BRAVE10~もう一つの物語   作:花札

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茶屋でご飯を食べる才蔵達。


「フ~、腹いっぱいだ」

「食った食った」

「う……甘味食い過ぎた」

「じゃあ、アタシ食べる!」

「あ!ズルい!明日花も!」

「伊佐那海と明日花のおかげで、美味しい飯に在り付けたわ!ありがた!」

「エヘヘ、どう致しまして!」

「明日花もやる時はやるよ!」

「明日花もだが、伊佐那海の舞は見事であったな。感服致した!」

「ホント!?」

「楓も言ってたよ!凄い舞手で、勿体無いって!」

「嬉しい!

それに、アタシでも役に立てて……」

「あの身軽さなら、忍にでもなれんじゃね?」

「ホントに!?

そ、それって忍になってずっと一緒にいるってこと!?


キャー!!求婚されちゃった!!」
「冗談だけど」

「……いじわる」

「何が意地悪だ!女子は戦ってはいかん」

「またそれー!」

「まだ分からんのか!?」

「アナだって戦ってるじゃない!!それに明日花ちゃんも!!」

「アナは忍だと前にも申したろう!無論明日花もだ!!」

「アタシだって勇士だもん!!」

「っ……」

「何よう」

「神職に就く、清い娘が進んで修羅の道に入ることは無い。

戦いは男に任せておけ」

「……」

「伊佐那海」

「?」

「今から忍になるとか、力着けたいって思うのは勝手だけど……

相当な時間と体力、削るよ?」

「え?」

「明日花が予想するには、才蔵の隣で戦える日が来るのは……ざっと二十年か三十年後だね?」

「えぇ!!そんなにぃ!!」

「当たり前だよ。

だって伊佐那海、武器使えないでしょ?何にも」

「っ……」

「武器の使いこなし、殺しの心得、その他諸々……全部習得するのには、今からだと二十年近くはかかる」

「そんなぁ!」

「強くなるには、近道はないからね~」

「でも、明日花ちゃん強いじゃん!アタシより年下なのに!」

「当たり前だよ。

私、物心ついた頃から武器の扱い方教わってたし。六年前にはもう、父さんと組み手出来る様になってたし」

「ふぇー」

「父さんと母さんの隣に立って、戦に出る!

その為には、強くならないと!!」

「母さん?お前、母親いんのか?」

「いるよ。

今は別の所にいて会えないけど、強くなったら会えるんだ!」


嬉しそうな笑みを溢しながら、明日花はそう言った。


「そろそろ行こうか」


お金を払い、才蔵達は店を出て行き出雲へ向かった。


黄泉への階段

丘の上から見える丸焦げになった大社を眺める才蔵……

 

 

「あれが、出雲大社か……」

 

「道中、いろいろあったが無事について何よりだ」

 

「本当に残ってんの?

 

何か、見る限り全滅してるっぽいけど?」

 

 

伊佐那海の隣で、手で太陽の日差しを覆いながら、明日花は焼け扱けた出雲大社を眺めた。

 

 

「と、とにかく行ってみよう!」

 

 

出雲大社へ先行く伊佐那海に釣られて、才蔵達は伊佐那海の後を追った。

 

 

 

大社にある鳥居に着いた才蔵達……

 

 

明日花は、鳥居を見上げた

 

 

「……こんがり、焼けてるねー。

 

 

しかも、徹底的に……」

 

「ここまでするとは、よほど手に入れたいものだったのだろう」

 

「嫌な感じ」

 

「取り合えず手分けして捜すか」

 

「探すって言っても、物が分からないし……」

 

「そうだな。なんか怪しい物でも見つけ……?

 

伊佐那海?」

 

 

ずっと下を向いて黙り込んでいた伊佐那海に、才蔵は気になり声をかけた。

 

だが、伊佐那海は下を向いたまま、才蔵の声に気付いていないのか、ずっと黙り込んだままだった。

 

 

「伊佐那海!!」

 

「!!

 

 

あっ、アタシあっち探すね!

 

何かあったら、大声で呼ぶから!」

 

 

一応話を聞いていたのか、伊佐那海は鳥居をくぐり境内へ入った。

 

 

「おい!一人で勝手に行くなって!!

 

刺客が潜んでるかもしんねーだろ!?」

 

「大丈夫!」

 

 

一瞬振り返った伊佐那海の顔に、涙がふっと流れ出たように明日花は見えたが、伊佐那海はそのまま振り返らず社の中へと入って行った。

 

 

「……

 

結構、我慢してるね」

 

「みてぇだな…」

 

「では、某と明日花は外側を見て回ろう!

 

才蔵は、伊佐那海についておれ。お主が言った通り、どんな危険があるか分からん」

 

「おう」

 

「足手まといにならないでね、十蔵」

 

「お主は一言余計だ!!

 

才蔵、何かあったら一発鳴らす」

 

「了解」

 

「先行ってるぞ!」

 

「コ、コラ!待たぬか!!明日花ぁ!」

 

 

十蔵は、先に行った明日花の名前を叫びながら、森の方へと行った。

 

 

 

 

境内に入り、焼けて朽ち果てた社の中を歩く伊佐那海……

 

 

丸焦げになった内装を見ながら、廊下だと思われる場所を歩いていた。

 

 

(……みんな、真っ黒…)

 

 

そう思いながら歩いていくと、ある部屋であった場所へ着いた。天井を見ると全て焼け落ち、空が見えていた。黒く焼けた柱に手を触れながら、伊佐那海は昔の事を思い出していた。

 

 

(ここの柱は、綺麗な朱だったっけ……

 

壁は鮮やかな緑で、色とりどりの、心地よい空間……)

 

 

ふと、思い出すのは出雲にいた神主や姐さん達……

 

 

『伊佐那海!上手い!上手い!』

 

『将来は、さぞ出雲一の舞手になるであろう!』

 

 

(……そう言えば、神楽舞だけは褒められたなぁ……

 

姐さん達、神主様……)

 

 

神楽舞を踊る伊佐那海を、神主や姐さん達は凄く褒めてくれた……

 

しかし、そんな楽しかった日々は、あの日を境に無くなってしまった。

 

 

(……もう……

 

誰もいない……)

 

 

「伊佐那海!?」

 

 

後から来た才蔵に呼ばれた伊佐那海は、出てきていた涙を袖で拭き取り、後ろを振り替えようとしたが拭いても涙が出てきてしまうため、振り返らず顔を下にした。

 

 

「ったく……

 

勝手に行くなよ!あぶねぇっつっただろうが!!」

 

「……うん

 

 

こっちは何もなかったよ……

 

才蔵は、別のとこ捜せば?」

 

「何だ?

 

いつもは『一緒に!』とか言うくせに。

 

どうかしたのか?」

 

「……」

 

 

才蔵の質問に何も答えない伊佐那海……

 

その様子に才蔵は、伊佐那海の肩に手を乗せ呼び掛けようとした。

 

 

「アタシね……」

 

「?」

 

「アタシ、本当は怖かったんだ……

 

出雲を見るのが……」

 

「……」

 

「だって、目にしなきゃ希望が持てるでしょ?

 

誰かが生き残ってて、アタシを迎えに来るって……

 

 

そう、思えるでしょ?」

 

「……」

 

「でも……

 

 

やっぱり、何もかも無くなっちゃったんだね…」

 

 

内装を見ながら、伊佐那海はそう言いながら涙を流した顔を才蔵に向けた。

 

 

「……苦しいよ……才蔵」

 

 

流れ出てくる涙に、伊佐那海は下を向き袖で拭きながら泣き始めた。それを見た才蔵はポケットに入れていた布を伊佐那海の頭に掛けた。

 

 

「鼻が出てる。それで拭け!

 

(道中の明るさも、これを隠すためか……

 

そういや、初めて会った時もそうだったっけなぁ……)

 

 

汚ねぇからしばらく顔、上げんな!!」

 

「……

 

あ、ありがとう」

 

「おう。(ったく、強がりやがって)」

 

 

 

落ち着いた伊佐那海は階段で腰を下ろし、その隣に才蔵は座らずに立ち辺りを警戒しながら見ていた。

 

 

「ねぇ……

 

 

何で、出雲だったのかなぁ……」

 

「?」

 

「何で、春日でも伊勢でもなくて、この出雲だったのかな……」

 

「何かがあるからだろ?

 

つーか、それを探しに来てんだろ!」

 

「う、うん……そう……だったね…」

 

「……

 

 

何つったらいいか分かんねぇけど、死んだ奴を生き返らせられるわけもねぇし、あった事もなかった事にもできねぇし……

 

 

けど、どうしてそうなったかの、原因くらいは探れるんじゃねぇか?

 

それで恨みが晴れるわけじゃねぇけど、生き残った者に出来る精一杯の事なんじゃねぇのか?」

 

 

その言葉を聞いた伊佐那海は、嬉しさから立ち上がり才蔵に飛びついた。

 

 

「ありがとう!才蔵!」

 

「うわっ!抱き着くな!!」

 

「少しだけ!!アタシの安らぎの素だから、安心できるの!!」

 

「ハァ?!」

 

「でもさ……

 

 

アタシ達が探しているもの……

 

それさえなければ、平和だったのに……」

 

 

 

 

“バーン”

 

 

突然、境内の外から銃声の音が響き才蔵は音のした方に、耳を傾けた。

 

 

「筧さんだ!」

 

「何何?」

 

「行くぞ!!」

 

「ちょっと待っ……キャア!」

 

 

先行く才蔵を追い掛けようと足を踏み出すと、階段にいるということを忘れていた伊佐那海は、階段の一団を踏み外し扱けて、打ったところを押さえながら才蔵を追い掛けた。

 

 

撃ち放ったところへ行くと、そこは最初にいた鳥居の前だった。その前に明日花と十蔵の姿があった。

 

 

「何だよ、最初の鳥居じゃねぇか!

 

で、何かあったのか?」

 

「ない!」

 

「……」

 

「裏手も隈無く探したけど、別に怪しいものなかったよ」

 

「全て、焼き落ちていてなぁ……」

 

「中も真っ黒焦げだったよ!」

 

「織田信長か!

 

ったく、全部燃えてちゃ話になんねぇ!」

 

「全部燃やして、自分達が何を探していたかを突き止めさせないために、何もかも燃やしたんだろうね。

 

忍って、来た所には絶対自分の痕跡を残さないって聞いたことあるから」

 

 

明日花の話を聞いて、才蔵は深くため息を吐きながら、鳥居に凭り掛かった。

 

ふと、才蔵は凭り掛かった鳥居が気になり、鳥居を見上げた。

 

 

「そういや、何でこれだけ焼け落ちてねぇんだ?」

 

「その鳥居は、青銅だから」

 

「青銅だからって、煤くらい付くものだろ?

 

?」

 

 

足元を見ると、そこに何だかの線がありそれを辿りながら、才蔵は鳥居の上へと飛び乗った。

 

 

「才蔵?!」

 

「私も!」

 

「コラ!明日花!」

 

 

才蔵に続き明日花も鳥居の上に飛び乗り下を見下ろした。そこには何かのマークなのか黒い石と白い石がパズルのように敷き詰められていた

 

 

「何だありゃ?」

 

「これじゃあ、誰も気付かねぇわけだ」

 

「灯台下暗しってやつだな!」

 

 

そのパズルを、才蔵は紙と筆を取り出し写した。写し終えた才蔵は明日花と共に、鳥居の下にいる十蔵の所へ飛び降り先程写した紙を見せた。

 

 

「どう思う?」

 

「何かに、似ておるのう……」

 

「……!

 

これって、陰陽大極図じゃ」

 

「言われてみれば……」

 

「何か仕掛けや絡繰りがありそうだな」

 

「正しい形にすれば、俺達がまだ見つけてないどこかの扉が開くか……

 

それとも、この扉が開くとか?」

 

「だとすれば、これは動くということではないか?」

 

「お!」

 

 

十蔵はそのパズルに手を置き、ピースを動かそうとした。

 

だが、ピースはビクともせずこれでもかと力を思いっきり入れた時だった……

 

 

“グキ”

 

 

「おおおおう!!」

 

「筧さん!!」

 

「腰痛めたな」

 

「ったく……

 

筧さん、無理すんな!」

 

「ぬぐううう……」

 

「てか、やっぱりただの石畳?」

 

 

後ろで騒いでいた伊佐那海に、才蔵は紙を投げパズルの所へ行きピースを見た。投げられた紙を伊佐那海はキャッチし紙に描かれていた絵を見た。見た途端、伊佐那海の記憶に何かが過り、伊佐那海はパズルになっている石畳の場所へ行った。

 

 

「(何だろ……)

 

これ……(何か、覚えてる)動くと思うよ」

 

「は?」

 

 

伊佐那海の言葉に、才蔵達は耳を疑い顔を上げて伊佐那海の方へ顔を向けた。

 

 

「これ、動かすのは多分真ん中だけだと思う。

 

アタシがやってもいい?」

 

「良いけど、筧さんを見る限り結構重いぞ」

 

「うん!

 

 

多分……できると思う(アタシは、ここに来たことがある)」

 

 

そう思いながら、伊佐那海は意識を集中させてパズルを動かした。パズルは伊佐那海が言った通り、真ん中だけ動き伊佐那海はそのパズルを次々に動かして行き、

 

そして最後のピースがはまった時、完成したパズルが光り出し真ん中だけ下へと沈み始めた。

 

 

「開いた!」

 

「すげぇ!」

 

 

開いたところには、下へ続く階段が現れ階段の先は真っ暗な闇に包まれていた。

 

 

「すげぇ……(けど、なんか入っちゃいけねぇ気がする)」

 

「とにかく、降りてみよう!」

 

「そうだな」

 

「そ、某も参る」

 

「腰は大丈夫なの?」

 

「何のこれしき……」

 

「ねぇ、明日花も行かなきゃダメ?」

 

「ハァ?何だ?怖いのか?」

 

「別に怖くない!」

 

「じゃあついて来い」




そんな光景を、出雲を見下ろせる丘から政宗達が見下ろしていた。


「何だ?あの連中」

「真田の連中です」

「黒ずくめの奴が忍です」

「殿!信州の!」

「真田……真田ぁ!!

ああ!ジジイ(家康)が躍起になって潰そうとしてる、小大名か。


だがなぜ、その真田の者がここに?」

「おそらく、真田の差し金でしょう……

出雲の巫女を匿っていて、何か知っているようでしたし……」

「ふーん……


信州の真田幸村ね……


俺の他にも、物が見えてる奴がいようとは、面白れぇ……?(あのガキ……どこかで見たことあるなぁ……)」


三人が入って行き、最後に明日花が降りて行くのを政宗は眺めた。
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