俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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今回、主人公の在り方に嫌悪感を持つかもしれません。
フィクションなので過度の反応はしないでくださいm(_ _)m
一部残酷な描写があります。
ご注意ください。





「よ~しよしよし」

「あぶ」

 

 人間とは慣れる生き物だ。

 例えば、精神が病みそうなプレイを強要されてもいつかは慣れる。

 

「ほ~らしー君、むぎゅ~」

「あぶ」

 

 そして、その“慣れ”は決して良い事だけではない。

 辛い事や苦しい事から逃げる事が出来なくなってしまうからだ。

 

 仮に、高所恐怖症の人をいきなり地上100mのガラス板の上に立たせるとしよう。

 その人が恐怖のせいで気を失ったとしたら幸せだと思う。

 恐怖を感じる時間が一瞬で済むのだから。

 だが、5回、10回と同じ事を繰り返せば果たしてどうなるか?

 最初の1回と同じように気を失うことができるのか?

 俺は否だと思う。

 だって人間は慣れる生き物だから。

 

 つまり何が言いたいかと言うとだ……。

 

「それじゃあオムツ替えましょうね~」

「オムツなんて着けてねぇーよ!」

 

 だれか俺の意識を奪ってください。

 又は記憶の消去でもいいので……。

 

「しー君てばつれな~い」

 

 束さんが唇を尖らせてブー垂れている。

 

 そういえばJKリフレとかJK散歩とかアキバで人気だったな。

 これは所謂JKベビーシッターか。

 世のJK好きには堪らないだろう。

 ただし、首から下が一切動かせずこっちの話をまるで聞いてくれない悪質シッターだけどな!

 

「束さんさ、何がそんなに気に入ったの?」

 

 罰ゲームでやってからと言うもの、こうして時々襲われている。

 俺だって男だ。

 背中に当たる感触も好きだ。

 でも、ご丁寧に体の動きを封じてから後ろから抱きしめられるのは色々生殺しなんだよな。

 終始赤ちゃん扱いしてくるから素直に喜べないし、いい加減に止めて欲しいんだが。

 

「ん~? こうさ、後ろからギュッと抱きしめると暖かくて気持ちいいし」

 

 それにさ、と言葉が続いた。

 

「しー君が無防備で私の腕の中にいるってさ、しー君の命を握ってるって気がしてとても嬉しいんだよ」

 

 ――――ファッ!?

 

 え? 命?

 俺ってもしかしてヤバイ状況?

 

「んふふ、そんなに怖がんなくてもいいんだよ? 別に殺す気はないから」

 

 束さんはそう言いながらさらに強く抱きしめてくる。

 ニッコニコだけど、これ放置したらダメだよ。

 事案になっちゃうよ。

 落ち着いてクールに、そしてスピーディーに解決しなければ。

 

「俺の命ってどういう事です?」

「ん? しー君は体動く?」

「動きません」

 

 今まで知らなかった首輪の機能。

 簡単に言うと疋殺地蔵だ。

 四肢の動きを奪う的な機能のせいでピクリとも動かん。

 よくもまぁ一年以上こんな怖いの着けてたな俺。

 

「しー君は今どこにいる?」

「束さんの膝の上です」

 

 正確には炬燵に入りながら束さんに抱き抱えられている。

 

「つまりしー君の生殺与奪は束さんの手の平の中でしょ? それが嬉しんだよ。なんかこの前の罰ゲームで束さんは新しい扉を開いちゃったみたい」

 

 えへへ~、と笑いながら俺の頭を撫でてきた。

 

 これは……難しいな。

 恋愛感情からのヤンデレとかではなく、ただの独占欲っぽい。

 元々気に入った相手には依存しがちな人だったけど、まさかこうなるとは。

 

「それでね~、しー君にお願いがあるんだけど?」

「この状況でお願いはお願いじゃありません。脅迫です」

「束さんと裏社会科見学行かない?」

 

 ……助けて千冬さん。

 

 思わず年下の女の子に助けを求めた俺は悪くないと思う。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

「やって来ましたアメリカへ!」

「やっほ~!」

 

 数時間後、俺はアメリカに居た。

 アメリカ本土は初上陸の為、否応なくテンションが上がる。

 目の前には有刺鉄線、その先には銃を持った筋骨隆々の男達がいるけど、ここはアメリカ。

 辺りに町などはなく、目的地までずっと雲の上を飛んでいた為、アメリカらしさを全く感じないけど、一応ここはアメリカなんだ。

 

「――もう帰っていいですか?」

「だ~め、さぁしー君、ゴーゴー!」

 

 束さんは流々武の肩に乗りながら頭をペシペシと叩いてくる。

 

「こんな真昼間に真正面から行くんですか?」

 

 時刻は昼過ぎ、太陽が一杯だ。

 あんな怪しげな施設に入るより観光したい。

 

「何言ってるのさしー君、私達の前に昼も夜も関係ないよ」

 

 ステルスチートですね分かります。

 

「はぁ、それで俺はどうすればいいんです?」

「えーとね――今マップを送ったから、赤いマーカーの所までそこまでよろしく」

「アイマム」

 

 視界に映るマップを見ながら、ゆっくりと兵士の上や建物の間を飛ぶ。

 しかし、ここは本当になんだ?

 周辺は見通しの良い荒野、遠くに見えるのは山だけ。

 山に囲まれてる所を見ると盆地なのだろう。

 大きい建物でも三階建て程度、それが約10棟。

 その建物郡を囲う様に鉄線が張れ、四方に見張り台がある。

 まるでFPSの世界だ。

 

「ここで?」

「うん――よっと」

 

 マーカーが点いてる場所に着くと、束さんは肩から降りて目の前の建物に近付く。

 そこには扉があった。

 

「この程度で国家機密の場所とか笑わせるよね」

 

 そう言いながら扉の横にあったタッチパネルに数字を入力していく。

 ピーと言う機械音を鳴らしながら扉が開く。

 

「これは……」

 

 扉の先は階段だった。

 しかも上ではなく下の。

 

「しー君、地上の建物はほとんど意味のない物なんだよ。これから行くのは地下研究所。驚いた?」

 

 アメリカ、国家機密、地下研究所、そして天災。

 もうね、ゾンビでも出てきそうなフラグだよ。

 俺さ、パンピーなんよ?

 非日常に憧れはあるけど、方向性が違う。

 俺が求めるのは異世界とか、魔法とか、モンスター娘であって。

 ゾンビとかはノーサンキュウー。

 

「束さん、俺の役目はアッシーですよね? 近くで待ってるんで」

 

 じゃ、と言ってその場を去ろうとしたが。

 

「覚悟を決めなよしー君」

 

 パチン

 

 束さんが指を鳴らすと、俺の足元が消えた。

 

「あいて!?」

 

 ISで少し浮いてた為、解除されると同時に尻を地面にぶつけてしまった。

 

「しー君は丸腰でここから逃げれるかな~?」

 

 密入国、しかも現在地は束さん曰く国家機密を取り扱う秘密の研究所。

 拷問からの死刑かな?

 あはは――いつか絶対泣かす!

 

「さて、行くよしー君」

 

 束さんに腕を掴まれズルズルと引きずられる。

 

 男は度胸。

 せめて美少女ゾンビに出会える事を祈りつつ、俺は人生初の基地侵入に臨んだ。

 

 

 

 

 

 結論から言うと、very easyでした。

 

 監視カメラ→すでに束さんの手中。

 見張り→束ステルスでスルー

 

 伝説の傭兵もビックリする位の難易度だった。

 最初こそ音を出さない様に神経を使い、銃を肩から提げた兵士とすれ違う度に緊張したが、そんなもんもすぐ無くなった。

 

 侵入して5分くらいだろうか。

 エレベーターで一気に最下層に到着した俺と束さんは一枚の巨大な扉の前にいた。

 

「到着だね」

 

 ここが最終目的地らしい。

 確かにここは雰囲気が違う。

 まず人がいない。

 見張りも、通路を歩く人間も誰もいないのだ。

 

「束さん、ここは何です?」

「ここはね……保管室だよ」

 

 束さんが扉の横のタッチパネルに近付く。

 なんか映画で見たことある形をしていた。

 数字を押すパネルの他に、おそらく指紋を調べるための装置らしき物と、レンズは網膜スキャンだろうか?

 こういう装置って本当にあるんだ。

 

「もう、めんどくさいな――えい!」

 

 ルパン三世みたいに、網膜スキャンを誤魔化すコンタクトレンズでも使うと思ったが、科学の天災の選択はまさかの力技だった。

 

 束さんが手に1m程の刀を持ったかと思うと、それで扉を切りつけた。

 

 キッン、と音を立てて扉に四角い穴が空く。

 

「ふっ、私の高周波ブレードに斬れぬものなし」

 

 ドヤ顔でポーズを決めている所悪いが。

 

「束さん、警報的なモノは大丈夫なんですか?」

「ここのシステムはもう乗っ取ってるからね。ちゃんと切ってるよ」

 

 無駄な心配だった。

 今更だけど、ホントこの人には常識が通じないな。

 

「さてと、しー君、覚悟決めてね?」

「え?」

 

 束さんが先に進むため、慌てて後を追う。

 

 

 

 

 薄暗い倉庫の様な部屋。

 そこで俺が見たものは――円柱のガラスの中に浮かぶ人間だった。

 

 部屋の中は規則正しく円柱のガラスケースが並び、その全てに人間が浮いていた。

 しかも普通ではない。

 全員が体の一部分が欠損していた。

 まるで切り取られた様に腕の無くなった男。

 太ももから下が無い女。

 全ての指が切り落とされた老人。

 欠損部分はそれぞれだが、断面が機械で蓋をしたようになっているのだけは共通していた。

 

「束、説明しろ」

「しー君、口調が怖いよ?」

 

 あぁもう。

 今は口調とかどうでもいいんだよ。

 

「いいから、話せ」

「私に怒んないでよ。ここはね、人体と兵器を結合させる実験をしているんだよ」

「――義足や義手の代わりに銃やミサイルを取り付ける感じか?」

「大体そんな感じだね。将来的にはターミネーターが目標らしいよ?」

「――現実的に可能なのか? この死体の山を見ると無駄に見えるが」

「それができるんだな~。束さんの知識を使えば――だけどね」

 

 わざわざ姿を隠して侵入したんだ。

 この研究所は束と直接的な関係はないんだろう。

 とすると――

 

「論文か研究データでも流用してるのか?」

「良くわかったね。そうだよ。私が小学生の時に書いた論文、テーマは『人間の体を機械で再現した場合のなんたらかんたら』だったかな?」

 

 “なんたらかんたら”までが論文の名前かな?

 束が直接関わってないなら良かった。 

 

「――なに?」

 

 束が少し驚いた顔でこっちを見ていた。

 

「意外と冷静なんだね?」

 

 死体を見るのは初めてじゃないし。

 社会人ともなれば棺桶に収まった知人を見る事もあるさ。

 ――そっか、スプラッター系が苦手な俺が落ち着いてるのはここが綺麗だからだ。

 

 視界一杯に死体があるが、全てガラス瓶の中。

 血も臓物も見えないからまるで人形の様に見える。

 だから俺もある程度落ち着いてられたのか。

 

 ――――よし。

 

「束さん、なぜ俺をここに連れてきたんです?」

「おりょ? 調子が戻ったみたいだねしー君。色々説明したいけど、その前にやる事やっちゃうから待ってね」

 

 そう言って束さんは両手でスカート軽く持ち上げた。

 すると、ぼとぼととスカートの下から何かが床に落ちた。

 

「さあ行け! 『タバネボンバーカー』

 

 束さんの合図で足元に落ちていた何かが動き始めた。

 目を凝らしてみると――なんて言えばいいんだろう?

 ウサギ型ミニ四駆?

 それらは次から次へと束さんの足元に落ちては走りだしを繰り返す。

 

「束さん、スカートを持ち上げる仕草が格好良いと思ってるかもしれないけど、横から見るとまるで粗相してる様に「だっしゃぁ!」おごっ!?」

 

 率直な感想言ったら顔面にウサギが飛んできた。

 

「しー君、調子が戻ったのはいいけど、余り調子に乗らない方がいいよ? その爆弾と一緒に此処に残る?」

「……すみません」 

 

 ガチで怖い顔されたので素直に謝る。

 てか、これ爆弾なんだ。

 

「束さん、ここ爆破するんですか?」

「そうだよ」

「――ここのお偉いさんと会って話したりは?」

「小学生の私が書いた論文を使ってこんな結果しか出せない無能な研究者と会う意味あるの?」

 

 そう言って束さんは俺の手を掴んで歩き始めた。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 基地近くの山の中、その中の一際大きい木の枝に腰を下ろしながら、燃えている基地を見下ろす。

 基地からはサイレンが鳴り響き、建物から次々と人間が飛び出している。

 

「しかし意外ですね」

「皆殺しにしなかった事?」 

「えぇ」

 

 地下での火災、しかもセキュリティ面は束さんに掌握されている。

 出口の扉をロックされれば消火装置も使えないまま焼け死ぬだろう。

 

「しー君、今回の火災での人死は0人だよ」

「束さんは優しいなぁ~」

「でしょ~?」

 

 二人でアハハと笑い合う。

 

「さて束さん、説明プリーズ――まずは、あの研究所を破壊した理由から」

「それはね――」

 

 遠くを見ながら、束さんは語り始めた。

 

 ISを発表してから、束さんの過去の論文や研究、発明などが見直され始めたこと。

 その中でも軍事的に利用出来そうな技術を盗み、完成の為に多くの命が実験で奪われていることを。

 

「つまり、実験の犠牲になった人やその家族から、束さんや箒が恨まれない様にするために研究所を潰したんですか?」

「彼らにとって憎しみの対象は研究者だけじゃない、元の理論を作った束さんまでが対象だからね」

 

 予想以上に重い話でなんとも言えない。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとは言うが――束さんを憎むのは筋違いだと思う。

 だけど、被害者から見れば、“『篠ノ之束』がいなければ自分達が酷い目に合うことはなかった”と思うだろう。

 

「あそこの研究者や兵士を殺さなかったのは?」

「しー君、私はね、“人の思いの力”って奴は過小評価していないんだよ」

 

 眼下で逃げ惑う人々を見つめらながら、束さんが話を続ける。

 

「私はね、別にあそこの人間なんて虫と同じにしか見えない。けど、私にとっては虫でも、他の人から見れば大事な存在かもしれない。別に私が恨まれるなら問題ないんだけど、箒ちゃんに牙が向くのは困るからね」

「でも、それだと束さんは個人はともかく組織や国に狙われませんか?」

「相手をするなら個人より組織の方が楽なんだよ。大勢で動けば隙が出来るし、妨害工作も簡単だしね」

 

 そう言ってにゃははと笑っているが、それはつまり、ここの様な研究所を放置すればその被害者に恨まれ、研究所を破壊すれば国や組織に恨まれるってことだよな?

 

「束さんて、意外とヘビーな人生送ってるんですね」

 

 普段の姿では想像出来ないくらい重い。

 よく笑っていられるな。

 

「でね。ここからが本題。なぜしー君をここに連れて来たかなんだけど」

 

 そういえばその話もまだだったな。

 

「しー君」

 

 束さんがこちらを見ながら手を差し出してきた。

 

「私が姿を消す理由の一つが、私の考えた理論や発明なんかを悪用している研究所や組織を潰すためなんだよ。それをしー君にも手伝って欲しい」

 

 さっきから驚きの連続だが、まだ驚かされるとは。

 

「断る」

 

 束さんの事情に俺は関係ないしな。

 

 

◇◇ ◇◇

 

「断る」

 

 しー君は私の目を見ながらはっきりとそう言った。

 私が望んでいた答えだけど、まだ判断はできない。

 

「私の頼みを断るんだもん。ちゃんと理由があるんだよね?」

 

 しー君が何を考え、何を思っているのか。

 私はそれを知りたい。

 

「理由って言われても……怒らない?」

 

 しー君は頬を書きながら上目遣いで私を見てきた。

 私が怒りそうな理由? まさか“めんどい”とか言わないよね?

 

「怒るかどうかは話を聞いてからだね」

「いや、簡単な話なんだけどさ……俺が束さんに付き合う義理はないかな~と」

 

 言いながらも、しー君が私から少し距離を取った。

 多少自分でも酷い事を言ってる自覚はあるみたいだね。

 でも、ダメだよしー君。

 その答えじゃ私は満足出来ない。

 

「しー君は私が心配じゃないの? これからも国とかにケンカ売るんだよ?」

「え? 別に?」

 

 脈拍、脳内信号、共に変化なしだね。

 ほーほー、しー君は本気で心配してないよチクショウ。

 

「しー君は私の味方だって言ったじゃん。あれは嘘だったの?」

 

 少し悲しげな顔を作ってみる。

 しかし――

 

「束さんは夢でも見たんじゃないかな?」

 

 こいつ、無かった事にしやがった!?

 どうしてくれよう。

 やっぱりIS没収しちゃおうか?

 

「あの? 束さん?」

「うふふ、なにかなしー君?」

 

 今お仕置き内容考えてるからちょっと待ってね?

 

「もしかして本気で誘ってました?」

「私はいつだって本気だよ?」

「あ~、それはすみません」

 

 どうやら冗談だと思っていたみたいだね。

 

「束さんが本気の様なので、俺も本音を喋りますね?」

 

 しー君が体ごとこちらに向き直し、私の目を真っ直ぐ見つめる。

 

「俺は束さんの事が好きですよ。妹と仲良くしたいと願うならその間を持つくらいには、でもごめん、人生や夢を捨ててまで束さんと一緒に居たいとは思えない」

 

 ――まるで愛の告白だね。

 内容的には振られたも当然だけど。

 ここ最近赤ちゃんプレイでしー君の好感度を上げようと頑張ったのにダメだったか。

 でももう少し粘ってみようかな。

 

「別に私と一緒に世界を見て回ればいいじゃん?」

「束さんはさ、完璧に姿を消す気じゃないでしょ? だって痕跡も残さず消えたら、束さんを引きずり出す為に箒を狙う奴が増えてしまうから」

「正解だよ」

「今はまだ大丈夫だけど、その内にIS部隊とか出て来て追い掛け回してくるんでしょ?」

「それも正解」

「じゃあ無理です。俺は束さんの為に命を掛けて戦う気もないですし、それに俺がしたいのは落ち着いた旅です。束さんと一緒だと観光地でゆっくりできなさそうなんで」

 

 あくまでも自分の夢が優先なんだ。

 そして最後のセリフは照れ隠しだよね? 

 

「しー君はIS持ってるよね」

「持ってますね」

「IS――流々武で多くの人を助けることが出来るのに、見殺しにするの?」

「それは……」

 

 しー君の頬が引き攣る。

 自分で言っておいてなんだけど、私が言えるセリフじゃないよね。

 

「ISで人助け……」

 

 顎に手を当てて考え込んでいる。 

 ここで即答しないのはポイント高いね。

 

「俺個人はISで人助けするつもりはありません。束さんには悪いですが、俺の夢――欲を満たすためだけに使います」

 

 あぁ、思わず笑いそうになる。

 私の話を聞いて、一般人が知らない世界の闇を見て、まだしー君はそう言ってくれるのか。

 嬉しい、嬉しいけど、やはりしー君には側に居て欲しい。

 だから私の追求はまだ終わらないよしー君。

 

「助けられる命を見捨てて、しー君は気持ちよく景色を見れるかな?」

 

 私がそう言うと、しー君は思いっきり嫌そうな顔をした。

 

「おまっ、それは言っちゃダメでしょ。だいたい、束さんこそ――」

「で、その辺はどう思うの?」

 

 話をはぐらかせはしない。

 ふふ、逃がさないぜ。

 

「はぁ~」

 

 しー君は深い溜め息をついた。

 

「適切な言葉が見つからないんで、ちょっと支離滅裂になりそうですけど、聞きます?」

「うん、聞かせて」

「束さんは日本で毎日どれくらい残飯が出てるかわかります?」

「わかんないね」

「じゃあ、毎日どれくらいの命が飢餓で死んでるかわかります?」

「――わかんないね」

「まぁそうですよね。テレビでも放送されたりしてるけど、興味がなければ覚えない数字です。束さん、『助けられる命を見捨てて見る景色は気持ちよく見れるか』と言いましたね? 答えは、“見れる”」

 

 そう言うしー君の顔が大人びて見えた。

 やっぱり中身は大人なんだと実感する。

 

「大人はみんな知ってるんですよ。外食してる時、酒を飲んでる時、友達と遊んでる時に、世界のどこかで泣きながら死んでる子供が居ることを――でもね、そんな顔も名前も知らない人間が死んだところで心は悲しまない。束さん、俺達はね、常に誰かを見捨てながら生きてるんです。それに対して今更罪悪感を持つとでも? とは言え、流石に箒や一夏が目の前で車に轢かれそうになったらIS使ってでも助けますけど」

「――そっか」

 

 あぁ、ダメだ――

 もう我慢出来ない。

 

「あは……あはははは!」

 

 突然笑い出した私にしー君は目を見開いて驚いている。

 

「しー君はISを兵器にしたくないって言ってたけど、それは束さんの為だよね?」

「――さあ?」

 

 誤魔化そうとしても無駄だよしー君。

 

「だって、しー君て別に平和主義って訳じゃないよね?」

 

 しー君は普通に殴られたら殴り返すタイプだ。

 そして、ちーちゃんやいっくんの世話を焼いたりする所を見ると道徳心もある。

 なのになぜ私と一緒に来てくれないのか。

 それはISで戦う事を避けてるんだよね?

 私と一緒に裏の世界に飛び込んだらISで戦う場面が必ず来る。

 そして、ISを兵器として使えば私が悲しむと思ってるに違いないんだよ。

 

「しー君、今回はしー君を試したんだよ?」

「俺の何を試したんです?」

「しー君がISを持つに相応しいかどうかを」

 

 しー君が首を傾げる。

 意外と鈍いなしー君は。

 

「この程度――うん、ちーちゃんに聞かれたら怒られそうだけど、敢えて言うよ。この程度の世界の闇を見たくらいで、『ISの力で世界を変える』とか、『ISの力で戦争を止める』なんて言い始めたら……私はしー君からISを没収するつもりだったからね」

 

 用途はどうであれ、ISの力を求める奴は沢山いる。

 私はしー君にそんな使い方を望んではいないんだよ。

 

「しー君はどこまでも自分の夢を追いかけてね。自分勝手に、我儘に、どこまでも自分の夢だけを見て。もし横道にそれたら……しー君を剥製にしちゃうんだから」

 

 しー君はぽかんと口を開けたまま固まっていたが、暫くするとククッと笑い始めた。

 

「結構最低な事言ったつもりなんですが、束さんはそれを認めるんですね。ISで人助けとか普通に考えれば善行なのに」

「しー君には、ISを“力”以外の目的で使って欲しいからね。そっちの方は――うん、ちーちゃんに任せよう」

「そうですね。その辺は千冬さんに任せましょう」

 

 そうしてまた二人で笑い合う。

 

 私の今回の目的はしー君の勧誘としー君がこれからどうISを使って行くかを知るためだ。

 しー君に一緒に来て欲しい。

 でも、ISを“力”として使って欲しくない。

 そんな二律背反な気持ちがあったから、私はしー君に裏の世界の一部を見せつつも判断を任せた。

 結果は――ある意味悲しいけど、私の望むものだった。

 だから大丈夫、これから何があってもしー君はISで人を殺したりしない。

 

「まぁでも、万が一俺の正体、IS操縦者だとバレたら、その時は束さんに匿ってもらうのも悪くないですね。荒事はお断りですが」

 

 笑いながらしー君がそん事を言った。

 しー君が私と一緒に来てくれないのは、荒事だけじゃなくて、平和な日常が好きってのもあると思うんだよね。

 だけど、男性適正者だと世間にバレたら――そんな日常とはお別れだね。

 

「んふ」

 

 思わず笑いが漏れる。

 無理矢理連れてくのは嫌われそうで嫌だったけど、しー君から匿ってと頼まれたらしょうがないよね?

 

「束さん?」

「んふふ、なにかな?」

「その意味深な笑いはなんです?」

「気にしない気にしない」

「まさか……俺の情報を流したりしないですよね?」

「気にしない気にしない」

 

 しー君がもの凄く睨んでくる。

 安心してよ。

 今はまだそこまでする気はないから。

 

「それにしてもお腹空いたね」

 

 ここ最近食べてなかったから、お腹がくーくー鳴っている。 

 こんな時、人間の体は面倒くさいと思う。

 食べずに生きれればもの凄く楽なのに。

 まぁそれも――

 

「俺もですよ。せっかくアメリカに来たんですから、何か食べて帰りませんか?」

 

 誰かと一緒に食事する事を考えれば楽しみに早変わりだ。

 

「しー君はどこか行きたいお店ある?」

「えぇ、『フーターズ』ってお店なんですが」

「美味しいの?」

「ハンバーガーとバッファローウィングってのが売りらしいです。あ、ハンバーガーでもいいですか?」

「お腹に入れば何でもいいよ」

「んじゃ近くの店を調べますね」

 

 ハンバーガーか、アメリカらしね。

 

「束さん、移動するんで肩に乗って」

「は~い」

 

 流々武を展開したしー君の肩にぴょんと飛び移る。

 このポジションも随分慣れてきたね。

 それにしても、バッファローウィングってなんだろ?

 気になったので調べてみる。

 ついでにしー君が言っていた『フーターズ』ってお店も。

 

 しー君が移動を開始した。

 頬に風を当てながら、しー君の頭に置いた自分の手が徐々に強まるのが分かる。

 

「あの……束さん? 流々武から警告音が出てるんですが?」

「しー君、この『フーターズ』ってお店はなにかな?」

 

 検索結果にタンクトップの金髪巨乳が接客している写真があるんだけど、何かの間違いだよね?

 しー君は黙ったまま何も言わない。

 

「しー君にISを譲ったのは、こんなお店に行かせる為じゃないんだよ? そう、アメリカで言えば、グランドキャニオンとか、モニュメントバレーとか、そんなロマンを見るためなんだよ?」

「束さん――金髪巨乳は男のロマンなんだよ」

 

 うん、ギルティ(ポチ)

 

「ママラガン!?」

 

 久しぶりのお仕置きだよしー君。

 

「流々武、このまま日本に帰るよ」

「いっ! あ゛……ぐ! 束さん! 電流止まってないんだけど!?」

「ISは私が外部から操縦するから、しー君は日本に着くまでそのままね」

「ま゛じ で !?」

「ふんだ」

 

 まったく、今までの雰囲気を台無しにしてくれちゃって。

 何が気に入らないって、『金髪巨乳は男のロマン』ってのが本気で言ってるとこだよね。

 日本に帰ったら、しー君には今はまだ私の所有物だって分からせないとダメだね。

 

 しー君の悲鳴を聞きながら、私はこれからの教育について考えた。




明日、フェイトGOのイベントですね。
ついにソロモンですよ奥さん。
自分ルールで、『書き終わらなければイベントやらない』ルールを作って書いておりました。
なので最後は少し雑かも……。
でもこれで絆上げできる!

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