俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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束さんがケラケラ笑いながら楽しそうにしてる姿を想像するだけで優しい気持ちになれますね。
主人公? あぁ、あいつは尊い犠牲だよ。


モンド・グロッソ幕間 そして彼はハジけた

 

 ちーちゃんとおやすみの挨拶をした後、私はしー君の近くで時間を潰す事にした。

 もちろん毒が回って壊れる瞬間を直接見たいからである。

 

 食後20分経過

 

「とある居酒屋の女将は言いました。『金は金を稼ぐために使うんだよ』と。凄く勉強になる言葉だと思う。てな訳で千冬さんに稼がせてもらったお金をどう使うかが問題だ。鉄板はアパートとかビルの購入だよね」

「目指せ勝ち組ニート? でももしかしたらビルが突然爆発するかもだね」

「……俺の絶望する顔を見るためだけに爆破とかやめて?」

 

 取り合えずしー君の退屈な夢を爆破予告で粉砕しながら時間を潰した。

 

 

 

 

 

 食後30分経過

 

「俺さ、おっぱい党だったんだけど最近はお尻も良いものだと考える様になったんだよね。……束さんのお尻に噛み付いてよい? 歯形残したい」

「ダメです」

 

 言動と挙動がフワフワし始めたしー君に身の危険を感じつつ様子を観察する。

 お酒のせいだけじゃないね……これは毒がいよいよ回ってきたみたい。

 てか毒の影響であって欲しい!

 しー君が襲って来ないことを祈りながら時間を潰した。

 

 

 

 そして食後45分後

 

 口数が徐々に減り、完全沈黙したしー君の姿があった。

 はい! これが今日の実験の結果です!

 

「…………(口を開けたまま焦点の定まらない目で天井を見つめている)」

 

 くっそつまらない結果です!

 何がつまらないって毒の効果がである。

 

「しー君の好きな食べ物は?」

「……肉と魚」

 

 どう見てもただの自白剤効果で本当にありがとうございます!

 はぁーつっかえ!

 ここまで待って自白剤とか本当に肩透かしである。

 先ほどの受け答えも毒の影響が出て率直な欲望が出たんだと思う。

 ……しー君に背後を取られないように気を付けようと思います。

 まさか私のプリティヒップに噛み付きたい願望を持ってたとかドン引きだ。

 しかしこれは参った。

 なにせ私はしー君のプライベートを観察する面倒見の良い飼い主である。

 別に知りたい秘密とかないのだ。

 や、流石にしー君の全てを知ってる訳じゃないんだけど、篠ノ之束って人間を客観的に見たら、相手の全てを知ったら興味を失って捨てそうだから手加減してるのだ。

 相手の80%くらい知ってればいいよねって感じです。

 だからと言ってこのまま終わりにするのもなんだし……

 

「ムムム――」

 

 せっかくの機会に知りたいしー君の秘密。

 前世の事? 恥ずかしい黒歴史? いや、この際だから思い切って――

 

「しー君は篠ノ之束を使ってしたい事ってある?」

 

 自画自賛ではなく私は優秀である。

 上手いこと利用して――なんて事を考えるのは仕方がないと思う。 

 しー君ならめったな事は言わないだろうという信用と、ほんの少しの恐怖。

 場合によってはしー君との友情はここまでだけど、この機会に聞いてみた。

 信じてるよしー君!

 

「……束さんを利用した篠ノ之束無限量産計画」

「なるほど」

 

 しー君の首を掴んで準備よし。 

 近しい人間を殺す時は素手に限るよね。

 安心してしー君、痛みは一瞬だ。

 でも殺す前にそのろくでもない計画の全貌を語ってもらおうか?

 まぁ字ずらから見て私のクローンを作って売る計画っぽいけど。

 

「それはどんな計画なの?」

「……束さんを売る」

「その後は?」

「……お金を貰う」

 

 あれ? 売られるの私本体だけ?

 

「それから?」

「……束さんが戻ってくる」

 

 どこから戻ってくるのかなー?

 情報が断片すぎて全然わからん!

 

「篠ノ之束を何処に売るの?」

「……国」

 

 その一言で全てが繋がった!

 私の売り先は何処かの国で、そこから私が戻ってくる。

 つまり

 

 篠ノ之束を売る→お金を貰う→篠ノ之束が自力で戻って来る→また売る

 

 を繰り返す作戦だ!

 無限量産とか言ってるけど、それはゲームで言う無限アップとかそんな感じのニュアンスなんだろう。

 

「ふ……ふふっ」

 

 流石だと、そう言わざる終えないだろう。

 ここまで見事に私を使うとは流石しー君である!

 

 私を売る。

 その言葉だけ聞けば喧嘩を売られてると思うところだ。

 だがしかし、しー君は私が何事もなく脱出すると信じている。

 売り先が国というのは面白い。

 正直に言おう。

 例えばアメリカが私の身柄を確保した時、どんな風に拘束してどんな場所に監禁しどんな方法で情報を得ようとするのか、その辺はちょっと興味あります!

 それと私の身柄を確保させて喜ばせてからご自慢の施設を破壊して脱出とか楽しそうです 

 ある日さりげなくしー君に提案されたら普通に受け入れる可能性が高いね。

 しかも一回だけじゃなくて数回。

 アメリカや中国やイギリス、国ごとの対応を比べてみたいし。

 この篠ノ之束の性格を熟知したしー君ならではの考えだ。

 ついでに自分はお金を受け取るだけという、どこまでも楽して稼ごうというゲスっぷりが素敵だね!

 

 用意するのは予備の毒キノコとアブサン。

 そのままでは消化に悪いので、優しい私はミキサーでそれを混ぜ合わせる。

 

「これは私のオゴリだ」

「ぐむっ!」 

 

 特製カクテルをしー君のお口にIn。

 もう自白剤入りしー君に用はないのでこの辺でチェンジしてもらいます。

 

「んぐぅ!?」

 

 ほーら、いっきいっき。

 反応が鈍いので無理矢理飲み込ませる。

 さて、これで何か違うパターンの行動を取ってくれるといいんだけど。

  

「ぐふっ……」

 

 口から緑色の液体をこぼしながら虚ろな目をする少年。

 なかなかのレア映像では?

 流々武を借りてヘッド部分だけ展開。

 肩を組んで、はいチーズ。

 データを私の趣味ファイルに転送っと。

 これもまた思い出でだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで10分後。

 

「童貞って世界一優しい生き物だと思うんだ」

 

 イイ感じのしー君が誕生した。

 目には光が戻り、意識もちゃんとしてる様に見える。

 しかし、確実に脳がいっちゃってる感じだ。

 ヒュウ♪ これは楽しめそうな予感! 

 

「アドルフ・ヒトラーっているじゃん」

「いるね」

「アイツ、絶対に非童貞だから」

「ぶっふぅ!」

 

 しー君が立ち上がり熱弁を振るい始める。

 ちょっとまって。

 録画を……最高画質で録画をするから待って!

 

「ユダヤ人の迫害ってなに? 収容所に入れて人体実験? ふざけんなクソ野郎! どんな理由があろうと美女と美少女は宝だろう!?」

 

 私ヒトラーは嫌いなんだよね。

 特定種族の迫害って手はトップに立つ者のやり方としては有りだろう。

 弱者を作り、それに対して強権を振るう事を許可する。

 無能な人間はそれだけで満足するだろうさ。

 一般兵士達の溜まった鬱憤を吐き出させる方法としてはゲスだが効果的だ。

 だが日本人を『想像力の欠如した劣等民族』と言ったのは許さん!

 

「信じる神がなんだ! 肌の色がなんだ! そんなつまんねぇ理由で女子供を殺したのかクズがッ!」

 

 盛り上がってるところ悪いけどヒトラーに子供はいない。

 性的活動も消極的だったらしい。

 つまりヒトラー童貞説があるんだけど……ま、わざわざ言うことでもないか。

 

「人種差別する奴は非童貞」

 

 そだねー。

 童貞から見れば、相手が白人だろうが黒人だろうが、それこそユダヤ人だろうが可愛くてスタイル良ければ何の問題もないもんね。

 しかしこれはアレだね。

 自白剤としての効能が少し残りつつ脳みそがスパークしてるね。

 肥大化され誇張された本音と言ったところかな?

 楽しくなってまいりました! 

 

「フランクリン・ルーズベルトっているじゃん」

「第二次世界大戦中の大統領だね」

「アレも非童貞だから」

 

 でしょうね。

 子供はいたからそっちは非童貞だろうね。

 むしろ権力者としては跡取りは当たり前だから当然なんだけど。

 そして私はそいつも嫌いだ。

 あんにゃろ『日本人の頭蓋骨は我々のより約2000年発達が遅れている』なんて言いやがったのだ。

 この篠ノ之束を前に同じ事言ってみろぷんすか!

 まぁ戦時中だし、ドイツもアメリカも他国を見下して自国民上げするのは分かるんだけどね。

 小説で主人公を持ち上げる為にやられ役を作る手法と同じだ。

 有象無象をまとめる為の涙ぐましい努力と思えば多少は許せるってもんです。

 

「原爆だけじゃないんだ。彼は何度も日本を空襲した」

 

 そりゃ戦争中だし。

 

「原爆と東京大空襲などを合わせると死者は50万を超すんだよ。果たしてその内何人が軍事関係者だったのか……」

 

 多くの無辜の民が亡くなった事に対し悲痛な顔でルーズベルトをディスってるけど、その人って原爆投下前に死んでるよね? とは言わない。

 このまま暴走させた方が面白いから。

 

「三歩後ろ歩く古き良き大和撫子。そんな人達がいったい何人犠牲になったのか……。男なら原爆に反対しろよ! 『無関係のヤマトナデシコが犠牲になる? よし、原爆は中止だ』くらい言えや!」

 

 童貞じゃあるまいしそんな事は言わないと思う。

 

「非武装の人間を狙う奴は非童貞」

 

 戦争中に可愛いからって理由で敵国民見逃したらそいつは童貞?

 

「無差別テロってあるじゃん?」

「あるね」

「テロる奴も非童貞だから」

 

 だろうね。

 戦闘員増やす為に産めや増やせですよ。

 女を道具扱いする非常に気に食わない連中だ。

 

「無差別ってなに? なぁ、無差別ってなに? テロとかするくせになんで無差別なの? 最後の最後で適当な仕事してんじゃねーよ! そこはきっちり標的決めてけや! めんどくさがってんじゃねーぞ!」

 

 無差別テロって敵に恐怖を味合わせる為にするんだけど、なんて無粋なツッコミはなしだ。

 素面のしー君ならそれぐらい理解してるだろうし。

 

「なーんで女子供を巻き込むかなぁ!? そこはきっちりイケメン非童貞だけ狙っていけや! アイツ等は人生の絶頂を経験したからいいけど、女性と童貞は巻き込むんじゃねーよ!」

 

 しー君の中では人生絶頂=初体験なんだね。

 なんだろ……この、なんだろ?

 哀れで悲しくて笑える不思議な感情が私の中にあるぞ?

 

「魔女狩りってあるじゃん?」

「あるね」

「なんのアレ。当時は邪神でも信仰してたの? 金髪美幼女を拷問とか正気の沙汰じゃねぇ!」

 

 金髪老婆もいたと思うけどね。

 老婆と言えば、私が一番嫌いなのは老婆が殺される話しだ。

 とある山間の小さな村に住む老婆。

 その老婆は天候を操る魔女の容疑を掛けられ殺されるのだ。

 なんでも老婆は山に掛かる雲の様子を見るだけで明日の天気が分かるだとか――

 どう見てもただの気象予想なんですが!

 雲を観察し天気を予測する。

 気象予報の元祖だが、老婆はそれが原因で殺されるのだ。

 怖いね。

 無知で無能な人間は獣同然の生き物ってのがよく分かる話だ。

 

「金髪美幼女とか天使だろぉ!? ならそれを殺すってんなら殺した人間は悪魔だろうが! どうせ弱者をいたぶる事に喜びを見出した非童貞達の仕業なんだろぉ!?」

 

 当時の聖職者は今より潔癖……なんて事はないか。

 まぁ非童貞だろうね。

 でも魔女狩りは無知からくる物事に対する不安からきてるから、非童貞であることが原因かは疑問が残るところ。

 

「女性を拷問に掛けるくらいならテメェが死ね! 美少女と非童貞じゃ命の価値が違うんだよバカ野郎ッ!」

 

 女から見たらイケメン非童貞と童貞じゃ価値が違うかもだけどね。

 

「女性相手に拷問とかする奴は非童貞」

 

 男性として不能だからこそ女性に対して攻撃的になる場合もあるけどね。

 アメリカのシリアルキラーに、拷問が性行為の変わりだったやつがいた気がする。

 

「ホロコースト、魔女狩り、戦争……非童貞どもは容赦なく女性を犠牲にする。人間が残酷な生き物なのか? 違う! 非童貞が残酷なのだ! 世界に童貞が満ちればもっと平和になるだろう――ッ!」

 

 しー君が全力で私を笑わせにくる。

 やばいお腹痛い。

 

「妊娠報告したら振られた、奥さんと別れると言っていたのに自分が振られた、夫が暴力を振るう。だったら童貞を選べよ! 童貞だったらそんな事しねぇ! 童貞なら最後まで大事にしてやれる!」

 

 まるで誰かに聞かせる様にしー君の熱弁が続く。

 相手は私じゃない。

 しー君の目には私は映っていないのだ。

 相手はそう……世界だ!

 

「理想の男が見つからない? そんな貴女には童貞をおススメします! 冷酷非情な非童貞なんて捨てろ! 童貞を誘惑して自分好みに改造するのが新世代のトレンドだ!」

 

 草食系男子、ペガサス系男子ときて、最新のトレンドは養殖系男子だね!

 年収、性格は良いけど顔がちょっと……お腹も出てるし。

 そんな場合は体で誘惑だ!

 10キロ減でパイタッチとか言ったら解決しそうだもんね。

 

「非童貞には死を! 非童貞には死を! 非童貞には死を!」

 

 あ、演説中にテンションが上がったのか変なスイッチ入りかけてる。

 このまま野放しにしたら非童貞絶対殺すマンになりそうだね。

 そろそろ次の段階に移行しようかな。

 

「非童貞はパイプカットしてさらし首ガッッ!?」

 

 腹パンで黙らせる。

 意識を失ったしー君をそのまま肩に担いで移動を開始。

 夜のお楽しみはまだまだ始まったばかりである。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 テーブルの上にはワインとチーズ。

 椅子に腰かけながら私は優雅に晩酌を楽しむ。

 ここはデ・ダナン内にある部屋の一つ。

 ただの空き部屋なので、大型のスクリーンしかない部屋だ。

 おっと、今はオマケで椅子に縛らてるしー君がオブジェクトと化しているね。

 

「……ん」

 

 お目覚めかな。

 しー君の目がゆっくりと開く。

 

「ここは………………把握」

 

 目覚めたしー君は周囲を見渡し、自分が椅子に縛られてる状況を確認し、優雅にワインを飲む私を見て現状を把握したようだ。

 なんかジト目で睨まれてます。

 

「おはようしー君」

「おはよう束さん」

「ちょっと確認したいんだけど、食後の記憶ってある?」

「食後? ……あれ?」

 

 どうやらないみたいだね。

 記憶が残るか残らないかも毒次第だったんだよね。

 運がいいねしー君。

 あの記憶が残っていたら一生の傷だったのに。

 ま、記憶はなくても記録はあるんだけどね!

 

「お酒を飲んでる最中に……意識を失った? そういえば酔いが早かったような」

 

 回ったのはアルコールじゃなくて毒です。

 

「もしかして一服盛りました?」

 

 その結論に至るのは当然だよね。

 なので私はにっこり笑顔で返す。

 

「……まぁ盛った件はいいです。それよりもなんで縛られてるんです?」

 

 随分と落ち着いてるじゃないか。

 その落ち着きがもう数分で崩れると思うと自然と笑みになるよ。

 

「それを説明するにはちと時間が掛かるね。まぁお酒でも飲みながらゆっくり話そうよ」

「縛られてるんですがそれは……ん?」

 

 ふっ、気付いたか。

 

「ラ・ロマネ?」

「そう書いてあるでしょ?」

 

 しー君の視線がワインボトルのラベルに固定される。

 今飲んでるのは所謂ブルゴーニュワイン。

 高級ワインです。

 

「それ、お値段は?」

「んー? 多分50万以上」

 

 日本のパシリジジイの家からパクってきたので、正確な値段は知らんです。

 

「え? マジで? あの、一口くれたりとか……」

「や」

 

 端的に返してあげればしー君が分かりやすく不満げな顔をする。

 

「ん、このチーズも美味美味」

 

 あれだけチーズを食べたのに飽きない旨さがあるチーズだ。

 ワインとよく合います。

 

「そのチーズって、まさか」

「そだよ。しー君秘蔵のチーズ」

 

 デ・ダナンではなく、しー君の家の冷蔵庫にあったものだ。

 これって少し特別なチーズなんだよね。

 

「真の贅沢品は通販で買える物ではない、その考えは好きだよ」

 

 これはしー君がフランスで買ってきたものだ。

 田舎にある町の人間だけを相手するような小さいお店で売っていたチーズ。

 大量生産されるものとは違う。

 高級品とも違う。

 二つにない味がこのチーズにはあった。

 実際に現地に行かないと買えないチーズ、確かにこれは真の贅沢品かもね。

 

「そのチーズはな」

「ん?」

「そのチーズはな、俺と爺さんとの思い出の品なんだよ!」

「へっ!?」

 

 想像以上にしー君がお怒りに……。

 怒ってる振り……じゃないね。

 真摯な怒りを感じる。

 まさかチーズが地雷だった?

 

「爺さんはな、珍しいお客だと俺を歓迎してくれて、色々なチーズを味見させてくれたんだよ! しかもそれらに合うワインも教えてくれたんだ! そんな大事なチーズをお前は――ッ!」

 

 なんか想像以上に大事なチーズだった!?

 でもチーズなんて食べてなんぼだし、そこまで怒る事……。

 

「おりょ?」

 

 よくよく見るとしー君の目が微妙にいつもと違う。

 さては毒が抜けきってないね?

 

「そう簡単に許すとおもうなよコラッ! ちょっとサービスしろ! セクハラさせろ美少女がッ!」

 

 よし理解した。

 こいつ自白剤の効果を引きずってやがる。

 受け答えは出来てたし、ちょっと本音が出やすくなってる感じかな。

 

「まぁまぁ落ち着いてよ」

 

 席を立ちしー君に近づく。

 野獣の様な目にドキドキ……いや、ワクワクしますなー。

 

「ちょっとだけサービスするからさ、ね?」

「許します」

 

 しー君の膝に座りながら優しく言葉を掛けたらあっさり許された。

 この手軽さよ。

 

「目の前におっぱい、太ももに美少女の体温、あ、なんか良い匂いがする……」

 

 心の声が駄々洩れで哀れです。

 まったくしー君てば私の事を大好きなんだから困ったもんだね。

 素直にしー君にご褒美だ。

 ワインを指先に少しだけ付けて――

 

「はい、あーん」

「ありがとうございます!」

 

 なんの躊躇いもなく指に食らいついたよ。

 

「んむ……もご」

 

 しー君の下が私の指先にまとわりつく。

 必死に指を舐めまわしております。

 ちょっとこしょばい。

 

「しー君さ、椅子に縛られたまま口に指を突っ込まれて悔しくないの? 男のプライド生きてる?」

「ん? こどじびょうんきた――」

「咥えたまま喋るなし」

 

 指を引っこ抜くとしー君が少し悲しそうな顔をした。

 どんだけ舐めてたいんだよ。

 これからは怒らせても口に指を突っ込めば許してくれるかも。

 しー君がお手軽なのか童貞がお手軽なのか……。

 合わせ技かな? 童貞のしー君がお手軽なのかもしれない。

 

「男のプライドはもちろんある。正直言って早く解放しろと言いたい。だがしかし!」

「しかし?」

「薄暗い部屋で椅子に縛られて美少女に攻められるプレイ! サ・非日常感! 男としては怒りたいがオタクとしては嬉しいんだよ!」

「そ、そうなんだ」

 

 あまりの剣幕にちょっぴり引いてる自分がいます。

 うん、ただのドМ宣言に聞こえるね。

 さてさて、気を取り直して拷問を――じゃなかった。ご褒美を続けようか。

 

「それではしー君、スクリーンに注目してください」

「うん?」

 

 最高画質で録画された自分の雄姿をたっぷり堪能するがいいさ!

 

 

『童貞って世界一優しい生き物だと思うんだ』

 

 

「は……え?」

 

 

『アドルフ・ヒトラーっているじゃん。アイツ、絶対に非童貞だから』

 

 

「はぁぁぁぁぁ!?」

 

 耳に届くしー君の叫び声。

 お酒が美味しくなるね。

 

「えっ? なにこれ?」

「(毒に)酔ったしー君だよ」

「覚えてない。俺、全然覚えて……」

 

 

『信じる神がなんだ! 肌の色がなんだ! そんなつまんねぇ理由で女子供を殺したのかクズがッ!』

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 耳に届くしー君の悲鳴。

 お酒が進みますなぁ。

 

 ところでしー君は気付いてるだろうか。

 私が膝の上に乗ったのはただのご褒美ではない。

 次なる拷問への付箋なのだよ!

 私という重しはしー君の太ももの毛細血管を確実に潰している。

 数分程度なら問題ないだろう。

 だがそれが10分、20分と経過したらどうなるか。

 毛細血管は痛みという名のエマージェンシーコールを鳴らすのだ。

 精神的な攻めはすぐに慣れるだろう。

 今こそ叫んでいるが、その内に大人しくなる。

 それを防ぐための行為なのだ。

 しー君の悲鳴を近くで聞きつつダメージを与える。

 天災篠ノ之束にとって一石二鳥の行動はデフォルトです!

 

「もう映像切ってくれませんか!?」

「ダメです」

「ちくしょうォォォォ!」

 

 夜はまだ始まったばかりである。

 この程度でギブアップは認めないぜしー君。

 

『非武装の人間を狙う奴は非童貞』

 

「NOォォォォ!!」

 

 たーのし♪




10分後

た「ギブする? しー君が望むなら私はいつでもどけるよ?」
し「目の前におっぱい! 太ももの体温! 漂う束さんの匂い! まだだ! まだ俺は戦える!」

 ※双方楽しんでるのでイジメではありません。

 
 世界を裏から操る系女性の夜のメニュー

①パシリの家から盗んできた高級ワイン(50万)
②友達の家からパクってきたチーズ(日本非売品)
③悪友の悲鳴(時価)
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