俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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気づいてる人もいるかもしれませんが、この話の元ネタはマジ恋です。
個人的に『ホームパーティなどで集まってゲーム』などは、あるあるネタだと思っていたんですが、よくよく考えてみると、日常系ラノベでさえ余り無いシーンなんですよね。
あってもトランプだけとか。
なんで書かれないのかちょっとだけ理解できました。
こんなん真面目に書いたら文字数多いは、上手く書かないと読者様がダレそうだは……。
もうね、ゲーム五種とはバカじゃないの俺?
とこの三週間思い続けてました(><)


ハロウィン(下)

 一夏が暫く動けなくなったり、負けた束さんが駄々をこねたりと、色々あったがやっと場が落ち着いて二回戦目。

 

 引き手 箒

 

 勝負内容 『絵』

 

 ルール 絵が上手な人が勝ち

     判定は話し合い

     人物、無機物なんでもOK

     制限時間は15分    

           

 

 

 最初、この勝負が束さん発案だという事に全員驚いた。

 俺は違う意味でだが……。

 一夏と箒は悩んだ挙句、互いに似顔絵を書く事にしたらしい。

 二人の画力は年相応、普通だったが、箒がやや迫力のある絵になっている。

 男塾的な? なんか一夏の顔が若干濃ゆい。

 そして、束さんと千冬さんは――

 

「ねぇちーちゃん。あれなんだろ? 束さんでも知らない物があるとは思わなかったよ」

「ふむ、女の幽霊か? ほら、たまにテレビに映るじゃないか、長い髪を振り乱し、人を襲うタイプの怪談。それにしても目が異様に大きいが」

「なるほど、今にも人に襲いかかりそうだね」

 

 絵を書かずに俺の後ろ駄弁ってた。

 

「ちーちゃん、しー君が角を書き始めたよ?」

「角なのか? 先端が丸いぞ?」

 

 外野、うっさい。

 

「お二人共、残り時間5分切りましたよ? 大丈夫なんですか?」

 

 てか、この二人って絵は得意なんだろうか?

 束さんは発案者だから自信あるんだろうけど、千冬さんとか苦手そうなのに。

 

「うん、せっかくだからトリにしようと思って。あ、いっくんと箒ちゃん書き終わった? 見せて見せて。そうだ。書き終わった順から発表しちゃおう」

 

 まぁ構わないけどね。

 俺も書き終わったし。

 

 

 

 

「俺が書いたのは箒です」

 

 一夏が画用紙を見やすいようにテーブルに乗せる。

 正直、上手いとは言えない。

 けど、丁寧に箒の特徴を書こうとしてる気持ちが伝わる作品だった。

 

「私は一夏を」

 

 次に箒が画用紙を出す。

 箒の絵はやや劇画風の濃ゆい一夏だった。

 漢らしいのが好きらしい。

 

 そして次は俺の番。

 俺が書いたのは、長い髪にエプロンドレス、ニヤけ顔の人物。

 

「俺は束さんを書きました」

 

 見せたくないが、しょうがないので見せる。

 

「「「「へ?」」」」

 

 その反応は予想通りだよチクショウ。

 

「しー君、コレ……私?」

 

 どうした束さん?

 笑うなり喜ぶなりしろよ。

 

「束さんは俺が絵が苦手だと知っていてこの勝負にしたんでしょ? 何を驚いているんです?」

 

 あぁそうさ、俺は絵が苦手なんだよ!

 オタクが全員絵が得意とか思うなよ!

 俺狙いで勝負を決めるとは思わなかった……。

 

「まさかここまでだとは思わなかったんだよ」

 

 束さんが絶句してた。

 他の三人は同情的な視線を向けている……束さんに。

 

「神一郎、服が真っ黒なのはなんでだ?」

「鉛筆で書いたらこうなるんです」

「角は?」

「うさみみです」

「髪がなんであんなに乱れているんだ?」

「束さんの髪は書くのが難しいんです」

「そうか……」

 

 千冬さんは少し質問した後黙ってしまった。

 もういいだろ?

 俺の絵には触れないでくれ。

 

「束さん、残り時間があと数分ですが大丈夫なんですか?」

「ん? そうだね。ちーちゃん、やるよ?」

「わかった」

 

 意気消沈して下を向いていた束さんが顔を上げた。

 やたら暗い顔しているな。

 なに? そんなにショックな絵か?

 あぁ、自分で襲いかかりそうとか言ってたもんな。

 よく特徴を捉えているだろ?

 

「よし!」

 

 束さんがパンパンと自分の顔を叩いて気合を入れ、袖を捲り手を高く上げた。

 千冬さんが、その斜め後ろで同じように鉛筆を構える。

 

 ザザーーッ

 

 束さんと千冬さんが凄い勢いで何かを書き始めた。

 

 

 

 

「できた」

 

 数十秒後、束さんが動きを止め、絵をこちらに見せる。

 

「私が書いたのは“アスワンツェツェバエ”だよ」

 

 束さんが書いたのは、まるで図鑑の1ページのような出来栄えの絵だった。

 ハエという題材にも関わらず、神々しくもある一品だ。

 

「束さんて、銃弾を素手で掴めるの?」

 

 まさかだよね。

 いかに束さんとはいえ……。

 

「(ニヤッ)」

 

 無言で笑った!?

 まじで? 出来るの? 

 いや、気にしない気にしない。

 天災だしこれくらいはね?

 

「千冬さんは何を書いたんです?」

  

 束さんと同じ動きをしていたから、もしかしたら同じかも知れない。

 この人も人類最強だし有り得る。

 

「私は束のを真似てみた」

 

 そう言って千冬さんが見せた絵は、束さんとまったく同じ“アスワンツェツェバエ”だ。

 しかし何故わざわざ束さんと同じ絵を書いたのか。

 

「流石ちーちゃん。と言いたいところだけど、ちょっと荒いね」

「無理言うな。筋肉の動きを観察しながら同じ動きをするのは疲れるんだ」

 

 お兄さんちょっと言ってる意味がわかんないな~。

 

「千冬さん、もしかして……後ろから束さんの手の動きを真似たんですか?」

「あぁ、私は絵心などないからな。これが手っ取り早い」

 

 はは、この世界の女の子は凄いな~。

 片方はリアルスタンドで片方写輪持ちとか。

 やったね一夏。

 この二人に守られるんだ。

 お前の未来は明るいよ。

 驚いている一夏達に、『筋肉の動きを読めば誰にでもできる』とか『脳内のイメージをそのまま紙に書くだけ』とか言ってる二人はどう見ても人外です。

 

 

 

 

 判定

 

 一位 束

 二位 千冬 (束さんの絵より荒い為)

 三位 箒  (一夏よりオリジナリティがあった為)

 四位 一夏

 五位 神一郎

 

 

 二戦目終了

 

 一位  2P 箒 

 二位  0P 千冬 

        束 

 四位 -1P 一夏 

        神一郎

 

 

 

 

 三戦目。

 

 引き手 千冬

 

 勝負内容 『サイコロ』

 

 ルール サイコロを三回振り、合計が一番高い人が勝ち。

 

 

 

 

 箒発案の運任せのゲーム。

 入れ知恵した甲斐があった。

 こちとら転生者ですよ? 運で負けるわけがない。

 と、思ってた時期がありました。

 

「しー君、二、二、二の、合計6だね」

「馬鹿な……」

 

 束さんが笑いながらサイコロを回収する。

 その後ろでは千冬さんも笑っていた。

 一夏と箒の顔にいたっては、『これなら勝てる!』って顔に書いてあった。

 

「ささっ、ちーちゃんも振って振って」

 

 唖然とする俺を横目に束さんが場を進行させる。

 

「私は余り運が良い方ではないんだが」

 

 千冬さんが三つのサイコロを同時に投げる。

 

「ちーちゃんは、一、一、一の、合計3だよ」

「なんだと!?」

 

 千冬さんが珍しく声を荒げた。

 

「ドンマイ」

「やかましい」

 

 慰めたら怒られた。

 ゾロ目とかある意味凄いんだけどね。

 如何せん単純な合計数だから意味がないけど。

 

「はい、いっくん」

「神一郎さんと千冬姉には悪いけど、これなら」

 

 一夏がサイコロを転がす。

 

「お~、いっくんは六、六、六の合計18だね」

「よし!」

「やったな一夏! 私も続くぞ」

「箒ちゃんは、四、四、四で、合計12」

「うん、悪くはないな」

「これで全員終わりだね。私は、五、五、五で15だったから、いっくんが一番だね」

 

 サイコロを振るだけだから、とても早く終わった。

 これおかしくないか? 全員がゾロ目って。

 めだかボックスと似たような設定とかあったっけ?

 そんな事を考えていると、束さんがサイコロに手を伸ばした。

 サイコロを手に収め、また開い時にはサイコロは消えていた。

 拡張領域にしまったのだろう。

 変な所はない。

 だが、束さんのその口元が笑っている事に強い違和感を覚える。

 まさか、と思う。

 けど、一つの可能性が脳裏に浮かんで消えない。

 

 勝負を始める前に、自室からサイコロを取ってこようとした俺を制して、サイコロを差し出してきたのは誰か?

 束さんだ。

 

 束さんが用意したサイコロは三つ。

 最初に束さんが三つのサイコロを同時に投げて、『自分は15』だと言った。

 一つ一つ投げるのも面倒だし、その次の俺も迷う事なく三つ同時に投げた。

 もしかしたら、これは誘導だったのかもしれない。

 五人の人間がサイコロ一度投げるだけ、勝負はあっという間につく。

 そう、結果に疑問を感じて口を挟む前に。

 今回、束さんがさりげなく進行役になった。

 振ったサイコロを拾い、別に人間に渡したりもしてた。

 手のひらに収めた瞬間、拡張領域から、グラサイ――決まった目が出る細工がされているサイコロに交換しても誰も気付かないだろう。

 

 眉間にシワを寄せている千冬さんと目が合った。

 どうやら同じ考えに至ったらしい。

 サイコロはもう束さんの手の中だ。

 今からイカサマを指摘しても、普通のサイコロに変えられるだけだろう。

 

 束さんを見ていたら、俺の視線に気付いた束さんが笑いながら近づいて来て、俺の耳元に顔を寄せた。

 

「しー君、敵の用意した道具を使うなんてまだまだ甘いよ?」

「くっ」

 

 思わず歯を噛み締めた。

 束さんを甘く見ていた俺の落ち度だ。

 全てゾロ目で揃えたのは、いつイカサマに気づくか試していたのかもしれない――心の中で笑いながら。

 もう油断も慢心もしない。

 束さん、俺も全力で相手してやる。

 

「しー君、これで罰ゲームに一歩前進だね。ところで哺乳瓶とかあるかな?」

 

 当店はそのようなサービスはやっておりません。

 

 

 三回戦終了。

 現在順位。

 

 一位  2P 箒       

 二位  1P 束

        一夏 

 四位 -1P 千冬

 五位 -2P 神一郎

 

 

 

 

 四回戦。

 

 引き手  神一郎

 

 勝負内容 『喜怒哀楽ゲーム』

 

 

 ここに来て運は俺に向いた!

 これを待っていたんだよ俺は! 

 

「神一郎さんが書いた紙なんですか? どんなゲームなんです?」

 

 いかんいかん、余りの嬉しさに紙を握り締めたまま我を忘れてた。

 

「そうだよ箒。っと、ルールを説明する前に、束さんにちょっと借りたい物があるんですが」

「なにかな?」

「千冬さんが付けてたあの感情を読み取るネズミ耳まだあります?」

「あるよ~」

「それを、耳が動くんじゃなくて音が鳴るようにして欲しいんですが、お願いできます?」

「そんなの10秒で終わるよ」

 

 束さんは拡張領域から取り出しただろうネズミ耳カチューシャをプラプラ揺らしながら答えた。

 機械系はホント頼りになるな。

 

「ありがとうございます。では勝負のルールを説明しますね」

 

 束さんに余計な事をされないようにしっかり決めないと。

 

「今回の勝負は、“相手の感情を揺さぶった人が勝ち”ってゲームです」

「そこでコレの出番って事だね」

「そうです。まず相手にカチューシャを付けてもらい、その相手の感情を揺さぶって音を鳴らせばいいんです」

「神一郎さん、感情を揺さぶるってよくわからないんだけど」

「そんなに難しい事はないよ一夏。悪口を言って怒らせたり、褒めて喜ばせたりすればいいんだから」

「神一郎、当たり前だが、相手への接触は無しか?」

「いえ、暴力行為やくすぐりじゃなければ可とします」

 

 頭を撫でたりするのも戦法の一つとしたい。

 言葉だけじゃつまらないからね。

 

「肝心な勝敗の決め方ですが、時間で決めます。一人に対する制限時間は60秒。例えば、俺が一人も成功しなかった場合は、タイムが240、逆に一夏が一人20秒で成功すればタイムは80で一夏の勝ちになります。この勝負は、いかに相手の心を揺さぶれるか、そしていかに心を静かに保てるかが肝ですね」

 

 

 ルール 相手に対しての持ち時間は60秒

     薬物や暗示、洗脳禁止。てかイカサマ禁止

     相手への接触は一部可。(くすぐり等は禁止)

     秒数は小数点以下は四捨五入で計算

 

「ルールはこんな感じですね」

 

 ルールを紙に書いて皆に見せる。

 イカサマ禁止あたりで一夏と箒が首を傾げていた。

 純って良いよね。

 俺と千冬さんは気付いてしまったからやられた感が凄い。

 だが、今回は負けないよ束さん。

 

「最初は俺から行きます」

 

 

 ~神一郎のターン~

 

「まずは一夏、コレ付けて」

「はい」

 

 一夏がネズミ耳を装着する。

 それを見て束さんが一夏をガン見していた。

 千冬さんと箒がチラチラと一夏を見ている。

 その視線に気付いた一夏の顔は真っ赤だ。

 今にも音がなりそうだな。

 

「一夏? その調子だと始まった瞬間に音がなるぞ? 落ち着いて深呼吸しな」

「は、はい」

 

 一夏が、スーハーと深呼吸してキリッとした表情を見せた。

 うん、真面目な顔してるのに頭のネズミ耳がピクピクと動いてるのがとてもシュールだ。

 まったく、ナイスだよ束さん。

 千冬さんや箒の番が楽しみじゃないか。

 

「一夏、準備はいい?」

「はい、大丈夫です」

「束さん、スタートの合図をお願いします」

「ほいほい、それじゃあしー君対いっくん――スタート!」

 

 束さんの合図を聞き一夏が表情を固くする。

 その一夏の頭に手を乗せ――

 

「一夏は少しずつ強くなってるよな」

「そ、そうですか?」

 

 頭を撫でられる事に慣れてないのか、一夏はちょっと挙動不審だ。

 

「あぁ、お前ならいつか千冬さんを守れる立派な男になると思う」

「本当にそう思いますか!?」

 

『ピー』

「いっくん“喜の感情”が規定値越えのため、アウト~」

「あ……」

 

 一夏の口から気の抜けた声が出た。

 悪く思うなよ一夏。

 

「時間は9.14だから、タイムは9秒だね」

 

 よし、まぁまぁだ。

 

「さて、次は――箒、いいかな?」

「私ですか? わかりました」

 

 箒が一夏からカチューシャを受け取る。

 

「次は箒ちゃんか、頑張ってね。よーい、スタート」

 

 束さん、今の箒は録画してるよね?

 後でデータを貰おう。

 

「箒」

「なんでしょう?」

「箒は可愛いね」

「っ!? そうですか? ありがとうございます」

「最近は料理も覚えて性格も落ち着いてきたし、良いお嫁さんになりそうだね――一夏の」

「はうあ!?」

 

『ピー』

 

「箒ちゃん、“喜の感情”が規定値越えでアウトだよ。記8.70だから9秒だね」

 

 箒にだけ聞こえるように、最後だけ小声で言ったが効果は抜群だ。

 やはり箒には赤面が似合いますな。

 ここまでは順調、問題は次からだ。

 

「千冬さん、行きますよ?」

「来い、神一郎」

 

 ネズミ耳を付けて凄む千冬さんマジ千冬タン。

 って言ったらすぐ勝てそうだけど、報復が怖いから止めておこう。

 まぁどっちにしろ怒らせるんだけどね。

 

「目玉カードだね。しー君対ちーちゃん、始め!」

 

 速攻で決める!

  

「千冬、少しは女磨けよ」

 

 肩に手を置き、出来るだけ優しい声で言ってあげた。

 

『ピー』

 

「ちーちゃん、“怒の感情”が規定値越えでアウト! 記録は2秒、流石だねしー君」

「………」

 

 千冬さん、怒ってるんだよね?

 無言無表情は怖いから止めて。

 

「最後は束さんですね」

「しー君に天災である束さんの感情を揺さぶれるかな?」

 

 過去何度も泣き顔見せた事あるのに、どこからその自信が来るのか。

 

「また泣かせてあげましょう」

「……私、泣かされちゃうんだ」

 

 恥ずかしそうに意味深な事言うなよ。

 箒と一夏の視線が――哀じゃなくて別の方法にしよう。

 

「ちーちゃん、よろしく」

「あぁ」

 

 二人がそれぞれ、ストップウオッチとネズミ耳を交換する。

 束さんがそれを装着し準備完了だ。

 しかし頭にウサギとネズミの耳とかハチャメチャだな。

 

「では始めるぞ」

 

 千冬さんの声を聞き、目を閉じ集中する。

 思い出すのは、生まれて初めて泣いた映画『ランボー』だ。

 山にこもるランボーに元上官が説得を試みるのだが、ここでランボーは泣きながら戦争での体験を語るシーンがある。

 まさかだよ。

 小学生で男泣きするとは思わなかった。

 ランボーが泣きながら過去を語るシーンを思い出すだけで……。

 

「スタートだ」

 

 ゆっくりと熱くなった目を開ける。

 

「しー君?」

 

 束さんは困惑していた。

 それはそれはそうだろう。

 俺の目が涙目になっているのだから。

 恥は捨てろ。

 全ては勝つ為だ。

 

「束お姉ちゃん、大好きだよ?」

 

 

 

 

『ピー』

 

 少しの間の後に音が鳴った。

 

「束、アウトだ。タイムは6秒」

 

 千冬さんの声にも反応ぜず、束さんはジッと俺を見ている。

 音が鳴るまでの間といい、一体どうした?

 

「しー君が……」

「はい?」

「しー君がデレた!?」

 

 デレてねーし。

 

「これは貴重なんだよ。私、この動画大切にするね」

「ごめんなさい勘弁してください」

 

 思わず頭を下げる。

 録画のことすっかり忘れてた。

 この黒歴史を残すのはホントやめてくれ。

 

「神一郎さんもそんな事するんですね」

「あぁ、驚きだ。神一郎さんがここまでするなんて」

 

 後ろで一夏と箒も驚いていた。

 俺ってそんな真面目キャラかね? 自分で言うのもなんだが、どちらかと言うとお茶目だぞ?

 自分の恥<束さん&千冬さんの恥虐プレイ、だからな。

 

「二人共、今日の事忘れるように。それで次は誰が行きます?」

 

 さっさと次の人に振ってこの場の雰囲気を変えよう。

 

「俺がやります」

 

 一夏がすかさず手を上げた。

 へー、自信有りげな顔だ。

 秘策があるのかな。

 

「じゃあ、一夏の番な」

 

 

 ~一夏のターン~

 

「箒、いいかな?」

 

 一夏は一番最初に箒を指名した。

 

「いいだろう」

 

 箒はどこか期待している顔で一夏の前に座った。

 どんな事を言われるか、期待半分怖さ半分ってとこかな。

 

「いっくん対箒ちゃん、スタートだよ」

 

 進行役に戻った束さんの声を聞き、二人の表情が引き締まる。

 一夏は軽く深呼吸して――

 

「ほ、箒ってさ、可愛いよな」

「か、かわ!?」

 

 多少どもりながらも、見事箒の求めるセリフを言った。 

 

『ピー』

 

「箒ちゃん、喜の感「姉さんは黙っててください!」――はい、いっくんのタイムは4秒です」

 

 束さんは箒に怒られシュンとしてしまった。

 傍から見れば、『よく言った一夏!』って感じなんだけど、なぜそこで箒を見ない?

 すでに一夏は、千冬姉勝負だ! と言いながら千冬さんと対面している。

 顔が赤いし、照れ隠しもあるんだろうけど、そこは箒見てやれよ。

 真っ赤な顔であうあう言ってる箒は本気で可愛いのに。

 しかし一夏らしくないやり方だな。

 さっきの自信有りげな顔といい、もしかして俺の真似をする作戦かな?

 

「次は私か」

「いくよ、千冬姉」

 

 姉弟対決か。

 俺の真似をするなら姉大好きな一夏にとってかなり言辛いと思うんだが。

 

「いっくんがちーちゃんに勝てるか期待なんだよ。それじゃあ、スタート」

 

 頑張れ一夏、お前なら言える。

 

「ち、千冬姉はもっと女の子らしくした方がいいと思うんだ」

「ほう? 私は女らしくないか?」

 

 一夏は勇気を出して言ったが、俺よりオブラートだ。

 千冬さんの音が鳴ってないって事は口調とは裏腹に落ち着いてるらしい。

 これはダメかな?

 

「その――」

 

 お、一夏はまだ諦めてないようだ。

 

「せめて下着は脱ぎっぱなしにしないで欲しいな~って」

「ちょっと待て一夏」

「別に俺だけなら問題ないんだけど、たまに家に誰かが来た時にそれを見られるのは弟として恥ずかしいって言うか……」

「わかった一夏、今度からちゃんと洗濯カゴに入れるからその話題は」

「千冬姉、前にもそう言ったよね? 神一郎さんが家に来たときに、神一郎さんが千冬姉の下着を踏んだ事もあったんだよ?」

 

 あったなそんな事、一夏のなんとも言えない顔を見た瞬間、ボケに走ることも出来ず、そのまま一夏にパンツを手渡して二人で気まずい思いをしたもんだ。

 

「そもそも千冬姉は――」

「いや、それはだな――」

 

 千冬さんの言い訳は一夏のスイッチを押したらしい。

 喋りながら一夏の語尾が強くなっていく。

 

「だいたい、前にも約束したろ? 風呂上がりは裸で歩き回らないって、それなのに千冬姉は」

「すまん、一夏、私が悪かった……」

 

『ピー』

 

「ちーちゃん“哀の感情”規定値超えでアウト! タイムは57秒だけど、頑張ったねいっくん」

 

 制限時間ギリギリとは言え、一夏は見事千冬さんに勝った。

 最後の方は計算じゃなくて本音だったみたいだが、だからこそ千冬さんの心に響いたんだろう。

 弟に私生活をガチで説教されるって……ドンマイ千冬さん。 

 

「次は神一郎さん、お願いします」

 

 千冬さんに勝って自信を持ったのか、一夏からの熱烈なご指名を受けた。

 

「よし、勝負だ一夏」

 

 俺相手にどんな方法で来るのか楽しみだ。

 

「これもまた楽しみな一戦だね。それじゃあ、いっくん対しー君、スタート!」

「失礼します!」

 

 スタートの合図とともに一夏が俺の頭に手を乗せてきた。

 気合入れすぎだろ。

 ちょっと痛いぞ。

 

「神一郎さんは凄いよね。俺と一歳しか違わないのに、落ち着いてて大人っぽいし」

 

 一夏は俺の頭を撫でながら褒め始めた。

 いやね? 気持ちは嬉しんだが、勝負だとわかっているからそこまで心に響かないんだよね。

 こんな時に冷静でいると子供と大人の違いを感じるな。

 

「あと、その、神一郎さんは俺の憧れみたいなところもあって――」

 

 何の反応も見せない俺に対し、一夏は戸惑いながらも言葉を重ねる。

 俺を喜ばせようと必死な一夏を見ていたら心がほっこりしてきた。

 縁側で孫を見るお爺さんって、きっとこんな気持ちなんだろうな。

 

 

 

 

『ピー』

 

 はっ!? 

 

「しー君、“楽の感情”が規定値超えだよ。油断したみたいだね?」

「え? “楽”なんですか?」

 

 一夏が驚きの声を上げた。

 そりゃそうだ。

 喜だと思いきや楽なんだもん。

 油断してほっこりしてしまった俺のミスだ。

 

「最後、束さんお願いします」

「やっと束さんの出番だね。かかっておいでいっくん」

 

 もし、束さんに尻尾が生えていたら、きっとブンブン振っていただろう。

 もの凄くいい笑顔だ。

 一夏の作戦は俺の真似。

 つまり、さっきの俺と同じ事をするわけで。

 

「一夏、準備はいいな?」

 

 千冬さんに話しかけられて、一夏は慌てて目を瞑った。

 準備時間をあげるとは、千冬さんは優しいな。

 特定の人物だけにだけど。

 

「一夏対束、スタートだ」

 

 一夏はゆっくり目を開け――

 

「た『ピー』……さん?」

「束、アウトだ」

 

 あぁ、うん、そうなるよね。

 だって今の束さんは、目の前にエサをチラつかされた犬。

 その状態で勝負開始したらそりゃ音もなるさ。

 ほんの少し涙目を作ることに成功した一夏は、束さんを見たまま呆然としている。

 

「し、しまったぁぁぁぁ!? いっくん、もう一回! もう一回やろう!? ね!?」

「一夏、0秒だ。良くやった」

「……千冬姉、素直に喜べないよ」

 

 束さんの悲鳴を横に千冬さんが一夏を褒める。

 やり直し無しだね。

 束さんドンマイ。

 

「そんな……いっくんの告白が……グスン」

 

 告白じゃないし、てか泣くなよ。

 

 

 その後、箒と千冬さんがチャレンジしたが、不器用な二人は上手くいかず手こずっていた。

 

 箒は全員に対して褒め殺しを実行、一夏、千冬さん、俺は制限時間ギリギリまで粘れた。

 束さんはここでも瞬殺だが。

 

 千冬さんは、一夏と箒に対しては褒め殺し、俺と束さんに対しては怒らせようと罵倒してきた。

 一夏も箒も千冬さんを尊敬している。

 普通に褒めれば千冬さんの勝ちも見えたが、如何せん口下手な人、『一夏、その……最近頑張ってるようだな』とか、言い方が回りくどく、制限時間内に二人を喜ばせる事は出来なかった。 

 そして千冬さんの悪口など悪質な大人に比べれば軽いもの、俺は余裕で流せた。

 ここでも束さんが瞬殺された。

 なぜか“喜”の感情でだが。

 

 そしてこのゲームもついにラストを迎える。

 

 

 ~束のターン~

 

「やっと束さんの出番だね――先に言っておくけど、しー君、束さんは本気だすから覚悟してね?」

 

 目の前に座る束さんが意味ありげな笑みを見せる。

 今回のゲームは、口下手&短気な人間が多いから一人勝ち出来ると思っている。

 現に今の所俺の一位は揺るぎない、束さんにできる事は多くないはず、せいぜい褒め殺しが精一杯だと思ったんだが。

 

「束さんも何か作戦があるんですか?」

「うん、あるよ~。出来れば早めに降参してね」

「降参? そんなルール有りませんよ?」

「束さんに話されたくない、そう思ったら自分で怒るなり悲しむなりすればいいんだよ」

「話されたくないって……嫌な予感しかしないんですが?」

「しー君が考えたこのゲームは良く出来てると思うよ? みんなの性格を考慮したうえでしー君自身が勝ちやすくなっている――けど、それは後先考えなければどうとでもなるよね?」

 

 確かに、相手に本気で嫌われる覚悟か、恥ずかしい思いを我慢し、本音で相手を褒めるなりすればどうにかなる。

 だが、それが出来る人間がここには居ないと思ったからのこのゲームだ。

 

「束、神一郎、そろそろいいか?」

 

 千冬さんの声で思考が中断された。

 ここまで来たら俺に出来る事はない。

 どんな言葉にも揺れず、平穏を心がけるのみ!

 

「俺は大丈夫です」

「私も~」

 

「神一郎対束、スタートだ」

 

 かかってこいや天災。

 

「君が望む永遠、グリーングリーン、歌月十夜」

「負けました!『ピー』」

 

 心の中を怒りと悲しみで満たし、頭を下げる。

 いや、これはもうDOGEZAだ。

 

「神一郎アウト、タイムは3秒だ」

「うんうん、しー君は判断が早くて偉いね」

 

 一夏と箒は、なぜ俺のセンサーが反応したかわかっていないから首を傾げていた。

 

「神一郎さん、今のは何です?」

「箒、今のはね、俺が絶対知られたくない事だよ」

 

 束さんが言ったのはエロゲーのタイトルだ。

 ただし、比較的マトモな部類のだ。

 あれ以上続けられたら、“辱”とか“淫”とか、小学生の耳には入れてはいけない単語が出てくるだろう。

 束さんが俺のPCの中身を知っている事は驚かないが、まさか暴露してくるとは。

 

「二人共、束さんは本気だ。覚悟した方がいい」

 

 俺の言葉にゴクリと喉を鳴らす一夏と箒、その様子を見ながら、束さんが薄く笑った。

 

「次は――いっくん、いいかな?」

「は、はい」

 

 一夏相手なら手加減するかな? 

 

「夜、布団、ちーちゃんの服」

「参りました!」

 

 手加減なんてなかった。

 一夏は青ざめて床を見つめている。

 やたら不穏な単語だが、それらにどんな意味があるのかわからない。

 だけど触れてやらないのが優しさだろう。

 千冬さんも気にしてる様子だが見逃す方向みたいだし。

 

「次は箒ちゃんだね」

「お、お手柔らかにお願いします」

 

 箒は俺と一夏がどんな事をされているか感づいたのか、額から汗を流している。

 

「写真、日課、お休み前」

「私の負けです『ピー』」

 

 箒も正座したまま頭を下げた。

 その単語だと、もしかして一夏の写真にお休み前のちゅーとか? 

 なにそれ、そのシーン超見てみたい。

 

 それにしても一夏と箒にも手加減なしとは。

 本気過ぎだろう。

 

「束さん、一夏と箒に嫌われても知りませんよ?」

 

 嫌われるは言い過ぎかもしれないが。

 

「しー君、私はね、ちーちゃんのバニーや、いっくんと箒ちゃんの赤ちゃんプレイが見たいんだよ――そう、ちーちゃんの痴態を眺めながらいっくんと箒ちゃんを膝に乗せて『ママ』と呼ばれたい! 例え嫌われようと、私は自分の欲望を叶える為に手段は選ばない!」

 

 拳を高く突き上げ、堂々と宣言する束さん。

 ここまで自分に素直だと逆に格好良いな。

 

「それに、万が一嫌われたとしてもしー君がなんとかしてくれそうだし」

 

 そう耳元で囁かれた。

 ここでそのセリフは卑怯だよ束さん。

 

「だからちーちゃん、私の為に散ってもらうよ」

「何でも貴様の思い通りになると思うなよ束」

 

 竜虎相搏つ。

 は言いすぎかな?

 この手の勝負で千冬さんが束さんに勝てるとは思えない。

 千冬さんがどこまで粘れるかが勝負どころだろう。

 

「俺が審判やりますね。千冬さんはネズミ耳を付けてください」

「あぁ」

「それでは、千冬さん対束さん、開始です」

 

 千冬さんの一体どんな秘密があるのか、ちょっと楽しみです。

 

「IS、ミサイル、『ピー』」

「――千冬さん、アウトです」

 

 こいつ“白騎士事件”をエサに使いやがった!?

 

「千冬姉、ISで何かあったの?」

「お前は気にするな」

 

 一夏の質問を千冬さんは両断した。

 一夏は少し不満げな顔だが、これはしょうがない、流石に一夏に言えることではないからな。

 

「お前、普通ここまでやるか?」

 

 千冬さんが苦々しい顔付きで束さんを睨む。

 

「ちーちゃん、私はね、ちーちゃんのバニーが見れるなら、神にでも悪魔にでもなれるんだよ」

 

 千冬さんの体を舐め回すように見つめる束さんに対して俺達はこう思う。

 『狙われてるのが自分じゃなくて良かった!』と。

 

 

 

 

 第四戦終了。

 

 一位  束   12秒

 二位  神一郎 26秒

 三位  一夏  91秒

 四位  箒   156秒

 五位  千冬  187秒

 

 

 現在順位

 

 一位  3P 束 

 二位  1P 一夏

        箒 

 四位 -1P 神一郎

 五位 -3P 千冬    

 




参考ラノベはバカテスといぬかみっ

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