俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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最高の一年を君に(夏)

 暗いトンネルの先には光る出口が見える。

 窓を開けると、湿気った風が体全体に当たった。

 

 少しずつ近付く出口

 ――それを超えれば

 

 

 

 

 

「海だ~~!!」

「ひゃっほ~!!」

 

 窓から身を乗り出して拳を突き上げる。

 後ろの席に座っている束さんも、窓から顔を出して叫んでいた。

 山の中のトンネルを抜ければ、眼前に広がるのは青い空、白い雲。

 その先に僅かに見える海。

 季節は夏、今日は嬉し恥ずかし海水浴の日です。

 

「風が鬱陶しいから窓を閉めろ」

「「はい」」

 

 束さんの隣に座る千冬さんの髪が、風に煽られバサバサと乱れていた。

 申し訳ない。

 

 俺が助手席。

 千冬さんと束さんが二列目。

 最後尾に一夏と箒。

 そして――

 

『途中どこかに寄りますか?』

 

 運転しながら、手作りプラカードでそう聞いてくるグラサンが今日のメンバーだ。

 

「一夏と箒は何か買いたい物とかある?」

「ありません」

「俺も大丈夫です」

「だそうです。このまま目的地まで行っちゃってください」

 

『分かりました』

 

 ――うん、意外と便利だなプラカード。

 朝会った時に、『おはようございます』とプラカードを掲げながら現れた時は頭を心配したけど。

 この人はきっと銀魂ファンに違いない。

 

 

「ちーちゃんの水着、箒ちゃんの水着、いっくんの半裸。今から楽しみだね~」

 

 目をハートにしながら涎を垂らす束さん。

 男子の水着を半裸言うなし。

 

 

「一夏、海に着いたら一緒に泳がないか?」

「? 海で泳ぐのは当たり前だろ?」

 

 

 微妙に噛み合わない会話をする一夏と箒。

 一夏よ、今日はお前に女体の素晴らしさを教えてやる。

 

 

「海か――美味い魚を食いたいな」

 

 色気より食い気の千冬さん。

 帰りは近くの道の駅にでも寄りましょうね。

 

 以上のなんとも頼もしくも心配になるメンツで夏の海を満喫します!

 

 

 

 

 

 そんなこんなで。

 

「海だ~~!!」

「「「海だ~~!!」」」

 

 今回は一夏と箒も声を上げてくれた。

 やはり海が眼前にあるとテンションが違うよね。

 

「――う~ん、海は良いけど、ちょっとゴミが多くない?」

 

 周囲を見渡しながら、束さんがそう呟いた。

 確かに日本の浜辺はゴミが多いけど、この場合の”ゴミ“って――

 

「よし、取り敢えず焼き払おうかな。えっと、一番近い軍事基地は――」

「やめんか!」

「ぐぺらっ!?」

 

 何やら怪しい行動を取る束さんの頭上に千冬さんの拳骨が落ちる。

 

「束、お前今なにをしようとしていた?」

「――近くの軍事基地にハッキングを……」

「お前は何を“ゴミ”と認識している?」

「それは! あの! ゴミだよ!」

 

 束さんが声を荒げて指差す方向にあるのは――

 

「お姉さん可愛いね。もしかしてモデル?」

「お父さん、あっちに空いてる場所があるよ」

 

 わいわいガヤガヤと騒ぐ――どう見ても一般人です。

 

「なんでなんでなんで~!? 何でなんだよしー君! もっと人が居ない場所とかあるじゃん! なんでこんな場所に!?」

 

 なんでなんでとうるさいなぁもう。

 

「耳元で騒がないでください。てか言ってませんでしたっけ?」

「言ってない! 聞いてない!」

 

 まぁ、言ったら怒りそうなので言わなかったんですがね。

 今回の目的の為には人が居ない場所じゃダメなんで。

 

「そっか、束さんは嫌ですか……そっかそっか」

「――なんだよ?」

「一夏、箒、この海水浴場は嫌?」

「え? えっと嫌ではないです」

「私も人が多い場所は苦手ですが、その……一夏が一緒ならどこでも」

「うんうん、二人は聞き分けいいな。そんな訳で束さん。嫌ならグラサンと一緒に車待機でどーぞ」

「ぐぬぬ」

 

 あら可愛い。 

 ここで束さんの『ぐぬぬ顔』が見れるとは。

 

「いいもん。人間が邪魔だけど、『人要らず君』を使えば大丈夫だし」

「名前が怪しいんですけど……また悪臭を発するモノじゃないでしょうね?」

 

 蘇る花見の悪夢。

 俺だけではなく、全員が顔をしかめる。

 

「これは匂いじゃなくて“フェロモン”だから大丈夫だよ。ちーちゃんの魅力に誘われる奴が出てくるかもしれないからね。“話しかけたいけどなんか話しかけにくい”そんな感情を相手に持たせるモノだよ。だから、はいちーちゃん」

「むっ……」

 

 束さんが千冬さんにスプレーをかける。

 千冬さんは嫌そうな顔をしながらも大人しく受けれた。

 千冬さんにスプレーした後、束さんは自分にもそれを吹き付けた。

 その後、浜辺の空いてるスペースにビニールシートを引き、パラソルを立てる。

 これで準備完了だ。

 

「それじゃあ着替えましょうか。向こうに着替えの為の建物があるのでそこで着替えてください。束さんはどうします?」

「ここで荷物番してるよ」

「了解です。一夏、行くよ?」

「あ、はい」

 

 こんな時、男は楽だ。

 荷物なんて脱いだ服を入れる為のビニール袋一つで事足りる。

 水着は既に着てるしな。

 それに比べ、女性陣は大変だ。

 千冬さんと箒はあれやこれやと荷物を抱えている。 

 そんな二人を振り返り、歩みを止める一夏。

 紳士だね。

 だが、今は大人しく付いて来てもらおうか。

 

「ほら一夏」

 

 一夏の腕を掴み引っ張る。

 

「あの? 待たなくていいんですか?」

「いいのいいの。千冬さん、箒、先に行ってますよ」

「あぁ、こっちは待たなくていい」

「一夏、また後で」

 

 一夏を連れて行く先は公共の脱衣所だ。

 余り大きくなく、一度に入れる人数は5人程だろう。

 それが男用と女用が並んで建っている。

 男用の方はガラガラだが、女用の方は10人ほどの列が出来ていた。

 ここまでは計画通り。

 

「一夏は海って初めてだっけ?」

 

 脱衣所に入った俺と一夏だが、ズボンの下に水着を着てきたので、ただ服を脱ぐだけ。

 なので暇つぶしも兼ねて隣の一夏に話かける。

 

「はい、初めてです。だから今日は凄く楽しみで」

 

 にっこりと純粋な笑顔を見せる一夏。

 これが将来、『嫌いなラノベ主人公』中に名前があがる存在になるんだから怖い。

 安心しろ一夏。

 俺がまっとうな男にしてやる。

 原作ブレイクは避けたいが、箒の為に少しでもお前を矯正してやる。

 

 水着に着替え終わり外に出る。

 女性が並ぶ列を見ると、箒と千冬さんが居た。

 あれでは着替えが終わるまでにかなり時間がかかるだろう。

 そして、束さんが二人の着替えを見逃すはずがない。

 ステルスドローンか何かを使って、今か今かと待ち続けてるだろう。

 今がチャンスだな。

 

「一夏、ちょっと付いて来てくれ」

「? そっちは荷物を置いた場所と逆方向ですよ?」

「なに、二人が着替え終わるまでのほんの暇つぶしだよ」

 

 そう言って歩き出すと、一夏は慌てて付いて来た。

 さて、時間は余り無駄に出来ない。

 どの娘がいいかな――

 

 歩きながら周囲を見渡すと、ちょうど目の前を歩いていた黒髪でセミロングの子が手を振りながら声を出した。

 

「お待たせ~。飲み物買ってきたよ~」

「お帰りアツコ。ありがとう」

「アツコ、背中にサンオイル塗って~」

「マキはなんで塗る前に焼き始めてるの?」

 

 アツコと呼ばれた女の子の先には、高校生くらいの女の子が2人いた。

 パラソルの下で日焼け止めを塗っている茶髪でロングの子。

 その横で寝転んで肌を焼いている茶髪のショートの子だ。

 三人ともビキニタイプの水着で非常に眼福である。

 どこかで見たことある人達だけど――まぁいいか。

 

「一夏、今から俺の話しに全力で合わせろ。いいな?」

「え? いきなりなんです?」

「い・い・な?」

「……はい」

 

 急な話に戸惑う一夏に対し、語尾を強めて言ったら素直に言う事を聞いてくれた。

 お前のアドリブ力に期待してるぞ。

 

 よし、何も恥かしい事はない。

 俺は子供。

 小学5年生の生意気盛りなお子様。

 いくぞ一夏。

 しっかり付いてこいよ。

 

「お姉ちゃん」

 

 そう言って、俺は『アツコ』と呼ばれていた女の子の手を掴んだ。

 後ろで一夏がビックリしている。

 頼みから余計な事言うなよ。

 

「え? なに?」

 

 アツコと呼ばれていた子が驚いて振り返る。

 

「あ、ごめんなさい。間違えました」

「あれ? アツコ、なにその子? お持ち帰りしてきたの?」

「ち、違うよ! えっと、君って迷子とか?」

 

 アツコ――いや、アツコちゃんの方が似合うな。

 アツコちゃんがしゃがんで俺と目線を合わせてくれる。

 それに合わせておっぱいがギュッと寄せられる。

 中々素晴らしいモノをお持ちで。

 

「あの、姉と来てて、向こうの建物で別々に着替えたんですけど――」

「あ~アツコ、その子のお姉さんはまだ着替え中だと思うよ? だいぶ混んでたから」

「えっと、どうすれ――あ、ハルカなら――」

「すー」

「ハルカなら既に寝てるよ」

「そんなぁ~。妹がいるハルカならなんとかしてくれると思ったのに」

  

 見てて面白いなこの子達。

 アツコちゃんは子供が苦手な様だ。

 嫌ってはいなそうなので一安心。

 

 マキと呼ばれたショートの子は中々良い性格をしているようだ。

 困るアツコちゃんをニマニマと眺めている。

 

 ハルカと呼ばれたロングの子はマイペースな子かな? 

 さっきまで起きていたのに気付いたら寝てるし。

 

「あの、姉が来るまでここに居ていいですか?」

「えぇ!? あの、えっと、マキ~」

「ん~? いいんじゃない? ところで君、『お姉ちゃん』を待つんでしょ?」

 

 マキ、うん、こいつは呼び捨てでいいな。

 マキがニマニマと俺にそう言ってきた。

 お姉ちゃん呼びが恥ずかしかったから姉に変えてみたのに。

 しょうがない――

 

「人前で『お姉ちゃん』呼びは恥ずかしい年頃なんです」

「見たところ小学生の高学年ってとこ? まぁそんな年頃だよね。それで君たちはなに、そんなにアツコのおっぱいを見ていたいの?」

「ちょっとマキ、子供相手に何言ってるの!?」

 

 そう言いながらもの、アツコちゃんは腕で胸を隠しながら立ち上がってしまった。

 残念。

 

「いえ、人違いしてしまったお詫びに、サンオイル塗るのを手伝おうかと思いまして――弟の一夏が」

「――俺!?」

 

 今まで静かだった一夏が驚きの声を上げる。

 

「さっきから静かな子だよね? へ~随分と将来性がありそうな可愛い子だこと」

「学校でモテモテの自慢の弟です」

「ちょっ、し『お兄ちゃん』――お、お兄ちゃん。いきなりそん事言われても」

 

 よしよし。

 その調子だ一夏。

 くれぐれも呼び方には気を付けろよ。

 

「ふむふむ――いいね。そこの君、こっちに来て私の背中に塗りなさい」

「マキ!?」

「まぁ落ち着きなよアツコ。見てごらん、この子の顔。将来有望でしょ? 今のうちの唾付けるのも有りじゃない?」

「ないよ! もう、小学生相手に何を言ってるの」

 

 乗り気なマキに疲れ顔のアツコちゃん。

 マキとはノリが合いそうだ。

 出来ればお友達になりたいね。

 でも、残念だけどそれは別の機会に。

 今は一夏が優先だ。

 

「ほら一夏。ご指名だぞ」

「え? その、俺は――」

「男の子なんだから覚悟決めなさい。ほらおいで」

 

 マキが戸惑う一夏の手を引っ張り、無理矢理連れて行く。

 それを見て、アツコちゃんがあうあう言っている。

 このスレてない感がなんとも可愛いな。

 

「アツコさん、でしたっけ? よければ僕が塗りましょうか?」

「え? 私は別に――」

「アツコもだ塗ってないから、頼むよ少年。あ、アツコは日焼け止めね」

「了解です。アツコさん、行きますよ」

「あの、手を引っ張らないで……」

 

 アツコちゃんの手を引き、マキの隣に無理矢理座らせる。

 子供相手に大きく言えないのか、アツコちゃんは多少の抵抗を見せるものの、大人しく寝そべってくれた。 

 

「それじゃあ頼むよ一夏君」

 

 マキは意地悪そうな笑みを浮かべて、一夏にサンオイルのボトルを渡した。

 

「――わ、わかりました。出来るだけ頑張ります」

 

 ボトルを手に持ちながら俺を見ていた一夏だが、助けがないと知ると、しぶしぶとマキの背中にオイルを垂らし始めた。

 

「あの、やっぱり私は――」

「アツコさん、水着のヒモ解きますよ?」

「へ? きゃあ!?」

 

 未だに乗り気ではないアツコちゃんの水着のヒモを外し、立てなくさせる。

 これだけやっも訴えられない。

 まったく、小学生は最高だぜ。

 

「一夏君、女子高生の玉の肌だ。念入りに頼むよ」

「頑張ります」

 

 さあ一夏、家族や知り合いではない女子高生の肌を堪能するがいい。

 

「うぅ、なんでこんな事に……」

 

 俺も美味しい思いさせてもらうけどね。

 

「アツコさんは肌綺麗ですね。これは丁寧にやらないと」

 

 俺も手にクリームを載せ、ニュルニュルと馴染ませる。

 しかし、アツコちゃんは本当に綺麗な肌してるな。

 この背中にシミを作るなんてお兄さんは許しません。

 では、失礼して――

 

 

  

 

 

「なにを――してるのかな?」

 

 女子高生の柔肌に指先が触れようとした瞬間――底冷えする声が耳に届いた。

 

 俺と一夏の動きがピタリと止まる。

 ギギッ、と首を声のした方に向けると――

 

「にぱー」

「(ピキピキ)」

 

 にぱ顔の束さんと、黒のビキニに着替えたピキピキ顔の千冬さんがいた。

 

 

  

 

 

 

 

「俺は無実だ」

 

 女子高生三人から引き離された俺は砂から首だけ出しいる状態だ。 

 まさか砂浜に縦で埋まる事になるとは――

 マンガとかで見たことあるけど、実際に自分がやられるとは思って無かったよ。

 ちなみに、縦穴は束さんがスコップ一本で掘ってくれました。

 俺のサイズにジャストフィットするところに匠の技を感じる。

 

「何が無実だ。さっさと目的を吐け。なぜ一夏にあんな真似をさせた」

「しー君、早く話した方がいいよ?」

 

 千冬さんと束さんに尋問されてる中、一夏は少し離れた場所で箒と砂遊びをしている。

 未遂だと言う事でお咎めなしだそうだ。

 羨ましい。

 

「それはそうと、随分と早い到着でしたね。予想外でした」

「私が言うのもなんだけど、しー君なら私に気を使って、プライベートビーチや無人島にでも行きそうなのに、こんな普通の海水浴場なんて怪しむに決まってるじゃん。しー君が怪しい行動を取ったからね。すぐにちーちゃんに連絡させてもらったよ」

「束のスプレーはかなり強力でな。後ろから睨んだらすぐに行列が無くなったぞ」

 

 確かに普段の俺ならそうしたかも。

 それと、前に並んでた人が居なくなったのは純粋に千冬さんが怖かったからだと思う。

 マキとアツコちゃんも凄いビビってたし。

 

「ほらしー君、キリキリ吐きなさい」

 

 束さんが裸足の足を俺の頭に乗せる。

 力が入っていないので“踏む”より“乗せる”が正しいだろう。

 しかし良かった。

 俺は今喜んでいない。

 むしろイラっとしてる。

 自分がМじゃなくて嬉しいよ。

 

「話しますから足をどけてください」

 

 少し不機嫌な声を出しつつ、束さんを睨むと――

 

「しー君の頭に私の足が……私、なんだかんだで人の頭踏んだの初めてだよ……これはちょっとクセになるかも……」

 

 なんかはぁはぁ言いながら凄い事をつぶやいてるんですけど!?

 

「千冬さん、お願いですから横の変態をどけてください」

「ん? あぁ――大丈夫だろう、たぶん」

 

 味方はいない。

 分かってた事じゃないか。

 

 千冬さんと話して間に、徐々に束さんの力が強くなっていく。

 これはマズイ。

 

「束さん、落ち着いて足をどかしてください」

「――なんだろうこの気持ち。しー君は私の中の色々な扉を開いてくれるよね」

 

 自分で勝手に開けているだけだろ変態め。

 

「俺の今回の目的は――『一夏の性教育』です」

 

 束さんの扉が開ききる前に話しを進めよう。

 

 

 

 

 

「「はぁ?」」

 

 やはり年頃の女性には理解出来ないか。

 そして束さんはいい加減足をどけろし。

 

「未来の一夏の話は覚えてますね? 俺はふと思ったんです。一夏は性に対して問題があるのではないかと――つまり、『精神的な病気』ではないかと」

「――それは本気で言ってるのか?」

 

 呆れた顔で俺の話しを聞いていた千冬さんだが、病気発言を聞いた瞬間、その目が鋭くなった。

 束さんも俺の目を見ながら驚いた顔をしている。

 

「千冬さん、弟を病気扱いされて怒るのは理解できますが、落ち着いて聞いてください。精神病ってのはやっかいなんです。特に本人に自覚症状が無い場合は」

「だが、それはあくまでも『かも』の話しだろ?」

「危機感が足りないですね。一夏は裸の女の子に抱きつかれても、『友愛の表現』だと考えるんですよ? 同じ男としてありえません」

「――その話しが本当ならお前の心配も理解出来る……しかしそれは……」

「ちーちゃん」 

 

 弟の未来を信じられず言い淀む千冬さん。

 そんな千冬さんを束さんが心配そうに見ていた。

 そしてやっと頭から足がどけられた。 

 

「だから俺は動いたんです。一夏に女体の素晴らしさを教える為に!」

 

 性教育は年上の男として大事な役目だろ?

 子供は父親や兄が隠したエロ本で性を学ぶもの。

 一夏に父や兄がいないなら、なおさら『近所のチョイ悪お兄さん』ポジションの俺の出番だ。

 

「待て、お前の考えは理解できたが……一夏はまだ小学生だぞ? 早すぎないか?」

「俺が一夏の歳の頃には、既に女体にも興味あったし、拾ったエロ本読んでましたよ?」

「一夏をお前と一緒にするな!」

 

 そんなに力一杯否定しなくても――

 これだからブラコンは。

 

「束さん、貴方なら分かってくれますよね?」

「私? ん~、そうだね。箒ちゃんの為になるならいっくんには性に目覚めて欲しいね――ところでしー君、なんでしー君まで一緒に触ろうとしてたの?」

 

 おっと、風向きが変わったぞ。

 

「――ほら、一夏だけやらせるのもかわいそうだし?」

 

 上目使いを意識して、ちょっと可愛らしく言ってみる。

 判定は――

 

「にぱー」

 

 あ、ダメですね。

 

「にぱー」

 

 止めろ! 近づいて来るな! 来るなぁ!

 にぱ顔はトラウマだから! 

 

「待て束。神一郎を処すのは後でも出来るだろ? 今は一夏の問題が先だ」

 

 束さんの手が俺に触れる直前、千冬さんから待ったが入った。

 てか俺は処されるんですか?

 未遂なんだからそこまで怒らなくていいじゃないか。

 

「取り敢えず、一夏には女性に慣らせる必要があると思います。他人がダメなら――千冬さんしかいないのでは? 箒はまだ子供ですし」

「ふざけるな。なぜ私が」

「その役目、この束さんに任せてもらおうか! 私のパーフェクトボディでいっくんをイチコロだよ!」

「お前は引っ込んでろ」

「ぶーぶー」

「なら俺がやりますか? 未来の一夏にはホモ疑惑があるんですよね。今のうちに本当かどうかを確かめるのも悪くないでしょう」

「ますますやらせるか!」

「やっぱり私が」

「いや俺が」

「お前達にやらせるなら私がやる!」

「「どーぞどーぞ」」

「あ……」

 

 ここまでがテンプレである――って本気で引っかかるとは。

 これだからお笑い番組を見ないお堅い人はチョロい。

 ――千冬さんの尊厳の為に、それだけ一夏の事に真剣なのだと思ってあげよう。

 

「それじゃあ、一夏の性教育係りは千冬さんって事で」

「意義なーし」

「いや! ちょっと待っ――」

 

 トントン拍子に話が進むので、千冬さんがたいそう慌ててるが、もう遅い。

 

「一夏~! 箒~! ちょっとおいで~」

 

 俺が呼ぶと、一夏と箒がこちらにやってくる。

 

「さてと――周囲にホログラムを展開! これで周囲の人間にはちーちゃん達がただ寝てるようにしか見えない! そして――変☆身!」

 

 一夏と箒がブルーシート近くまで来ると、周囲の空間が一瞬歪んで見えた。

 その歪みはすぐに無くなったが、問題はその後だ――

 

 束さんの体が光に包まれる。

 その光は徐々に収まり――

 

「リリカルマジカル――がんばります!」

 

 ここまで気合の入った『がんばります』がかつてあっただろうか。

 いや、そんな事はどうでもいい――

 

「束――お前――」

 

 千冬さんが驚きの表情で束さんを見る。

 一夏と箒もポカンとした顔で束さんを見ていた。

 

 俺達の目の前には、真っ赤なビキニを着て、腰にパレオを巻いた束さんがいた――

 

 引きこもりなだけあって、肌は白い。

 そして、引きこもりのクセになんたるスタイルの良さ。

 まぁ……束さんだし、きっと自分の体を改造してるんだろう。

 

「しーいーく~ん? 何か失礼なこと考えてないかな?」

「しゅいません」

 

 頬を足の指で抓まれる。

 Мじゃないのにドキッとしたのは、下から見上げた束さんの水着姿が素晴らしかったからだと信じたい。

 

 

 

 

 

「眼福です」

 

 目の前には寝そべって背中を晒す美少女が二人。

 もちろん水着のヒモはすでに外されている。

 

 『はみちち』ってエロいよね?

 二人共かなりのモノをお持ちなので、体重に潰されたおぱーいが、こう、むにゅっと潰れている。

 

「しー君の視線がこそばゆいぜ」

 

 束さんがニマニマと俺を見てくるが――言い返せない。

 今だけは恥辱に甘んじよう。

 束さん……最高です。

 だってしょうがないじゃん。

 出会って二年近くだけど、いつものエプロンドレス以外見たことないもん。

 千冬さんでさえ驚いていたしな。

 

「千冬姉、日焼け止めでいいの?」

「あぁ」

 

 隣では、千冬さんの横に腰を降ろした一夏が、少し顔を赤めながら手に日焼け止めクリームを持っていた。

 正直、俺は一夏のブラコン度を高めるだけだと思うんだが……。

 この際、取り敢えず姉相手とは言え性を感じてくれればいいか。

 

「な、なぁ一夏。私にも……その、日焼け止め塗ってくれないか?」

 

 千冬さんを羨ましそうな目で見ていた箒が、果敢に一夏を攻める。

 しかし――

 

「箒にはいらないだろ? どこか塗れない場所があるのか?」

「――ないな」

 

 箒は自身の体を見回した後、がっくりと肩を落とした。

 残念ながら、箒は白を基調にしたワンピースタイプの水着。

 露出部分は全部手が届く。

 小学生にビキニはまだ早い! と、俺と束さんの話し合いの上での結論だ。

 がっかりしてる箒にはちょっと悪い事したな。

 

「しー君は私の背中を頼むよ」

「ご指名は嬉しいんですが――なんで?」

 

 お仕置きどころかご褒美なんですが?

 

「それはね~。しー君が顔を真っ赤にして、私にはぁはぁする姿を見たいから」

 

 ――やっぱりお仕置きなのかもしれない。

 今、一時の感情に流されたら、数年後にこれをネタに盛大にからかわれる気がする……。

 

「しー君、はいコレ塗って」

 

 迷う俺に束さんが日焼け止めを渡してきた。

 束さんは横に座る俺に渡すため、軽く背中を反り、右手を伸ばす――おぱーいがカタチを変えた――

 

「やります」

 

 後でからかわれるか、この機を逃して後悔するか――

 

 男ならこっちの道だよな?

 

 

 

 

 

「んっ……あっ……いち……か」

「くっ……いや……しー……君」

 

 それはとてもエロかった。

 そして、俺と一夏、ついでに箒も顔が真っ赤だった。

 

 それもこれも――

 

「千冬姉――ちょっと我慢して。コレ全然伸びなくて」

「んんっ!? 出来るだけ早く終わらせろ」

 

 この、やたら伸びの悪い日焼け止めと、くすぐったがり屋の二人のせいだ。

 

 なにこれ?

 やたら塗りが悪いんだけど?

 日焼け止めの善し悪しはわかんけど、コレは安物なんだろうか?

 

「あっ!? い……ちか……」

「んあ!? し……くん……」

 

 これなんてエロゲ?

 あぁ――インフィニットなんちゃらってエロゲーか。

 エロゲーなら遠慮はいらないな。

 

 きめ細かい束さんの肌にクリームをすり込むようにこすりつける。

 ただひたすら束さんの肌に集中する。

 

「■▲■▼■」

 

 束さんが何か言ってるが、気にしない。

 気にしないったら気にしない――

 

 

    だから――

 

 

 

         静まれ俺の海綿体(リヴァイアサン)

 

 

 

 

 ダメですね。

 ネタに走ってみたけどダメだこれ。

 俺は一夏と違って性に目覚めてるからな!

 ――だからと言ってこのタイミングはないだろ。

 年下相手に何やってるんだよ俺! と思うが、この二人は肉質だけなら大人だしな。

 いや、原因は分かってるんだ。

 たぶん――俺は溜まっている。

 俺は自分が精通してるか分からない。

 でも、おそらく精通していると思う。

 ただ、試したことがないのだ。

 だって――パソコンの前でズボン下ろしたら、窓を突き破って束さん現れそうで怖かったんだもん。

 そう、俺は悪くない。

 悪いのは束さんだ――

 

 

 

 

 

「しー君?」

 

 束さんの声にふと我に返る。

 束さんを見ると、目をパチクリさせながら俺を見ていた。

 どうやら考えに夢中になって手が止まっていたみたいだ。

 そして、束さんの手首辺りに小さいウィンドウが空中に投影されていた。

 ウィンドウの中は脳波パターンぽいいくつものグラフが見えた。

 

「…………」

「…………」

 

 見つめ合う二人。

 そして――

 

 ニヤリ

 

 

 あ、バレてますねこれは。

 

「ねえしー君。ちょっと立ってみてくれない?」

 

 海綿体(リヴァイアサン)ならすでに鎌首持ち上げてますが?

 そっちじゃない?

 ですよね。

 

 一夏達に気付かれたくないので、素直に立ち上がる。

 

「しー君はなんで中腰なの?」

「それは腰が痛いからだよ」

 

「しー君はなんで汗だくなの?」

「それは夏だからだよ」

 

 俺と束さんの掛け合いを、一夏や箒は不思議そうな顔で見ていた。

 

「私の魅力にやられたくせに」

「少しばかり顔と声が可愛くてスタイルが良いからって調子に乗るなよ?」

 

 箒は『やっぱり神一郎さんは姉さんのことを!?』と言っているが。

 やはりってなんだやはりって。

 

「ふう――せっかくのバカンスなのにひと仕事しなくちゃいけないとは」

 

 束さんの言葉を聞いた瞬間、悪寒が走る

 これは逃げないとマズイな――

 運良く束さんは水着だ。

 それもヒモを外している。

 逃げるなら今がチャンスだな。

 そう思いながら少しずつ束さんと距離をとっていたら――

 

 

 パチン

 

 

 指パッチンひとつで見慣れた姿に着替えが完了した。

 

「よっと」

 

 束さんが立ち上がり、俺の方に顔を向ける。

 

「束さんはなんでゴム手袋を着けているの?」

「それはね、これからしー君を搾るからだよ」

 

「束さんはなんで中指をクイクイ動かしてるの?」

「それはね、しー君の為に指使いの勉強をしたからだよ」

 

 話しをしながら逃げる算段を立てる。

 束さんにバレないように、拡張領域から物を取り出す。

 

「しー君、忘れてないよね? しー君は私の“実験動物”なんだよ?」

 

 来る!?

 そう感じた瞬間、俺は手に持った写真をばら蒔く様に投げた。

 

「くらえ! 『涙目一夏とにゃんこエプロン』!」

「えっ~!?」

 

 一夏が叫ぶが、それは尊い犠牲なのだ。

 

 俺の料理のレパートリーは多くない。

 所詮は独り身男子の家庭料理だ。

 ついこの間、俺が料理で教えられる事は全て教え終わった。

 料理を教えるのはこれで最後だ。って言ったら、一夏が泣きながら今までのお礼を言ってきたもんだから、つい撮ってしまった一枚だ。

 

「エプロンいっく~ん!」

 

 束さんがその写真に飛びついた。

 後ろで箒と一夏も回収しようとピョンピョン飛んでいる。

 今がチャンス!

 

 人波を避けながら、海岸の砂浜を右に真っ直ぐ向かう。

 俺達が陣取ってた場所は砂浜の端に近い。

 ここから200メートル程行くと、そこで砂浜は終わり、そこから先は丘。

 更に先に行くと、崖になっている。

 腰を低くしながらひたすら走る。

 

 砂浜を終わった辺りで肩ごしに後ろを見ると、砂柱が立っていた。

 束さんが動き始めた様だ。

 

 ここまで来れば人はほとんどいなくなる。

 両足に流々武を装着し、それと同時に夜の帳を発動。

 これで万が一人に見られても、最悪幽霊で済む――といいな。

 

 流々武で一気に丘を駆け抜け――

 

「アイ・キャン・フ・ラーイ!!」

 

 そのまま崖から飛び降りた。

 

 海面にぶつかる前にセンサーで周囲を見る。

 辺りに船など目撃者がいない事を確認し、流々武を全身に装着し海に飛び込む。

 

 崖から少し離れた場所で待機。

 束さんの出方を見る。

 

 あの場で海に向かって、子供が潜ったまま浮いてこないと騒がれれば、ライフセイバーの出動がありえる。

 人も多かったしな。

 空に飛んでも束さんなら追いついて来そうだ。

 だからこそ、この選択肢。

 海中ならどんな生き物も遅くなる。

 いくら束さんでも海中を魚並みに泳げないだろう。

 束さんが落ち着いた頃合を見計らって千冬さんに助けを求めてみよう。

 そう思いハイパーセンサーに注意を向ける。

 

 話は変わるが、俺のISは全身装甲だ。

 目に見える景色も、裸眼で見ているわけではない。

 画面越しに見ているのだ。

 視界に文字が浮かんだ――

 

 

 ――製作者権限による命令を受諾

 ――ISコアNo.2 登録名【流々武】の制御権を製作者に移行

 ――浮上します

 

 

 うん、そもそもIS使って束さんから逃げるのが無理って話だった。

 いやいやいや。

 ちょっと待って! 

 待って流々武!

 少しは抵抗しよう?

 たまに装甲磨いてあげたりしたじゃん!?

 

 俺の意思とは無関係に流々武が動く。

 海中を進み。

 落ちるとき見た崖の壁面を昇り。

 崖の上に着くと、そこには――

 

「おかえり」

「た、ただいま」

 

 語尾にハートマークが付きそうなほど上機嫌な束さんがいた。

 

「しー君。ここは静かだね(クイクイ)」

「そ、そうですね」

 

 人が居ない場所に来たのも間違いだったか。

 

「恥ずかしいけど、私、がんばるね(クイクイ)」

「束さん、お願いだから許して。それと女の子が中指を卑猥に動かさない」

「しー君のパソコンに入ってたエッチィDVDにいた、ゴールンデン鷹って人の指使いを学んだ、この“束フィンガー”でしー君を――」

 

 頼むから話しを聞いてくれ。

 

「尻をだせ~い!」

「いや~!?」

 

 アレ? 流々武が解除されない? ありがとう流々武! コラ流々武! 言う事聞かないと装甲全部ピンクにしちゃうよ! あ、装甲が――

 

 

 

 

「アッーーーーー」

 

 

 その後、とある海水浴で、崖に向かってダッシュする子供の幽霊と、助けを求める子供の声が聞こえるとの噂が流れた――




モブの女子高生はみなみけから
チョイ役なので、完全オリジナルより、他作品のキャラの方が読み手は想像しやすいかな? と思いやってみました。
不快に感じる方がいましたらすみませんm(_ _)m


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