俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~ 作:GJ0083
篠ノ之神社の境内の地下にひっそりと作られた篠ノ之束の秘密の研究所。白騎士完成の知らせを受け束さんに呼び出された俺は此処に来たことを後悔していた。
「束、私の聞き間違いか?」
「ちーちゃんが聞き逃すなんて珍しいね。そんなちーちゃんの為にもう一度言うよ。『日本めがけてミサイルを撃つから白騎士で撃ち落として欲しいんだよ』」
「冗談ではないんだな?」
研究所の雰囲気は最悪である。千冬さんは今にも束さんに掴みかかりそうだ。
千冬さんが怒るのは無理もない。言ってることはテロ宣言だもんな。説明足らずはワザとなのか素なのか、どちらにせよ。
「俺には関係なさそうなんで帰っていいですか?」
キャットファイトを見るのはテレビの中だけで十分です。
「ダメだよ。しー君にはちーちゃんの説得を手伝ってもらうんだから」
「お前は束がやろうとしている事を許すのか?」
「束さん、千冬さんを巻き込む以上、説得は自分でやるのが筋ですよ。千冬さん、俺は一応束さん所有の実験動物ですよ? 無理言わないで下さい」
とは言ったものの、白騎士事件が起きれば箒が悲しむし、かと言って原作には深く関わりたくないし、どう動くか迷う。やはり原作重視で、箒には後で何かしらのフォローをする方がいいのかな?
「手伝ってくれないならもぎ取る」
何を?
「束側に付くなら容赦せん」
なんで?
「中立を希望します」
「ダメだ(だよ)」
「二人共、親友同士なら説得くらい自分でやって下さい」
「神一郎、束が巫山戯た事を言うのはいつものことだ、しかし今回は度が過ぎている。別に説得しろとは言わん、だがお前は何も思うところが無いのか?」
「有りますが、本心を話した結果、束さんを怒らせ約束の無効とか言い出したら責任取ってくれます?」
「それは……」
「大丈夫だよしー君、束さんは約束は破らないよ」
本当に? 信じるよ?
「IS発表の為とはいえ正気を疑います。やろうとしている事はテロですよ? 貴女は箒をテロリストの妹にする気ですか? 手伝ったら俺や千冬さんだって同罪です。犯罪者になりたいならお一人でガッッ!!!」
体に激痛が走り言葉が途中で止まる。膝が崩れ額には脂汗が浮かんだ。
「躾は最初が肝心だと思うの」
「た、束様? 今のはなんでございますか?」
「しー君のそれは電流を流せる機能もあるんだよ」
実に良い笑顔で首輪を指でトントンと指す。
約束は破らない、けど空気読んで発言しろや。って事ですねご主人様。
「千冬さん、束様の説得はご自分でお願いします」
「お前はもう少し頑張れないのか」
呆れたような口調の千冬さん。
電流を流された事あるかい? 無理だから、これマジ痛い。
「さてちーちゃん、これで二対一だね。賛成多数によりちーちゃんには白騎士に乗ってもらいます」
「あまり調子に乗るなよ束」
「ちーちゃん、私はもう我慢出来ないんだよ」
さっきまでのお調子者の雰囲気が消え失せ、いつになく真面目な顔をした束さんがそこにいた。
「無能共にISを認めさせるにはこれくらいのインパクトがないとダメなんだよ。絶対に無視出来ない方法じゃないとね」
「だからと言って一般人を巻き込むつもりか?」
「ちーちゃんと白騎士、それに束さんがいれば被害なんて出ないよ」
「――ダメだ、それでも承諾できん」
「しー君、君が知っている“白騎士事件”について話してくれないかな?」
なるほど、その為に俺を呼んだのか。
「“白騎士事件“か、神一郎、お前が知ってる未来では、束はミサイルを撃ったんだな?」
「そうですね。撃ちました」
「被害は?」
「死者は0です、負傷者の有無や建物への被害がどの程度あったのかは知りません」
「ISは世界に認められるんだな?」
「ええ、兵器としてですが」
「兵器か……束、お前はそれでいいのか?」
「しー君、ISは兵器としてしか見られてないの?」
「一応はスポーツ競技としての側面もあります。世界大会が開かれてIS同士で戦ったりしてますね」
「十年で世界大会か、うん、まぁまぁの浸透率だね」
「一度目の世界大会は白騎士事件から四~五年後ですからね。俺から見たら異常なんですが」
「どーせ上の連中がはしゃいだんでしょ?」
「だと思いますよ。なんせIS数機で国が落とせますからね」
「その辺までは束さんの計算どおりだね」
IS兵器化も見越してるのか。だけど箒の将来も見えてるのか?
「束さん、ミサイルを撃った結果のメリット、デメリットは全部理解してますか?」
「なにかあるのかな?」
「個人的にはミサイルは撃って欲しくありません。なので俺が知っているお二人の未来を少しだけ話します。覚悟はいいですね?」
「覚悟? え? しー君は何を言うつもりなのかな?」
「私も何かあるのか?」
さて束さん、貴女の覚悟を見せてもらいましょうか。
「束さん、ご自身の重要性を理解してますか? 確かに今回の件はISを世界中に広める事になります。が、ISが女性にしか乗れない事もあり女尊男卑の考えが同時に広まっていきます。それに加え貴女の頭脳が欲しがる奴らが大量に出てきます。なので頭脳目的の奴らから人質にされないよう、逆恨みした男共に危害が加えられないよう、箒は国の保護プログラムで日本各地を転々としながら政府の監視の下での生活を余儀なくされます。家族離散に加え一夏とも会えなくなるんですから束さんへの好感度はかなりヤバイですよ? 『は? 姉さん? 顔も見たくありません。誰の所為で一夏と離れ離れになったと思ってるんですか?』って感じですね」
「がふっ!」
流石に箒に嫌われるのは堪えるのか、束さんは両手と膝を床に付けボディブローを食らったボクサーの様になっている。
「次に千冬さんですが」
「な、なんだ?」
俺の言葉に身構える千冬さん。
安心してください。一夏は貴女のことが大好きですから。
「千冬さんは織斑家の為にもまずお金稼ぎが優先ですよね? それならIS関連は美味しいですよ? なにせこれから世界中で最優先で開発される分野ですからね。それを束さんと二人で先頭に立って発達させて行くのですから利益は膨大です。未来の一夏もお金に困った様子はありませんでした。ですが、忙しすぎて中々家に帰れず、一夏に寂しい思いをさせてしまいます。将来一夏が反抗期に入ったら『俺と仕事どっちが大事なの?』とか言い出さないといいですね」
千冬さんは一夏に言われた場面を想像したのか、苦い顔つきになった。
大丈夫ですよ。一夏は心の中で思っても口には出さないと思いますから。
「箒ちゃんに……箒ちゃんに……」
未だにショックから抜け出せない束さんが何やらブツブツ言っている。
「箒ちゃんに嫌われるなんて嫌だよ~~(ポチッ)」
「ギガガガギゴ!?」
またも電撃に襲われ、床に倒れる。
「な、なぜに?」
「束さんもちーちゃんも心に傷を負ったんだから、しー君も負うべきなんだよ(ポチッ)」
「ゴギガガガギゴ!!」
床に倒れビクンビクンと体が跳ねる。
ただの八つ当たりだよね? もう嫌だ帰りたい。
「い、いや、だから、箒に嫌われたくないならミサイルは止めましょうよ」
「う~~でも、他の手段じゃ時間が掛かりすぎるんだもん」
昔誰かが言ってたっけ、迷ってる時はすでに答えが出ているって。つまり箒に嫌われても引く気はないって事か。
「ISと箒、どちらが大切なの? なんて野暮なことは聞きませんが、我を通すなら箒のこともちゃんと考えて下さいね」
「うん、箒ちゃんのことだもん、ちゃんと考えるよ」
「千冬さんはどうします?」
「私は……」
「ちーちゃん、ちーちゃんは今の環境に満足してるの? 私はちーちゃんに埋もれてて欲しくないんだよ。ISが広まれば私の顔と名前も広がる、けど私だけじゃ嫌なんだよ。ちーちゃんには私の隣に居て欲しいんだよ」
千冬さんの肉体スペックを考えれば、今のバイト三昧の人生なんて宝の持ち腐れだもんな。束さんはそれが我慢できないんだろう。
そんな束さんをジッと見ていた千冬さんの口元は僅かに微笑んでいた。
「ISはお前の夢だったな。いいだろう、乗ってやる。神一郎の話を信じるなら、一夏が大学に行けるくらいは稼げそうだしな。だだし、絶対に被害がでない方法を考えろ。私とIS、上手く使いこなしてみせろ――それと、白騎士の正体は秘密にしろ。お前の隣くらい自分の力で立ってやる」
素直に、お前の夢の為に手伝ってやる。って言えばいいのに。
「ちーちゃ~ん」
束さんがルパン飛びで千冬さんに飛び付く。
「ふんっ!」
それを見事な右ストレートのカウンターで撃退する千冬さん。束さんはそのまま壁にぶつかり――何事もなかった様にニコニコしながら戻って来た。
パンチで人間を吹き飛ばす方も、壁に激突してノーダメージな方も、同じ人間に思えん。
「なんの真似だ?」
「ちーちゃんがデレてくれたからイケルかなって」
「お前はいつもいつも――」
二人がじゃれあってるのは見てる分には微笑ましいんだけど。
「結局テロるんですね? それで一夏と箒はどうするんです? 一夏の方は千冬さんが気にかければいいですが、箒の問題は簡単じゃないですよ?」
俺の問い掛けに二人の会話がピタリと止まる。
なんだろう、束さんの笑顔は怖い。
「それはしー君に任せるよ」
「はい?」
ちゃんと考えろって言ったよね?
「束さんも考えたんだけどね、ほら、束さんて人の心とか分かんないからさ、どうすれば箒ちゃんの為になるのか分からないんだよね」
おぉ、意外と冷静な自己分析。
「白騎士がちーちゃんだって事をバラして、いっくんを箒ちゃんと同じ立場にする。ISで国を脅して今の生活を守らせる。いっくんを誘拐して箒ちゃんと二人を束さんが面倒を見る――どれがいい?」
「箒の幸せを考えればどれも有りですか、千冬さんが許さないかと」
個人的には一考の余地有りなんだけどね。
「束、一夏を巻き込むな」
「うん、ちーちゃんに怒られたくないからね。だからしー君に頼むんだよ。しー君は箒ちゃんを妹にしたいんだよね?」
「なんで知ってるんですか? 妹にしたいと言うか、妹の様に可愛がりたい。ですが」
「箒ちゃんから聞いたよ。写真も自慢されちゃったよ~。あの箒ちゃんの笑顔を作ったしー君の手腕に期待してるんだよ」
別に知られてもいい事だけど、微妙に恥ずかしいな。笑顔は一夏のお陰だと思うけど。
「了解です。断ってまた電流流されるのも嫌ですし、何かしら考えときます」
「うんうん。期待しているよしー君」
「それで束さん、ミサイルはいつ撃つんですか?」
「ん? 準備は出来てるよ。ちーちゃん次第だね」
「そうか、それでは今からやるぞ」
なんの迷いもなくそう言い切った千冬さん。
格好良すぎです。