俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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天災+1VS白騎士

 おかしい。

 なにがおかしいって、ISの操縦を教えるのに白騎士を装着し武器を構えてる千冬さんがおかしい。

 

「千冬さん、何をするつもりです? 『ISの練習を始めるよ~』ではなく『おい、デュエルしろよ』って雰囲気なんですが」

 

 気のせいでなければ目付きもやや鋭くなっいる。

 

「決闘か、それもいいが……これから行うのは一方的な暴力だ」

「なっ!?」

 

 その言葉と気迫に押され、思わず後ずさる。

 

「ちーちゃん? らしくないね。どーしたの?」

 

 親友の剣呑な雰囲気に束さんも普通ではないと感じたらしい。

 俺を庇う様に一歩前に出る。

 

「“温泉旅行の件”と言えばわかるな?」

 

 こちらにブレードの切っ先を向け怒気を飛ばしてくる千冬さん。

 

「なんの事でしょう?」

 

 顔を隠す全身装甲型のISで良かった。

 今、絶対顔に出てた。

 これは……バレてる!?

 

「お前は、”一夏が私の為にバイトをしていた”と手紙に書いていたな?」

「それが何か?」

 

 焦る気持ちを抑え、ハイパーセンサーで出口を確認する。

 出口は自分の真後ろ、千冬さんの後ろじゃなくて良かった。

 

「一夏の気持ちは嬉しいが、まだ小学生のアイツに何度もバイトをさせる気はなかったのでな、私は一夏に確認した。『またバイトをするのか?』と」

 

 千冬さんの話を聞きながらどうやって逃げるか考えてる最中、ハイパーセンサーで一つの動きを確認した。

 ――束さんが、少しずつ俺から距離を取っている。

 

「一夏は言った『またやりたいけど、あの時は神一郎さんに言われてやったから、次はいつになるかわからない』と――おかしいよな? まるでお前から一夏にバイトしないかと誘ったみたいじゃないか?」

 

 一夏!? 内緒って言ったじゃん!?

 その通りです俺から誘いました。

 

「一夏は“しまった”って顔をしたのでな、なにかあると思い一夏から聞き出した――随分と一夏を利用したみたいだな? 温泉街についてからの行動や手紙を渡すタイミングまで指示を出していたとは思いもしてなかったぞ」

 

 そんな一夏にキュンキュンしてたくせに。

 ツンデレブラコン美味しかったです。

 

「とは言っても、一夏もお前の裏の行動は知らなかったようでな。神一郎、裏で何をしていたか、全て吐いてもらうぞ」

 

 暗躍してた事は決定ですか。

 正解なんですけどね。

 

「話しますから落ち着いてください。ね?」

 

 優しく話しかけながら、右手で今も少しずつ移動する束さんを掴む。

 

「へ?」

 

 束さん? 貴女一人を逃しませんよ?

 大きく振りかぶって――必殺

 

「束ミサイル!!」

「ぎにゃぁぁぁ!?」

 

 説明しよう! 

 束ミサイルとは、人外的強度を持つ篠ノ之束を的にぶつける荒技である。

 

 着弾を確認する前に体をターンさせ。

 

「トランザム!」

 

 別にトランザムが使える訳ではない。

 ただ、“もの凄い早いスピード”を意識する為である。

 

 ぐんぐんと近付く出口。

 もう少しで!

 

「もう瞬時加速が使えるとは、見直したぞ」

 

 声が隣から聞こえる。

 右を見ると、死神が並走していた。

 

「速すぎるだろ! “夜の帳”」

 

 ステルスを発動し不可視状態になる。

 その間に、千冬さんは俺を追い越して出口の前に陣取る。

 

 右か左かそれとも上か、一瞬の思考。

 ここはあえての真ん中、ステルスのまま正面から白騎士を弾き飛ばす!

 

 必殺技其ノ二

 ひき逃げアタック!

 

 声を出さず、脳内で叫ぶ。

 腕をクロスさせ、白騎士に突撃する。

 

 ぶつかる――その瞬間、白騎士の左手が一瞬ブレた。

 

「がっ!?」

 

 首を白騎士に掴まれ動きが止まる。

 

「いくら姿を消そうと、気配、視線、風斬り音などは誤魔化せない。詰めが甘いな神一郎」

 

 まるでどこぞの達人の様なセリフを吐く千冬さん。

 

「だからって正面から突撃するISを片手で止めるとか化物すぎ」

 

 つい心からの言葉を言ってしまった。

 千冬さんの殺気が強くなった気がする。

 

「神一郎、お前に壁への減り込み方を教えてやろう」

「はい?」

 

 一瞬、白騎士の背中が見えた気がした。

 次の瞬間

 

 ドゴンッ!

 

「ぐあぁぁぁぁ!」

 

 胸部に衝撃を受け後ろに吹っ飛ぶ。

 どんどん小さくなる白騎士の姿。

 今のは……回し蹴りか!?

 

 なんとか体勢を立て直そうとするが、そう広くない地下施設、そのまもなくゴールに着いた。

 

「がはっ!?」

 

 背中に強い衝撃を受け肺の中の空気が漏れる。

 酸素を求め荒い呼吸を繰り返す。

 

 落ち着いた所で正面を見れば、千冬さんがゆっくりとした足取りでこちらに近づいて来ていた。

 すぐに動こうとするが、体が動かない。

 そしてやっと自分の状況がわかった。

 壁に減り込んでいたのである。

 

「まじか……」

 

 思わず口から漏れる。

 なにか手はないかと辺りを見回すと――隣にお尻が生えていた。

 

「束さん、薄い本の表紙みたいですね。流石あざとい」

 

 束さんは上半身を壁に減り込ませ、下半身だけ外に出していた。

 今流行りのシチュとはわかってらっしゃる。とりあえずISで録画しといた。

 

「ン~! ンン!」

 

 なにやら叫んでいる束さんを無視して、スラスターを全開にして壁から脱出する。

 無事に助かるには仲間が必要だ。

 

「束さん、抜きますよ?」

 

 束さんの足を持って引っこ抜く。

 

 ズボッ 

 

 と音がして束さんが引っこ抜かれる。

 

「にゃ!?」

 

 足を持っているため。逆さまになってスカートが捲れている。真っ赤な顔でそれを必死に手で押さえてる姿はとてもそそる。

 

「しー君! 降ろして! 早く!」

 

 もう少し眺めてたいが、時間の余裕がないため大人しく従う。

 

「しー君、言い訳があるなら聞くよ?」

 

 地面に降ろした束さんは腰に手を当て何やらご立腹だった。

 

「何を怒ってるんです?」

 

 むしろ助けてあげたのは俺なのに。

 

「なんで束さんが壁に減り込んでたと思ってるのかな?」

 

 ニコニコしながら青筋を立てている束さん。

 なんでって。

 

「千冬さんにやられたんでしょ?」

「違うよ! しー君が束さんを投げたからだよ!」

 

 ぷんすかって擬音が合いそうに怒ってらっしゃる。

 残念、束ミサイルは避けられたのか。だけどそれは。

 

「束さん、俺を置いて一人で逃げようとしましたよね?」

 

 俺は見てたぞ? 

 

「ぎくっ」

 

 視線をそらしわざとらしく口笛を吹く束さん。

 それで誤魔化せるとでも?

 

「一蓮托生です。共に力を合わせ戦いましょう」

「でもちーちゃんの狙いはしー君だけだよね?」

 

 千冬さんは束さんが関係者だって事は知らない。

 だからって自分だけ助かろうとは酷いじゃないか。

 

「千冬さ~ん」

「しー君!?」

 

 こちらに歩いてくる千冬さんに話かける。

 束さんは俺が何をしようとしているのか感づいたらしく焦っている。

 

「束さんは千冬さんが温泉に入っている所を盗撮してました」

「ほう?」

 

 千冬さんの背後に三面六臂の鬼神が見えた。

 

「さて束さん、共に力を合わせ頑張りましょう」

「こんちくしょぉぉぉぉ」

 

 泣きながら構える束さん。

 流石の天災もいまの千冬さん相手は怖いらしい。

 

「てゆーか、『ISを兵器として使いたくない』って言っておきながら、千冬さんと戦うなんて思ってませんでしたよ」

 

 こんな事になるならカッコつけた物言いしなければよかった。

 

「それならISを解除して素直に制裁を受けろ」

「制裁=死がありそうなんで断ります」

「そうか、ならば――」

 

 白騎士の姿が消える。

 

「実力行使しかあるまい」

 

 突然目の前に現れる白騎士。

 気付いた時には眼前に刃が迫る。

 

「はぁ!」

 

 それを束さんが弾く。

 おそらく白騎士のブレードのストックだろう。

 束さんの右手には千冬さんと同じ武器があった。

 

「ちっ」

 

 千冬さんが舌打ちと共に後ろに下がり距離をとる。

 

「しー君、油断しないでね。肉体的スペックは私とちーちゃんは同じくらいだけど、近接戦闘の才能はちーちゃんが上だから」

 

 え? この人外戦に混ざんなきゃダメ?

 

「お前を先に仕留めないと神一郎には手は出せんか、ならば」

「ちーちゃんと戦いたくないけど、しー君と束さんの身の安全の為には」

 

 二人の姿が消える。ハイパーセンサーを持ってしても影を捉えるのがやっとだ。

 ただ打ち合う音だけが地下室の響く。

 うん、無理だ。

 俺の出番はどこにもない。

 とりあえず、邪魔にならない様に端っこにいよう。

 

「夜の帳」

 

 姿を消して移動しようとする。

 そこで異変を感じた。

 胸の中心、恐らく千冬さんに蹴られた場所だろう。

 そこだけが上手く消えず歪んで見えている。

 よくよく見ると、装甲に少しヒビが入っていた。 

 

 オタク、マニアと呼ばれる人は多種いる。

 車マニア、電車オタク、フィギュアオタクなどである。

 趣味や嗜好も違う人達だが、一つ共通する物がある。

 

 車マニアの車に傷を付けたら?

 電車オタクの電車の模型を壊したら?

 フィギュアオタクのフィギュアの腕を折ったら?

 念願のISを手に入れ喜んでいるオタクのISを傷付けたら?

 どうなるか。

 答えは簡単だ。ブチギレる。

 

「てめぇぇぇ!」

 

 ハンマーを右手で持ち、僅かに見える影に殴りかかる。

 

 ガキンッ

 

 千冬さんのブレードでガードされたが運良く当たったらしい。

 千冬さんが目を見開いている。

 

「しー君?!」

 

 急に殴りかかった俺の行動に束さんも驚いている。

 

「あんまり調子に乗るなよ千冬」

 

 ギリギリとハンマーとブレードがつばぜり合う。

 

「調子に乗っているのはお前ではないか?」

 

 俺の豹変に動じながらもこちらを睨んでくる。

 

「言うじゃないか、とりあえず……弁償してもらうぞ!」

 

 左手にスコップを持ちそれを突き刺す。

 普段の千冬さんなら当たる事はないだろう。しかし気迫に押されたのは白騎士の動きは鈍っており、スコップの先端が白騎士の肩に刺さり動きが止まる。

 

 その瞬間を見逃がす天災ではなかった。

 

「束キッ~ク」

 

 千冬さんの側面から束さんの蹴りが白騎士を襲う。

 

「っ!」

 

 見事に命中し吹っ飛ぶ千冬さん。

 そのまま壁に激突する。

 

 千冬さんの動きに注意しながら隣に並び立つ束さんに話かける。

 

「束さん、これなんですが、直ります?」

 

 胸の傷を指差しながら確認する。

 

「ちーちゃんにやられたの? まだ説明してなかったけど、しー君のISの装甲はステルス性の特殊装甲だから少し脆いんだよ。でもそれぐらいならすぐ直せるから大丈夫だよ」

 

 シールドバリア―を突破して装甲に傷を付けるなんて流石ちーちゃん。と束さんは喜んでいるが、俺から見ればたまったもんじゃない。

 

「束さん、ちなみに修理費はおいくら万円?」

「え? タダでいいよ?」

「それはダメです。その辺は馴れ合いにしちゃいけません」

 

 修理費無料だと、壊したり傷つける事に鈍感になりそうだからな。

 

「でも、結構高いよ?」

「安心してください。払うのは千冬さんです」

「ちょっと待て神一郎! なぜ私が!?」

 

 土煙を掻き分け千冬さんが姿を現す。

 

「壊したの千冬さんですよね?」

 

 傷を指差しながら確認する。

 

「それはそうだが、元はと言えばお前たちが原因だろ」

「だからと言って人の物壊して良いのですか? 一夏にもそう教えるんですか?」

 

 さっきまでの勢いはどこへやら、千冬さんはあたふたし始めた。

 

「束さん。正直に言ってください。修理費はいくらですか?」

「材料費だけなら……300万円かな?」

 

 材料費だけ、か。随分優しい物言いだな。

 

「では千冬さん、300万円払ってください」

 

 束さんが何か言いたげだが、視線で黙ってろと訴える。

 

「そもそも束は私の入浴シーンを見たんだろ? ならおあいこじゃないか?」

 

 急にお金の話になったせいか、しどろもどろに言い訳を始める千冬さん。

 まだまだ甘いね。

 

「へ~、千冬さんは自分の入浴シーンに300万円の価値があると? それは自意識過剰じゃないですか?」

 

 そう言えば千冬さんが押し黙る。

 しかしまだ口撃は止めない。

 

「300万の借金か、一夏の食事はこれからメザシ一匹だけですかね?」

 

 悲惨な未来を想像したのか、千冬さんの顔色が青ざめる。

 踏み倒すとか考えない所が真面目だな。

 

「払えないなら……そうですね。300万円分の働きでどうでしょう?」

「……なにをすればいい?」

 

 千冬さんは一瞬考え込むが、現金の支払いが無理だと思ったのか素直に話を聞く姿勢になった。

 

「直すのは束さんですからね。束さんに決めてもらいましょう」

 

 そう言って束さん耳打ちする。

 

「しー君、それ最高だよ」

 

 目をハートにし、口から涎を垂らす天災が、千冬さんに怪しく微笑んだ。


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