ!!」

 

 

怒鳴り叫ぶ鎌之介……

 

そんな鎌之介を才蔵たちは、前を向き山を下りて行った。

 

 

「待てよ!!

 

逃げる気か?!

 

 

俺を殺せ!!

 

殺せよ!!チキショー!!

 

 

チキショー!!」




場所は変わり、ここはとある山……


「殿!!お待ちください!!」


森の中を馬に乗り歩く二人の男……

フードをかぶった男を、髪を纏めた男が後から追い掛ける様に、歩いて行った。


「殿!!一人で、出雲に行くなどと!!」

「待つのは、性に合わねぇんだよ。

うるさく言うなら、お前は国に帰ってろ!!」

「殿をお一人に出来ますか!

私が、皆に叱られます!」

「だったら、黙ってついて来い!

さぁて……楽しくなってきた」
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