俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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唐突なギャグパート
天才を天災にしたかった。
今回はネタ発言多めですm(_ _)m


天災の片鱗

 風邪

 それは全ての人間が一度はなった事があるだろう病。

 症状も様々で、身近な病気だが特効薬がなく、開発すればノーベル賞ものと言われている社会人の天敵。

 

 学生から社会人になると風邪との付き合い方が変わる場合が多い。

 具体的には、

 

 38°までが微熱。

 38.5°は座薬入れて働け。

 39°はインフルの可能性があるから病院行け、となる。

 

 悲しいかな大人になると風邪程度で仕事は休めない。

 どんなに体が怠くても、『風邪で休むとか子供かよ自分www』と自身を叱咤し頑張るのだ。

 だから、アニメやラノベの『風邪をひいたら美少女が看病しに来てくれるイベント』は見ててイラっとする。は? なに甘えてんの? って気分になる。

 風邪をひいた日に、アニメやゲームでそのシーンを見て、思わず舌打ちした同志は多いはずだ。

 

 だからーー

 

「ふんふふ~ん」

 

 美少女が台所で料理しているのは寂しいオタクの妄想だし。

 

「しー君、おかゆできたよ~」

 

 その美少女が笑顔で寝室に入ってくるのゲーム脳が見せる都合のいい幻想だし。

 

「はい、あ~ん」

 

 炭と墨汁をミキサーにかけた様な食べ物を食べさせようとしてくるのは、風邪で弱った心が見せる悪夢だ。

 

 なぜこんな事になったのか、理由は簡単、酒飲んで五月の山中で寝てたら風邪もひくというもの。

 誤算は子供の体のせいか、大人の時に比べて体が動かない事と、この――

 

「ほら、しー君てば、お口開けてよ」

 

 頑なに口を閉ざす俺のほっぺにグリグリとスプーンを押し当ててくるこの天災の存在だ。

 どこで知ったのか急に部屋に現われたと思ったら、この調子で良妻幼馴染のまねごとを始めてしまった。

 

「束さん……食欲……ないんで」

 

 のどが痛くて喋るのも億劫だ。掠れた声しか出ないため束さんと意志の疎通が中々できない。

 のど飴が欲しい。

 そんな、真っ黒なおかゆなどいらないから。

 

「もー、我儘はダメだよしー君、このおかゆは栄養満点で風邪薬入りなんだから」

 

 腰に手を当てて、メッっと怒る束さん。

 気持ちは嬉しい。不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。

 でも風邪薬入りおかゆとかないと思う。

 せめて見た目がまともなら……。

 

「あの……せめて……もう「隙あり」ごぼっ!?」

 

 口の中にドロドロした物が入ってきた。

 

「!!!!????」

 

 アツいアツいアツい!

 喉にゴツゴツした硬い塊が当たって痛い!

 口の中がドロドロとしたものでいっぱいになる。

 呼吸ができず、苦しさから逃げる為にそのドロを飲み込む。

 

「ごほっごほっ」

 

 せき込みぜーぜーと荒い呼吸を繰り返す。

 この人実は俺を殺しに来てるんじゃないのか!? 

 

「たーんと召し上がれ」

 

 束さんは実に爽やかな笑顔でスプーンを差し出してくる。

 

「つっ!」

 

 それを歯を噛み締める事で抵抗する。

 

「あ~ん」

 

 左手で下顎を掴まれ無理矢理口を開けられる。

 こんなの俺が知ってる『あ~ん』じゃねぇ!?

 

「おっへ、たぼねざんおっへ」

 

 顎を掴まれ言葉にならない声を出す。 

 しかし 

 

「がぽっ!?」

 

 無情にも次々と口に入ってくるドロ。

 苦しさからそれをを泣きながら飲み込む。

 喉が痛くて叫ぶ事させできず、ただ為すがままになる。

 涙が溢れる。なんで俺がこんな目に……。

 

 

 

 

 

 いったいどれくらいの時間がたっただろうか、気が付いたらベッドに横たわっている自分がいた。束さんはいなくなっていた。

 意識がハッキリして最初に思った事は、今の自分はレイプ目してんだろうなって事と、このままでは殺されるって事だ。

 

「ふむふむ、なるほどなるほど」

 

 台所から束さんの声が聞こえてきた。

 

「卵酒ってのが風邪に効くんだ? お酒好きのしー君にはピッタリだよ。えーと、冷蔵庫にビールと生卵があったよね」

 

 

 

 

 

 逃げよう、俺は今日の為にISを手に入れたに違いない。

 待機状態の流々武は同じ部屋の机の上に置いてある。

 それを取ろうと立ち上がろうとして――

 ベッドから立ち上がれない……だと……!?

 体にまるで力が入らない。

 下半身は特に力が入らない。

 まるで腰砕け状態だ。

 

 台所からは束さんがなにやら作業している音が聞こえる。

 残された時間は少ない。

 なんとかISの元にたどり着こうと上半身を動かしてベットから抜け出そうとするが、中々上手く行かない。

 

 ヒタヒタと近づいてくる足音。

 

 

 頼む流々武。

 

 

「しー君入るよ~」

 束さんが笑顔で部屋に入ってくる。

 

 

 お前に自我が有るというなら。

 

 

「ほらほら、しー君の大好きなお酒だよ~」

 その手にあるのはビールに生卵を混ぜたナニカ。

 

 

 俺の気持ちに答えてくれ!

 

 

 必死に流々武に手を伸ばす。

 その指先から光に包まれISの装甲が装着される。

 

 ありがとう流々武。

 これなら!

 

「ちょっとしー君、風邪ひいてるんだから大人しくしなきゃダメだよ」

 

 あれ?

 

 今まさに飛びだとうとする体がベッドに釘付けになる。

 ふと見ると胸の上に束さんの手が添えられていた。

 

 いくら風邪で力が出てないとはいえ、片腕で押さえつけられるだと!?

 

「まったく、風邪が治るまでISは没収します」

 

 束さんのそのセリフと共にISが勝手に解除された。

 

 嘘だろ? 待って流々武、俺を見捨てないで!

 

 俺の手から待機状態になった流々武が束さんに没収されてしまった。

 

「しー君、汗かいて喉渇いたでしょ? はい、コレ飲んで」

 

 束さんが元はビールだったモノを俺の口元に近付けてくる。

 なんで今日の束さんはちょいちょい良い女風なんだろ? 行動に中身が伴ってないから恐怖を感じる。

 

「た…ばねさん……ある…こうるは……」

 

 お粥でさらに喉がヤられてる!?

 熱出してる子供にアルコールとか死ぬから!

 いくら神様からそこそこな体を貰ってても死ぬから!

 

「え? なんて?」

 

 殴りたいその笑顔。

 とりあえず口を閉じ、無理矢理顎を開かれない様に手で口元を隠す。

 

「ん? 飲みたくないの?」

 

 そうそう! わかってくれた!?

 必死にコクコクと首を動かす。

 

「でも、卵酒って体に良いんだよ? 早く治すなら飲んだ方がいいよ?」

 

 それ卵酒じゃないから。

 

「ん~」

 

 それでもガードを外さない俺を見て、束さんは頬に手を当て何やら考えこんでいる。

 

「あ、そうだ」

 

 束さんがポンと手を打つ。

 なんだ? どうした? 

 

「えい」

「がはっ!?」

 

 お腹を殴られ、顎が上がり口が開く。

 

「ほい」

「がぼっ!?」 

 

 その瞬間、口の中にビールの苦味と卵の味がする少し粘り気のある液体を流し込まれた。

 

「や…たば……ごふっ…じぬ……」

 

 無理無理無理!

 誰か助けて!

 

 頭が痛くなって意識が朦朧としてきた。

 視界は涙で歪み束さんの顔が歪んで見える。

 その、歪んだ顔した束さんの笑顔はまるで――

 

 

 

「しー君? 寝ちゃった? まぁいいか。えっと後は何が効くのかな? えーと、なになに、ほーほー、ネギにそんな効果があるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は今波打ち際にいる……と思う。

 目が開かないが、下半身が水に浸かってるし、一定のリズムで水が体に当たるからそうなんだろう。

 頬に当たる砂が冷たくて気持ちいい。

 体に波が当たるたびに体の体温が奪われてる気がする。

 でも寒くはない、むしろ心地いい。

 このまま眠ったらきっと凄く幸せだろうな。

 

 

 

 ゆさゆさと体を揺らされてる気がする。

 誰だ? 俺を寝させてくれ。

 

 ゆさゆさ

 

 ごめん、今凄く幸せな気分なんだ。邪魔しないでくれ。

 

 ゆさゆさ(――ろう!)

 

 頼むから構うな。いい加減にしないとキレるぞ。

 

 ゆさゆさ(――いちろう!)

 

 なんか聞いたことある声だな。

 

 ゆさゆさ(神一郎!)

 

 この声は……千冬さん?

 

 

 

 

「しっかりしろ! 神一郎!」

 

 あれ? 目を開けたら目の前に千冬さんが――

 ってやばい!?

 なんか胃の中が、ぐるんぐるんしてる!

 トイレは……間に合いそうにない!

 

 千冬さんに抱きかかえられた状態だったみたいだが、そこから飛び起き、ベッドの側に置いてあったゴミ箱に顔を突っ込み。

 

「う☆☆☆☆ー」

 

 胃の中身をブチまけた。

 

「おい、神一郎、それ……」

 

 千冬さんがゴミ箱の中身を見て驚愕している。

 女性の目の前でリバースして、しかも中身見せるとかすみません。

 ですが、できれば中身については触らないでください。

 だって――青いゴミ箱の中身が真っ黒に染まってるとか、俺自身怖くて忘れたい光景だから。

 

「すみません千冬さん、水を取って来てもらえませんか?」

「あぁ、水ならここにあるぞ、ほら」

 

 千冬さんがペットボトルを渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言って喉を潤す。

 そういえば、普通に喋れる様になったな。

 あれ? 

 

「あの、束さんは? それになんで千冬さんが居るんです?」

 

 てか、俺なんで千冬さんに抱きかかえられてたんだ? 

 

「私が来たのはお見舞いだ。一夏が心配してたのでな。束はそこにいる」

 

 千冬さんの視線の先には、部屋の隅で、涙目で正座している束さんがいた。

 

「お前、束に何されたか覚えているか?」

 

 はて? 何と言われても。

 

「えーと、確か…………真っ黒なお粥を食べさせられて、腹パンされて、ビールに生卵を混ぜたのを飲まされました」

 

 今の今まで忘れてた。

 きっと俺の脳みそは記憶を無かった事にしたかったんだろうな。

 激しい吐き気はビールのせいか。

 

「そうか、そんな事もされてたのか」

 

 千冬さんが哀れみの視線を向けてくる。

 

「そんな事『も』ってなんですか?」

 

 寝てるうちに何かされたんだろうか?

 

「その……なんだ、世の中には知らない方が良い事もあるだろ?」

 

 ねぇ、笑ってよ。

 なんで千冬さんは俺から視線をそらしてそんな悲しい表情してるの?

 聞きたくないけど、知らないでいる事も怖いな。

 

「束さん、俺に何したんです?」

 

 未だに正座中の束さんに話を振る。

 

「何って、ネットでネギが風邪に効くって書いてあったから――」

「あぁ、首に巻くと効果があるとか言いますもんね。もしかして、勢い余ってネギで首絞めたりしちゃいました?」

 

 それなら千冬さんが取り乱してたのも理解できる。

 

「ううん」

 

 束さんが首を横に振る。

 

「ネットのサイトには、ネギを首に巻くって書いてあったけど、束さんにはイマイチ意味わかんなくて」

 

 まぁ最近の若い子にはそうだよね。

 俺が子供の頃は結構普通だと思ってたけど。

 

「そもそもさ、風邪に効く成分があるなら皮膚接触とかおかしいよね?」

 

 ちょっと待って?

 

「最低でも粘膜接触が妥当じゃん?」

 

 なんか体の一部がゾクゾクしてきた。

 

「だから、お尻と口からネギを刺したんだよね。そしたらさ、急に現れたちーちゃんにいきなり殴られたんだよ? 酷いと思わない? 束さんはしー君の為にやった事なのに、それからずっと正座させられるし」

 

 束さんは頭を抑えながら千冬さんに不満そうな視線を送る。

 その様子を見る限り、悪い事をしたと思っていないようだ。

 

「千冬さん、貴女は何を見ました?」

 

 怒るのは後からでもできる。

 だから落ち着け俺。

 

「……玄関の鍵が開いていたのでな、悪いと思ったが嫌な予感がしたので勝手に入らせてもらった」

 

 千冬さんはため息混じりで話し始めた。

 おそらく束さんかな?

 どこから来たかと思ったけど、ピッキングかよ。

 

「居間にはいなかったから寝室を覗いたんだ。そこで……ズボンを脱がされ尻にネギが刺さった状態のお前と。そのお前の口に笑顔でネギを刺し出しする束がいた」

 

 そうか、俺の口と尻にネギをね。

 尻に感じた違和感はそのせいか。

 これはあれだな。ミックミクにされたって事かな?

 オタク冥利に尽きるな。

 

「束さん、今日はいつもと違った感じだったけど何でです?」

「あ、やっぱり気付いた? えへへ~、箒ちゃんの『愛され系幼馴染への道』の看病編に書いてあったの実践してみたんだよ~」

 

 『愛され系幼馴染への道』

 俺の持ちうる、エロゲー、ギャルゲー、アニメ、ラノベの知識を活かし作った、男の理想と妄想が詰まった一品。

 なるほど、確かに最初はまともな行動だったな。

 

「束さん、腹パンしろとは書いてなかったはずですが?」

「だってしー君に飲んで欲しかったんだもん」

 

 このやり取りの間、束さんはずっと笑顔だ。

 全ては善意からきてるのだろう。

 そうだ、相手はまだ子供の面もある。

 ここは怒るのではく、注意し――

 

「それにしても束さんにもこんな気持ちがあったんだね~」

 

 うん?

 

「熱で唸ってるしー君を見てたら、こう、モヤモヤ? むらむら? した気持ちになったんだよね~。これが保護欲? ってやつなんだね!」

 

 なんか違うよね?

 

「特にしー君の涙目が最高だったんだよ~」

 

 束さんが頬を染めて愉悦に浸っている。

 そうかそうか。

 目覚めたのは保護欲じゃなくてS心か。

 

「束さん、流々武を返してもらっていいですか?」

 

 いいよ~と言って束さんが流々武を返してくれた。

 

「神一郎。怒る気持ちはわかるがまだ体調が万全ではないだ。あまり無理するなよ?」

 

 千冬さんは俺が何をするか理解してるんだろう。

 巻き込まれないように部屋から出ようとする。

 申し訳ないが手伝ってもらいますよ? IS使っても束さんを押さえられないだろうから。

 

「束さん」

「何かな?」

「おばぁちゃんが言っていた。『掘られたら掘り返せ』と」

 

 流々武を右腕だけ装着しスコップを装備する。

 

「えっと、しー君、掘るってなにを?」

 

 束さんはお尻を押さえながら後ずさりする。

 なんだわかってるじゃないか。

 

「千冬さん、束さんを押さえてください」

「私を巻き込むな」

 

 千冬さんはとても嫌そうな顔だ。

 だが逃がさん。

 

「これ、キャンプの時の写真なんですが、飲酒が学校にバレたらどうなりますかね?」

 

 そこには赤ら顔でビールを飲む千冬さんが写っていた。

 

「悪魔か貴様!?」

 

 千冬さんが歯をむき出して怒っている。

 悪魔だっていいよ。悪魔らしい方法で束さんを掘るから。

 

「離脱!」

 

 俺が千冬さんと話しているのをチャンスだと思ったんだろう。

 束さんが窓に向かって走り出す。

 

「そうはさせん」

 

 それを千冬さんが飛び付き捕獲した。

 ナイスタックル。

 

「ちーちゃん離して~」

「お前が悪い。諦めろ」

「全部しー君のためだもん!」

「だからってやり過ぎだバカモン」

 

 千冬さんは束さんを脇の下で押さえ込み俺の方に尻を向けさせる。

 

「ちょっ!? 本気なのしー君!? しー君今体調良いでしょ? それ束さんのお陰なんだよ!?」

 

 ジタバタと暴れる束さん。

 まだ万全ではないが、確かに体調は回復してる。

 認めたくないが、それは束さんの薬入りお粥のお陰なのかもしれない。でも――

 

「ネギは?」

「へ?」

「ネギをお尻に突っ込む必要あったの?」

「……てへっ」

 

 束さんが舌を出してウインクする。

 

「ISCQC裏百式」

 

 スコップの先端を束さんのお尻に向け高々と掲げ。

 

「天災を突き掘る漆黒のトライアングル!!」

 

 グサッ

 

「ひぎぃぃぃぃぃっ!?」


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