俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~ 作:GJ0083
なろう系のイキリ転生&転移者にはやたら『モブがッ!』ってセリフが出てくるけど、なんでか不思議だったんだよね。
もしかして元ネタ? それとも他人をモブって呼ぶの子供のトレンドなん? 分からないけど、誰もが理想とするイキリ転生者のセリフが多くて見てて笑えた。
俺に出来るのは、この動画がやらせ動画であることを祈る事だけだ。
やらせなしだったら……強く生きて欲しい。
でも自分の人生では自分が主役で、その他がモブなのはある意味間違ってはいないよ!
あとイキリ系の年齢が上がると、悪口が『お前の声気持ち悪いんだよ!』とか相手の声に対する口撃が増えててびっくり。
ユーチューバーが流行る今、声をバカにするが普通なんかな?
「はぁ~美味い。日本人はやっぱ牛丼だわ」
あの後、俺は地獄の地下水脈ジェットコースターを終え地上の川に投げ出された。
川辺に打ち上げれ這う這うの体でカプセルから抜け出し、ゲロまみれで川辺に倒れ込んだ。
束さんへの怒りを動力に立ち上がった後は、ISで近くのスーパーを探し出して服と食料を購入。
アメリカ名物のモーテルを借りてやっと一息。
今ここである。
レトルト牛丼が売ってあったのが僥倖だ。
シャワーと牛丼で心身共に癒されたよ。
「ご馳走でした」
さて、一息ついたところで状況確認だ。
ダンジョンに挑むのに仲間を集めなければならない。
だが俺には伝手などないし、アメリカの国家代表なら土下座して頼めば話くらいは聞いてくれそうだが、巻き込んだらたぶん千冬さんがキレる。
となると――
宛先:束さん
件名:取り敢えずアメリカの秘密部隊を動かせるくらいの地位を持ってる人の個人情報プリーズ
まぁこうなるよね。
元凶の束さんを頼るのは滑稽だが、向こうもこうなるのは承知だろう。
宛先:しー……くんくさい
件名:丁度良さそうな奴がいたから個人情報載せておくね。
https://――――
ゲロ臭いってか!? ゲロ臭いって言いたいのかお前ッ!!
ちくしょう……俺が川辺で泣きながら服を脱いでたシーンを見てたなこの野郎ッ!
絶対にやり返してやる!
んで、肝心の情報は……ほうほう、国防総省の№2さんですか。
アメリカの映画やドラマでは登場するが、余りに住む世界が違うから凄さがイマイチ分からん。
この人、仕事帰りに公園でビールを飲むのが日課なのか。
なんか哀愁を感じる。
偉かろうが仕事に疲れた社会人の行動は似るんだな。
……取り敢えず遊ぶか!
束さんが指定した期限は一週間あるし、今日はこのまま休んで明日一日はのんびり遊ぶ!
翌日、近くに乗馬体験コーナーがあったので参加。
特大バーガーの写真と馬とのツーショット写真を束さんに送り付ける。
そしたら夜にホテルの警報機が鳴った……俺の部屋だけ。
二日目はちょっと良いホテルに泊まったのが失敗だったな。
びしょびしょになった部屋の中で、誤作動として扱われホテルスタッフに謝られてしまったよ。
他人を巻き込むんじゃねー!
ただでは下がらなさそうだったので、朝食のサービスだけ受けました。
うちの束さんが本当にすみません!
そんなこんなで三日目は適当にぶらつき、夜。
日が暮れて月と星が見え始めた。
アメリカの防衛の要である防衛省があるペンタゴン。
近くに首都であるワシントンDCがあるが、ペンタゴン周辺は木々が多く、一等星くらいなら見える。
なるほど、町の喧騒から少し離れた公園なら夜空を楽しむには問題ない。
流々武を纏い上空から見下ろすと、渋い中年男性が紙コップに入ったビール片手に夜空を見上げていた。
ごめんよ副長官さん、これからちょっとばかし迷惑掛ける。
俺は心の中で謝りながら降下を始めた。
◇◇ ◇◇
「だんだんと見える星が少なくなってきたな」
私、ウィリアム・カーターは国防総省の副長官である。
エリートと言える人生の道を歩いているが、産まれは田舎で多くの星が見える土地で育った。
いつからか、ビールを飲みながら夜空を見上げるのが数少ない娯楽になってしまった。
護衛のSPから、明かりの少ない夜の公園で離れて護衛するのは難しいから、そばに置いてくれと言われたが、何が楽しくて黒服のマッチョを横に置いて夜空を見なければならないのか。
彼らはワビサビってものを知らない。
一人で夜に紙コップのビール片手に硬いベンチに背中を預けて夜空を見る。
これが最高に癒されるのだよ。
ぬるくなり始めたビールに口を付け、今日もいつもと同じルーティンを楽しむ。
そんなはずだった――
『良い夜だね。貴方が国防総省の№2であるカーター氏で間違いないかな?』
どこからともなく聞こえてきた作られた女性の声。
咄嗟にポケットにある緊急ボタンを押そうとするが――
『おっと、余計な真似はしないでくれ。こちらに敵意はない』
二度目の声で想像以上に近くに相手が居ると分かり、手を止めた。
仮にボタンを押して近くのSPを呼べたとしても、この場に来る前に自分は捕まる。
そう確信してしまった。
「どちら様かな? 私のワイフは嫉妬深くでね。こんな深夜に女性と会ってたと知られると困るんだよ」
『流石は副長官。冷静な判断です』
「なら顔を戻してもいいかな? 出来れば顔を見ながら話したい」
夜空を見上げたままの姿勢で動かない。
現状では相手のペースに付き合うしかないのが痛いな。
ここは会話を続けて正体と目的を探りつつ、なんとかSPに連絡を取らなければ。
『構いませんよ』
「では失礼して」
ゆっくりと首を動かして夜空から視線を切る。
声の出所は正面のはず。
今まさに、私の目の前には変声機で声を変えた不審者が居る……はずだった。
「……誰も居ない?」
視界には人っ子一人存在しなかった。
先ほどまでと変わらない木々と道。
いつもと変わらない公園の風家しか見えない。
『いいえ、居ますよ』
声は確実に正面から聞こえる。
後ろでも横でもなく、前からだ。
一瞬ゴーストかと思ったが、声の質が機械音過ぎてそれはないだろう。
となると、何かしらの方法で声だけを届けている?
声とは音の振動だ。
私の既存の知識では知らないが、周囲に悟られず離れた相手に声だけを届ける技術があるのかもしれない。
篠ノ之博士の登場以来、技術の分野は発展し過ぎて把握が追い付かないからな。
『姿が見えない相手だと会話し難いでしょう。一瞬だけ顔を見せるので、目を逸らさない様に』
やはり近くに居る……木の後ろか? それとも黒ずくめの格好で闇に溶け込んでいる? どこだ? どこ……に……
「……あい……えす?」
正体を見逃さまいと、正面を凝視する私は確かに見た。
ほんの1メートルほど先の風景が歪み、一瞬だが人型のロボットが。
それは間違いなく世間を……いや世界で注目されているマルチフォーム・スーツ。
インフィニット・ストラトスの全身装甲型と呼ばれるものだ。
だがおかしい――
「人間の目でも捉えられないほどの精度のステルスだと? そんなものが存在するなど――っ」
『驚くのは無理ないですけど、声だけは抑えてくださいね? こちらも穏便に進めたいので』
……そうだな落ち着こう。
この場で騒いで助けを呼んでも、SPが携帯する武器程度ではどうにもならない相手だ。
だがこれはどういう事だ?
完璧なステルスはもちろんアメリカでも研究されている。
しかし現状はレーダーなどに映らない程度の精度。
人の目から隠れられる、まるでプレデターが装備しているレベルのステルスなど今は遠い未来いの話だ。
いや待て……ここは公園とは言えペンタゴンの近くだ。
それ即ち、アメリカの首都の近くだと言う事。
まさかこの機体――
「その機体は、従来のステルス戦闘機と同じようにレーダーに対するステルス性も有しているのか?」
『同じ様に? いえ、同じでないですね。レーダーに対するステルス性は、アメリカが保持するステルス戦闘機とは比べられない程高いですよ? 今みたいにアメリカの首都まで飛んでこれるくらいには』
最悪だっ!! こいつは……このISは危険過ぎる!
どれほどの武装を積んでるかは分からないが、下手をすれば単騎でワシントンDCを落とせる可能性があるぞ!?
こんなISの存在するなんて情報は掴んでいない。
そうなると機密保持のレベルが高い国……中国か? ロシアか? どちらにせよ最悪だクソったれ!
『正面ばかり見ては怪しまれる。ケガ人を出したくなければ普段通りにしてください』
「……いいだろう」
指摘通り視線を夜空に戻し、足を投げ出して全力でリラックスしてるフリをする。
まさかSPもこの体勢の私が危機的状況だと思わないだろう。
殺すだけならここで声を掛ける必要はない。
なら相手の目的は情報の聞き出しか交渉。
ポジティブに考えれば亡命希望の可能性もある。
まずは落ち着いて相手の情報を集めよう。
『冷静な対処で確かります。さて、これで交渉に入れますね』
交渉……交渉か。
私の持つ情報か、それとも政治犯やテロリストの解放を望むか。
どちらにせよロクでもない交渉になりそうだ。
緊張で喉が渇くが、アルコールで思考を鈍らせたくないのでビールを飲むのを我慢する。
こんなことになるなら、ワイフの言う通りビールを控えるべきだった!
『篠ノ之博士が世界中で秘密基地の類を建設しているのは知ってますね?』
「もちろんだ」
篠ノ之が穏便に、そして緩やかに人類の技術向上のさせる為の試練、それが秘密基地及び秘密研究所だと考えられている。
民家や屋敷の地下、それに洞窟とプレハブ小屋もあったな。
珍しいのだと、他国ではツリーハウス型なんてもあったらしい。
規模が大きくなるとトラップなど配置され、死亡報告はないものの酷い被害がでたりもした。
だがそこで見つかるのは有用な論文や研究成果ばかり。
その存在を各国の人間が世界中を血眼になって探している。
アメリカでも例外ではない。
『今現在アメリカに、過去類を見ない程の大規模な施設が作られているのですが……それはご存知で?』
「なんだとッ!?」
過去類を見ない程の!? そんな報告は受けていない!
基本的に篠ノ之博士の秘密基地は、規模が大きくなる程に有用で貴重なデータなり機材なりが残されている傾向にある。
発見されれば確実にこちらまで情報は届くはず。
つまりそれは、現時点ではアメリカ人には未だ発見されてないと言う事。
「……一つ聞きたい。君は、アメリカ人か?」
『違います。あぁ、密入国については謝罪しますよ』
最悪だ! 他国のスパイが先に発見してるとは!
このISの性能を見るに、篠ノ之博士を追跡して偶然発見したのか?
交渉だと言っていたな。
ならば相手の手札は確実にそれの情報だろう。
「密入国どうこうはこの際目を瞑ろう。それで? 君は私からなにを引き出したい」
『戦力です』
「は?」
『実は単身で挑んでみたのですが返り討ちに合いましてね。色々と考えたのですが、ここはアメリカ政府と合同で攻略した方が良いと判断しました』
既に行動済みか。
しかし専用機持ちが返り討ちに合うだと?
一体どんな秘密基地だそれは。
「それは君の国からの提案と思っていいのかね? アメリカに存在する篠ノ之博士の秘密基地の位置情報と攻略する戦力を貸すから、見返りを寄こせと? だとしたらナッシングな提案だ。あると分かれば探し出すし、戦力は十分揃っている」
『国? そうですね。普通ならそう考えますか。残念ながらワタシはどこかの国の秘密部隊の人間ではありません。とある組織の人間と、そう思ってください』
まぁそうだろうな。
その可能性は考えていた。
なにせアメリカの首都近くでISを運用するなど、戦争待ったなしの非常事態だ。
どこかの組織だろうとは思っていたよ。
だが困った。
こんなふざけたISを持つのが、思考も目的も不明の組織とは……恐怖でしかない。
『こちらから出すのは秘密基地の場所と内部の情報。それとIS一機分の戦力』
「得られたモノはどうする?」
『ワタシが欲しているのは最下層にあるモノです。そしてそれはアメリカと分け合う事ができる。それ以外の物、機材なりなんなりは全てそちらに譲ります』
分け合えるか……ならそれは論文や研究データの類か?
しかし奥にある物まで知ってるとは。
篠ノ之博士は時折、悪戯の様に自分の情報を流す時がある。
もしかしたら彼女は篠ノ之博士の遊び相手として選ばれ、意図的に流された情報でアメリカに来たのかもしれない。
「そちらの正体も目的も不明なのに手を貸すと、本気で思っているのか?」
『別にそちらは大したリスクはないから問題ないでしょう。戦力の派遣が実現すれば、攻略時に敵に成りえる可能性を持つ兵士に囲われる、なんてリスクを背負うのはこちらですよ? それともアメリカの専用機持ちは複数人でも正体不明のIS一機に勝てないほど軟弱なんですか?』
それはそうだ。
アメリカの専用機持ちを誘い出して襲い、ISコアの奪取を狙う……とも考えたが、それをアメリカ国内でやるにはリスクが大きすぎる。
同型のISが揃ってれば脅威だが、そもそもこのレベルのISを量産できるなら、最初からアメリカのIS研究所を襲った方が効率がいいだろう。
『むしろこちらが裏切られないか心配です』
そこは同意する。
私もそのISにも中身にも興味深々だしな。
今回の話を持ち出せば、必ず鹵獲しろと騒ぐ輩が出てくるだろう。
『なので』
「ん?」
『上の人間に相談するしかない場合は伝えてください。こちらは敵対する気はありませんが、手を出すなら覚悟を決めろと。身勝手な欲望で首都を火の海にする覚悟があるのかと』
そうなるか。
長官にもその辺は強く言った方がいいだろう。
ある程度の地位に居る人間は、住所や家族の存在がネットで簡単に調べられる。
例えISを護衛を付けようが、この相手は暗殺も誘拐も余裕でこなすだろう。
もちらんワシントンD・Cを火の海にする事も――
今はまだ敵対する時期でない。
「上に確認を取るが、商談は成立するだろう」
情報の裏も取れない状況だが、この話は蹴るには大きすぎる。
もし本当だとしたら、見逃すには余りにも惜しい。
篠ノ之博士の研究物に正体不明のISの情報。
逃がす訳にはいかない。
『それは良かった。これはあくまで要望ですが、専用機持ちはアンネイムドからお願いします。中途半端な戦力は邪魔になるので』
「……努力しよう」
暗部の存在は調べ済みか。
そしてその組織がISを所持してる事も。
情報管理の体制を早急に見直すべきだな。
『これを』
暗闇の中から何かか突然現れ、それがこちらに向かって飛んでくる。
その物体は私の胸元に当たり膝鵜の上に落ちた。
「USBか。なんの情報が?」
『最低限揃えて欲しい装備の情報などです』
「なるほど、頂いておこう」
『それでは二日後の夜にまたこの場所で』
「分かった」
空気の揺れを感じた。
飛んで行ったか?
「はぁ~~~」
深く息を吐き出す。
やれやれ、せっかくのリフレッシュタイムが台無しだ。
長官も帰宅してるだろうが、暫くはペンタゴンに詰めてもらおう。
なに、私も一緒だから寂しくないさ。
おっと、長官の前にワイフに連絡しなければ。
――ケータイを取り出しながら、私の足は家ではなくペンタゴンに向かった。
◇◇ ◇◇
あー緊張した。
上手に強者ムーブできたかな?
とんとん拍子で話が進んで良かった。
日本ならお役所仕事でもっと手間取っただろうが、流石はアメリカの高官。
気を見て敏なりって奴だ。
最悪、裏切りも覚悟しないとな。
打倒束さんを達成できなかったら、目標を俺の確保に切り替える位はしてきそう。
油断せずに行こう!
さて、時間も空いたし明後日まではアメリカ観光でいいか。
当日までに用意する物は自分の分の水と食料くらいか? あ、でもアンネイムドの人と一緒に行動するなら万が一の為の変装セットが欲しいな。
今回は流々武に搭載されてるボイスチェンジャーを使ったけど、ISを纏ってない状況でボイチェン片手に行動するのは流石に嫌だ。
動きやすく、それでいて裏社会の人間っぽい衣装……うん、作るか!
オタクとしてコスプレ衣装程度は自分で作らないと。
前世も含めて自作した事なんてないが!
問題はボイスチェンジャーだよなー。
仮面の内側に薄型のボイスチェンジャーを張り付けるか?
ネット検索――うーん、希望通りの薄型がないな。
全体的に厚い。
ボイチェンだけ束さんに頼もう。
この程度のお願いなら許されるだろ。
体型を誤魔化せるようにゆとりのある恰好で、顔を隠す為の仮面。
よし、大体のイメージが出来てきたぞ。
観光は中断して楽しい楽しいコスプレ衣装制作の時間にしますか!
◇◇ ◇◇
相変わらずの荒野。
これぞアメリカって感じの地平線を眺められる。
俺、今年から中学生なのに学校行かないで何をしてるんだろう? そんな疑問も吹き飛ばしてくれる盛大な景色だ。
いやほんと、冷静に何してるんだろう。
俺はただバイトで穴掘りしてただけなのに、何がどうなって岩陰でコスプレしながらアメリカの特殊部隊を待つ事になるのか。
人生って不思議だわ。
だがそれも今日まで。
今日はこのダンジョンをクリアして、真っ当な学生生活を送るんだ!
さてさて、約束の時間まで後5分。
こちらに向かって来る一台のジープ。
「待ち合わせの座標はここで間違いないはずだが」
車から降りて来たのは男性四人と女性が三人。
応援の人で間違いなそさうだ。
では行きますか。
「どうも」
岩陰から身を出して姿を晒す。
俺の姿を見て身構える男衆。
おいおい、こちとら味方ですぜ?
「……NINJA?」
男の一人が恐る恐る俺を指差す。
その反応は嬉しい!
本舗初公開! NARUTO暗部スタイル!
全身を隠す黒い外套には赤い炎の模様!
手彫りの狐面のお面!
木ノ葉暗部と暁の良いとこ取りした最高にイカしたコスプレだろぉ!?
わざわざアメリカのホテルに引きこもって彫刻刀と戦った甲斐があるってもんだ。
もちろんお面の内側には、篠ノ之印の薄型変声機を仕込み済みです。
「皆さんがアメリカからの応援で間違いないですね?」
ちなみに束さんの趣味なのか無駄に萌え声である。
俺にギャルプレイでもしろってか?
いやまぁ年齢を考えれば、若い萌え声をボイスチェンジャーに登録するのは分かるんだけどね。
背も成人女性にしては低いし。
だけど萌え声はねーよ。
なので俺は束さんが暗に希望しているきゃぴきゃぴキャラではなく、クール系敬語美人で行きたいと思います!
「四人とも下がりなさい」
「「「「はっ!」」」」
男性陣を下がらせ、代わりに女性陣が前に出て来る。
「この部隊の隊長を任せられているスター1だ。アンネイムドの隊長でもある」
「スター2。同じくアンネイムドから派遣されたです」
「スター3」
金髪ロングのザ・アメリカ美人のスター1さん。
金髪ゆるふあロングの爆乳お姉さんのスター2さん。
黒髪を短いポニテにした褐色スレンダーのスター3さん。
なるほど、流石はアメリカの専用機持ちだ。
キャラが濃い! 俺、今からでもアメリカに亡命しようかな。
この人たちになら捕まっていい。
と、くだらない話は置いておいてだ。
俺は今、スター1の声を聞いて脳内に浮かんだ映像がある。
声とは人を認識する上で大事なファクターだ。
昔に会ったきりで思い出の中では声さえ忘れた存在でも、一声聞けば『あぁこんな声だったなと』と思える。
俺はスター1の声で思い出したぞ。
貴様は原作に登場したネームドだなッ!?
IS学園に侵入して、生身の千冬さんにボコボコにされた特殊部隊の人間!
確かその後は千冬さんの協力者みたいな扱いだったような?
長い付き合いになるかもだから、どうぞよろしくお願いします。
「後ろは海軍から派遣されたサポートチームだ。名前はダガーで統一されている」
スター1に紹介された男達が順番に手を挙げて挨拶してくる。
ダガー1からダガー4までの四人。
全員コードネーム的な呼び方で統一されてるのか。
名前は秘密かよ、もしかして俺って警戒されてる?
悲しいなー。
「スター1か隊長とでも呼んでくれ。そちらはなんと呼べばいい?」
「ワタシの事は――」
そういや名前は考えてなかった。
火影のカゲちゃん、暗部のアンちゃん、佐藤のさっちゃん、神一郎のしんちゃん……ねーな。
それっぽく今の外見キャラに合う名前……狐のフォクスさんでいっか。
「フォクスとお呼びください」
「了解だ」
これで自己紹介は終了。
あっさりしてるなー、流石はプロ。
無駄な会話がまったくないじゃん。
ダンジョンに入る前に少し会話でコミュニケーションでもと思ったが、余計な気はまわさない方がいいかな。
なんかウザがられそう。
「着いて早々ですが、もう向かっても?」
「少し待て。ダガー小隊は荷物を降ろせ。スター2とスター3は周囲を警戒」
男衆が車から荷物を降ろす中、二人が少し離れて周囲を警戒する。
キビキビとした実に軍隊らしい動きだ。
「こちらが指定した装備は用意してありますよね?」
「もちろんだ。全て用意してある」
ダガー小隊が大きなリュックサックを背負い、肩からアサルトライフルを下げる。
重装備だ。
それに比べてスター小隊は軽装だな。
身に着けてるのはポシェットくらいだ。
まぁ武装関連は拡張領域だろうし、そうなるか。
応援の7人を連れてダンジョンの入り口に向かう。
遠くから見る分にはただの大岩。
だがその実態は――
「これは――ッ! まかさ入り口全体をホログラムで覆っている? このレベルの科学力が実現されてるなんて……」
「流石はISを作った篠ノ之博士です」
「この技術がどこかの国に渡ったら脅威」
ホログラム内に入った瞬間、目の前に地下に続く大きな穴が現れる。
スター小隊もダガー小隊も口を開けて驚いていた。
この景色が一瞬で変わる様は凄いよね。
「篠ノ之束が作った試練型ダンジョン【ウサギの墓穴】へようこそ。皆さん覚悟はよろしいですか?」
「先頭を任せていいんだな?」
「もちろんです」
そう言って俺は先頭を歩いてダンジョンに足を踏み入れる。
スター1は自分たちに背中を預けていいのかと言いたいのだろう。
もちろんオッケーだ。
束さんのダンジョンが存在すると確認できた上で、ガイド役兼戦力の俺を排除する気はないだろう。
裏切るとしたら、全てを終えた後だな。
「しかし見事なまでに整備された道だな」
「元々あった洞窟に手を加えた形でしょうか。見事な仕事です」
「ダンジョン……ゲーム的に捉えれば罠などがある?」
俺とキラーマシーン君達が頑張ったからな!
もっと褒めてくれたまえ!
周囲を警戒しつつ歩く7人を引き連れ、第一の試練である【暴食の間】の扉前にたどり着く。
「これは見事なまでの重厚な扉だな」
「皆さん扉の前に」
今から開けてもらうので綺麗に並んでね。
では皆さんご一緒に――たーばねさん、あーそーぼー!
ギギギッと鈍く重い音を出しながら扉が開く。
うんうん……束さんがウキウキで待ってる姿が想像できるね!
では7名様ご案な~い。
「石のテーブルに石の椅子。どことなく神聖の雰囲気がするのです」
「驚くべきは空気が死んでない事。まさかこの洞窟内は空調がある?」
「二人ともISをいつでも展開できる様に。ダガー小隊は下がって援護の準備を」
あ、言い忘れてた。
「この部屋は戦闘の心配はないですよ」
「そうなのか?」
「はい、ここは【暴食の間】。先に進むには、出された物を食べなければいけません」
「なるほど、『席に座り全てを飲み干せ』とあるな」
ちゃんとルールを書いた石板を置いておいて良かった。
スター1が出口の扉を叩いたり触ったりしてなにかを調べている。
どうした?
「この扉を無理矢理開けて進むのはダメなのか?」
「……どんなペナルティがあるか分からないので、止めた方がいいかと」
「そうか」
残念そうな顔するなスター1!
他のスターメンバーはまたかって顔してるが、ダガー小隊はひいてるぞ!
俺も一瞬は考えた手だが、マジでお仕置きされそうなので止めてください!
お仕置きは嫌だ! お仕置きは嫌だ!
「全員椅子に座ってください。それで試練が始まります」
俺の言葉に従い、全員が大人しく椅子に座る。
さぁここからがお楽しみだぞ! テーブルの仕掛けが作動し特製マグボトルが出て来る。
「これはスープの類か? 暴食と言うには……ん? この匂い――」
「わんこ蕎麦形式だと水物はかなり負担です。……え? この生臭さ――」
警戒しながらマグボトルの蓋を開けると、スター小隊もダガー小隊も顔をしかめた。
本物か確かめる為に鼻を動かしてクンクンしてる姿が凄いキュート!
ただのバナナジュースなのにね。
「おいおいマジか。飲めって? これを飲めってか?」
「今回の仕事はただの後方支援のはずでは? ホモビに出るなんて聞いてない」
「もしかして、篠ノ之束博士ってそういう趣味が……」
「自分、前の部隊にこの手の分野に強い知り合いがいるんで変わってもいいですか?」
ダガー小隊もよう混乱しとる。
男諸君はその、興味がないんで適当に飲んどいて。
スター小隊の皆さんの飲み顔だけ見たいんでげへへ。
「イカの匂い? それにドロドロしてる。スシをミキサーで粉砕したもの?」
え?
俺とスター1とスター2とダガー小隊がギョッとした顔をスター3に向ける。
「……なにか?」
14の目を向けれたスター3が首を傾げる。
ここでまさかの無知シチュだと!?
ありがとうございます! ありがとうございます!
褐色美少女の無知シチュとか最高かよ。
「スター3、飲むのは止めなさい」
「? でも飲まないと先に進めない」
「その通り。だが別に自分で飲む必要はないだろう。あくまで飲み干すのがクリア条件だと言うならば――こうすればいい」
「……隊長? スター1? これはどういった事で?」
スター1が自分の分を隣に座るダガー1の前に置いた。
「飲み干すのがクリア条件なら誰だっていいはずだ。毒ではないだろうが、何が入っているか不明な以上は主戦力のスター小隊がリスクを背負う訳にはいかない。分かるな?」
鬼かな? いやまぁとても合理的だと思うけどね。
「ダガー2、ごめんなさいです」
「リスクを考えるとそれがいい。ダガー3、体に異変を感じたらすぐに吐け」
ふっ、ダメだここでゴリ押ししてスター小隊に無理矢理飲ませる案が浮かばねぇ!
イチャもん付けて飲ませる事は出来るだろうけど、今は必要以上に警戒心を与えるのは避けたい。
美女&美少女のクンクン動画だけで我慢するか!
「確かに自分で飲めとは言われてませんね。ダガー4,お願いします」
こうして男性陣の前に異臭を放つマグボトルが並べられた。
サポートチームって事は立場的に断れない。
悲痛な顔をしているが安心しろ。
味だけは! 味だけは保証するから!
ちょっと調べたんですが、“小隊”って表記は10人以上の集まりらしいですね。
それ以下は“分隊”が正しいみたいです。
でも俺は“小隊”を使いたい!
いやだって普通に小隊の方がカッコいいじゃん。
08小隊にスカル小隊にケロロ小隊、小隊はロマンじゃけんのー。