仮面ライダーW×IS:Dを超える絆   作:紫宮氷室

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第一話 後編

~5分前、IS学園前~

 

 

「ったく、グラスも人使いが荒いっつうの。何で俺がこんな雑用やらされるんだよ」

 

学園の前で、愚痴を溢す男が一人いる。派手に髪を染め上げ、派手なアクセサリーを全身につけたパンク風の若者だ。

 

「ま、いいか。態々雑用やらせるんだ、ちっとくらい暴れたってお咎めもねえだろ」

 

そう言って、学園の敷地内にずかずかと足を進める。数分もしないうちに、近くを通りかかった教師の一人が呼び止めた。

 

「おい、何をしている!無断で学園に入るんじゃない!」

 

いかにもな上からの物言いに不機嫌になる男。しかし、一応は穏便に事を運ぼうと愛想笑いを浮かべて弁解する。

 

「すいませんね。ちょうと『調査』で来てて―」

 

「そちらの都合なんてどうだっていい!とにかくすぐに出ていけ、それとも、警備員か警察を呼ぶか!?」

 

有無を言わせぬ物言いに、男は一瞬だけ怒りを覚え、その後吹っ切れたかのように笑みを浮かべる。

 

「そうかい。なら呼べるもんなら呼んでみな」

 

「何を―ぐ!?」

 

叫ぼうとした教員の首をつかみ取り、首筋に爪を立てる男。その爪先から、血液を吸い取っていく。

 

「あ、ぐ、あ…」

 

「前からここは気に食わなかったんだ。お高く留まりやがって、俺達にはどうやったって敵わないくせによぉ!」

 

貧血で気絶した教員を乱暴に地面に放ると、男の姿は異形へと変化していく。生物とも機械とも判別できない、胸に赤い結晶体を持つ怪物へと。

 

「警察でも何でも呼べばいいさ!『最強だと信じたISがぶっ壊される瞬間』を見せたいならなぁ!」

 

そう言い放つと異形―バイコーンディメノイドは近くの建物へ頭部の角から電撃を発した。

 

 

 

 

外の騒ぎと惨状は、すぐに翔太郎達の元へも聞こえてきた。

 

「おい!何だあの怪物は!」「どこかの国の全身装甲型ISじゃないのか!?」「とにかく迎撃だ!訓練用ISの換装急げ!」

 

そんな声がここまで聞こえてくる。大小の爆発音が何度も外から響いてくる。

 

「おい!何が起こっている!?」

 

千冬がドアを開けて近くにいた教員の一人に声をかける。

 

「それが、敷地内に化け物が出たとか…まさか、そこにいる侵入者が手引きしたんじゃ!?」

 

侵入者が出た直後の怪物騒ぎ。疑われるのはある意味当然だった。

 

「いや、彼らが手引きしたならもっと早く騒ぎが起こっているはずだ」

 

そう言ってドアを閉めると、件の侵入者二人の方へと向き直る。

二人とも椅子から立ち上がり、千冬がドアの前に立っていなければ今にも飛び出しそうな感じだった。

 

「俺たちに行かせてくれ」

 

単刀直入に、翔太郎が頼む。

 

「この混乱、そして怪物、このままじゃ甚大な被害が出る。そうなる前に止めなくちゃいけない」

 

フィリップも、先ほどまでの温厚そうな知識欲の塊とは違う印象が見える。

 

しかし

 

「ダメだ。お前たちはまだ『侵入者』という扱いだ、そんな輩を勝手に自由にするわけにはいかない」

 

あくまで冷静に、IS学園の一職員としての役目を千冬は優先する。

 

「それにすぐに学園のISが迎撃に出る。もう数分で事態は―」

 

収まるだろうと言おうとした直後、また大きな爆発が起こりその余波の揺れがここまで伝わってくる。外では一層騒ぎが激しくなっていた。

 

「何だあの怪物は!?ISの装備が効かないなんて!?」「バリアもダメだ!絶対防御しか発動しない!」「重傷者が出たぞ!担架急げ!」

 

外から聞こえてくる声からも、混乱が収まる気配はない。しかしそれでも千冬はドアの前から動こうとはしなかった。

 

「ISってやつでもダメみたいだな」

 

「…だが、それがお前たちを自由にする理由にはならない。大体、何故危険な場所に行こうとする」

 

「風都では街を泣かせないのが俺達の役目だった。ここは風都じゃないが、それでも目の前で誰かが泣いてるならそれを止めなくちゃならなねえ。それだけだ」

 

町を泣かせない、それだけでは意味がよく分からなかったがその後の台詞で理解できた。つまり―

 

「お前は、誰かを守るために行くんだな」

 

「相変わらずのハーフボイルド、だけどそれでこそ翔太郎だ」

 

「うっせー」

 

茶化すフィリップと、それについ反応してしまう翔太郎。

 

(誰かを守る、か)

 

その言葉に、千冬は『弟』が何時か言っていた言葉を思い出す。

 

「…いいだろう、行け。ただし、監視役として私も同行する」

 

「わかった。行くぞフィリップ!」

 

「ああ」

 

ドアを開け、三人は爆発音の方へと駆けだした。

 

 

 

バイコーンによる被害は大きくなる一方だった。寮棟の一部は焼け落ち、周囲の木々も半分以上倒れてしまっている。

教員の怪我人も出ていた。春休み故生徒がいなかったのが幸いだが、もしいたとしたら被害は更に大きくなっていたかもしれない。

 

「はっはっはー!実際戦ってみるとよおく分かるな!俺達がISにとって『天敵』だってよぉ!」

 

大声で笑うバイコーン。その間にも、空中から教員のISが数機がかりで発砲を続けている。しかし―

 

「ダメです!やはり()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「怯むな!何かトリックがある筈だ、それが分かるまで撃ち続けろ!」

 

同僚にそう言われ、絶え間なく撃ち続ける教員達。だが、バイコーンは全く効いていない様子で歩を進めていく

 

「ったく、いい加減理解しろっての。さて、そろそろ反応のあったポイントだが…」

 

その時、痺れを切らしたのか一人の教員が刀剣型の装備を展開してバイコーンへと突っ込んでいく。

 

「近接戦なら、って考えの時点で遅れてるのがわかんねえのか?」

 

バイコーンが突っ込んできた教員に対して軽く手を向ける。それだけで、装備していた刀剣は量子となって分解されてしまった。

 

「なっ!?」

 

「雑魚いんだよ!」

 

勢いを殺せずそのまま向かって来た教員を、バイコーンは腕を掴み力任せに地面へ叩きつける。普通ならばフィールドバリアーでダメージはない。しかし―

 

「がはっ―!?」

 

バリアは機能せず、『絶対防御』すら発動せず、そのままの勢いで地面に叩きつけられた女性はショックで気絶してしまった。

 

目の前で起こった一連の事象に、流石の教員達も怯んでしまう。『ISでも勝てないのではないか?』。そんな考えが何人かの頭に嫌でも浮かんでしまう。

 

「おいおい、武器が効かないってだけで弱すぎだろ。んま、所詮は武器頼りの弱っちい人間共か」

 

気絶した教員の頭を掴み、周りに見せつけるかのように持ち上げる。その顔に、醜悪な笑みを浮かべながら。

 

「動きすぎてちっとエネルギーも減ってきたし、ここらでもう一人くらい『吸って』おくか」

 

そう言うと、爪を立て出来た傷から血液を吸い取ろうとする。

 

その時。

 

「ぐあ!」

 

掴んでいた方の腕に突如鋭い痛みが起き、思わず手を放してしまうバイコーンディメノイド。

 

「何だ!?」

 

咄嗟に周囲を見ると、カメラとも蝙蝠ともつかぬロボットが周囲を飛行していた。

そして、こちらに向かって走ってくる三人の存在にも気づく。

 

「あれが怪物か…!」

 

「どうやらドーパントではないみたいだ」

 

「どっちだっていいさ。行くぞフィリップ!」

 

「ああ」

 

三人のうちの二人―翔太郎とフィリップがそれぞれ、大きめのUSB型の物体―ガイアメモリを構える。

それと同時に、翔太郎は腰にスロットのついた物体―ダブルドライバーを装着。隣にいたフィリップの腰にも瞬時に出現する。

見馴れない、ISとも違うそのアイテムを千冬は不思議そうに見つめる。

 

「それは…?」

 

「切り札、さ。俺達のな」

 

そう言いながら、翔太郎はガイアメモリのスタートアップスイッチを押す。

 

『ジョーカー!』

 

メモリから音声が発せられる。フィリップも続いてメモリのスイッチを押す。

 

『サイクロン!』

 

二人同時に、メモリを構える。並んだその姿は、二人の腕によって『W』が形作られていた。

 

「「変身!」」

 

まずフィリップがメモリをドライバーに装填する。すると、それは瞬時翔太郎のドライバーに転送され彼の手によって差し込まれる。

続いて、翔太郎がメモリを装填し、ドライバーのスロットを左右に展開する。二つのメモリで、Wが形作られる。

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

瞬間、風が吹いた。

 

翔太郎を中心に風が吹き、彼の身体を変化させていく。近くいた千冬はあまりの風圧に顔を腕で覆ってしまう。

やがて風が収まり顔を上げた千冬が目にしたのは、異形の存在。

黒と緑の身体を持った、二人で一人の戦士。

 

 

 

仮面ライダーWだった。

 

 

と同時に、フィリップの身体が力が抜けたように倒れ込む。千冬は彼の頭が地面と衝突しないように支えた。顔を見ても、やはり意識がないように見えた。

 

「織斑千冬。僕の身体、頼むよ」

 

Wの右側からフィリップの声でそう言われる。

 

(彼の精神が、入っているのか?)

 

疑問の尽きない千冬に背中を見せ、Wはバイコーンへと駆けるだした。

 

 

 

「何だテメエは!?」

 

バイコーンがWに対して叫んだ。

Wはそれに答える。

 

「俺たちは仮面ライダー…W]

 

そして、相手を指さし、言い放つ。

 

 

「「さあ、お前の罪を数えろ!」」

 

 

「偉そうに言いやがって!」

 

バイコーンがWへと殴りかかる。動きが雑ではあるが、普通の人間ならば反応すら出来ずに殴り飛ばされるだろう。

だが、歴戦の勇士であるWにはそのような攻撃は通じない。身体を捻らせ躱すと、そのまま腕を掴み動きを封じる。

 

「なっ!?」

 

バイコーンは驚愕する。単に躱されたことではない、『自分に触っても平気だった』事にだ。

 

「テメエ、それはISじゃねえのか!?」

 

「答える義理はねえな。そら!」

 

腕を掴んだまま、バイコーンにキックをお見舞いするW。思いがけないダメージに、バイコーンが苦悶の声を上げる。

 

「く、あ…!?」

 

腕を放し、続けざまに数発パンチやキックを放つ。バイコーンは混乱から立ち直れず、全て躱せずにくらってしまう。

 

「ぐう…舐めるなぁ!」

 

叫ぶバイコーン。瞬間、頭の両角から雷撃が発せられWへと襲い掛かる。

 

「おっと!」

 

一旦距離を取り、雷撃を躱すW。続けて、2発3発と雷撃が襲い掛かる。

 

「くそ、厄介だな」

 

≪そうだね。翔太郎、メモリチェンジ行くよ≫

 

脳内でのやり取りを終えると、Wは新たなメモリを取り出す。

 

『ルナ!』

 

そのまま、起動したメモリをサイクロンと入れ替えるように装填する。

 

『ルナ!ジョーカー!』

 

瞬間、Wの右側が緑から黄色へと変化する。放たれた雷撃を躱しながら、その動きを利用しその場で振りかぶる。

 

すると、キックの動作を取った右側の足が異様に伸び、バイコーンへ攻撃を加える。

 

「何ぃ!?」

 

予想外の事態に反応できず、バイコーンはまともにくらってしまった。

 

「おっしゃ、このまま押し切るぜ」

 

≪ああ≫

 

再び、Wはメモリを入れ替える。

 

『ヒート!』

 

『ヒート!ジョーカー!』

 

Wの右側が、今度は赤く染まる。拳を握り炎を纏わせると、一気に距離をつめバイコーンへと殴りかかる。

 

「ぐああ!!」

 

灼熱の拳を受け、大きく吹き飛ぶバイコーン。戦闘はWが優勢だ。

 

「何だ、身体が、オカシイぞ…!?」

 

ヨロヨロと立ち上がるバイコーンだが、その姿に変化が見られた。身体の数ヶ所が黒く変色し、ノイズのような音を出している。胸の結晶体も、輝きが鈍くなっている気がする。

 

「馬鹿なっ…!?俺が、俺を作る『情報』が、壊れて…」

 

独り言のように呟くバイコーン。その言葉の意味を、Wや周囲の教員は理解できなかった。

 

「何言ってるんだ、コイツ?」

 

≪とにかく、奴は弱っている。決めるなら今だ≫

 

「ああ、分かってるさ!」

 

再び、サイクロンメモリを装填する。

 

『サイクロン!』

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

緑と黒の姿に戻ると、Wはドライバーからジョーカーメモリを引き抜き腰のマキシマムスロットへと装填する。

 

『ジョーカー!マキシマムドライブ!』

 

風が吹き、Wの身体を上空へと運んでいく。バイコーンに、逃げる隙を与えるつもりはない。

 

「「ジョーカーエクストリーム!」」

 

Wの身体が左右に割れ、バイコーンへ続けざまに最大威力のキックを放つ。

 

「ぐ、あああああああああ!!」

 

弱った状態でその攻撃に耐えられる筈もなく、バイコーンは叫び声を上げながら爆発する。

身体が消滅し、胸の結晶体だけが残る。その結晶体も小さな立方体に変形すると、ガシャンと音を立て砕け散った。

Wはそれを見て、バイコーンを撃破した事を確信した。

 

「結局、何だったんだアイツは?」

 

≪少なくとも、今まで僕たちが戦って来たドーパントや怪人とは違う種類だ。詳しい事はまださっぱりだけどね≫

 

「どっちにしろ、アイツが俺達を『ここ』に呼んだみたいじゃなかったみたいだがな」

 

そう言いながら、変身を解除する。Wから翔太郎の姿へと戻り、フィリップは意識を自分の身体に戻し目を覚ます。

周囲にいた教員達はぽかんとしていたが、やがてはっとしたように翔太郎に詰め寄っていく。

 

「おい貴様!一体…!?」

 

「止めるんだ」

 

問いただそうとしたのを、千冬が制止した。一部の教員がなお詰め寄ろうとしたが、千冬の視線に怯み、何も言わなかった。

 

「…まずは、怪我人の搬送と手当、被害状況の確認が最優先だ。こいつらは私が受け持っておく」

 

千冬の言葉に「織斑先生がそう言うなら…」と教員達は瓦礫の方へ、もしくは他所への報告へと走る。後には、翔太郎とフィリップ、そして千冬が残された。

 

「…学園を守ってくれた事は感謝する」

 

千冬は二人に頭を下げ、感謝の言葉を口にする。

 

「頭を下げてもらう程じゃないさ。俺たちはただ、仮面ライダーとしての役目を果たしただけだからな」

 

「それよりも、感謝するのは僕らの方だ織斑千冬。君が僕らを信じて部屋から出してくれたから、あの怪物と戦えた」

 

「その『仮面ライダー』とやらの事も含め…」

 

千冬は頭を上げ二人に背中を向けると、顔だけを二人の方に向けた。

 

「改めて、話を聞かせてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

「バイコーンが、倒された…!?」

 

その報告を聞いたグラスは驚愕した。バイコーンが必要以上に暴れ回っていた事は把握していたし、グラスとしてもそれを無視する事はせずバイコーンになんらかのペナルティを与える事を考えていた矢先の報告だった。

一方、その情報を伝えに来たリミットはあくまで冷静に報告を続ける。

 

「事実だ。俺の部下が念のため遠方から観測地点とその周囲を観察していた時、バイコーンの構成情報の破壊を確認した。破壊が酷すぎて、意識体の再構成がほぼ不可能な程にな」

 

「一体どうやって…ISの特性上、私達にダメージを与えるのは不可能な筈なのに」

 

「さあな。ただ、ディメノイドに対して有効な手段が現れた事だけは間違いないだろう」

 

「…念のため、私のほうでも確認してくるわ」

 

そう言って他のディメノイドと連絡を取るグラスを眺めながら、リミットは聞こえないように一人呟いた。

 

「厄介、か。だが、同時に面白い展開に転がったようだな」

 

その口元に、自分でも気づかぬほど小さな笑みを浮かべながら――

 

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