俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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今回は普通は小説で敬遠するべき内容が少しありますが、フィクションです。
過度の反応はしないでください。

書き終わったのはいいが、なんかこう……内容が薄い感じががが。
もっと派手な出会い方にするべきだったか……。



ツンデレ+ツインテ+ロリ=安定の可愛さ

 

 箒と束さんの間を取り持ち和解させ、潜水艦を堪能し、中国の大自然を満喫して、季節は四月の半ば。

 俺は――

 

「アンタがサトウシンイチロウね!?」

 

 赤いランドセルを背負った、ツインテで生意気な顔をしたロリに詰め寄られていた。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 さて、基本的に最近の俺の日常は平和だった。

 一ヶ月登校してなかったので、クラスメイトに何をしてたんだと騒がれたり、念願の本場麻婆豆腐を食べて、温水便座に座って変な叫び声を上げたりしたり、毎日100件近くのメールが届いたりと色々あったが、平和な日常と言っていいだろう。

 そんな日常を謳歌してる俺が、何故かロリっ子に腕を引っ張られ、体育館裏に連れてこられた。

 校門前で声をかけられ、返事をしたら有無を言わさずだ。

 なんて押しの強いロリなんだ。

 

「アンタ、一夏と仲が良いのよね?」

 

 腕を組んだ状態で、ロリが勝気な瞳を俺に向ける。

 やめろ。

 なんか変な扉が開きそうになるじゃないか。

 

「一夏の友達? だったらまず自己紹介くらいしてくれないかな?」

「――凰鈴音よ」

「ふぁん……りんいん?」

「……もう少し発音なんとかならない?」

「あぁゴメン。リンインで良いかな?」

「それで良いわ」

 

 表面上は穏やかに会話が進む。

 ――もう良いかな? 良いよね?

 んじゃ行きます。

 せーの

 

 ツンデレロリきたぁぁぁぁ!!!!

 

 うん分かってた。

 原作鈴ちゃんをそのまま小さくした容姿なんだもん。

 なに? 持ち帰って良いの? ここ人気のない場所だよ? 俺IS持ちだよ? 誰にも気付かれず攫えるよ? 事案だよ? 良いの?

 

「ちょっと! わたしの話し聞いてるの!?」

 

 はっ!?

 いかんいかん。

 ちょっとテンパってた。

 恐るべしツンデレロリ。

 

「ゴメン聞き逃した。なんだって?」

「だからコレよコレ! この写真ってアンタが出処なんでしょ!?」

 

 鈴ちゃんが俺に三枚の写真を突き出す。

 写っているのは一夏だ。

 剣道着を着て、竹刀を構える姿が凛々しい。

 写真そのものではなく、カラーコピーの為、画質が粗いのが残念だな。

 

「そうだね。誰にあげたかは忘れたけど、俺が持ってたやつだと思う」

 

 マーケティングの一環として、一夏の人気の拡散と、小学生女子がどの程度好きな男の子のグッズを欲しがるかを調べる為に配ったやつだ。

 まさかカラーコピーが出回っているとは。

 

「ネガあるんでしょ!? それをわたしによこしなさい!」

 

 ……箒とは違う可愛さ、束さんに通じる苛めたくなる可愛さがあるな。

 てかあれだ、もう一夏のこと好きなんだ?

 だから俺に写真くれって言ってるわけだ。

 一夏は手が早いな。

 それにしても……。

 

「なによ? なんとか言いなさいよ」

 

 何も言わず見下ろすと、鈴ちゃんの足が少し後ろに下がった。

 自分でも強引がすぎると自覚してるんだろう。

 そこもまた可愛い。

 ……意地悪したくなるな。

 

「あれ? 鈴?」

 

 丁度良いタイミングでハーレム主が登場した。

 原作一夏を見てるとイラっとするけど、今の一夏にそんな感情沸かないな。

 囲ってるのが小学生女子だと思うと、嫉妬より先に応援したい気持ちがくる。

 鈴ちゃん小学生にしてはキャラ濃いんだもん。

 一夏の苦労が目に見えるよ。

 

「一夏!? なんでここに……まさかわたしを探しに?」

「ん? 俺は神一郎さんを探してただけだぞ?」

「……あっそう」

 

 俺とヒロインを並べて俺を取るみたいな言い方やめれ。

 鈴ちゃんめっちゃ不満気な顔してるじゃんか。

 てか俺を探してたとは何用だ?

 

「久しぶり一夏。もう四月の半ば過ぎだから、7週間ぶり?」

「久しぶりじゃないですよ! 今までどこ行ってたんですか!? 道場にも来ないし、家にもいないし、箒だって会いたがってましたよ!?」

「家庭の事情だから深く聞くな。それと、道場は辞めたから」

「……はぁぁぁぁ!?」

 

 一夏がアホみたいに口を大きく開ける。

 俺の事などほっといて、隣のロリの相手をしてやれよ。

 

「え? なんでですか?」

「一夏、俺はな、千冬さんと柳韻先生以外に剣を習うつもりはないんだよ」

「……神一郎さん、それなりに長い付き合いの俺を、そんな嘘で騙せるとでも?」

 

 うわ、超ジト目だ。

 一夏も可愛げがなくなってきたな。

 

「別に俺の勝手だろ? 気にするな」

「それはまぁ……そうですけど……」

 

 今度はシュンとしてしまった。

 めんどくさっ!

 

「所で一夏、わざわざ俺を探してたのか?」

「たまたま廊下の窓から神一郎さんが見えたので、追いかけてきました」

「用があるなら教室に来れば良かったのに」

「六年生のクラスはちょっと……」

 

 さすがの一夏も他の学年の教室は行きづらいか。

 しかし、俺の隣を歩いていた鈴ちゃんは目に映らなかったのかな?

 さっきから彼女の視線がまるで恋敵を見る様なんだが?

 

「一夏、もう話しは終わり? だったらどいてて欲しいんだけど?」

「そう言えばなんで鈴がいるんだ? 神一郎さんと知り合いだったっけ?」

 

 鈴ちゃんが俺と一夏に間に入り、話を終わらせようとすると、一夏が少しムスっとした感じで眉を寄せる。

 あれ? なにこの空気?

 

「別に一夏には関係ないでしょ? わたしが先に話してたんだから邪魔しないでよ」

「邪魔してるつもりはないけど……。鈴、まさか神一郎さん相手にいつもの調子で話してないよな? 頼むから神一郎さんを怒らすような真似するなよ?」

「なによ!? わたしの礼儀がなってないって言うの!?」

 

 やめて! ワタシのために争わないで!

   

 よし! 一度はネタで言ってみたかったセリフ言えたぞ。

 鈴ちゃんから見れば、一夏が自分より俺を気にしてる様で気に入らない。

 一夏は、音沙汰なかった友人に久しぶりに会ったら、何故か縁のなかったはずの別の友達と仲良さそうで、ちょっとジェラシーって感じかな。

 

「確認しとくけど、一夏とリンインは友達?」

「鈴はクラスメイトで友達です」

「中国人の友達がいるとは聞いたことなかったな。いつから仲良いんだ?」

「えっと、鈴は二週間前に引越してきたばかりで」

「ほう。二週間で落とすとはさすがだな」

「ちょっ!?」

「落とす? いえ、落としたりはしてないですけど」

「い、一夏! あんた適当なこと言ってるんじゃないわよ!」

 

 二人の仲などまるで知らないかのようにすっとぼけみる。

 わたわたする鈴ちゃんが可愛い。

 

「神一郎さん。鈴は口が悪いけど、良い奴なんで仲良くしてあげてください」

「ちょっと一夏! なに言ってんのよ!」

「だって鈴、俺以外に友達いないじゃん」

「余計なお世話よ! 別に日本人なんて……」

 

 ん?

 

 二人のじゃれあいを眺めていると、ふと違和感を覚えた。

 “日本人なんて”って結構危険なワードじゃないか?

 

「一夏、リンインはクラスに馴染めてないのか?」

「まぁ、その……はい。鈴は気が強いっていうか、裏表がないっていうか、ちょっと口が悪くてトラブルになりやすいんですよ」

「余計な事を言うな!」

「いたっ!? ちょっと鈴、痛いって」

 

 一夏のことをポカポカ殴る鈴ちゃん萌え。

 だがしかし、ちょっとばかし気が強いだけで友達が出来ないってのは心配だな。

 ここは少し余計なお世話させてもらおうか。

 

「リンイン、ちょっとおいで」

「へ? あ、ちょっと――」

 

 鈴ちゃんの手を掴み、無理矢理引っ張る。

 ここは強気に行きます。

 

「一夏、お前は少しそこで待ってろ」

「りょ、了解です」

 

 有無をいわざず一夏を黙らせ、ざっと10メートル以上離れてから鈴ちゃんの腕を離す。

 

「なんのつもり? わたしは別にお喋りしたい訳じゃないんだけど」

 

 とか言いつつ、鈴ちゃんの腰は引けている。

 これが束さんなら容赦なく追い打ちするんだが、さすがに今は見て見ぬふりをしてあげよう。

 

「一夏に聞かれたくない内緒話があってな」

「なによ」

「リンインって、もしかして日本人嫌い?」

「……なんでそう思うの?」

 

 肯定はしない。

 けど否定もなし。

 ちょっと迂回してみようか。

 

「リンインは日本語上手だよね」

「それがなに?」

「日本に来る前に沢山勉強したのかなって」

「わたし、舐められたりするの嫌いなのよ。日本語が出来なきゃ言い負かすこともできないでしょ?」

 

 負けず嫌いもここまでくると凄いな。

 

 相手の言葉が分からなければ負かすこともできない。

 だから言葉を覚えた。

 

 そのヤル気は素直に尊敬する。

 本当に小学生か? 

 

「言葉だけじゃなくて、読み書きも得意?」

「中国語と日本語の漢字の作りは似てるから、それなりに出来るわ」

 

 そっか、そっかそっか……。

 

「もしかしてさ、日本に来てからネットで自国のこと調べたりした?」

「…………」

 

 アウトォォォォ!!

 沈黙が痛い!

 悔しそうに地面を睨む鈴ちゃんを見るのが辛い!

 

「クラスで馴染めないのもそのせいだったり?」

「……別に、面と向かって中国人だからってわたしを馬鹿にしてくる奴は居なかったわよ。でも、内心じゃどう思ってるかなんて分からないじゃない」

 

 なんというか、今は時期が悪い。

 今現在、中国が反日で盛り上がり始め、日本では反中感情が高まり始め、インターネットが一般家庭に普及し始めてるのだ。

 そりゃあね、中国人の女の子が日本で中国の事を調べたら、軽く人間不信になっちゃうのもしょうがないよね。

 鈴ちゃんはまだ小学生だ。

 未来の若者みたいに、ネットの情報なんて話半分と割り切れず、書かれていた事を気にしちゃってるんだろうな。

 

「リンインも理解してると思うけど、日本人の全員がネットに書いてある様なことを思ってる訳じゃないからね?」

「それは分かってるわよ……でもしょうがないじゃない。表面上は笑顔でも、裏ではって考えちゃうんだもん」

 

 なるほど、だからクラスメイトに対してアタリがきつくなるのか。

 つまり、ネットの闇を見てしまった鈴ちゃんは軽い日本人不信。

 笑顔の裏で、実は中国人を馬鹿にしてるんじゃないかと疑ってしまっているんだな。

 

 あれ―? ここISの世界だよね? なんでこんなに重い設定があんの?

 こういったのは学校の先生の領分だろうに。

 働け公務員。

 

「でもさ、その割には随分と一夏に懐いてるよね?」

「懐いてないわよ!」

「ええ―? ほんとにござるかぁ?」

「なによ! なんか証拠でもあるの!?」

「素直に言ったら一夏の寝顔写真をあげよう」

「……………好き……です」

 

 数秒の葛藤後、鈴ちゃんは素直に自分の気持ちを口にした。

 よろしい、ならば寝顔写真だ。

 

「最近のと昔の、どっちがいい?」

「……最近ので」

「あいよ」

 

 ランドセルに手を突っ込み、拡張領域から去年のクリスマスに撮った写真を取り出して鈴ちゃんに渡す。

 

「ふへへ」

 

 めっちゃニヤけてる。

 この笑顔を引き出せるとは、さすがは一夏だぜ。

 

「……はっ!?」

 

 ニヤニヤする鈴ちゃんをニマニマと眺めていたら、俺の視線に気付いた鈴ちゃんが慌てて写真を懐にしまった。

 

「それにしても、よくわたしの気持ち分かったわね」

「一夏が好きなこと? それは見てれば――」

「そっちじゃなくて日本人不信のことよ!」

「不信っていう割には俺に話しかけてきたよね?」

「それは……一夏がよくアンタのこと話してたから、一夏が信用してる人なら大丈夫かなって……」

 

 一夏の中では俺の評価って意外と高いんだな。

 そして鈴ちゃんの一夏への信頼が眩しい。

 日本人不信なのに、一夏の知り合いだからって俺に……あ、違うか。

 この子、一夏の写真欲しさに俺に近づいて来たんだった。

 凄いのは一夏への愛だ。 

 

「言っとくけど、もし一夏に言ったら分かってるわね?」

 

 俺は今脅されてるのだろうか?

 そんな弱気な顔で言われても萌えるだけなんだが……。

 

「日本人が嫌いな訳じゃないよね?」

「わたし自身がなにかされたとかならともかく、無闇に嫌う程心が狭いつもりはないわよ」

 

 元々はカラッとした明るい性格。

 強気な性格も相まって、日本人に対して猜疑心から多少強く当たってしまうが、慣れてくれれば日本人だろうと仲良くなれる子。

 うん、良い子だ。

 これは、妹にするしかないよね?

 

「リンイン、俺と取引しない?」

「取引?」

「そう。まぁまずはこのアルバムを見たまえ」

 

 ランドセルに手を入れて拡張領域からブツを取り出す。

 俺の手に握られたのは一夏の写真集――その名も【ひと夏の思い出】だ。

 

「こ、これは!?」

 

 鈴ちゃんが食い入る様に写真を見つめる。

 

 剣道中の真面目一夏。

 お風呂上がりのお色気一夏。

 ハロウィンでコスプレしたレア一夏。

 などなど――

 

 一夏好きには堪らないだろう。

 

「これくれるの!?」

 

 予想以上の食いつきだった。

 日本人不信はどこえやら、鈴ちゃんが俺に詰め寄る。

 

「まぁ落ち着け。まだこれはあげれない」

「まだ?」

「だってリンインと俺は友達でもなんでもないじゃん。俺の思い出が詰まった写真をあげる理由がない」

「ぐっ……確かに」

 

 嬉しそうな顔から一転、悔しそうな顔になる。

 口調は荒いが、無理を通そうとしないあたり、やっぱり根は真面目なんだろう。

 

「そこで商談だ。これから先、リンインが俺のこと『シン兄』って呼んでくれるならそれを譲ろう」

「シンニイ? えっと……日本語だと……『シンイチロウ兄さん』を略した呼び方?」

「そうそう」

「馬鹿じゃないの?」

 

 鈴ちゃんが蔑んだ目で俺を見てくる。

 小学生にそんな顔されると、ちょっと興奮。

 

「リンイン、これは取引だ。別に俺の事を好きになる必要はない。だけど俺を兄と呼んでくれるなら、その写真集だけじゃなくて、一夏グッズなども定期的に進呈しよう。俺は妹を甘やかすタイプだからな!」

「……少し考えさせて」

 

 そう言って鈴ちゃんはアゴに手を当てた。

 可愛いなぁ。

 これは逃す訳にはいかない。

 ぶっちゃけ、箒の一件で俺は自分の趣向をはっきりと自覚した。

 年下の女の子超可愛い。

 お兄ちゃんって超呼ばれたい。

 といってもそこに性欲はない。

 あるのはあくまで萌えだ。 

 

「一夏の入浴中の写真もあるアルヨ」

「これからよろしくシン兄!」

 

 俺と鈴ちゃんはがっしりと握手した。

 これぞ現代の桃源の誓い。

 

 ツンデレツインテロリが義妹になった!!

 

 そうだよな……せっかく転生したんだし、ヒロイン達に兄と呼ばれるのも良いかも……。

 他のヒロイン達も一夏大好きな子ばかり。

 ならリン同様一夏の写真で釣れそうだし……有りだな!

 目指せ義妹ハーレム(全年齢)

 

「リンイン……いや、これからはリンと呼んで良いかな?」

「水臭いわよシン兄」

 

 いや―、兄妹っていいネ!

 

「ところでシン兄。これからわたしと一夏の応援してくれるってことで良いのよね?」

「応援はしません」

「役に立たない兄はいらないんだけど?」

 

 鈴ちゃん……いやリンよ。

 兄の足を踏むとは何事だ。

 

「一夏と仲が良いアンタと仲良くなれば、他の女の子よりリードできると思ったのに!」

 

 そんな思惑もあったのか。

 なるほど、その打算的な面も評価しよう。

 受身ではなく、好きな男をゲットする為に容赦しない姿勢はむしろ好ましい。

 

「ねえシン兄。一夏の写真なんかはくれるのよね?」

「それはもちろん」

「なのにわたしと一夏の仲は取り持てないの?」

「俺はただ一夏グッズを渡すだけだ。後はまぁ、相談にはのったりはするけど、それ以上はしない。一夏が欲しいなら自力で頑張って」

「うぐぐっ」

 

 そんな通販で騙された人みたいな顔されてもな……。

 リンには申し訳ないが、箒の手前応援はできない。

 そして箒には悪いが、リンの邪魔をするつもりもない。

 俺はただ、一夏に不器用にアピールするリンを眺めたり、一夏グッズで笑顔になるリンを愛でたいだけだ。

 

「で、どうする? 兄弟の縁切る?」

「……いいえ、手伝わないと言っても、今のわたしにはシン兄はありがたい存在だわ」

「そう言ってくれるのは嬉しいね。さっき言った通り、仲を取り持つ気はないけど相談とかなら乗るから」

 

 納得してる風だけどリンのほっぺは膨らんでいた。

 俺とリンが出会ったばかり、心の距離を近づかせる為にも最初が肝心だ。

 良いだろう……俺の手腕でリンに最高のプレゼントを贈ってやる。

 “シン兄ありがとう”と喜ぶ姿が今から楽しみだぜ!

 

「リン、ちょいと耳かして。少し一夏で遊ぼうぜ」

「一夏で? ふーん、なにか面白そうじゃない」

 

 俺が誘うとリンがニヤリと笑った。

 話しが早いじゃないか。

 この辺は気が合うな。

 

「ちょっとだけ嫌な思いをするかもだけど、そこは我慢してね?」

「わたしに何させる気よ」

「あのね――――って俺が言うから、リンは黙って地面を見てて。下手な演技はなしで」

「はぁ!? なんでそんこと!」

「格好良い一夏を見たくない? 一夏ならきっと否定するから」

「それは……見たいけど……。でも、もし一夏が……」

「大丈夫、アイツ馬鹿だからきっと俺の思惑道りに動く。それにさ、このままじゃ良くないってリンも理解してるでしょ?」

「だけど、そんなことする必要……」

「難しく考えるな。これは……そう、格好良い一夏を見たいか見たくないか、ただそれだけの話しだ」

「――シン兄を信じてみる」

 

 リンが不安げな顔をしながらも頷く。

 少しばかり気の毒だが、一夏が頑張ればリンの日本人不信も少しは改善されるだろう。

 一夏には是非とも頑張って欲しい。

 

 まず必要なのはボイスレコーダーだ。

 ケータイを開いてボイスレコーダ機能を――ってまじかー。

 メールの着信78件。

 いい加減鬱陶しいぞ。

 取り敢えず全消去っと。

 

「さて、行こうか」

「……よし! グダグダ言ってても始まらない! 頼んだわよシン兄!」

 

 リンが自分の頬を叩き喝を入れる。

 IS世界の女の子は男らしい子が多いな。

 これは絶対にミスれないぞ一夏。

 

 

 

 

 

「お待たせ一夏」

 

 暇そうに佇んでいる一夏の元へリンと一緒に戻る。

 もし一夏が俺の想像通りに動かなかったら――なんて心配はしてない。

 ここで俺の言葉を鵜呑みにするような馬鹿ではないと信じてるからだ。

 てかあれだ、万が一にでもリンを悲しませたら、千冬さんと一緒に根性叩き直してやる。

 

「待ちました。何話してたんです?」

「う~ん……これからの付き合い方について?」

「なんですそれ?」

 

 放置されて少しばかりご立腹な一夏。

 ここからが本番だ。

 一夏、ハーレム主の実力を見せてくれ。

 

「一夏、リンインと付き合うのは辞めろ」

「……へ? あの、それはどういう……」

「中国人なんてロクでもない奴と付き合うなと言っているんだ」

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 俺にとって、神一郎さんは憧れだった。

 一つしか違わないのに大人っほく、それでいて頼もしい。

 千冬姉から対等に扱われているのも羨ましいと思っていた。

 俺はそんな神一郎さんが好きだった。

 でも、俺は今初めて神一郎さんに怒りを感じている。

 

「取り消してください」

 

 自分でも驚く程声が硬い。

 神一郎さんの後ろでうつむいている鈴を見て、思わず拳を握る。

 

「なんだ一夏。何を取り消せって?」

「鈴は鈴です。中国人がどうとか、そんなの関係ないと思います」

「一夏は知らないからそう言えるんだよ。たまにはネットニュースとは見るべきだな。中国人ってのは、自分達が戦勝国だと言って日本を見下してみたり、かと言えば日本で密猟や売春などの犯罪行為を繰り返す奴等だぞ? 関わらない方が良いって絶対」

「別に鈴が悪い事した訳じゃないです! おかしいですよ神一郎さん! なんでそんな事を……ッ!」

「なら本人に聞いて見れば? なぁ凰鈴音。何か反論あるか?」

「わたしは……」

「鈴?」

 

 神一郎さんが背後を振り返り、鈴に意見を求める。

 でも鈴は顔を上げることはしなかった。

 なんで……なんで神一郎さんはそんこと……。

 

 

「一夏、これはお前の為だ。今はまだ良いけど、これから先、リンインが中国人だからとイジメる奴が出てくるだろう。お前、そんな時どうするつもりだ? 喧嘩なんかしたら千冬さんに迷惑かかぞ?」

「それは……」

 

 千冬姉は今や社会人。

 朝から晩まで働いている。

 そんな時に俺が喧嘩して、先生に呼び出されたらと思うと、確かに神一郎さんの言う通りだと思う。

 でも……。

 

 ギリッ

 

 鈴の強く握られた手。

 それを見た瞬間、覚悟は決まった。

 

「神一郎さんの言い分は間違ってます」

「へ―? どこが?」

 

 普段とは違うヘラヘラとした笑顔。

 俺が知らない神一郎さんがそこに居た。

 

「ここで鈴と友達を辞めたら、それこそ千冬姉に殴られる! だから俺は鈴を見捨てません!」

 

 千冬姉なら、俺が保身の為に友達を辞めたと聞いたら怒るに違いない!

 

「……言ってることは立派だが、姉に言われなければ守れない程度の気持ちで大丈夫か?」

「ッ!?」

 

 神一郎さんの指摘で頬が染まる。

 そうだ……そうだよな。 

 鈴は俺の友達だ。

 千冬姉は今は関係ない。

 

「すみません。言い直します」

「一夏?」

 

 神一郎さんに頭を下げる。

 顔を上げると、心配そうに俺を見つめる鈴の顔が見えた。

 俺が鈴を不安にさせてるんだよな。

 なんて情けない……。

 ごめんな、鈴。

 

「どうした一夏。俺の言ってること理解したのか?」

「いえ、違います」

 

 神一郎さんの目を真っ直ぐ見つめる。

 ここで目を逸らしたら負けだ。

 

「神一郎さん」

「ん?」

「――――鈴は俺が守る!!」

 

 だって、鈴は“俺の友達”なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

「――――リン」

 

 リン?

 

「――――シン兄」

 

 シン兄?

 

 

 鈴と神一郎さんが聞きなれない呼び方をしながら向かい合い、

 

 スパンッ!!

 

 ハイタッチを交わした。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

「シン兄! 分かってるわよね!?」

「落ち着けリン。音声データが欲しければメアドを教えるんだ」

「了解!」

 

 飛びかからんばかりの勢いのリンの頭を手で抑え、リンと赤外線でメアドを交換する。

 いやはや、上手くいって良かった。

 俺の株を上げつつ、リンを喜ばせ、更にリンの問題点――日本人に対する猜疑心を薄めてあげる。

 思ったよりなんとかなったな。

 原作では少しばかり問題があった一夏の正義感だが、こういった時は反応が読みやすくて助かる。

 

「あの、神一郎さん?」

「なんだ?」

「なんか鈴と仲良く見えるのですが?」

「友達になったしな」

「へー?」

 

 一夏の顔からさっきまでの凛々しい表情が消えた。

 

「なぁ鈴」

「なによ?」

「なんで神一郎さんのことを“シン兄”って呼んでんの?」

「わたしのアニキ分だからよ」

「ほー?」

 

 リンの答えを聞いて、一夏の頬がヒクヒクと引き攣る。

 どうやら自分がハメられたと気付いた様だ。

 

「……説明してくれますよね? 神一郎さ……」

『鈴は俺が守る!!』

「鈴、説明を……」

『鈴は俺が守る!!』

「神一郎さん」

『鈴は俺が守る!!』

「鈴」

『鈴は俺が守る!!』

「…………(イラっ)」

 

 あ、リンと交互に録音した声を再生させたら、一夏が珍しくイライラし始めた。

 この辺が引き際か。

 

「ま、冗談はさておき」

「冗談で済ませる気ですか?」

「なによ一夏。ちょっとしたお茶目じゃない」

「鈴、冗談にしては笑えないんだけど」

 

 一夏の素敵な宣言を聞けたリンはすこぶる上機嫌だ。

 だが逆に一夏はおこである。

 さて、俺としてもこれ以上この話題を広げたくないし、この辺で――

 

「神一郎さん、日本人とか中国人とか、そんなに大事ですか?」

 

 一夏が話題の変更を許してくれない。

 さすがは鈍感系主人公だな!

 

「俺だってニュースくらい見ます。さっきの神一郎さんの言葉が全部嘘じゃないってことくらいわかります。だけど、仮に日本で犯罪を犯した中国の人が居たとしても、それは鈴とは無関係だと思うんです」

 

 やめて!

 そんな深刻そうな顔しないで!

 

「一夏……」

 

 リンも一夏にノっちゃダメ!

 日本だ中国だなんて話題は小学生がするべきではない!

 

「一夏」

「はい」

「お前も色々と思うことがあるだろう。でもな、その辺の話題は凄く説明が大変なんだ」

 

 いや本当に大変。

 俺の薄い知識で気軽に語って良いことではない。

 だから――

 

「だからさ、日本と中国に関する事で一夏が疑問に思うことは、先生か千冬さんに聞きなさい」

 

 子供の疑問に答えるのは先生の仕事だし、弟の人格成長の手伝いをするのは姉の義務だ。

 丸投げしてもいいよね?

  

「神一郎さんがそう言うなら」

 

 よしっ! めんどくさい話題回避成功!

 明るい話題しよーぜ!

 せっかくリンがいるんだし、色々と聞きたいな。

 あ、夕方のチャイムが聞こえた。

 もうこんな時間か。

 

「そろそろ帰ろうか。一夏、家に寄ってけよ。渡したいものがある」

「はい!」

「ちょっと待ちなさいよ! シン兄、わたしも行くからね!」

 

 俺が歩き出すと、一夏が元気よく俺に続く。

 その後ろを、リンが慌てて追いかけてくる。

  

「神一郎さん、渡したいものってなんですか?」

「漬物壺。ちょっと買いすぎちゃってね」

「漬物!?」

 

 嬉しそうな顔だ。

 一夏は漬物大好きだもんな。

 中国土産で買って来た甲斐があったよ。

 

「それとリン。家のパソコンに一夏の写真が沢山あるから、からかうネタには困らないぞ」

「それはいいわね!」

「趣味悪いぞ鈴」

 

 三人で笑いながら校門を通る。

 ISの世界はまだ平和です。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 メールは全部シカトされた。

 たまに遊ぼうって言ったのに、もう三週間も姿を見せない。

 

『リンの家って中華屋さんなんだ? 俺、中華大好きなんだよ。今日の晩飯はリンの店で食べようかな』

『千冬姉、今日は遅いんだよな……。神一郎さん俺も一緒に行っていいですか?』

『シン兄! 絶対来なさい! 一夏も!』

 

 とうの本人は、いっくんとメス猫を引き連れ楽しそうにしている。

 

 自分の周囲を見回す。

 

 

 

 

 

 圧倒的静けさだ。

 スパイカメラに目を向ける。

 

『それにしても、なんで鈴は神一郎さんのことを兄呼びしてるんです?』

『それは内緒。な、リン』

『そうね。これはわたしとシン兄だけの秘密よ』

『なんだよ二人して……。あの、神一郎さん、俺も“シン兄”って呼んでも……』

『すまん一夏。俺、弟に興味ないんだ』

 

 楽しそうだな~。

 凄く楽しそうだな~。

 私もいっくんとお喋りして中華食べたいなぁ~。 

 

 

 

 

 

 

 絶対に許さん!!

 

 




鈴ちゃんの出番早かったかな? と思うが、主人公の春休みなんて読者様も興味ないだろうと思いカットしました。

やっぱり束さんが居た方が書きやすいや。

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