ハイスクール・フリート・プラスワン・アンド・アザー 作:オーバードライヴ
街頭のテレビジョンが情報番組を垂れ流している。誰も気を止めることなく進んでいく。日本はいつも通りの午前中だ。間もなく午前11時。平日なのもあって、買い物等に出てくる人は少ない。それでも人通りが多いのはここがビジネス街の端っこにあるからだろう。水路も道路も、社用車が行きかう。その中を歩く彼女に目を止めるものもいない。
「……。」
テレビジョンが告げるのはオランダ国王がドイツに遺憾の意を表したことだ。東南アジア島嶼部の治安の悪化が懸念されることを告げれば、コメンテーターに話が振られる。
『さて、ここからは東南アジアの国際情勢に詳しい日本統計企画研究所の
『そうですねぇ、以前からニューギニア島はパプア紛争と呼ばれる小競り合いのような戦闘が多発する状況でした。その仲裁と言う形で複数の国が参加する国際治安維持組織が派遣されているぐらい不安定な場所であることは確かです』
元の仕立ては良かったと思われるくたびれたスーツを着た中年小太りの男がそう言っているのを、彼女は見るでもなく眺めていた。
『三週間前に大ブリテン連合王国を構成するパプア公国のクーデター未遂があったことは記憶に新しいかと思いますが、えー、ニューギニア島は蘭独英の3ヵ国がそれぞれ保護国を有していますが、その国境線が問題になっているんです』
コメンテーターがフリップボードを取り出した。カメラがズームしてそれを大写しにする。左側半分がオランダ領インドネシア、右上側がドイツの影響下にあるメラネシア-ブーゲンビル侯国、右下側に英国が関与しているパプア公国があることを示した。
『国境線が問題というのはどういうことなのでしょう?』
『この直線的な国境線は地理的に分けたわけでも民族や部族の分布で分けたわけではなく、100年ほど前のニューギニア島分割統治条約によって設定された国境線を踏襲しています。同じ民族でも別の国の国民になってしまっていたり、元々あまり仲のよろしくない民族同士が同じ国に組み込まれたりする事態が発生しています』
コメンテーターが透明なフィルムをフリップボードに張り付けた。民族の分布を示したフィルムらしい。シンプルだった地図にたくさんの線が入り乱れる。
『なので、えー、はい。このせいで治安維持がとても困難という背景があります。どの国も民族間に優劣の差はないという事を明言しているんですが、マジョリティ、えー、発言力のある民族が、国会や警察等の政府要職を独占している状況が発生しています』
『それがこの問題につながるのでしょうか?』
コメンテーターはその問いを受けてすぐに答える。原稿を用意はしてないらしく、考えながら話している間が少し耳障りだ。
『はい。えー、それぞれの民族が自分たちの国を作るから自治権を渡してくれ、という陳情をそれぞれの教主国であるオランダやドイツにするわけですね。それでも国境を跨いで民族自治を認めれば、えー、相手国の権利を侵害するため、民族自治の前例を出すことができないんです。だから、聞き入れられなかった怒りが一部の過激派がテロや暴動、クーデターという形で発散されることになります』
彼女は足を止め、それを眺めているが、周囲の人はだれも興味がないように足早に彼女を追い抜いていく。
『それを抑止、鎮圧するために、それぞれの国が軍隊や警察等の治安維持組織を派遣しています。ガドゥリオア協定体制と呼ばれていますが、これに対しての抵抗も現地では起こっています。それぞれの教主国は状況の沈静化を図っているんですが、具体的かつ有効な解決策が未だ見つからないというのが現状なんです。えー、その状況で教主国同士の戦争になる可能性がある行動をドイツが始めたからこそ、オランダが遺憾の意を表明することになっていると考えるのが妥当です』
『なるほど。民族間の紛争に様々な事情が入り組んでいるからこその事態ということですね。これに対して日本ブルーマーメイドが介入しているという事態についてはどうお考えですか?』
話題がブルーマーメイドに飛んだ。彼女は耳を澄ます。
『誤解を恐れず言うならば、貧乏くじを引かされたというのが正直なところでしょう。教主国の意向を汲むことができる国家でどちらに対しても中立で行動することができる国であったという条件ですので、ミクロな視点で見れば妥当な判断だという事ができますが、えー、言い換えるならばこれで日本が得るものなんて何もないわけです。日本はブルーマーメイドシステム発祥国であることもあって、大抵の航路の航行権を獲得しています。なので、えー、航路の確保必要はありませんし……
そう言ったコメンテーターに司会者が聞き返す。
『ですが、日名川さん。このような事態はこれまでも何度も起こっているわけですよね?』
『えぇ、ニューギニア島だけの事例ではなく、トンガの王国承認問題やフィリピンのスールー自治区独立問題など、東南アジアでは数多く発生していると言えるでしょう』
『ではなぜ、今回に限り日本ブルーマーメイドが動くことになったのでしょう?』
『マラッカ海峡の利権をもつオランダ領インドネシアとの関係を考えれば……』
「……好き勝手言ってるわね」
コメンテーターの言葉に正直な感想を述べて歩き出そうとして、ドンという衝撃を受けた。誰かにぶつかってしまったらしい。
「きゃっ……」
その瞬間にパシャリと液体が散る音がした。
「あっ、すいません」
ぶつかってしまった女性のスーツにコーヒーか何かが散っていた。足元を氷の欠片が滑る。
「本当に申し訳ありません、クリーニング代はお支払いいたしますので……」
「いえ、気にしないでください。……宗谷真雪さん」
名前を呼ばれ、真雪はその顔をまじまじと見つめる。ダークスーツの女性は新入社員という風情でどこかあか抜けない雰囲気だ。その完璧すぎる雰囲気が強烈な違和感として漂ってくることを除けば、何処にでもいそうな営業中の女性セールスマンに見える。
「……あなたは」
「塾長からメッセージをお届けに上がりました」
その笑みは仮面だ。その裏が全くもって透けない。ビジネスライクどころの話ではない。それこそ、人形が話していると言われた方が納得できそうなレベルの笑み。
「お金の無駄遣いをやめて、ご家族を大切にされた方がいいだろう。とのことです」
「……そうですか。ありがとうございます。
そう言って真雪は微笑む。
「でもごめんなさい。無駄遣いかどうかを決めるのはあなたでもなければ、大山敢塾長でもないの。それは私が決めることなのよ」
「……よろしいのですか?」
「娘たちは皆、火の粉を払えないような子に育てたつもりはないので」
「そうですか、残念です。……クリーニング代の件については後程こちらからお伺いしてもよろしいですか? この電話番号から掛けますので」
そう言って差し出された名刺を真雪は受け取る。
「わかりました、連絡お待ちしています」
彼女が背を向けて去っていく。それを見送った真雪はその名刺を見る。
「北条更紗……御見通しだと言いたいわけね」
その名刺と先ほどの女性は同一人物ではないことは確かだ。だとするならば、これは文字通りの警告。次にアクションを取れば、矛先が向かうのは娘たちだ。
「……残念なのはこちらの方よ、金鵄友愛塾」
電話番号を一瞥してそれを破り捨てた。高々11桁の数字ぐらい覚えられる。
「ごめんなさいね。……この程度で止まるなら、私達は人魚になってないの」
歩き出す。背後のテレビジョンは今もニューギニア島の情勢を告げていた。速報テロップが流れる。
日本ブルーマーメイドがドイツ船籍の武装艦の制止に成功 海上安全整備局が発表
†
確かにシュペーの行き足を止めることに成功した。しかしながらまだ戦闘が終わった訳ではない。
「来るな来るな来るなぁ……っ!」
等松美海がそう言いながら二点バーストにセットしたサブマシンガンの引金を断続的に引いていく。当たれば倒れてくれるが、その効果は限定的だった。
単純に相手の数が多すぎるのである。増えに増えて現在2対8、戦力差4倍は絶望的だ。せめて背後を取られることのないように階段を背にして銃を構える。階段の水密扉を閉じたから上から攻撃が来そうになればすぐにわかるようにした。それでも、上から来ないことを願うばかりだ。挟み撃ちにされたら対応できない。
「当たってるはずなのにっ! なんで、なんで倒れないのっ!」
半狂乱になりながらも彼女は引金を引く。まともな照準の方法なんて習う余裕はなかった。だから銃を向けて引金を引くだけ。これでも晴風のクルーの中で美海は小銃などの訓練の時間をとれた方なのだ。砲雷科や航海科、機関科とはことなり、戦闘時の固定部署がない立ち位置のため、元から臨検員候補として扱われていた。それにしたって訓練の実施期間はあまりに短すぎた。
「痛っ……」
引金を引いた時の強い反動が肩を叩いた。正しい位置に銃を構えられなかったのだ。その痛みに涙が浮かぶが、泣いてる余裕は一切なかった。盾を持って、階段の一番下で待っている小笠原光にここを押し付けるわけにはいかないのだ。
唸るような声。意味は分からない。相手が発しているのは言葉なのか呻きなのか判別がつかない。ただただ、その声が怖い。
「ヒカリちゃんっ!」
銃撃で止めきれなかった先頭の相手が光の方に飛び込もうとしていた。光は盾を相手に叩きつけるように動かして相手を追っ払おうと一気に盾を振りかざす。
「こんのぉ!」
横薙ぎに振るった直後にガツンと嫌な感触。相手を壁に叩きつける。
絶叫。
そう表現するしかない声が響いた。叩きつけられた相手が叫ぶ。叫びながら光の足元に倒れ込んだ。
「―――――ッ!」
光の振るった盾に血がついていた。相手は盾に叩かれた右の上腕を押さえて叫ぶ。その指の間を血がサラサラと流れる。
私は今、何をした?
覚悟をしていたはずだった。それが本当に甘すぎるものだとしても、覚悟をしていたと思っていた。
覚悟なんてしていなかった。それをまざまざと突きつけられる。
「私は……っ!」
「ヒカリちゃん前!」
美海の声にハッとした時にはもう遅い。目の前に迫った手が盾を掴んだ。
「ッ!」
いくつもの手が伸び、盾を引き千切らんとするかのように強く乱雑に引っ張られる、腰を落として足を広く取ろうとして、その足に痛みが走る。右腕の傷を押さえながらも、加害者である光への恨みを込めるかのようにその足に嚙みついたのだ。
バランスを崩す。仰向けになるように倒れる。その時に盾をもぎ取られた。後ろ身受け身の要領である程度勢いを殺せたのは幸運だった。それでも痛い、目をとっさに閉じてしまうぐらいには、痛い。
そして慌てて目を開けて、横に転がる。首のすぐ横に自分が持っていた盾が振り下ろされる。風切り音で耳が痛い。盾が歪むほどの力と重力で叩き落とされたのを見て背筋が凍る。
殺される。
充血した目がこちらを見ていた。
「ヒカリちゃ――――――っ!?」
美海が光を呼ぶが光は美海の方を見る余裕はなかった。横を誰かが駆け上がった気配。美海の声も途中で止まる。何かが叩きつけられるような音。血が付いたサブマシンガンが光の横に滑り落ちてきた。
それに手を伸ばす。届く直前に右手を思いっきり踏みつけられた。激痛に肺が空になる。声が出ているのか出ていないのか光自身には判別がつかない。マシンガンが蹴り飛ばされて明後日の方向に飛んでいく。
天井の灯が陰った。大上段に振り上げた盾の縁が光の首元を狙っている、右手に乗せられた足でピン止めされた光に逃げる手段はない。心臓の音がうるさい。
「いや――――――っ!」
振り上げられた盾が動く。死ぬ。そう思った。
直後、破裂音。手に掛けられた荷重がふっと抜けた。重い物が落ちる騒音。痛みは襲ってこない。
断続的に破裂音、それが怖くて目を開けられない。誰かが撃っている、何かを撃っている。
「撃ち方やめ」
その声にゆっくりと目を開ける。
「遅れてすまない。生きてるね?」
「真冬……艦長……?」
いつも通りのマントに制帽を被った弁天艦長の宗谷真冬を認めて光は泣きだしそうになるのを必死に堪えた。そんな光を抱きかかえるようにして体を起こさせる、抱きしめられる形になった光の背をポンポンと叩いて、いつもより柔らかい声が響く。
「おう。間に合ってよかった。等松主計長の様子は?」
「意識明瞭。背中打ち付けてるみたいですけど、問題なしです」
飛んできた声はおそらく弁天の人員の声だ。光には聞き覚えがなかった。
「よし。宮代、久野は彼女たちの護衛。晴風まで送り届けろ。秋野、菅原はシュペークルーを拘束してここで監視。朝比奈、安川、私と来い。残りのシュペー制圧を続行する」
「了解」
そんな会話を聞きながら光はぼうっとあたりを見る。周囲にはきっかり8つシュペーのクルーが転がされていた。後ろ手に結束バンドで固定されていく。
「……すいません」
「なんであんたが謝るんだい」
真冬にそう返され、光は俯いた。
「あんたらはよくやった。……残りの皆は、上だね?」
「はい……」
「任せろ。あたしがちゃんと連れ帰る」
そう言って真冬は階段を登る。それに二人の隊員がついて上がった。
「……ミミ」
「ヒカリちゃんごめん……」
「え?」
美海がそう言って手を伸ばす、その手が宙で止まった。傷が障ったのか、目を細める。
「ちゃんと私が撃ってれば、こうならなかったのかな……」
「……わかんないけど、きっと違う」
光はそう答えるだけで精一杯だった。だから、せめて話題を変える。
「ほら、ここで突っ立ってても邪魔になるだけだから、晴風に戻ろう?」
「うん……」
美海は真冬たちが上がっていったラッタルを見やる。
「マッチ……みんな……ちゃんと、帰ってきてよ……」
「信じよう。みんな帰ってくるから」
光はそう言って美海を連れ出した。南の汐風が目に染みた。
†
真冬が開けっ放しになった艦橋のドアを潜れば、中は静まり返っていた。真冬に気が付いた面々が敬礼をするのをやめさせ、皆が集まっている場所に寄っていく。
「……この子が」
「はい、テア・クロイツェルさんです」
そう答えたのは万里小路楓だ。真冬はその横まで歩き、艦橋の真ん中、舵輪の前に倒れ込んでいる背丈の低い少女の横に真冬がしゃがみ込んだ。
「気絶しているだけ、だな」
「なんとか、取り押さえました。艦橋はこの子一人でしたので、なんとか……」
「そうか……よくやった。本当に称賛に価する」
真冬はそう言って小さく笑う。そのまま無線のトークスイッチを押し込む。
「シュペー乗員全員の無力化を確認。制圧作戦の完全終了を宣言する」
真冬はそれだけ返してから、立ち上がった。
「終わったには終わったが……後味が悪すぎる。夜勤明けにフライドチキンを無理矢理腹に詰め込まれた感じだ」
そういうとこめかみを切っていた野間マチコの手当てをしていた鏑木美波が真冬の方を向いた。
「それでも、誰も死なずに済んでる」
「あぁ……今のところはね」
そういう真冬の顔は晴れない。その顔は艦橋の後ろに書かれた文字列を見やる。
「“Ich liebe dich, mich reizt deine schöne Gestalt, Und bist du nicht willig, so brauch ich Gewalt.” “Mein Vater, mein Vater, jetzt faßt er mich an! Erlkönig hat mir ein Leids getan!”……」
「シューベルトの『魔王』、だな」
真冬の声に美波は頷いた。
「『愛おしい子よ、かわいらしい子よ。嫌だというなら力づくでも連れていこう』『父さん、父さん、魔王が僕に手を掛けた。魔王が僕を苦しめる』……『魔王』のクライマックスで、魔王が息子の命を刈り取るシーン」
フランク文字の飾りが激しく見にくいが、その言葉は確かに血で壁に刻まれていた。
「どんなつもりでこんなものを書いたのかねぇ、この嬢ちゃんは」
そう言って真冬は床に眠らされている小さな少女を見る。
「シュペー艦長が書いたというよりは、書かされた方が近いと思われる」
「つまり……メッセージと言うわけか、これを仕込んだ奴からの」
「そう考えるのが妥当」
真冬が美波の声に頷いたタイミング。艦橋の外からラッタルを駆け上がる音が聞こえてきた。
「Jangan bergerak! Niet bewegen!」
「遅い御到着で、蘭領インドネシア海軍さん」
ライフルの銃口でクリアリングを行った屈強な男がズカズカと入ってくる。飛び出した言語は英語ではない。それでも意味は察した。おそらくDon’t move.かHold up.だ。
「Hey navies, we cannot understand both Bahasa Indonesia and Nederlands. Please talk English.」
真冬はそう言って両手をホールドアップ。それに倣って皆が降参の姿勢を取った。それでも銃撃の姿勢は崩さない。
「MERMAIDS, Disarmament.安全監督隊総員の抵抗を禁ずる。武装に触れるな」
武器を隠し持っていないか確かめようとしているのか、両手を上げて微動だにしない真冬の体を叩くようにして軍人が確認していく。見つかった武器は当然のごとく没収だ。その検査には何の遠慮も配慮もない。それに嫌悪感を覚えたのは美千留だ。
「……この仕打ちは」
「DO NOT SPEAK!」
美千留のぼやくような声に軍人が銃口を向ける。どうやら一言もしゃべるなということらしい。一人ひとりをそうやって確かめてから、出ていけと言われる。
「真冬艦長……」
「何も言うな」
楓の不安そうな声を押しとどめるように真冬はそういった。戦闘の音はピタリとやんでいた。
†
「……全班、撤収を確認しました。晴風総員32名、重症1名、軽症12名、死者ゼロ名です」
ましろはそう淡々と報告する。報告先は当然この艦を取り仕切る岬明乃なのだが、その声に返事は帰ってこない。
「……艦長?」
そちらを振り向いて驚愕した。
「何をっ!?」
「シロちゃんダメ!」
明乃は突きつけられた銃口の前で、そう言った。突きつけている軍人は涼しい顔だ。明乃は目を逸らさずに銃口の向こう、その軍人から目を逸らさずに続けた。
「堪えて……今は、堪えて」
「艦長……」
「Captain, I say to you again. When we issued stop order to you, why did you ignore it?」
かなり詰まった訛りの強い英語。問うているのはなぜ停船命令を無視して作戦を続行したのか、だ。
「I thought. えと…… We can do it that stopping……before Spee to enter your……territorial waters」
文法も単語もめちゃくちゃだが、それでも何とか伝えようとする。領海突入前に片が付けられると判断した。だから強行した。そう伝える。
「Your behavior is an obvious violation. You had the obligation to follow our instructions.」
飛んできた言葉は恐らく『あなたは指示に従わなければならなかった』といったところだろうか。明乃も聞いたことがない言葉がポンポン飛び出す。下手に解釈をしない方がいいのだろう。下手にYesと言えば晴風の乗員の不利益になる可能性があった。だから黙っておく。
「Why are you silent?」
なぜ黙っているのかと言われたところで黙るしかないからとしか言いようがない。相手は溜息。
「Okay, Captain. Let's listen to your reason at our base.」
「艦長!」
「ごめんシロちゃん。私、基地に連れてかれるみたい」
できるかぎり笑って見せる。元々戦闘用の服装だ。制帽は仕舞ってある。渡すものはない。
だから――――心配させないように笑って、託す。
「ごめん。晴風のこと、お願いね、宗谷ましろ副長」
……というわけで第二次シュペー戦の終幕です。いろいろ大問題を残したままですが、このまま突き進みます。
やたらと血生臭いシュペー戦になりました。でもなんとか今のところは犠牲者ゼロ。おそらくこれは「ラッキー」の部類でしょう。それでもそれはミケ艦長をはじめとした皆の選択の結果なのだと思います。それが良い物であっても悪い物であっても、彼女たちはそれを受け止めなければなりません。
これから彼女たちはどう動いていくのでしょうか。
今回は英語にドイツ語、オランダ語、インドネシア語と外国語のオンパレードでした。ミスがありましたら申し訳ありません。
次回からは新章、そしておそらく、長い長い最終章になるかと思います。
これからもお付き合いいただければ幸いです。
――――――
次回 答え合わせのその前に
それでは次回もどうぞよろしくお願いいたします。