俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~ 作:GJ0083
〇ダンジョン作成二日目
ダンジョンに入ると名もなき後輩達がガリガリと岩壁を削って拡張してくれいた。
束さんは砕かれた石を即席モルタルを作り補給作業。
俺は後輩と一緒にISで力仕事に精を出す。
途中で束さんが離席、戻ってきたと思ったら劣化キラーマシーンを携えていた。
背嚢に石クズを入れて自動でモルタルを作り、右手の塗りスコップでモルタルを塗り、左手の仕上げ用のコテで整える万能後輩三号である。
もう単純作業に飽きたらしい。
現代科学で楽するのは良いと思います。
頼りになる後輩三体を連れて初日はひたすら力仕事で終了。
〇ダンジョン制作三日目
洞窟内に入ると、もう自然物の要素がないくらい整えられていた。
寝てる間も働いてくれる後輩が凄すぎる。
燃料はダイヤモンド電池? 人工ダイヤで発電して100年以上活動可能?
ちょっとこの天災、未来に生き過ぎ。
今日も今日とて岩を砕く。
洞窟は少しずつ下るので、階段を作る必要があったが、それはキラーマシーン君がやってくれました。
階段まで作れるんかワレ。
束さんは一人で奥に進みマッピングとダンジョン全体図の作成。
そろそろ第一関門を作る頃合いなので、部屋の大きさや仕様を考えろと言われた。
話し合いの結果、初手は“暴食”の部屋となっている。
つまり俺の出番だ。
どうするか決まっているので、束さんに12畳程度の広間を頼んだ。
〇ダンジョン制作四日目
入り口から200mほど掘り進んだ。
ここで束さんが岩の整形を開始。
大き目の岩を高周波ブレードでブロック状に斬り、それを俺が接着剤を塗って積み上げる。
縦に穴を掘って鉄棒を通し、なんやかんやでダンジョンらしい扉が完成した。
いや束さんの指示で動いてるだけで内容がさっぱりなんだよね。
これぞバイト感!
俺って存在価値ある? メシの準備早くしろ? はい、飯炊き係として頑張ります。
〇ダンジョン制作五日目
もう暴食の部屋が完成していた。
それとクモ型ロボットと劣化キラーマシーンが増えていた。
数が二倍で効率も二倍!
ファンタジーよ、これが現代のダンジョン制作だ!
なお篠ノ之束に限る。
暴食の部屋は一度スルー。
取り敢えずダンジョンを完成させてから各自試練作りにする事にした。
なので今日は暴食部屋の奥を掘り進める。
〇ダンジョン制作六日目
ダンジョンの全長が300mを超えた。
深さは50m越えだ。
これからまだまだ深くなるが本日人間組はお休み。
ダナンの食料がなくなったので俺は買い出しに、束さんは趣味の研究で時間を潰す。
〇ダンジョン制作七日目
休日を明けてダンジョンに潜ると、後輩達がもくもくと作業していた。
心が……心が痛い!
俺も気合を入れてハンマーを握る。
今回、束さんは新たな工作ロボを投入。
なんかデカいアリみたいなロボットだ。
壁や天井を歩き、卵を植えるが如く電球を壁に埋め込むロボット君です。
今までは据え置きの工業ライトを点けていたが、これでかなりダンジョン内が明るくなった。
〇ダンジョン制作八日目
人やISが通れるよう配慮してる為、通路は大き目に確保している。
高さ5m、横3mはあるだろう。
個人的にはもう少し洞窟感が残っていても良かったが、この整地された洞窟もダンジョン感があって良き。
最前線に向かう途中で補強作業中のキラーマシーン君と遭遇したので挨拶だけしておく。
奥にたどり着くと、クモ君達が昨日と変わらぬ姿で作業していた。
いやまぁ後ろ姿が変わらないだけで、確実に奥に進んでるんだけどね。
〇ダンジョン制作八日目
そろそろ次の試練の間作る段階に来た。
どちらの部屋にするか束さんと話したが、最初の3つは全部俺でいいとの事。
前座、チュートリアル、お試し、難易度(低)。
色々言い方はあるが、俺は要するにザコ扱いされたのだ。
別にいいんですけど……そんな事言っていいのなー?
下手したらその三つで敵さんが撤退する可能性があるぞ?
なにせエロトラップダンジョンだからな!
次の部屋は“淫蕩”にした。
予定してる広さはかなりなんだが、大丈夫なんだろうか?
〇ダンジョン制作九日目
求めた広さは野球場程の大きさ。
朝束さんにそう言うと、気軽に了承してくれた。
用意する物があるとの事で、朝の一時は後輩君達と仲良く作業。
一時間ほどして束さんが戻ってきた……デススティンガーを連れて。
なんでこんな場所にクソでかロボサソリがいるんですかねぇ?
いつからゾイド世界に転生したのかな俺は! しかもまさかのISコア搭載型じゃなくて、これもダイヤモンド電池で動くらしい。
こんなん量産できるとかお前は世界の敵かッ! なんて思ったが、よく見れば両手と尻尾の先がドリルなだけだった。
ただのガイサックなら恐れるに足らん!
ガイサック君はキラーマシーン君より一回り大きく、頭は天井スレスレだ。
そんなガイサック君が振り回すドリルは、この場に居る誰よりも掘削能力が高い。
両手で正面の壁を削り、尻尾で側面を削る。
これでますます作業が捗るドンッ!
頼もしい後輩と一緒に今日も頑張る! ……隣のガイサック君の圧が凄かったです。
〇ダンジョン制作十日目
昨日は完成前に日が暮れたので、残りは後輩君に任せた。
朝出勤すると、そこには見事な大空間が。
奥の方では後輩君達が総出で仕事をしていた。
これだけ空洞を作ると、瓦礫の山が凄い。
束さんはそれらの岩や砂利を集めてブロックを生成。
それらを俺が束さんの指示通りに組み上げて入り口の門を作った。
前回の切り出し門に比べてエコな門だ。
どっちにしろそこらの石からが材料だけどね。
くくっ、アメリカのIS乗りよ! 恐怖に震えるが良いッ!
〇ダンジョン制作十一日目
今日は休日なので束さんと外食デート!
はい嘘つきましたすみません。
やはり五日も地下に潜っていると精神的にも疲れるので、リフレッシュ休暇を取った。
二人でカルフォルニアへ。
カルフォルニアもまだ肌寒く、せっかくのビーチもサーファーしかいない。
残念だが健全な日光浴を楽しむ。
崖と崖と間にあった人が来ない小さなビーチで、束さんはビーチチェアーに寝転んで日光浴を楽しんでいる。
俺はその横で砂浜に寝転がった。
まだ日が柔らかく、パラソルやサングラスが不要で過ごしやすく大変よろしい。
……なお、黙って海を眺めてたのは互いに15分くらいでした。
束さんはビーチチェアーの上でパソコンをイジリだし、それを見た俺もパソコンでゲームを始める。
静かな波の音、春の柔らかい日差し、肌に当たる海風。
それらを感じながら束さんのタイピング音と俺のクリック音だけが響く。
海辺でやるエロゲ―は最高だな。
お昼ご飯はクラブサンドを持ち帰り、夜ご飯はピザ。
バイトしに来てるのに散財したけど、楽しかったからよし!
〇ダンジョン制作十二日目
淫蕩の間が完成されていた件。
広大な空間には既に後輩達の姿はなく、淫蕩の間の奥の通路作りに取り掛かっていた。
社長と先輩が海で遊んでる間に黙々と働く後輩達。
なんかすまねぇ。
リフレッシュ休暇で回復した先輩も頑張るから!
俺も気合を入れて手伝おうとしたら、ガイサック君に邪魔だと言われた。
ガイサック君が正面を掘る。
二体のキラーマシーン君はその後ろで壁の補強。
四体のクモ君が瓦礫の撤去。
アリちゃんは淫蕩の間で灯りを付ける作業中。
……うん、これ俺邪魔だな。
通路の大きさ的にガイサック君と並んで作業できないんだもん。
俺の仕事は……クモ君が集めた瓦礫を捨ててこい? はい了解です。
〇ダンジョン制作十三日目
ガイサック君の投入で格段にスピードが上がった。
そして出来る後輩の登場で古参社員の居場所がなくなった。
部屋作りの時しか出番ないんですよ自分。
今日も頼れる後輩の背中を見ながら除去作業に勤しむ。
束さん空調設備を作ると言ってどこかに消えた。
……さびしい。
〇ダンジョン制作十四日目
普段の洞窟内は粉塵が舞う煙たい現場だ。
だが今日は様子が違った。
ISのヘルメットを外してみると、微かに風を感じる。
淫蕩の間で天井を見上げると、穴が開いてるのが見えた。
どうやって空調設備を設置したのか不明だが、流石の一言である。
24時間働けるガイサック君達は引き続き穴掘り中。
今日中には次の試練の間に到着しそうである。
次は“怠惰の間”だ。
ところでこのダンジョンって攻略の適正人数って――分隊規模? 10人以下の少数精鋭が希望と。
なら怠惰の間は10畳くらいで、少し天井を高くして欲しい。
うん、閉鎖空間を感じない様にする。
俺の要求を束さんが後輩達にインプット。
これで朝出勤する頃には怠惰の間は完成、もしくは完成間近だろう。
すまん、後輩達よ。
〇ダンジョン制作十五日目
運よく怠惰の間は完成してなかった。
8割方完成してたが、最後の作業に先輩も参戦! ……しようかと思ったけど、怠惰の間は一般家庭のリビング程度の広さなので、ガイサック君とキラーマシーン君でパンパンでした。
どんどん完成されていく怠惰の間を、後輩の後ろから見ていたら束さんに尻を蹴られた。
うっす、自分この辺の掃き掃除してるっす。
掃き掃除が終わったらお昼の買い出し行って来るっす。
うっすうっす。
買い出しから戻ったら怠惰の間が完成していた。
〇ダンジョン制作16日目
もう春休み終わって始業式の日では? と束さんに言ったら、『そだね』と返された。
純粋な瞳で言われて何も言えなくなったよ。
中学校初日から休みかー。
俺、登校してからクラスに馴染めるんだろうか? まぁ元クラスメイトも通ってるし知り合いは何人かいるだろう。
後で中学校にインフルったと電話しておこう。
さて、本日は怠惰の間の奥を掘り進む予定だったが、そこで問題が発生。
かなりデカい岩が進行方向に埋まっているらしい。
迂回するか無理矢理壊すか、天災が選んだ答えは斜めに掘るでした。
スロープっていうか滑り台だ。
怠惰の間から多少は距離は取れてるので、大岩の手前で滑り台で一気に次の間にご招待、そんな作りになった。
次の間は束さんの“憤怒の間”だ。
怠惰からの滑り台で強制的に憤怒の間にご招待とは……退路がなくて殺意が高いです。
それと束さんから提案が。
折り返し近くになり、ダンジョンもだいぶ深くなった。
正直通勤が面倒な距離になったのです。
なので、次の憤怒の間に拠点を作って寝泊りするのはどうかと言われた。
乗るしかないよなぁ!
明日からは束さんと洞窟お泊り会だ!
はい? 大量の水と食料を買って来い? アッハイ、自分買い出し行ってくるっす。
◇◇ ◇◇
「ここを拠点とする!」
はい、って事でガイサック君作の滑りを降りると、そこにはそこそこ広い空間が待ち構えていた。
奥では未だ後輩君達が働いてるので、まだまだ広くなるのだろう。
さて、束さんが意気揚々と拠点だと騒いでいるが――
「いや格差あり過ぎでは?」
俺の拠点は手持ちのテントだ。
ちゃんと下にマットも引いたし、元は家族用のテントを持って来たので中は広々だ。
ラックと一人用のソファーもある。
キャンプだと思えば居住性は完璧だ。
だがそのテントの隣にある建物と比べると――
「私の家になにか文句でも?」
「なんでそんなに本格的な家なの?」
「そりゃ長期滞在するなら快適でありたいじゃん」
「それを言われたら何も言えねぇ! でもずるいじゃん!」
束さんの持ち込み、どう見てもマンションの一室なんだもん!
風呂トイレ別! エアコンとIHコンロ完備! 完璧な2LDKのマンション仕様なんですが!
「ずるいずるいって言うなら、しー君も自分で用意すれば?」
くっ、煽りよる。
片方の部屋が空いてるかと思えばまさかの作業部屋なんだもん。
まぁさっき頭下げてお風呂とトイレだけは借りれる様になったけど。
代わりに掃除を押し付けられたけどね。
代償としては安いもんだ。
「んで束さん、ここからの日程は?」
「工事はこのままロボ任せかな? でもそれ以外にもやる事はあるよ。地層の調査して安全な進路をロボにインプットしたり、様子を見てメンテナンスしたりとか」
「それって俺の出番ある?」
「あー……ロボの清掃とか?」
悲しいお知らせ。
俺氏、ついに後輩の体を洗う係に就任。
泥が詰まったりしたら危ないもんね。
はい頑張ります。
「ごはん! ごはん!」
箸で茶碗をカンカンするな。
ほらよ、ハンバーガー。
「お茶碗に乗るハンバーガーってなんかシュールだね」
「それを箸で食べる姿もシュールですよ」
毎日の食事の用意は面倒。
なので今夜はちょっと近くに町で買ってきたバーガーです!
うーん、安定安心のチェーン店。
束さんが箸でチマチマ食べてる前で俺は豪快にかぶり付く。
……新居で生活する新婚カップル感があって良き!
「なんで急に気持ち悪い笑顔?」
「新居の綺麗なリビングで食べるカップルみたいで幸せですね」
「ふんっ!」
「あだっ!?」
テーブルの下から足で蹴られた。
だがこの反応もツンデレでいい。
「しー君さ、自分が無能の役立たずだからって現実逃避はやめよ?」
「……何か俺に出来る仕事を考えてください」
だって今日の俺って、後輩のボディ磨きと掃き掃除とご飯の用意してしてないんだよ? もうね、心が痛い。
無心で働く後輩達と、そつなく重要な仕事をする束さん。
居場所が欲しいです!
「もう試練の間作り始めたら?」
「えぇー? でも束さんにまだ秘密にしたいし」
「でもこのままじゃロボのお尻見てるだけの人生だよ?」
「そうれは嫌だ!」
もう俺はこの戦いに付いてはいけない。
だが! それでも! まだ終わりたくないんだよ!
「我儘さんだなー。じゃあしー君、ここからは別行動にしようか。ダンジョン作成はほぼロボに任せられるし、私はこのまま憤怒の間の制作しながらロボへの指揮をする。しー君は自分の部屋を作りなよ」
「でもそれだと、どっちにしろ帰りに見られちゃうのでは?」
「やだなーしー君。ダンジョンって言ったら最下層からは謎ワープで脱出に決まってるじゃん」
「……束さんってワープできるの?」
「もちろん比喩だよ。ワープの方法は色々な仮説があるけど、私はまだ分解した後の構築方法を確立できてないんだよね」
やだ、分子レベル分解されてグロ画像にされちゃう。
「普通に地上への直通エレベーターが無難かな。そこは私が用意するからしー君は気にしないでいいよ」
すまねぇ! 役立たずですまねぇ!
でも俺はエレベーターの建築方法を知らねえんだ!
「最後はエレベーターで地上に上げればいいよね。そうすればしー君が作った部屋のネタバレ食わらなくて済むし」
「ならお言葉に甘えてそうします。でもそうすると、束さんは結構な時間地中生活になるけど大丈夫ですか?」
「私にとっちゃどこでも変わりはないさ。自室で研究も出来るしね」
そうだった、この天災地下にマンション一室持って来たんだった。
むしろ生活面で言えば俺の方が弱者だわ。
長期滞在なら生活環境をもう少し充実させたいな。
「んじゃこれからは昼間は別駆動で。夜は戻って来ますけど、昼のご飯はどうします?」
「冷蔵庫に適当に入れておいてよ。気が向いたら食べるから」
「了解」
当たり前に冷蔵庫完備だもんなぁ。
「俺の食材も入れといていいですか?」
「いいよ~」
「感謝です」
それでは今夜はテントで寝て明日に備えますか! の前に――
「俺もお風呂借りてもいいですか?」
「シャワーは許そう。だがバスタブを使ったら殺す」
今更一緒の湯舟を使う事を嫌がるなよ。
俺と束ちゃんは二週間近く同棲した仲なんだぞ!
でも俺は大人しく従う。
冷蔵庫とトイレとお風呂がない生活は耐えられないからな!
◇◇ ◇◇
「さて、やりますか」
束さんを残して一人で第一関門、“暴食の間”の中心に立つ。
12畳の広めのリビング程の部屋。
天井は3mくらいかな。
ここの試練は悩んだ。
超悩んだ。
俺はここをエロトラップダンジョンにしたい。
だがしかし、あくまで少年誌に通じる程度にしたいのだ。
心にトラウマを刻んだりとか、そんな笑えないダンジョンにはしたくない。
健全なエロこそが心の栄養!
なので俺は、ここに疑似精液ドリンクバーを設営する!
うん、暴食だからさ、やはり食に関わる内容じゃなきゃだよね。
んでだ、食×性だとこれがベストアンサーなのだよ。
R17.5レベルだと、って前に付くけど。
束さんのお陰で地下にも関わらず電波はバリサンだ。
はい、ケータイで検索するのはもちろん“疑似精液の作り方”です。
ふむふむ、ローションに卵白や練乳を混ぜるのと、バナナとコンデンスミルクを混ぜるの二通りが主流なのか。
前者が拘り派の監督に愛用されてる本物志向だが味が不味い。
後者が美味しいらしい。
これは後者だな。
出口まで近くて良かった。
まずは買いだしだ!
「おうぷ」
買ってきたバナナとコンデンスミルクを、ネットの動画を参考に混ぜて作ってみた。
見かけは意外と問題ない。
疑似精液って単語が脳にあるから一口目は躊躇するけど、よく考えればただのバナナ練乳だ。
問題があるのは味。
雑に甘い! 甘過ぎる!
脳内に糖分が染み渡る感じは疲れてる時にいいが、平常に飲むにはくどい。
暴食だから侵入者に一人2ℓくらい飲ませようかと思ったが、こんなん2ℓも飲んだらぶっ倒れるよ。
敵を倒す的な意味では正しいかもだが、これはなしだろ。
ここから俺がなすべきは、味の追求とエロ要素の追加だ。
もっと飲みやすく、もっとエロく!
「戻りましたー」
日が暮れたので拠点に戻る。
束ハウスに入ると、束さんはリビングの椅子に座りながら出迎えくれた。
「お帰りしー君。なんかダルっとしてるね」
「糖分の取り過ぎで脳がマヒしてます」
「あー、暴食の試練関連?」
「ですね。名前からして分かると思いますが、食べる系の試練なので」
「試食でもしてたの? ならお土産あるよね?」
ほれほれと束さんが手を出す。
俺はその手の平にバナナを乗せる。
「……どんな試練作ってるの?」
「内緒です」
「まぁいいけど。――あむ」
怪訝な顔しながら食べるんか。
怪しいバナナじゃないからいいけど。
あぁしかし頭が痛い。
バナナとコンデンスミルクの比率を変えながらひたすら試飲したから、お腹も脳ミソもパンパンだ。
夕食は軽く済ませよう。
「あ、そうだ束さん。ちょっと作って欲しい物があるんですが」
「ん? なにかな」
「飲み物を長期保存できる容器を1ℓサイズを9個お願いします」
「それって缶詰みたいな密封型? それとも水筒型?」
「水筒型で」
「なら缶詰水筒にしようか。缶詰だけど水筒みたいに回して開封するタイプ」
「そんな便利な物あるんですか?」
「やだなーしー君、存在しないなら作ればいいんだよ」
「束さんマジ素敵」
「ふふーん」
ドヤってる束さんには非常に申し訳ないが、それ疑似精液入れる為なんですよ、えへへ。
絶対に言えない!
「完成!」
翌日、俺はついに理想のバナナジュースを完成させた。
甘さを抑え、粘度と色合いに注意し……辛い戦いだったよ。
完熟したバナナと青い未熟なバナナを合わせ、すり潰す加減を調節したりと大変だった。
ぶっちゃけ、理想の粘度と色合いになったバナナジュースを飲んだ瞬間、なんで自分は進んで疑似精液飲んでるんだろうと泣きそうになったよ。
だが試飲はもう終わりだ。
残る作業は匂い付け!
イカのすり身でも入れようかと思ったが、生の魚介は保存が怖いからやめておく。
せっかくの味を壊してもあれだし。
理想は無味で匂いだけを付けれる……あるやん。
ネットで検索したら即出てくるとか流石はアメリカ。
うんちの匂いがするスプレーを売ってるアメリカのジョークグッズシリーズは、日本では考えられない程バラエティーに富んでいる。
まさかスぺ――の匂いを食材に付けるジョークグッズが存在するとは。
日本ならそんなイタズラしたらリアルファイト案件だぞ。
後はシチュエーションかな。
暴食の間をどんな風にするかなんだが……個人的にベットの上が望ましいけど、篠ノ之束のダンジョンで一室目がラブホ仕様は流石に許されないよね。
せっかくの石室だし、最後の晩餐みたいに厳かな雰囲気にするか。
石のテーブルと石の椅子を用意して、テーブルは真っ白なテーブルクロスと造花が――うん、悪くないな。
侵入者は緊張しながら椅子に座り、意を決して缶詰水筒を開けると……そこから栗の花の匂いが漂う。
掴みは完璧だ!
テーブルと椅子は買ってこようと思う。
石の切り出し設備は揃ってるけど、残念ながら当方に技術はないゆえ。
ケータイで値段を見てみる。
大理石じゃなければ買えなくは……いややっぱ高いな。
うーむ、写真だけ見ると簡易な形のやつなら真似できそうか? あーでも磨いたりする必要もあるのか。
これは束さんに助力を求めるのがいいかな。
なんかあっという間に石を切り抜いてくれそう。
微妙な時間だが、内装問題もあるし一度戻るか。
「束さん居るー?」
「居るよー。こんな中途半端な時間に帰宅なんて珍しいじゃん」
束ハウスに戻って来ると、束さんは三時のおやつ中だった。
今日はドーナッツです。
「缶詰水筒って完成してます?」
「してるよー。IS貸して」
「ほい」
「拡張領域にデータ入れとくから。それと液体を中に入れるのに専用の機材を使うからそれもね」
「助かります」
「ダウンロードが終わるまで少し時間が掛かるね。ちょっとお茶のおかわり淹れて来て」
「へーい」
俺もお茶貰おう。
もう暫くは甘い物はいいや。
俺のおやつは煎餅で。
「はいお茶どーぞ」
「はいお茶どーも」
ズズッ――あぁお茶が美味いんじゃ。
煎餅の塩っ気も嬉しい。
「束さんの方の新着具合はどんな感じで?」
「私は道具作りから始めてるよ。部屋が完成したら一気に完成すると思うから、順調って言えば順調かな」
後輩君達はケガもなく元気に働いてるらしい。
あの頼もしい後ろ姿を懐かしく思うよ。
「そっちの状況は?」
「これから部屋の内装工事ですかね。テーブルや椅子を置いたり、少し装飾したりとか」
「そかそか。しー君も順調でなにより。また何かあったら頼ってくれたまえ」
束さんが妙に協力的だが……まぁ自分主導のダンジョン制作なんだし当たり前か?
いかんな、少し疑心暗鬼になってる。
だがこの話題は渡りに船。
大人しく頼もう。
「内装に石のテーブルと椅子を用意しようかと思ってるんですが……」
「おけおけ、皆まで言うな。後で切り出しておくから持っていきなよ」
「ありがとうございます!」
椅子に座ったままだけど、しっかり頭を下げるよー。
なんせこれからもお世話になるからね!
「ご馳走様でした。んじゃ自分は戻りますね」
「ほーい。あ、そうだ。今夜はなんか油っぽい物が食べたい」
「冷蔵庫に何が残ってましたっけ」
「挽肉と魚だね。だけど私はもっとカロリーが欲しい」
「なら帰りに何か買って来ますよ。それ以外に欲しい物あります?」
「んー、お菓子系が少なくなったかな。脳を動かすのに糖分は必須だから消費が早いのだ」
「お任せでよかです?」
「よかです」
んじゃ帰りは買い出しだな。
ついでにテーブルクロスや造花と花瓶も買うか。
「行ってきまーす」
「いてらー」
そろそろ次の淫蕩の間の準備も始めなきゃだし、まだまだ忙しくなるぞ!
し「エロトラップダンジョン制作たのしー!」
た「楽しそうでなによりだよ!(にやり)」