俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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この話を投稿したら、お気に入りが500件減った夢を見た。
それくらい意味不明な話です。
ただまぁ、書いてしまったので消すのはもったいなく……。
すみませんm(_ _)m

今回は試作的な感じで書きました。
荒いですm(_ _)m

次回は真っ当な話ですので許してください!


とある男の過去と未来

 本日はお越し頂きありがとうございます。

 どうぞお座りください。

 

「はっ! 失礼します!」

 

 ケガの具合はどうですか?

 

「問題ありません」

 

 そうですか。

 それは良かったです。

 あの天災に単身で挑むことになるとは大変でしたね。

 

「いえ、それが仕事ですので」

 

 仕事ですか。

 流石のプロ根性ですね。

 

「ありがとうございます」

 

 さて、お喋りはこの辺にして本題に入りましょう。

 今日貴方をお呼びしたのは篠ノ之博士の事をお聞きする為です。

 

「篠ノ之博士の事ですか?」

 

 はい。

 篠ノ之博士の失踪にあたり、報告書などからではなく、現場の……篠ノ之博士と近かった人間から改めて博士の人柄などのお話を聞きたいと思いまして。

 

「私が話せることでしたら」

 

 ありがとうございます。

 まずは貴方と篠ノ之博士の出会いからお聞きします。

 確か篠ノ之博士の護衛が貴方の仕事でしたね?

 

「はい。護衛が主です。後は身の回りの世話を少々。そして、篠ノ之博士の監視も私の仕事に含まれています」

 

 身の回りの世話とは具体的にどんな事を?

 

「篠ノ之博士は基本研究室から出ませんので、飲み物や食事の用意、後はゴミの片付けなどです」

 

 ゴミの片付けまでやっていたのですか?

 

「私も最初は何故自分がと思っていました。しかし天災のゴミは凡人には宝の山の様でして――」

 

 何かあったのですか?

 

「ペットボトルや食べ物などは私達が問題なく分別できるのですが、問題は紙に書かれた書き損じなどのゴミでして……。それらは国の科学者が目を通してから捨てるのですが、表に出したら常識が崩壊しそうな物が多々ありまして……」

 

 なるほど、天災のゴミですか。

 話には聞いてましたが、凡人には有益でしょう。

 

「有益ですか……。ノーベル賞の発表をテレビで見てたら、『あ、似たような論文がゴミ箱に捨ててあったな』と気付いた時の私の胃の痛みが分かりますか?」

 

 なんかすみません。

 あの、目から光が消えてますけど大丈夫ですか?

 

「篠ノ之博士のゴミを売ったのか、それともノーベル賞に選ばれるほどの物が篠ノ之博士にはゴミなのか……。どちらだと思います?」

 

 言い忘れてましたが、この会話は録音されています。

 聞くのは上の人間なので機密の漏洩にはなりませんが注意してください。

 ちなみに私は黙秘させて頂きます。

 

「国の不利益になる事をするつもりはありません。とまぁいろんな意味で胃に痛い職場でした」

 

 ……話を変えましょう。

 【グラサン】の由来をお聞きしてもいいですか?

 こちらも今日の為に貴方の情報を集めましたが、内容が内容でしたので本人からお聞きしたく。

 信じてない訳ではないのですが、私の手元にある情報が本当なのか一応の確認を――

 

「少々長くなりますがよろしいですか?」

 

 構いません。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 世間を賑わす時の人。

 そう言えば聞こえは良いが、私達の前に現れたのは口の利き方も知らないガキだった。

 しかし私達も国の暗部を司る更識家まではいかないが、警察や自衛官から選ばれたその道のプロだ。

 性格に難のある政治家の護衛もすることもある。

 子供の相手をなど楽だと思っていた――

 

 IS研究所が設立されてからすぐ、世界中から科学者が招かれた。

 権威のある人間の中にはプライドが高い人間が多い。

 そんな人間が篠ノ之博士と上手くやれるだろうか?

 無理に決まっている。

 その日、怒りに任せ篠ノ之博士に飛びかかろうとする科学者と、その様子を見て鼻で笑う篠ノ之博士の間に入った私達は後にこう思った。

 

 これ、護衛いるか? と――

 

 二人の間に入った私と同僚2人は壁まで吹っ飛ばされ、科学者は床に顔を埋め込まれていた。

 唖然とする周囲を見ながら篠ノ之博士は笑っていた。

 私達は、天災という生き物がどんな存在かを身を持って教えられたのだ――

 

 

 篠ノ之博士が研究所に務める社員を蹴り飛ばした。

 他国のスパイだった。

 

 篠ノ之博士が研究所に来るゴミ収集業者を殴り飛ばした。

 暗殺者だった。

 

 篠ノ之博士が研究所に来た政治家を半殺しにした。

 セクハラオヤジだった。

 

 

 余りにも問題が多かった為、私達は篠ノ之博士にお願いした。

 怪しい人物やスパイの情報は私達に流して下さい。こちらで処理しますので、と。

 篠ノ之博士は最初は嫌そうだったが、処理をこちらに任せる事でIS研究の時間が増えるならと納得してくれた。

 今思えばそれが間違いだったかもしれない。

 篠ノ之博士は他人に興味がない。

 人の名前さえ覚えようとしないのがその証拠だ。

 そんな天災からの指示はとても大雑把だった。

 

 こいつスパイだから処理しておけ。

 あいつ殺し屋だから処理しておけ。

 焼きそばパン買ってこい。

 

 私達は大忙しだった。

 そんなある日、またも事件が起きた。

 護衛者の一人が篠ノ之博士に襲われたのだ。

 

 目撃者の話はこうだ――

 『休憩所で飲み物を飲んでた黒服がいきなり消えたと思っていたら、次の瞬間には自動販売機に減り込んでいた』

 

 そして篠ノ之博士の言い訳はこうだ――

 『仕事を頼んだ黒服がサボってたからお仕置きした』

 

 違います篠ノ之博士。

 貴女が仕事を頼んだ黒服は違う黒服です。

 同じヒゲ?

 いえ、無精ひげとおしゃれ顎ひげは違います。  

 

 仕事を振った相手の顔さえ覚えないのは流石に効率が悪いと思ったのか、篠ノ之博士はその日から少し変わった。

 

 おいグラサン。今日来た研究員の金髪捕まえて来い。

 

 おいグラサン。グラサン外したら殺すからな?

 

 おいグラサン。明日車だせ。

 

 仕事が全て私に振られるようになった。

 

 疑問に思った私は、なぜ自分にしか仕事を降らないのかを篠ノ之博士に聞いてみた。

 質問したら殴られるかと思ったが、意外にも篠ノ之は簡単に答えてくれた。

 

 篠ノ之博士の考えはこうだ。

 

 指示は一人に集中した方が自分が楽。

 そう思った時に目の前にいた人間がグラサン。 

 

 組織の先輩や上司を押しのけ、なぜか私が篠ノ之博士の右腕っぽいポジションに収まっていた。

 普通は許されることではない。

 しかし、篠ノ之博士の機嫌を損ねたくないという理由で、篠ノ之博士の案は通ってしまったのだった。

 ついでに【グラサン以外グラサン禁止令】が出された。

 私と間違えられて殴られても労災は降りないらしい。

 サングラスの着用は自己責任でと上司は語った――

 

 

◇◇ ◇◇ 

 

 

「そんな事がありまして、私は【グラサン】と呼ばれる様になりました」

 

 ……なるほど、随分と苦労なさったようですね。

 私は篠ノ之博士本人と会ったことがないのですが、聞きしに勝ります。

 

「当時は苦労しましたが、今となっては良い思い出です」

 

 そう言えるのは凄いと思います。

 ところで貴方は篠ノ之博士のプライベートにも同行していましたね?

 貴方から見た佐藤神一郎君の印象をお聞かせください。

 

「佐藤君の印象ですか?」

 

 先日あの様な事件がありましたが、彼は篠ノ之博士の数少ない身内でした。

 彼と面識のある貴方から直接聞きたいのです。

 

「そうですね……。子供なのに時々大人の雰囲気を見せるグループのまとめ役、でしょうか」

 

 まとめ役? あの少年がですか?

 

「そう不思議な話ではありません。篠ノ之博士はその……アレですし」

 

 アレですね。

 

「織斑千冬君は口数が少ないタイプで、姉御肌ではありますがまとめ役とはまた少し違います」

 

 ふむ。

 

「そして残りの二人は年下です。必然的に彼がまとめ役になるのは仕方がないかと」

 

 高校生を仕切る小学生というのも変な話では?

 

「佐藤君は小学生にしては精神年齢はかなり高いです。おそらくそれが篠ノ之博士の琴線に触れたんだと私は考えています」

 

 なるほど。

 やはり彼を普通の子供と見ないほうが良さそうですね。 

 では最後にもう一つお聞きします。

 

「なんでしょう?」

 

 篠ノ之束と佐藤神一郎。

 両名の間にあったイザコザですが、その当たりをどうお考えですか?

 

「個人的な意見ですがよろしいでしょうか?」

 

 構いません。

 

「篠ノ之博士の失踪は妹を守る為、佐藤君のケガは篠ノ之博士と意見が衝突した結果だと考えています」

 

 ――詳しくお聞かせください。

 

「篠ノ之博士の価値は今も高まり続けています。身柄を求める者も命を狙う者も増えています。そんな中で、ISの研究をしながら妹を守ることに限界を感じた篠ノ之博士は、自身の身を囮に使い、敵を国内から遠ざけるのが狙いかと」

 

 篠ノ之博士は家族を見捨て逃亡したというのが上の考えですが、その事については?

 

「篠ノ之博士が妹を……箒君を見捨てるとは思えません」

 

 なぜ、そのように思うのですか? 

 

「私は見ました。篠ノ之博士が愛おしそうに箒君の頭を撫で、抱き締める所を――。友人と遊び、妹と一緒に居る時の篠ノ之博士は普通の子供でした。彼女は妹を見捨てたりしません」

 

 理由はそれだけですか?

 

「それだけです」

 

 ――なるほど。

 では、佐藤君との意見の衝突とは?

 

「入院した佐藤君は何も話してくれませんでした。ですのでこちらも勘になります」

 

 ――続けてください。

 

「私は『妹を守る為に自ら囮になることを篠ノ之博士から聞いた佐藤君が、篠ノ之博士の身を案じて力ずくで止めようとした結果』だと思っています」

 

 多くの敵を自分に引き付けようとする篠ノ之博士を心配して……ですか。

 筋は通っていると思います。

 ですが、だからといって骨を折ったりしますか?

 かの天災は身内に甘い性格だったはずですが。

 

「覚悟の現れだと思います」

 

 友人に止められても引く気はないという気持ちがそうさせたと?

 篠ノ之博士はそこまでして妹を守りたいという事ですか?

 

「おそらく……ですが」

 

 ――貴重なご意見ありがとうございます。

 やはり貴方に話を聞いて良かった。

 

「念を押しますが、あくまで私の主観ですので」

 

 もちろん承知しております。

 本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

『本日はお話を聞かせて頂きありがとうございました』

 

 やっと話が終わり、部屋から退室するグラサンをレンズ越しに眺めながら男は息を吐いた。

 

 篠ノ之束のスパイの可能性がある構成員から話を聞け。

 男が出した命令は、篠ノ之束へ組織の情報や国の動きを売っている人物がいるかもしれないから洗い出せというものだった。

 男は知っている。

 組織内に篠ノ之束のスパイなどいない。

 なにせ事実上のトップは篠ノ之束その人なのだから――

 ならばなぜわざわざその様な事をしたのか?

 それは周囲へのパフォーマンス。

 篠ノ之束が失踪した際に手引きした者は居ないか、金欲しさに協力した者は居ないか、そういった者が組織に居ないかを調べるのは当然のことだ。

 だから男は茶番と思いつつもそんな命令を出した。

 男の誤算は一つ。

 何故か自分の隣に天災が居ることだ……。

 

「…………へえ? 随分とお喋りな口してるじゃん」

 

 それも超絶不機嫌な天災が……。

 

(なぜこんな事に……)

 

 その日、男は自分の家で書類仕事に追われていた。

 篠ノ之博士の失踪事件や篠ノ之家の保護プログラム適用などが重なり、男は多忙だった。

 そんな男の前に、天災はいきなり現れたのだ。

 そして、いつの間に仕掛けたの分からない監視カメラを使って、部下とグラサンの会話を監視し始めたのだ。

 男は最初こそ飲み物を出したりと歓迎したが、途中から話しかけるのを止めた。

 何故か時間を追うごとに天災が不機嫌になっていったからだ。

 

「束様? 如何しました?」

「…………(ギリッ)」

 

 男が意を決して話しかけるも、ソファーに腰掛け両足をテーブルに乗せた束は、爪を噛みながら不機嫌アピールをするだけだった。

 男は泣きたかった。

 何故彼女はここにいるのだろう?

 何故彼女は怒っているのだろう?

 聞きたいが、聞けない。

 どんな八つ当たりがくるか分からないからだ。

 

「チッ……。近くにいたからか良く見てる。今となってはもう邪魔でしかないかな」

 

 舌打ちとブツブツと呟かれる声を聞き、男の額に汗が浮かぶ。

 

「ねえ」

「な、なんでしょう」

 

 束が男の方を向き、ニンマリと笑みを作った。

 

「もうあのグラサンモドキいらないからさ 処分してくれない?」

「はい?」

 

 あまりの言い方に男は絶句した。

 男も汚れ仕事はした事があるし、部下に命じた事もある。

 だが、あのやり取りを見ただけで、なぜ消すという結論に至ったのかが男には理解できなかった。

 

「なに? 嫌なの?」

 

 天災の笑顔を見ながら男は必死に考える。

 断るはのは無理だ。

 後が怖い。

 ならば言われた通りに消す?

 それは流石に良心の呵責を覚える。

 となれば――

 

「束様。グラサンが束様に近かった人物というのは組織内で有名な話です。失踪してから間もないこのタイムラグで彼を消すのはよろしくないと思いますが――」

 

 あくまでも提案、そんなニュアンスで男は束の説得を試みた。

 グラサンの身を案じただけではない。

 本音を言えば、天災の人柄をよく知るグラサンを手元に残したいのが男の本音だった。

 

「ん~? まぁ確かにそれはそうかも?」

 

 意外にも天災は自分の考えを受け入れてくれた。

 そのことに男は安堵した。

 だが油断はできない。

 天災はいつも常人の斜め上の発想をするからだ。

 

「あ、そうだ」

 

 束は手をポンと叩き、まるで名案を思いついたという顔をした。

 

「束様。何か良い案でも?」

「迷った時は神頼みってね」

 

 束がケータイ電話を手に持ちどこかに電話をかける。

 その様子を男は不思議そうに見ていた。

 

「あ、もしもしー君? なんかアレだね。もしもしー君って良い感じだよね。――――はいすみません」

 

(束様が謝った!? そうか、さっきの言葉は神一郎と神をかけていたのか)

 

 電話越しにペコペコと頭を下げる束に対し、男は軽く感動を受けた。

 そんな男を他所に、束は笑顔で電話相手の怒りを流しつつ話を進める。

 

「ほら、しー君の為に病室から黒服を遠ざけたんだし、むしろその辺の感謝を……」

 

 現在、神一郎の護衛達は昼間は病室から出ている。

 

 ――見知らぬ大人と長時間狭い部屋のいると少年にストレスを与える可能性がある。その結果、意固地になられても困るので少し様子を見ろ。

 

 ――さすがの天災も昼間に襲撃して来ないだろう。

 

 そんな理由をつけて、明るいうちは黒服達を病室から追い出したのだ。

 もちろんそれも全て束の指示である。

 ちょっとやらかした束が、神一郎の機嫌を取るためにやった処置だ。

 一応の筋は通っていたので、男はその指示をそのまま部下に命令したのだった。

 

「それでね、ちょっと相談なんだけど――あ、盗聴は大丈夫だけど、部屋の前の黒服に気付かれないように声だけは注意してね」

 

 そう言って束はケータイ電話をハンズフリーにしてテーブルに置いた。

 その行為に対し首を傾げる男に対し、束はジェスチャーで黙れと指示する。

 

『で、わざわざ電話なんて何用です?』

 

 電話の向こうから聞こえてきたのは少年の声。

 男はその声を聞き、チラリと視線を束に向けた。

 

「まぁまぁ。そんなに邪険にしないでよしー君」

 

(笑顔か……。情報としては知っていたが、本当に束様に認められているのだな)

 

 男の視線の先には、刺のある少年の声を聞いても笑みが崩れない天災がいた。

 

「ちょっと人事で困っててさ。相談に乗ってもらおうとね」

『人事? 会社でも立ち上げたんですか?』

「うん。グラサンの次の職場を天国にするか地獄にするか迷っててさ」

『うんじゃないよね!? え? なんでグラサンの永久就職先決めようとしてんの?』 

「えっとね、こんな事がありまして――」

 

 かくかくしかじか。

 束はグラサンが語った内容をそのまま神一郎に伝えた。

 

 

 

 

『なるほどね。それはグラサンやっちまったな』

 

 束の話を聞き終わった神一郎は、ため息と同時にそう呟いた。

 

『我儘で傍若無人でいざとなったら家族を捨てる非人間的なクソ野郎ってイメージを作ろうとしている束さんに対し、まるで家族を大切にする普通の姉ってイメージを植え付けようとする発言はダメだね』

「うん、まぁ、そうなんだけどさ、ちょっと私に気を使おうかしー君」

 

 神一郎のあまりな言い方に束は涙した。

 

(なるほど、それで束様はお怒りに……。束様の立場で考えてみれば当然のことだな。それにしても佐藤神一郎か……。やはり普通の小学生ではないな。もしやギフテッド持ちの子供か?)

 

 そして束の横では、男が真剣な表情でそんな事を考えていた。

 

 現在、ツッコミ不在の都内にある某高級住宅の一軒家は混沌としています。

 

「でね。私の足を引っ張るあのグラサンはどう処理しようかと」

『ぶっちゃけグラサンは何一つ悪くないけどね。そこはほら、理解者ができたと喜べば?』

「り~か~い~しゃ~?」

 

 束はベロを出しながら、まるで苦いものを食べたような顔をする。

 

「好きでもなんでもない奴に理解されても嬉しくもなんともないよ!」

『束さんならそう言うか。ならそうだな……箒のボディガードにするのはどうだろ?』

「箒ちゃんの?」

『箒の護衛って言わば地方勤務でしょ? 本部から切り離せばグラサンが余計な事を言っても話しが広まりづらいよね?』

「うん」

『グラサンなら万が一の時は箒の盾になってくれるだろうし、本格的に邪魔になったら箒狙いのテロリストのせいにして消してもいい。どうかな?』

「うんうん。なるほどなるほど――有りだと思います! さすがはしー君。さすちーだね!」

 

 確かに神一郎の案は良い案だった。

 グラサンが余計な事を言っても影響が少なく、いざとなったら盾にして、邪魔になったら消す。

 実に無駄のないグラサンの使い道だった。

 しかし束は知らなかった。 

 相談した相手が――

 

(箒も見知った人間が居た方が安心するだろうしな)

 

 などど思っていることに。

 

「あれ? 何か言った?」

『なんも。話は終わり?』

「うん。相談に乗ってくれてありがとね」

『問題はどうやってグラサンをそのポジションに就かせるかだけど、そこは頑張ってね』

「そっちも大丈夫だよ。――話は理解したね? ってな訳でグラサンの配置替えヨロ」

「はっ? え、えぇ。了解しました」

 

 話しの終わりの終わり。

 後は別れの挨拶をしてさようならというタイミングで束は男に話かけた。

 男も、ついと言った感じで返事をしてしまう。

 まだ通話が繋がってるにも関わらず――

 

『へ? 今の誰?』

「今日はありがとねしー君。ばいばーい」

『あ、ちょっ(プチ)』

 

 神一郎の言葉を最後まで聞かず束は通話を切った。

 

「よろしかったのですか?」

 

 男の問の意味は二つあった。

 相手の会話を聞かずに切ってよかったのか?

 自分の存在をバラす様な真似をしていいのか?

 の二つだ。

 

「ん? 大丈夫大丈夫、お前の存在はしー君に話すつもりだし」

 

 そう言って束は上機嫌に笑ってみせた。

 その笑みは、ここに神一郎なり千冬が居れば、縄で縛って企みを聞き出すレベルの怪しさがあった。

 しかし今二人は居ない。

 

「私の存在を教えるのは構いませんが、大丈夫なのですか?」

 

 居るのはクソ真面目な老人だけだった。

 

「お前はさ、しー君の事をどう思った?」

「それはどういう……」

「欲しいと思わなかった?」

「っ!?」

 

 束の言葉に男の心は揺れた。

 

(見透かされてる? いや、試されてるのか? )

 

 内心怯えつつも、男は冷静に思考を巡らせた。

 

(彼が居れば天災を御せれるかもしれないと思ったのは事実。だがここで嘘を付くのは愚策だな)

 

 男は冷静に思考を巡らせ、そう結論付けた。 

 

「えぇ、あの若さであれほどしっかりしてるとは――。是非とも部下に欲しいですな」

「好きにして良いよ。私が許す。勧誘でも脅迫でも勝手にすれば?」

「はい?」

 

 まさかの返しに男の思考が止まる。

 

「束様は何を考えてるのです?」

「気になる?」

「教えてくださいますか?」

「私はね、しー君で遊びたいんだよ」

 

 大物政治家に勧誘されたしー君はどうでるかな?

 勝手に売られてたと怒る?

 それとも良いコネができたと喜ぶ?

 

 逆に脅迫されたらどうするかな?

 私に責任取れと言ってくるかな?

 それとも助けてと乞うてくるかな?

 

 そんな事を考えるだけで束は楽しかった。

 嫌の事も面倒な事も、神一郎がわたわたする姿を思い浮かべるだけで忘れられるくらい楽しかったのだ。

 

「束様が許すと言うなら、少年の勧誘は前向きに考えさせてもらいましょう」

 

 (とは言っても、度を過ぎた対応をすれば消されるのは私だろう。少年に近付くのは愚策だな) 

 

 グヘヘとニヤついている束の顔を見ながら、男はあくまでも冷静に対処する。

 天災には不用意に近付かない。

 それが男の処世術だった。

 

「そうだ。しー君がどう動くか賭けない? 当てられたら金になりそうな発明品を進呈しよう。外れても罰はなしにしてあげるよ」

「……そして賭けをした事も少年に話すのですね?」

「それはもちろん!」

 

 どこまでも笑顔を崩さない束に男は苦笑した。

 勝手に売られ、勝手に賭けの対象にされる。

 少年の未来はなんとも大変そうだった。

 だが男は同情しない。

 それよりも大事な事が世の中にあるからだ。

 

「言っておきますが本気で当てに行きますよ? なにせ組織の運営には資金が必要ですからな」

「んじゃ束さんは、怒り→諦め→泣きの三連単で」

「独特な賭け方ですな。では私は、泣き→諦め→怒りにしましょう」

 

 はっはっは。

 

 互いに顔を合わせ笑い合う。

 

 グラサンの未来。

 神一郎の処遇。

 様々なものが本人が居ないところで決まって行く。

 これが社会の縮図だとでも言うかのように――




グラサン三つの出来事

①人知れず命を狙われる。
②人知れず助かる。
③箒の護衛リーダーに任命され、長い期間日本中を転々とすることになる。

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