俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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月姫がプレステ4とswitchでリメイクらしいですね。
部屋を見回す……

〇5年以上起動してないXBOX(モンハンの為に買った)
〇ホコリまみれのWii(モンハンの為に買った)
〇ソフトがモンハンしかない3DS(モンハンの為に買った)

嫌でござる! 拙者ソフトに釣られてこれ以上部屋のオブジェクト増やしたくないでござる!
全年齢ってことは、琥珀さんの『あはっ、出しちゃえ』のシーンがないんですよね……。
R18でPCに移植されるの待ってます!


モンド・グロッソ最終日 日本VSアメリカ

 酸素を肺に入れ二酸化炭素を吐き出す。

 人間が当たり前にやってる機能を意識してやるのは意外と難だ。

 朝日が昇る前に始めたランニングだが、気が付けば太陽は完全に昇っている。

 時計を見ればそろそろ切り上げないといけない時間になっていた。

 首にかけたタオルで汗を拭きつつ自室に戻る。

 水分補給とシャワーを済ませ、私はISが整備されているハンガーに向かう。

 ハンガーにで全国家代表のISが並んでいて、その周囲では国家代表がスタッフと話し合ったり、一緒にISを整備をしたりと忙しそうにしている。

 そん中を歩き進め、私は日本に枠当てられた区画に向かった。

 

「おはようございます」

「おはようですよー」

 

 水口さんを始めとするスタッフの方々に挨拶する。

 私の機体は磨かれ、まるで新品の様な輝きを放っていた。

 

「頼んでいた物はどうなりました?」

「既に拡張領域にインストール済みですよー」

「急の依頼ですみません」

「いえいえ、国家代表の願いに答えるのが仕事なのでお気遣いなくー。それに珍しい物が作れたので技術スタッフ一同楽しませてもらいましたー」

 

 昨夜、対戦相手が分かった私は急遽依頼を出した。

 対アダムズ用の武器である。

 技術スタッフの方々に無茶を言ってしまった。

 恐らく彼女達は徹夜だっただろう。

 だが水口さんの言う通り、彼女達の顔に曇りはない。

 

 楽しい仕事だったと、そう笑顔で頷いている。

 

「織斑さん、朝は食堂で見かけませんでしたが、大丈夫ですか? 私達も頼まれた物を作ってきたので試合前に食べます?」

「ありがとうございます。それは初戦が終わったタイミングで頂くので大丈夫です」

 

 近寄ってきたのは二人の女性、私専属の……付き人? 的なものだ。

 欲しいもなどがあれば彼女達が用意してくれる。

 今まではお願いする事などほとんどなかったが、今回は最後の試合なので色々とお願いしてしまった。

 私が頼んだのは、自らの経験や神一郎の漫画を元にして組み合わせた食事の用意だ。

 

 エネルギー元の炭水化物を摂取する為の“おじや”。

 炭水化物をエネルギーにする為の時間を短縮する為の“梅干し”。

 ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素であるビタミンB1を得る為の“豚肉とニラの生姜炒め”。

 強い抗酸化作用があり、ビタミンB1と一緒に摂る事で疲労回復効果が大きくなるアリシンを摂取する為の“ニンニクのボイル焼き”。 

 疲労物質を除去する“はちみつ漬けレモン”。

 

 彼女達は両手でタッパーを抱えていた。

 別にその辺で買えるものなら出来合いの物でも良かったんだが、わざわざ作ってくれたらしい。

 ありがたいことだ。

 

「朝食抜きで試合に挑むつもりですかー?」

「えぇ、少し考えがありまして」

「作戦には口は出しませんが、倒れないようにするんですよー」

「心得てますよ。流石に今の状態はよろしくないので、少し水分補給してきます」

「こっちはもう仕上がる寸前ですからごゆっくりー」

 

 IS関連は全て水口さん達に任せて一時離れる。

 目的地は壁側に設置された自動販売機だ。

 脳みそだけは動かしたいので、糖分とカフェインが摂取できるコーヒーが無難か。

 身体を冷やさない様にホットコーヒーを買い、自販機横にに設置されているベンチに腰を下ろす。

 ――コーヒーに口を付ける私を影が覆った。

 

「よう」

 

 そう言えば初めて会ったのこの場所だったな。

 初戦の対戦相手であるアダムズが私の前に立っていた。

 ウェーブがかかった髪をまとめアップにし、口にはピアス。

 アイシャドウもしているな。

 気合の入った出で立ちだ。

 

「食堂で姿が見えなったからてっきり逃げたのかと思ったぜ。もしかしてプレッシャーで食事も喉を通らなかったのか?」

 

 人が多いせいか、それともすでにスイッチが入ってるのか分からないが、アダムズの態度は非常に悪い。

 だが人柄を知ってれば違う風に聞こえる。

 これは心配してくれてるんだろう。

 

「食事をしなかったのは必要なかったからだ」

「あん? ワタシに勝つなんざ朝飯前だと、そう喧嘩売ってるんのか?」

「違う、そうじゃない」

 

 私を見下ろすアダムズの目を真っ直ぐに見つめる。

 正直言って今の私は空腹だ。

 夕飯などとっくに消化され、朝から走り込みしていた体は食事を求めている。

 だがなぁ――

 

「覚えておけ。人間は空腹の方が集中力と攻撃性が増すんだよ」

「そ、そうか……」

 

 なんか物凄く引かれた気がする。

 強敵と戦うなら有りの戦法だろ?

 流石に連戦には向かない方法だが、初戦の相手になら有効だ。

 

「安心しろアダムズ、私は絶好調だ」

「……そうみたいだな。試合を楽しみにしてるぜ」

 

 アダムズが私に背を向け去っていく。

 昨夜は飛蘭と特訓したみたいだが、果たしてどこまで強くなったのか。

 全力で当たらせてもらうぞ、アダムズ。

 

 

 ◇◇ ◇◇

 

 

 アリーナの中央で先ほどまで話していたアダムズと向かい合う。

 互いにISは展開済みで、両足は地面に着いている。

 カウントダウンが始まり、二人の間で緊張が増す。 

 

「お前と戦うのを楽しみにしていたよ」

「それは嬉しいですね。実は私もです」

 

 流石に口調は戻っているか。

 だが私の軽口に乗って来るとは意外だ。

 軽く、だが軽薄ではなく、まるで友人にでも語り掛ける口調。

 非常に良いテンションだ。

 

「私と戦うのが楽しみだと?」

「はい。だって織斑さんなら何をしたって大丈夫でしょ? 安心して全力で戦えますから」

 

 なにをしたって、だと?

 ちょっと待て、お前どんな武器を持ってきて……

 

 5、4、――

 

 もうカウントダウンが終わる。

 まずは様子見……なんて真似はしない。

 初手から全力だ!

 

 ――1、0

 

 斬るッ!

 

「取り合えず“削り殺します”」

 

 アダムズの手には巨大な機関銃が握られていた。

 普段なら車両や戦車に取り付けられる大きさだ。

 

「まずいっ!?」

 

 とっさに瞬時加速で後ろに下がる。

 私が立っていた場所は地面が爆ぜて土煙が舞っている。

 

「アメリカ製IS用軽機関散弾銃【アースイーター】。生身では運用不可能な武器ですが、威力は見ての通りです。銃弾はたっぷり用意してますから安心してください」

 

 中国拳法はどこにいった? 私が期待してた戦いと違うんだが?

 

「この――ッ!」

 

 軽機関散弾銃が唸りを上げて弾をばら撒く。

 一瞬でも足を止めたらその瞬間にハチの巣だろう。

 散弾銃だから距離を取れば威力は低いが、連射速度が厄介だ。

 更にこちらが高速で動いてる為、カウンター気味に当たれば装甲が喰われる可能性がある。

 アダムズは右手は引き金、左手はストック部分を握っている。

 接近すればそのまま斬れそうだが、問題はその隙があるかだな。

 リロードは拡張領域を経由してやれば簡単なので、その隙はないだろう。

  

 アダムズはアリーナの中央近くに陣取り、試合開始位置からほとんど動いていない。

 そんなアダムズの周囲を円の動きで飛びながら様子を伺う。

 私を“削り殺す”と言ったが、このままでは言葉通りになる。

 足を止めているアダムズと飛び回る私。

 どちらが先にエネルギー切れになるかは明白だ。

 

 ガンッ

 

 肩の装甲に銃弾が当たった。

 距離を取ってる為銃弾の威力はたいした事はないが、ほんの一桁レベルでシールドエネルギーが減った。

 正面からこの距離ならシールドバリアーを突き抜ける事などないだろうが、やはり私自身のスピードが着弾の威力を高めている。

 

 ガンッ

 

 二発目か、流石に全ての散弾を避けるのは無理だが、それでも被弾しない様に動いてるんだが……風で流れた弾か?

 

 ガンッ

 

 ちょっと待て。

 三発目は偶然で片付ける訳にはいかない。

 ハイパーセンサーを使用しつつ、勘の目で全体を見る。

 飛んでる銃弾を感じ取るんだ――

 

 時々だが、常時より銃弾が広がる時があるな。

 散弾などは元々ばらつきがあるものだが、偶然ではなく意図的な気配を感じる。

 ……数発に一発、わざと大きく広がるタイプの弾丸を使っているな?

 なるほど、確かにこれは削り殺しに来ている。

 

「楽しませてくれるじゃないかッ!」

 

 そうこなくては面白くない! 搦め手だろうがなんだろうが好きにしろ! その全てを私は正面から打ち砕いてみせる!

 

「ショルダーランチャー展開!」

 

 アダムズの肩に筒状の砲身が現れる。

 その筒からポンっと軽い音と共に球体が発射された。

 山なりの起動を描くそれのスピードは遅く、ISなら避けるのは簡単だ。

 それが普通の投擲物ならな。

 

「戦い方がいやらしぞッ!」

 

 逃げる先で爆発するのは手榴弾。

 細かな破片が広がり、移動する私の装甲に突き刺さる。

 二日目でアーリィーにやられた攻撃だ。

 そこからヒントを得たのだろう。

 肩の装備は急造品だな。

 筒の中に手榴弾のピンを引っ掛ける場所を作り、そこに拡張領域から手榴弾を出す。

 そしてバネか空気か、なにかしらの火気を供わない方法で打ち出す。

 小さな物をピンポイントの場所に出すのは意外と難しいのだが、アダムズはなんなくやってみせた。

 

 空を飛び地を駆け、ときには逃走方向にフェイントを入れるがアダムズの攻撃からは逃げられない。

 直撃こそないが時々当たる小さな銃弾、私が逃げる場所を先読みして投げられる手榴弾の破片。

 アダムズの作戦にまんまとハマってるな私は。

 ここは強引にでも前に出ないとやられるか……ではアダムズを動かす所から始めよう。

 

「まずはこれだッ!」

 

 ブレードをアダムズに向かって投げつけた。

 ISの力で投げられたブレードは空気を切り裂きながらアダムズに迫る。

 当たれば無傷ではすまない。

 避けるか、それとも撃ち落とすか――

 

「っ!?」

 

 アダムズの選択は撃ち落とす。

 散弾が集中しブレードの勢いがみるみる落ちていく。

 まぁそうなるよな。

 

「おかわりもあるぞッ!」

「二本目っ!?」

 

 一本目の後ろから二本目を投擲。

 それと同時に私自身はアダムズが上に飛ぶと読んで頭を押さえる為に動く。

 ブレードはアダムズを動かすための餌だ。

 

「くっ!」

 

 二本目は落とせないと判断したアダムズが上に飛ぶ。

 だがただ逃げるアダムズではない。

 置き土産をしっかりと置いて行った。

 空中に放り投げられる手榴弾。

 私が近付かない様にする為の壁だろう。

 それを気にせず瞬時加速を使用。

 ブレードの側面を盾代わりに金属片の雨の中を突き進む。

 これでアダムズの頭を押さえられる!

 

「見えてますよ?」

 

 アダムズの頭を押さえるつもりだったが、一瞬でアダムズは私の懐深く食い込んでいた。

 私にも見えたよアダムズ。

 

「私の瞬時加速に合わせたかっ!」

「正解です」

 

 息遣いを感じるほどの距離でアダムズが笑う。

 よくやるもんだ。

 止まるタイミングをミスれば私と激突。

 早すぎれば中途半端に距離を詰める事になり、私の間合いで戦う事になる。

 互いに密接してるのでブーレドを振るう事は出来ないが、それでも一歩分下がれば私は斬れる。

 絶妙な距離で止まるとは見事としか言えない。

 この密着状態でどう動くのかと言えば――

 

「この距離は私の距離です!」

「そう来るよな!」

 

 両手が塞がっているアダムズだが、銃器など一瞬で拡張領域にしまえる。

 ここで近接戦を挑むのは当然だ。

 

 距離を取る為に右ストレートを放つが、アダムズの拳が私の右腕を下から打ち上げる。

 胴体部分が完全にガラ空きになり、アダムズの肘が鳩尾に打ち込まれた。

 有名な動きだ、知ってるぞ。

 飛蘭と知り合ってから中国拳法を勉強したからな。

 八極拳……今の技は確か裡門頂肘だったか? 敵のパンチをアッパーで弾き、相手の胴体が空いたら肘を打ち込む。

 攻撃と防御同時に行える素晴らしい技だ。

 だがアダムズの素晴らしところはそれだけじゃない。

 私もアダムズも空を飛んでいる。

 だから距離を取ろうと後ろに飛んだり、逆に体当たりでアダムズを弾こうと前に出るんだが――

 

「私の動きを読んでるのかッ!?」

「訓練の賜物です!」

 

 アダムズとの距離が一向に変わらない。

 私がどんな動きをしようと、アダムズはピッタリと追随してくる。

 体当たりもスカされ、フェイントを入れても釣られない。

 先読みと言ってもレベルが高すぎる。

 思考のトレースだとしたら、正直言って束並みだ。

 いや、アダムズは元々人の真似が上手い。

 私の動きを真似て……確か心理学も学んでると言ってたな。

 私ならどう動くかを研究し、動作の所作を観察してる?

 ブレードをしまい両手を空ける。

 片手で防げるほど甘い相手ではないからな。

 

「イー、アル、サン、スー……ここです!」

 

 動きが変わった。

 今までの八極拳ではなく太極拳。

 飛蘭の動きか!

 こちらの拳が軽く流され、カウンターの裏拳が身体を打つ。

 一撃一撃の威力は低いが守りに関しては本当に優秀だな太極拳は!

 

「真意六合――」

 

 また変わるのか。

 真意六合拳なら動物の動きを取り入れた象形拳だろう。

 今度はなんだ? 虎か燕か、それとも蛇か。

 アダムズの手札を予測しろ!

 

「アーリィー・ジョセスターフ拳っ!」

「ごっ!?」

 

 今までにない強い拳が腹に突き刺さる。

 油断したッ! わざわざ口に出したのは私の思考を縛る為かッ!

 

「まずは腹に一撃、頭が下がったら――頭をタコ殴り!」

 

 アーリィーが教えた喧嘩の仕方を愚直に守るな!

 頭を下げたままではよろしくない。

 防ぐが逃げるか、それとも打ち返すか。

 アダムズは私の動きを予測してる。

 これまでの動きから、私の動きを相当研究してると見ていいだろう。

 だが残念だなアダムズ、私は動きを読んでくる相手とはやり慣れてるんだよ。

 束に比べたらまだまだだ!

 

「逃がしま――ガッ!?」

 

 アダムズが私に激突して動きが止まる。

 覚悟してた私はともかく、用意のないアダムズには痛かろう。

 私がやった事は単純だ。

 ほんの一瞬だけ瞬時加速を使った。

 そして追って来るアダムズは私が止まるタイミングを読み違えてぶつかったのだ。

 普段の私ならこんな戦法は取らない。

 だからこそ、こういった小手先の技が刺さる。

 

「くっ、まさかこんな手を……でも――っ!」

 

 アダムズが頭を振りながら両手を構える。

 私はその一瞬の隙が欲しかっんだよ

 

「ここだ」

 

 拡張領域から取り出した手錠を手首にはめる。

 

「これはっ!?」

「特注の手錠だ。一応言っておくが、その手錠は普通とは違う。右腕だけISを解除して抜け出そうとすると手首が斬り落とされるから注意しろ」

「……内側が鋭いですね。それにこれ、常に内側に閉じようと力がかかってます」

「そしてもう一つを私の腕に」

「あの、まさかこれって……」

 

 ゆらゆらと揺れる鎖を見つめるアダムズの顔が青くなる。

 アーリィーや飛蘭は真正面からきそうだが、お前は何かしらの搦め手を使うかもと思って水口さんらに頼んで用意したんだよ。

 この鎖も簡単に切れるものではない。

 諦めて私と楽しくやり合おうか。 

 

「チェーンデスマッチってやつだ。私も初めての経験なので少し興奮している」

「マジデスカ」

 

 まじだ。

 そんな訳で鎖をぐるんぐるんと――

 

「わ……わわっ」

 

 遠心力でアダムズを振り回す。

 飛べ!

 

「キャー!」

 

 まぁ投げる先は地面なんだがな。

 地面に叩き付けられたアダムズが可愛らしい悲鳴を上げた。

 だがダメージはそこまでじゃないだろう。

 

「この!」

 

 落ち着きを取り戻しつつあるアダムズが軽機関散弾銃を取り出し撃ってくる。 

 ならばこちらは鎖だ。

 鎖を引っ張りアダムズを引き寄せる。

 

「しまっ!?」

 

 まだ鎖を使うという行動が脳内にないらしいな。

 逃げようとブースターを噴かすが、残念ながら単純な力勝負では負ける気がしない。

 

「やっと一撃だ」

 

 間合いに飛び込んできたアダムズにブレードを振るう。

 軽機関散弾銃の砲身で防がれたか、砲身がひしゃげて使い物ならなくなったので良しとしよう。

 

「まだです!」

「甘い」

 

 アダムズの手から軽機関散弾銃が消え、代わりに普通のショットガンが握られる。

 それを速攻で叩き切る。

 

「ならっ!」

 

 アダムズが今度はアサルトライフルを構える。

 銃身が通常より長く、銃口の下にはナイフが取り付けられている。

 銃剣術……いや、銃器を使用した軍隊や警察で使用される近接格闘術……CQCか!

 

 アダムズの鋭い突きを回避。

 突き出した銃器をそのまま横に振ってきたので脇で押さえる。

 すぐさまアダムズが発砲。

 反動を利用して武器を押さえられるの防ぐ。

 鎖を手首で回しアダムズにまとわりつかせようとするが、それを察したアダムズは真下に瞬時加速。

 鎖で引っ張られ私の体勢が崩れる。

 地面に着地したアダムズはナイフが付いた銃身を真っ直ぐ私に向けたまま再度の瞬時加速。

 引くことなく私も瞬時加速を使用。

 迫ってくるナイフの先端にブレードを振り落とす。

 軍用ナイフと重厚なブレードの刃がぶつかり、結果ナイフが砕けた。

 競り勝った私はそのままアダムズに肉薄。

 アダムズは焦ることなく引き金を引いた。

 最小限の動きで直撃を回避、弾丸が肩をかすめて装甲を削る。

 手を伸ばしてアダムズの頭を掴む。

 そのままブースターを全開にしてアダムズの頭を地面に叩き付けた。 

 

「がっ!? この――ッ!」

「ちょっと散歩でもしようか」

 

 鎖をしっかりと握り直し、地面スレスレに浮いた状態で瞬時加速を使用。

 アダムズは起き上がる暇を与えず地面を引きずる。

 アリーナの壁の前で急停止、アダムズは慣性の法則に従って壁に激突した。

 身体を丸めて衝撃に耐えてるアダムズを鎖を引っ張って私の元に――

 

「くぉのっ!」

 

 手に刃の折れたアサルトライフルを握りしめ、引っ張られた勢いを利用して突撃してくる。

 まぁ刃が折れても使えるが、だがここでアダムズが気合だけで攻撃を仕掛けてくるか?

 それはないだろう。

 つまり――

 

「まだあるのか!」

 

 アダムズのアサルトライフルが消え、先ほど壊した軽機関散弾銃と同じ物が現れた。

 距離がある為ブレードは届かない。

 そう判断し射線から逃げるが、アダムズの狙いは私ではなかった。

 

「ふんっ!」

 

 鎖を思いきり踏み付け固定する。

 避けようと動いた私とアダムズの間にピンっと鎖が張られた。

 

「至近距離で連続して撃てばっ!」

 

 銃口は鎖に向けられ、金属と金属は激しくぶつかり火花を散らす。

 鎖は切られるだろう。

 だが銃口が地面を向いていて距離が近い。

 好機!

 

 瞬時加速を使用しアダムズに迫る。

 アダムズは後ろに下がる事無く、冷静に軽機関散弾銃で受け止めた。

 火力を失ってでもダメージを減らしたかったのだろう。

 壊れた軽機関散弾銃を放り投げ、切れた鎖を振り回しムチの様に私に向かって振るってきた。

 どう見ても使い慣れてる所作。

 

「まさかムチまで使えるのか!?」

 

 鎖のムチをブレードで弾き返しながらアダムズに問う。

 アダムズとの距離は二メールほどだ。

 なんとかこの距離は維持したい。

 

「屋内格闘を習ってますから! 家電の電源ケーブル、電気機材の配線、パーカーの紐に靴紐、これらの武器の扱いは兵士の基本です!」

 

 確かにそれらは比較的入手が簡単なものだ。

 戦場に身を置けば靴紐で人間の首を絞める事もあるだろう。

 だがお前はそんなキャラじゃないだろう!? なんで暗殺者みたいな技術を取得してるんだコイツ!?

 騙されてる感が酷いな。 

 

「そこぉ!」

 

 鎖がブレードに絡まる。

 ここからは力勝負に見せかけた読み合いだ。

 即ちどのタイミングで力を抜くかだ。

 たたらを踏んだ瞬間にやられる。

 ならばブレードなど瞬時に捨てろ!

 

「嘘っ!?」

 

 すぐさまブレードから手を放しアダムズに接近する。

 超至近距離ならアダムズが有利だ。

 だがボクシングの間合いとも言える殴り合いの距離なら私が有利!

 

「オラッ!」

「ガッ!? このっ!」

 

 アダムズは殴られながらも鎖を拳に巻いてバンテージの代わりにして殴り返してきた。

 この闘志! 気転! 素晴らしい!

 

「ぐっ! 良いパンチだ。だがいいのか? 純粋な殴り合いなら私が上だぞ?」

「あうっ! ただのジャブが重いとか反則ですよもう! ここで引いたらそのまま押し切られそうだから引けません!」

 

 気持ちが下がれば身体も下がる。

 そう簡単にアダムズの心を折ることは出来ないか。 

 機体のダメージはたいした事はない、だがISのエネルギーはかなり減っている。

 瞬時加速の多用と微ダメージの蓄積が効いてるな……ここでアダムズを仕留めなければ私は一気に不利になる。

 ここで決める!

 

「ひっ!」

 

 飛蘭の技を一部真似させてもらった。

 殺気を目の前のアダムズに叩き付ける。

 やはりそう簡単には慣れないらしくアダムズが硬直。

 実戦経験のなさがお前の弱点だ!

 

「もらった!」

 

 右手でアダムズの顔を掴み、左手で右腕を掴む。

 そのままブースター全開でアダムズの身体をアリーナの壁に叩き付けた。

 

「ッこの場所は!」

 

 背後に壁、正面に私。

 これで逃げ道は塞いだ。

 拡張領域にどんな武器を用意していようと、取り出し使わせる暇は与えん!

 

「負けませんっ!」

 

 逃げ道がないと悟ったアダムズはキッと私を睨み拳を胸の前に持ち上げた。

 ファイティングポーズ――まだまだ諦めてないと。

 ではお前の全てを見せてもらおうか!

 

 燕形拳の手刀が肩にめり込むが気にせず殴った。

 蛇形拳の指先が急所を狙ってくるが、装甲の上からなので無視して殴った。

 人体を破壊する拳法はIS戦では使う場面が難しい。

 適当に繰り出された技では効かないぞアダムズ!

 

「止まらないっ!?」

 

 太極拳の動き、私の拳を受け流そうとするが、頭が空いてたので頭突きで黙らせた。

 ボクシングのジャブ、鋭いパンチだが威力は低いので被弾覚悟でそのまま殴った。

 

「無言……で! ただひたすら殴る……と、か! 鬼ですかこの人!」

 

 無言が嫌なら笑顔をサービスしてやろう。

 ――ほら。

 

「あ……かっ!?」

 

 殺気をアダムズの顔に集中、顔面を殴られると勘違いして反射的に守って隙だらけなった腹に一撃くわえる。

 飛蘭がアーリィーに使っていた技だが、これは便利だな。 

 

「まだ……です!」

 

 苦しそうに呻きながらもアダムズの目に諦めはない。

 瞬時加速を使用し私に突進してきた。

 こんな近距離でぶつかれば双方大ダメージだ。

 私が避けたらこの場から逃げるのに成功、正面から受け止められても私にダメージを与えられる。

 悪くない作戦だとは思うが、私の精神を乱してからでないとその程度の攻撃は意味はないぞ。

 冷静にカウンターをアダムズの顔面に当てた。

 

「がっ!? ……あ……う……」

 

 拳が頬にめり込み、アダムズの動きが止まる。

 生身なら首の骨が折れてるほどのダメージだろう。

 

「っあぁぁぁぁ!」

 

 だがアダムズは折れない。

 叫び声を上げながら私に組み付く。

 

「死ねば諸共! です!」

 

 アダムズの肩の筒から手榴弾が放られた。

 手榴弾は私の顔の横を通り背後へ。

 ついでに両手にも手榴弾を持っている。

 まさか自分の手の中で爆発させるとは。

 自傷覚悟の攻撃だが、まだ甘い。

 

「ぐふっ!」

 

 腹に膝蹴り。

 アダムズの身体がくの字に曲がる。

 手榴弾が炸裂し、衝撃と金属片の刺さる音が聞こえた。

 行動を阻害する程度ではないのでダメージを無視しアダムズの顎にアッパーを決める。

 

「がっ!」

 

 アダムズはふらふらと後退りし、壁に背中を預けた。 

 

「……まだ、で……す」

 

 すでに視線が私に向いてるか分からない状態だが、アダムズの闘志はまだ消えない。 

 その手に持つのはゴーレム戦で見せた戦車砲。

 砲塔は地面に向けられている。

 

「ふぁい……あ」

 

 砲弾が私とアダムズの間の地面に着弾。

 視界が土で黒く染まり轟音が耳を犯す。

 とっさに取り出して盾にしたブレードは衝撃で真ん中から折れていた。

 

「これも……防ぎますか……」

 

 アダムズは爆風をもろに受けたようで、綺麗な朱色だった装甲が土で汚されていた。

 ISのエネルギーも底を突く寸前だろう。

 

「ここまでだな」

 

 アダムズの前まで歩き、折れたブレードを上に掲げる。

 

「まだ身体は動くんです」

「そうか」

「まだ戦う気持ちはあるんです」

「そうか」

「まだ銃弾だって残っているし、試してみたい戦術だってあるんです」

「そうか」

「でももう腕が上がらないんです。ISの戦いって本当に残酷ですよね。戦いたいのにISが動かなきゃそこまでだなんて……」

「そうだな……」

 

 アダムズは真っ直ぐな目で私を見ている。

 悔しいと、まだ上があるんだと、そんな感情で満ちていた。

 

「今日のところは私の勝ちだ」

「はい、私の負けです」

 

 爽やかに笑うアダムズの肩から胸にかけて袈裟斬りにする。

 それによってISのエネルギーは尽き、アダムズの体が私の方に倒れこんだ。

 

「良い戦いをありがとう」

 

 アダムズの体を正面から受け止め、私は初戦を突破した。




日本代表「チェーンデスマッチしようぜ!」
アメリカ代表「削り殺す!」

それぞれが試合に持ち込んだもの。

日本代表→IS用大型ブレード×6、チェーンデスマッチ用の鎖
アメリカ代表→IS用軽機関散弾銃×2、IS用大型ショットガン×2、ナイフ付き突撃銃×1、散弾×5000、手榴弾×30etc.

女子力どこ? ここ? 



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