俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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ギャグパートです。
ハロウィン編終わったら真面目な話になりますので、今だけはお付き合い下さいm(_ _)m


ハロウィン(中)

 ハロウィンパーティーは大いに盛り上がった。

 赤ずきんの衣装を纏った箒と、学ランにいぬみみと尻尾を付けた一夏は互いの料理を褒め合いながら笑顔で食事し、かぼちゃヘッドの束さんがはしゃげば、いつもより表情の柔らかい、いぬみみ千冬さんがそれを拳で嗜める。

 パーティー会場になっている俺の家は暖かな空気に包まれ、皆に笑顔は絶えなかった。

 

 テーブルに並んだ料理をあらかた食べ終えた時、誰かが言った。

 『ゲームをしよう』と。

 それに反対する声がでなかった、むしろ皆乗り気だった。

 さらに、『せっかくだから罰ゲーム有りにしよう』と言う意見が出た。

 無論、それにも反対する人はいない。

 そう、俺達は皆浮かれていたのだ。

 

 まず、皆で思い思いの罰ゲームを紙に書いて箱に入れ、その中から一夏と箒が一枚ずつ引く。

 負けた二名がその罰ゲームを受けるというルールが最初に決まった。

 

 友達と罰ゲームを考える時、“特定の人物にやらせたい罰ゲーム”、“悪ふざけでみんなが嫌がる罰ゲーム”、“自分が負けた時を考えてヌルめの罰ゲーム”など、人によって考える内容は様々だろう。

 俺はノリで書いた。

 分類するなら“悪ふざけでみんなが嫌がる罰ゲーム”になるだろう。

 この場にいる人間は5人、その内、真面目なのが3人。

 最悪の状況を考えるべきだった。

 

 

 

 

 

 

 罰ゲーム①

 バニーガールの服を着て写真撮影(男女問わず)

 

 罰ゲーム②

 おしゃぶりによだれかけを装備して、赤ちゃんの真似をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――誰だバニーガール(男女問わず)とか馬鹿な事書いた奴。

 

 

 

 

 

 一夏と箒が引いた紙を見て、場の空気は一瞬にして冷えた。

 一夏と箒は青ざめ。

 千冬さんは一気に不機嫌に。

 そんな中、束さんだけニンマリ笑っていた。

 うん、犯人は最初からわかっていたよ。

 俺に対して三人から冷たい視線を感じる。

 正直すまんかった。

 

 

「えっと、これは引き直しかなぁ~なんて……」

「一夏の言うとおり引き直しが良いと思います!」

 

 我に返った最年少組が慌ててやり直しを要求してきた。

 焦るのも無理はない。

 なにせ相手は色々チートな姉二人、罰ゲームを受ける確率が高い弟妹は、もっと楽な罰ゲームを想像してただろうし、そんな罰ゲームを紙に書いていたのだろう。

 二人の心の中を代弁するなら。

 

『ナニソレ聞いてない』

 

 だと思う。

 

 バニーガールに面食らったけど、なに慌てる事はない。

 要は勝てばいいのだ。

 ぶっちゃけ、千冬さんの赤ちゃんプレイとか束さんのバニーが見たい。

 いや、逆でもいいな。

 これは面白くなりそうだ。

 

「まぁまぁ、一夏、箒。まだゲーム内容も決めてないし、ちょっと俺の意見を聞いてくれないか?」

 

 二人が心配そうな顔で俺を見てくる。

 安心しろ二人共、俺は敵じゃないよ。

 

「ゲーム内容はランダム性の強いもの、なおかつ、皆に勝つチャンスがあるものとかどうだろう? それならいいだろ?」

「神一郎さん、俺、千冬姉に勝てる気しないんだけど」

 

 一夏の隣で箒もコクコクと頷いている。

 まったく、やる前から気持ちで負けるなよ。

 

 

「一夏、千冬さんにも苦手な事があるだろ? それを勝負の内容にするんだよ」

「それって束さんやちーちゃんがハンデをつけるって事?」

「いえ、それはフェアではないので、勝負はくじ引きで決めませんか?」

 

 四人が首を傾げる。

 

「罰ゲームを決めた時と同じですよ。一人二つ勝負の内容を紙に書いて箱に入れます。箱の中には10枚の勝負内容が書いてある紙があります。その箱から一人一枚ずつ紙を引いて、書かれてる内容で勝負するんです。“ゲーム”ではなく“勝負”なのは、順位を決められるなら一般的なゲームじゃなくても良しとするからです。そうですね、五回くらいがダレなくて丁度いいかと」

「なるほどね~、それならいっくんと箒ちゃんに勝ち目がある……かもだね」

 

 束さんが不敵に笑う。

 負ける気はさらさらないらしい。

 

「束さん、油断できませんよ? 五回の勝負の内、一夏と箒が決めた勝負が4つ来たら束さんが負ける可能性もありますし」

「ふふん、どんな内容でも束さんに負けはないよ」

 

 憎たらしい笑顔だ。

 一夏と箒もちょっとムッとした顔をしてる。

 普段の束さんなら二人にこんな顔を見せないだろう。

 煽っていくスタイルですね。

 グッジョブだよ束さん。

 

「千冬さんもそれで良いですか?」

「構わん」

 

 あっさりと了承された。

 嫌がると思ったんだが。

 もしかして、一夏の赤ちゃんプレイでも見たいんだろうか?

 流石シスコンの鏡。

 

「意外ですね。もっと嫌がると思いました」

「なに、私だって空気を読むさ。それに――お前の滑稽な姿を見るチャンスだしな」

 

 千冬さんがニヤリと笑い俺を見る。

 いいね。盛り上がってきた。

 だけど、俺も負けてやる気はないよ? 

 

「さて、始める前にちょっと一夏と箒に助言したいんだけど良いですか?」

「いいよ~」

「それぐらいなら良いだろう」

 

 了承を得たので一夏と箒を手招きして呼ぶ。

 今のうちに少しで二人に入れ知恵しないとな――俺の勝率を上げるために!

 

「二人共いい? 格上の相手に勝つには“自分が絶対勝つゲーム”か“相手が苦手なゲーム”、もしくは“運の要素が強く、プレイヤーの実力に影響されないもの”を考えるんだ」

「神一郎さん、言ってる意味はわかるんですが、千冬姉に苦手なものってあるんですか?」

「姉さんが苦手なもの……常識?」

 

 一夏は姉を神聖視しずぎ、箒は中々いい案だと思う。

 

「一夏、今回はさ、別にトランプなんかを使った物だけじゃなくていいんだからね?」

「って言われても……」

「例えば『家事勝負』なんてのも有り」

 

 一夏はハッとした顔で俺を見てきた。

 そうだよ一夏、千冬さんは万能じゃない。

 

「それじゃあ、ゲームのルールを決めましょうか」

 

 

 

 

 ルール①

 ゲームは五回、全員が一回ずつくじを引く。

 

 ルール②

 ポイント制とする。

 一位2P 二位1P 三位0P 四位-1P 五位-2P (五戦終了して、罰ゲーム対象者が二人以上出た場合はその人達だけで延長戦をする)

 

 ルール③

 ゲームの基本的なルールはそのくじを書いた人が決める。

 細かい所は相談しながら。

 

 ルール④

 戦闘系のゲームは禁止。

 

 ルール⑤

 罰ゲームからは逃げられない。

 

 

 

 

 暫く話し合って、ざっくりと決まったルール。

 

 穴だらけに感じるが、それが良いのだ。

 身内でやるゲームでがっちりルールを決めるのはつまらない。  

 ある程度穴がある方が色々と楽しめるってもんだ。

 

 勝負の内容を考えていると、束さんと目が合った。

 もの凄くいやらしい笑みだ。

 あれか? 俺のバニーでも想像してるのか?

 バニーを着させるのは着る覚悟があるやつだけだよ束氏。 

 俺は赤ちゃんプレイはゴメンだけどな!

 

 

 

 

 全員が書いた紙を箱に入れ、軽く上下に振って混ぜる。

 

「みんな準備はいい?」

 

 姉達は静かに笑い、一夏と箒を緊張した面持ちで頷いた。

 

「最初は一夏が引いてみる?」

 

 一夏に箱を差し出して引くように促してみる。

 

「俺から!? いやでも……」

「大丈夫だ一夏。自分を信じろ」

 

 お前なら主人公補正があるからきっと大丈夫!

 

「神一郎さん……わかった。俺、引くよ!」

 

 おおう、無意味に主人公らしいセリフだな。

 

 一夏が箱に手を入れ、半分に折りたたまれた紙を一枚引き、それをゆっくり開けた。

 紙を開いた瞬間、一夏の顔が喜びに染まった。

 

「俺が引いたのは――『料理勝負』です!」

 

 一夏の尻尾がぶんぶん振られている幻想が見えたよ。

 ナイス一夏! 信じてた!

 箒もガッツポーズをしている。

 一夏の為に料理の練習しといて良かったな箒。

 

 それに比べ――クックックッ。

 千冬さん、顔色が悪いですよ?

 そこの天災がなぜ自身満々の顔をしているのかがわからないけど。

 

「一夏、ルールは?」

 

 場合によっては横槍も辞さないよ俺は。

 ここは確実に勝ちたい。

 

「ちゃんと考えてましたよ。お題は“卵焼き”です。料理は二人ずつ順番で作りましょう」

 

 中々良いチョイスだ。

 作るのに時間かからないしな。

 それより問題なのは――

 

「一夏、判定は誰がするの?」

「え? みんなで食べ比べて、一番美味しかった人に票を……」

「それさ、みんなが自分に票を入れたら意味なくない?」

「あ……」

 

 気付いたか一夏。

 まぁそんな小狡い事する人はここにいないだろうけどね。

 

「だからさ、判定は一夏がすればいいよ。一夏なら信じられるし」

 

 利用しといて悪いが一夏、俺は彼女の料理はできるだけ食べたくないんだよ。

 

「そうだな、一夏なら信用できる」

「あぁ、一夏に任せれば問題ないだろう」

 

 俺と同じ発想に至った箒と千冬さんが味方になった。

 一夏は、え? え? と事体を把握できなかったみたいだが、ある場所を見て動きが止まった。

 

「料理は久しぶりだよ~。夏祭りはひたすらシロップ作ってただけだしね」

 

 束さんは腕捲くりしてやる気満々だ。

 

 一夏……シロップはね。

 俺が必死に『くれぐれも余計な事をしないで下さい』と頼み込んで味付けだけをしてもらったんだよ。

 タガが外れた束さんは……凄いよ?

 

 一夏は愕然とした表情のまま周囲を見回し、助けがないと悟ったのかガクリと肩を落とした。

 

 

 

 ~料理中~

 

「一夏と箒の卵焼きは見事でしたね」

「そうだな」

「あの、千冬さん。それ卵焼きじゃなくてスクランブルエッグなんですが?」

「…………チッ」

「味付け塩コショウとか新しいですね」

「お前、ワザと私と組んだな? 一夏や箒が余計な事をしないように」

「二人共優しいですから、千冬さんに助言とかしそうだったので」

「そこまでして勝ちたいか?」

「勝ちたいですね」

「お前今に見てろよ」

「卵焼きもちゃんと作れない奴が偉そうに――痛ッ! ちょオタマで殴るのは反則でしょ!?」

「手が滑った」

「勝てないからって大人気ない(ボソッ)」

「いやお前が言うなよ」

 

 

 

 

「お待たせ~」

 

 最後に料理を作っていた束さんが台所から出てきた。

 束さんがテーブルに皿を乗せ、これで全員分そろった。

 

 一夏作、普通の卵焼き(甘め)

 箒作、だし巻き卵

 千冬さん作、スクランブルエッグ

 束さん作、なんか黒い塊

 俺作、卵焼き(しょっぱめ)

 

 

 これは良い戦いになりそうだ――色んな意味で。

 

「えっと、それじゃあ……箒のから」

 

 一夏が箒の卵焼きをひと切れ箸で掴み、パクッと食べる。

 

「うん、やっぱり箒の卵焼きは美味しいな」

 

 一夏は嬉しそうにもぐもぐと口を動かしている。

 

「そうか? ちなみにだ、一夏の好みの味とかあるのか?」

 

 こんな時でもリサーチを忘れない箒の女子力が凄い。

 

「今のままで十分美味しいぞ? むしろ箒の卵焼きが一番好きだ」 

「一番好き!? んっんん、そうか、私が一番か」

 

 箒がとても幸せそうな顔をしている。

 誰かブラックコーヒーをくれ。

 口の中が甘ったるいよ。

 

「次は、神一郎さんのを」

  

 お前がしょっぱいの食べるんかい!?

 って超ツッコミたい。

 

「神一郎さんのは、ご飯が欲しくなる味ですね」

 

 まぁ、酒のツマミにもなるおっさん仕様の卵焼きだし。

 

「次は……」

 

 一夏は残りのお皿を見つめ――

 

「自分のを……」

 

 安牌に逃げた。

 そのままもそもそと自分の卵焼きを食べ。

 

「その、普通です」

 

 だよね。

 自分で作った料理の評価とかそんなもんだよな。

 

「次は千冬姉のを……」

 

 千冬さん作のスクランブルエッグを箸で摘み、一夏は恐る恐る口に運ぶ。

 ゴクンと嚥下音が聞こえたが、一夏は何も言わなかった。

 時間にして数秒だが、部屋に静寂が訪れる。

 一夏は僅かに口を開き。

 

「凄く……スクランブルエッグです」

 

 姉の手料理なんだからもっと喜んでやれよ。

 千冬さんが心なし悲しそうな顔をしてるぞ。

 

「でも、千冬姉の手料理初めて食べたけど、これで初めてなら上出来だよ千冬姉! そうだ! こんど俺と一緒に料理しようよ!」

「……気が向いたらな」

 

 一夏が慌ててフォローに入るが、千冬さんの反応が淡白だ。

 安心しろ一夏、千冬さんは怒ってる訳じゃない。

 心の中では『愛する弟に不出来な料理を食べさせるとは私はなんてダメな姉なんだ!』とか考えてるだけだから。

 まぁ、俺から言える事は一つ。 

 ブリュンヒルデざまぁぁぁWWW

  

 バシンッ!

 

「あだ!?」

 

 いきなり頭をひっぱたかれた。

 

「なぜ叩くんです? 千冬さん」

 

 思わず犯人を睨む。

 

「お前の笑顔がムカついた」

 

 どうやら気付かないうちに笑っていたらしい。

 

「最後に束さんのを……」

 

 千冬さんと漫才をしてるうちに覚悟を決めたらしい一夏が、手を震わせながら、束さん作の黒いナニカに手を伸ばす。

 

「ふっふっふ、自信作だからね。いっくん、たーんと召し上がれ」

 

 語尾にハートが付きそうなほど上機嫌だ。

 それに比べ、黒い欠片を箸で摘んでいる一夏が涙目なのが悲しみを誘う。

 

 ジャリ

 ジャリジャリ

 

 一夏は口を何度か動かした後――バタリ。

 

 横に倒れた。

 

 

「い、一夏~!?」

 

 箒が慌てて一夏に駆け寄る。

 

「束、何を作ったんだ?」

「え? えーと、古今東西の卵焼き?」

 

 どゆこと?

 

「色んな味がした方がいいと思って、鶏卵から魚卵まで、世界中で食べられてる卵を一つにまとめてみました」

 

 どーだ! と笑顔でドヤ顔している束さんが怖い。

 

 

 一回戦終了。

 現在の順位。

 

 一位 2P 箒 

 二位 1P 神一郎 

 三位 0P 一夏

 四位 -1P 千冬

 五位 -2P 束




誰が罰ゲームを受けるのか!?

実力的には一夏と箒か?
はたまた大波乱が起きて千冬と束か?
いや、安定の落ち担当、束&神一郎か?



本当、落ちどうしよう……。

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