俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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スポーツ系のアニメ見ると罪悪感が凄いよね。
ウマ娘二期13話を見て、怠惰に生きててすみません、全力出さす楽な選択肢ばかり選んですみませんって気持ちになる。
クーラーの効いた部屋でソシャゲしながら見るものじゃないわ。



モンド・グロッソ最終日 小休止

「ただいま戻りました」

 

 異様にテンションが上がっていたエラはイギリスのスタッフに引き渡し、私は水口さんたちの前に帰ってきた。

 技術スタッフの面々は目をギラつかせ、私に飛び掛かる寸前である。

 

「随分と無茶したようですね~?」

「えぇまぁ、彼女は強敵でしたから」

「戦いは門外漢なので小言は言いません~。こちらが言うのは一つ……脱げ」

「了解です」

 

 目が据わってる相手には逆らわない。

 それが自分より小さい相手だとしてもだ。

 ISを鎮座させると、スタッフがわらわらと集まる。

 

「脇腹――ダメです! 関節部分もダメージ大! 取り換えが必要です!」

「脚部は――弾丸が数発埋まってますが応急処置だけでいけそうです!」

「次の試合まで完璧にしますよ~。皆さんテキパキ動いてくださいね~」

「「「は~い!!」」」

 

 楽しそうだな。

 誰かがイキイキと働く姿は見てる方も楽しくなる。

 

「織斑さん、上着を脱いでこちらに」

「はい」

 

 専属スタッフの二人に腕を引かれ、私は薄着の状態で座らさせる。

 

「アイシングとテーピングをします」

「お願いします」

 

 外れた関節を自分で無理矢理ハメたからか、肩が熱を持っている。

 二人は手慣れた様子で患部を冷やし包帯を巻く。

 こんな技能も持ってるとは意外だ。

 

「腕は吊るす形でよろしいですか? 短時間でも休ませた方が良いと思いますので」

「それでお願いします」

 

 骨折した時と同じように腕を吊るす。

 次の試合までの僅かな時間だが、それでもやらないよりはいいだろう。

 

「お邪魔していいサ?」

「ん?」

 

 声の方に視線をやるとアーリィーとアダムズが居た。

 

「どうした? 敵情視察か?」

「んな馬鹿ことしないサ。ただの昼食のお誘いサ」

 

 昼食……そうか、もうそんな時間か。

 断る理由はないな。

 

「一緒しよう。すみませんが用意してもらったものを包んでもらっでも?」

「すぐにご用意します」

「急にお邪魔してすみません」

「気にするな。私も丁度食事するところだったしな」

 

 まとめられた料理を持ち食堂に向かう。

 流石にこの場で集まって食事はできないからな。

 

「なぁ千冬」

 

 ちょいちょいと肩を指で叩かれる。

 今度はどうした。

 

「あれ」

 

 後ろ? んー、なにか走ってくるな。

 

「凄く見覚えある人です」

「だな」

 

 金色の髪を揺らしながらこちらに向かって走ってくる人物。

 さっきまで私と戦ってた相手である。

 

「千冬様~!」

 

 個人的には手加減なしで打ちのめしたはずなんだがな?

 キラキラ笑顔でまるで疲れを感じさせないフォームで走ってくる。

 

「探しましたわよ!」

 

 前の前でキュッと止まったエラが詰め寄ってくる。

 顔が近いから離れて欲しい。

 と思ったら首がギュルと回ってアーリィーとアダムズの方を向いた。

 

「お礼を言おうとそちらのブースに向かいましたらお食事に向かったと言うではありませんか! お二人とも何故わたくしを誘ってくれませんの!?」

「試合に負けた相手を誘うほど鬼畜じゃないサ」

「アメリカ代表は居るじゃありませんの!」

「トリーシャは意外とメンタルが強いから問題ないサ」

「わたくしもメンタルは強いですわ!」

「……うん、ソウダネ」

 

 あ、アーリィーが折れた。

 まぁ今のエラ相手なら無理もない。

 

「荷物はわたくしが持ちますわ!」

「いや大丈……頼む」

 

 返事をする前にお弁当は取られてしまった。

 早いな。

 拳だったら確実に一撃もらっていた。

 

「ケガは大丈夫なんですか?」

「問題ありませんわ。貴女の方こそ大丈夫ですの?」

「骨なんかには異常はありませんでしたから。動くのに問題ありません」

「二人とも羨ましいサ。あ~あ、早く千冬とやり合いたいサ」

「勝ち残れそうなんですか?」

「今の所はいけそうサ。準決勝の相手は恐らくカナダ代表になると思うけど、アーリィーが勝つサ」

「自信があってなによりですわ。こちらは今から中国とドイツの試合が始まりますが……千冬様はどちらが勝つと思いますか?」

「ドイツ代表は全体的に高レベルでバランスが良い。肉体のスペック面だけ見ればドイツだなだが、私は飛蘭が勝つと思う」

 

 飛蘭は引き出しが多いし、戦いというものよく理解している。

 中国暗部の人間である彼女はそう簡単に負けないだろう。

 

「飛蘭ならきっと勝つサ。なにせ次の相手が千冬、何が何でも勝ちに行くはずサ」

「その飛蘭さんの試合なのにご飯食べてていいんですかね?」

「友の試合観戦より自分の為の栄養補給サ。別に二人は応援に行ってもいいサ」

「初戦負けで居づらいので一緒に居させてください」

「千冬様との食事は全てにおいて優先されますの」

 

 こうして食事をしている私が言う事でもないが、応援しに行ってもいいのでは?

 いやまぁ私たちはライバルでもあるので、そういった慣れ合いは賛否があるだろうが。

 

「ん、空いてて場所は選び放題サ」

「食事のタイミングが各国それぞれでズレてるからですね」

「丁度四人席が空いてますわね。あちらにしましょう」

 

 私がテーブルに持ち込んだお弁当を並べてる間に三人はそれぞれ食事を取りに行く。

 三人が持って来たのは……肉、肉、デザート。

 

「お待たせしました」

 

 エラのは山盛りミートパスタ。

 肉がゴロゴロと乗っている。

 

「空いてるから受け取りも早くていいですね」

 

 アダムズのはスペアリブか?

 骨付き肉の存在感が凄い。

 

「好きなケーキが置いてあってラッキーだったサ」

 

 そしてアーリィーの皿にはケーキが並べられている。

 糖分の摂取は分かるが、取り過ぎだろうに。

 

「それにしても千冬は最後なんであんな事したサ?」

「ん? エラを抱えて飛んだ事か?」

「そうサ」

「それはもちろん千冬様の中でわたくしへの愛が――」

「上からファンサービスをするように指示されていてな。手を振ったりとかガラじゃなかったのでエラに協力してもらう形にした」

「愛が……」

 

 わざわざ立ち上がって力説するな。

 分かったから座れ。

 どうしよう……どんどん束臭が……

 いや気のせいだよな。

 イギリスのお嬢様があの残念極まる馬鹿と同じはずがない。

 

「しかしトリーシャもエラも不甲斐ないサ。二戦こなしたのに千冬はピンピンしてるサ」

「戦ってないからそう言えるのですわ。もし対戦相手が貴女だったら関節を取った時点でわたくしが勝ってましわ」

「そうですね。アーリィーさんならハチの巣に出来たと思います」

「わお、絶対零度の視線が痛いサ」

 

 珍しくアダムズまでもがアーリィーを睨む。 

 私が軽傷なのは運が良かった面もあるな。

 

「とろこで千冬様、その腕では食べにくいのでは? よろしければわたくしが――」

「いや大丈夫だから気にするな」

 

 気持ちはありがたいが、これ以上はマズい気がする。

 神一郎がそばに居るとはいえ、更に束の感情を逆なでする行為をすれば……神一郎の命がなくなるかもしれないな。

 

「ならアーリィーが食べさせてあげるサ。こう見ても箸の使い方は完璧サ」

 

 おっと、いやらしい笑顔でもう一人参戦してきたぞ。

 どういう腹積もりだ。

 

「あ、なら私が――」

 

 そして恥ずかしながらもう残りの一人も参戦だ。

 いったいどうした?

 

「まぁまぁ落ち着くサ二人とも」

「あ、おい」

 

 アーリィーに箸を奪われる。

 二人に見せつけるように箸をカチカチと鳴らす様は、なるほど確かに使い慣れてる感がある。

 で、返して欲しいんだが?

 

「お渡しなさい。それは貴女が持っていてよい物ではありませんわ」

「お願いですアーリィーさん、その箸を渡してください」

 

 なぜそこまで私の箸に執着するんだか。

 悪ノリにしてもアダムズが乗るのは珍しいし、なにかあるのか?

 

「千冬は知ってるサ? 実は織斑千冬にちょっかいを出すと篠ノ之博士が現れるという噂があるのサ」

 

 あぁ、うん、嫌な噂だな。

 

「で、それがどうした? そんな噂を信じてるのか?」

「信じるかどうか人それぞれサ。だけど、つい最近になってその噂を試したい人間が急に増えたのサ。具体的に言うと、篠ノ之博士がモンド・グロッソ実行委員会を拉致って国を単独で落とした動画を見せた頃からサ」

 

 あ れ か!

 あの馬鹿のせいで各国の警戒が高まってるんだな!?

 一部の人間が束を危険視した為、私にちょっかいを出して束を誘い出し、捕まえるなりなんりしたいと。

 そういった動きがあるのか。

 

「わたくしにそんな邪な狙いはありませんわ! 純粋に千冬様のお役に立ちたいだけです!」

「そ、そうか。気持ちだけ受け取っておく」

「……普通に邪な気配を感じるのは私だけサ?」

 

 言うな。

 正直言って私も少し感じている。

 で、アダムズは――

 

「あ、あたしもそうですよー」

 

 凄い勢いで目が泳いでる。

 そうかそうか、らしくないと思ったが、お前は束狙いか。

 ……死ぬぞ?

 

「そんな目で見ないでくださいっ! 一回戦負けで肩身が狭いので逆らえないんですぅー!」

「色々苦労してるようだな」

「そうなんですよ! 仮に篠ノ之博士が現れても、良くて半殺し! 万が一があっても織斑さんが守ってくれるから平気だとか言うんですよ! だから機会があったら織斑さんにちょっかい出せって……雇われ兵士の負け犬に拒否権はないんですっ!」

 

 何故か申し訳ない気持ちになるので泣かないでくれるか?

 しかし束を誘い出す為に私にか――

 

「の割には周囲は大人しいな。特別ちょっかいを出されたりとかされてないし」

 

 暗殺者は来たけどな。

 

「安全性が保障されてないからサ。トリーシャは特別なのサ。仮に篠ノ之博士を怒らせても、千冬と友好があるから、いざとなったら千冬経由で篠ノ之博士を止められると考えてるのサ」

「上司から『お前なら大丈夫』と言われました……」

「それは少し無謀じゃないか?」

 

 もしアダムズが束に襲われたらその時は助けるかもしれないが、束なら私に気付かれないように襲う可能性があるぞ?

 

「一応はやったという報告が出来れば問題なんです。ですから――」

「断る」

 

 そんな期待に満ちた目で私は見るな。

 あーんとか嫌だぞ私は。

 

「ぶっちゃけ千冬的に噂の信憑性はどんな感じサ?」

「ある訳ないだろ。むしろその程度で束が現れるなら私は喜んで協力する」

 

 実際は束が現れそうで怖いけどな!

 止めようとしてボロボロになった神一郎を引きずりながら登場する姿が目に浮かぶ。

 

「そうなんですか? 篠ノ之博士は織斑さんに執着してるって聞きましたけど」

「アメリカはそう考えてるのか? 間違いではないが、どちらかと言うとライバルみたいなものだな。束を殺すのは私だと思ってるし、束も織斑千冬を殺すのは自分だと思っているだろう」

「……殺伐とした友情ですね」

 

 そうだな、殺伐とした友情だ。

 油断すると本気で貞操を狙ってくるから、こちらも殺す気で迎撃するくらいの友情だな。

 

「では問題ないですわね。やはりわたくしが――」

「いやいや、ここはアーリィーが――」

「今頃はフェイさんが戦ってるのにこんなにのんびりししていいのでしょうか? あ、篠ノ之博士が現れないなら私は辞退しますねー」

 

 まぁ殺伐とした食事よりはマシじゃないか?

 騒がしい食事も悪くないさ。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 隣が怖い。

 本気で隣が怖い。

 なんかもう逃げ出したいくらい怖い。

 

「――――」

 

 横を見ると目を見開いて固まってる束さんが居る。

 ゆっくりと……ダメだ。

 グダグダしてたら正気に戻るかもしれない。

 ここは呆然としてる隙に全力ダッシュだ!

 

 

 ダダダダダダッ(部屋の出口にダッシュ)

 ――ッダダダダ(後ろから聞こえる死神の足音)

 

 気取られたかッ!

 だがもう少し! 出口まで――

 

 ガッ!(脇腹にくらうタックル)

 

 あ、

 

 ズササササッ――(もつれ合いながら床を滑る)

 

 いたたたたっ! 肌が摩擦で焼ける!

 もう全身火傷と打撲で泣きそうだよ!

 

「なんで逃げるの~?」

「ひぃ!?」

 

 のっぺりとした顔が俺を覗き込む。

 これ理性残ってるの?

 

「傷心の女の子を放置するなんて酷いよ……し~くぅ~ん?」

 

 ほんと織斑千冬許すまじ。

 もう束さんを野に放ってもいいのでは? 

 モンド・グロッソが中止になっても、千冬さんの写真で儲けたし……

 

「私の相手をしないと口座のお金を全て消す」

「それもう脅迫じゃん! え? なに? お外で暴れる選択肢はないの!?」

「……ちーちゃんの晴れ舞台を邪魔したくない」

「微妙に冷静な部分が残ってるやがる!?」

 

 冷静に脅してくるとか一番たち悪い状態じゃないですかヤダー。

 もう千冬さん襲ってこいよ。

 それでハチミツべとべとの百合の花咲かせて来いよ。

 

「ほら立って立って」

 

 やだ小生寝てたい。

 ダメ? ダメですかはい。

 

「これからどうしようか?」

 

 俺を無理矢理立たせた束さんが笑顔で問い掛けてくる。

 そうですね……

 

「お昼ご飯とか?」

「もうしー君てば、理解してるのにお馬鹿なフリはメっだぞ?」

 

 理解してるってなにを?

 自分の運命?

 

「選択肢その一」

 

 なんか始まったんだが。

 俺の運命を決めるのは束さんですか。

 束さんマジ女神。

 ……お茶らけてみても身体の震えが止まらんです。

 

「しー君の両手を鎖で縛り天井から吊るします」

 

 お? エロティックなら全然アリですよ?

 むしろバッチ来い!

 

「その状態で下剤を投入」

 

 はい“ティック”が死にました。

 でもまだエロがある!

 

「んでひたすら腹パン。泣こうが喚こうが最後まで攻めます」

 

 セー……セー……アウトだよちくしょう!

 流石に受け入れられない! 精神的に死ぬわ!

 

「他の選択肢をお願いします」

「そう? じゃその二ね」

 

 まったく残念そうな顔じゃないのが怖い。

 こりゃその二も期待できないな。

 

「しー君の血管に太めの注射針を刺します」

 

 はい、もう死神が背後でサムズアップしてます。

 

「それでね、しー君の心臓が脈打つたびに血がぴゅぴゅって飛び出るの」

 

 最後のセリフだけ録音したいなー。

 それだけ記憶に残してそれ以外は全て忘れたいなー。

 

「そんなしー君を抱きしめて徐々に冷たくなる体を感じたい!」

「デットorデットじゃねーか!」

 

 精神的な死か肉体的な死の二択とか救いがなさすぎ!

 どっちも選べません。

 

「へ? どうせ寂しい死に方するんだし、私の胸の中で死ねるなら幸せでしょ?」

「……そんな訳ないし」

 

 一瞬アリだと思った自分が怖い!

 童貞力が高すぎるんや。

 

「にゃふふ、冷たくなるしー君の体をギュっと抱きしめて温めてあげるよー?」

 

 やめて、両手を広げて誘わないで。

 双丘に飛び込みたくなるから!

 でもその対価が血を流しながらの出血死は重い!

 

「お断りします」

「チッ」

 

 可愛くない舌打ち。

 食虫植物め。

 

「ならば第三の選択肢を与えよう」

 

 まだ地獄が続くというのか。

 

「私を甘やかせ」

「……はい?」

「全力をもって甘やかせ!」

 

 この人はなにを言ってるのだろう?

 嬉々として俺にボールをぶつけておいて甘やかせ?

 正気を疑うよ。

 まぁボールをぶつけられたのは、俺が束さんの写真(微エロ)を持ってるのは悪いんだけどね。

 

「しー君が戸惑うのも分かるよ。だからちゃんと説明してあげる」

 

 ちゃんとした理由があると?

 

「正直、今の私はいっぱいいっぱいです」

「はぁ」

「無性に暴れたい黒い感情が渦巻いてるけど、心のままに暴れたらしー君を殺す可能性があると自覚してます」

「やな自覚だな」

「だけど我慢も無理そうなのです。だから――」

 

 頭を両手でガシッと掴まれる。

 真正面に束さんの顔。

 目が爛々としてますな。

 しかも綺麗な瞳じゃなくて暗闇で獲物を狙う肉食獣のそれだ。

 

「甘やかして~っ!」

「おぶっ」

「甘やかして慰めて優しくして慰めて~っ! 私の心は傷付いてるの~っ!」

「ちょっ、やめ、酔う……」

 

 頭をシェイクしないでほしい。

 揺さぶらるたびに束さんの唇が近付くでドキドキしますね。

 もうこのまま一生近くで見てるだけの人生でいたい。

 ……ダメだよね。

 冗談はさておき、ストレスの発散方法は人それぞれだ。

 暴食、カラオケ、買い物、そして……キャバクラ。

 優しく癒されたい、それはストレスを感じる人間にとって当然の欲求だ。

 だがしかし! この俺はそう簡単に甘やかす人間ではない!

 

「やってやりましょう! ならばまずはそこに大の字で横になれ!」

「そいや!」

「そして手足を動かしながら今の気持ちを大声で叫ぶ!」

 

 身体を動かしながら大声を出す。

 ストレス発散の基礎だ!

 

「羨ましい羨ましい羨ましい~っ! 私だってちーちゃんに抱っこされたい! お姫様になりた~いっ!」

 

 じたばた

 

「ズルいズルいズルい~っ! 色々我慢してるのに私にご褒美ないのズルい~っ!」

 

 どたばた

 

 知能指数が下がった束さんは可愛い(ほっこり)

 さて、後は食と愛だな。

 

「その状態を暫く維持!」

「ちくしょうちくしょうちくしょう~っ!」

 

 束さんを一時放置で自室にダッシュ。

 部屋の匂いは……うん、だいぶ薄まってるな。

 潜水艦だけあって空調が効いてるから脱臭が早い。

 タンスを開けビニールに入れてあったタオルを取り出す。

 千冬さんの汗をたっぷり吸いこんだ一級品ですぜこれか。

 抱き枕に入れたタオルとは鮮度が違いますから!

 さらに冷蔵庫からケーキ、戸棚から菓子数種を持ち出す。

 それも持って来た道を戻る。

 

「戻りました!」

「ぐしゅ、ひもじいよぉ……さびしいよぉ……」

 

 なんか束さんが萎びておる。

 騒いで暴れてお腹が減って落ち着いた頃合いかな?

 イイ感じに力が抜けたところで次だ。

 正座して膝にタオルを掛ける。

 

「ほらおいで」

 

 膝をポンポン叩いて束さんを呼ぶ。

 ひくひくと鼻が動いた。

 目に力が戻ったかと思うと、凄い勢いで膝に頭を乗せてきた。

 床を高速で動いたよこいつ。

 

「ちーちゃんの匂いだ~!」

 

 タオルにぐりぐりと顔を擦り付ける。

 それイコール俺の膝にぐりぐりしてるのだ。

 いいぞ~これ。

 

「はい、あ~ん」

「あーむ」

 

 チョコスティックを束さんのお口にイン。

 よ~しよしよし。

 頭を撫でり。

 

「ごろごろ」

 

 千冬さんの匂いに包まれてる現在、束さんの機嫌は絶好調です。

 ほらほら次はケーキだよー。

 男が可愛いお姉さんにあーんしてもらうのは有料だけど、逆はただなのだ。

 むしろご褒美です。

 

 お、千冬さんが移動してる。

 このスクリーン消した方がいいか?

 万が一変な映像が流れたらせっかく持ち直した束さんの機嫌が……って消し方がわからん!

 うーん、どうしようかね?

 取り巻き連れて歩く千冬さんの動画をどうすれば消せるかね!?

 あんにゃろ性懲りもなく百合ハーレム作りやがって!

 

 ギリギリギリ

 

 めっちゃ歯軋りしてるー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無言で表情消して黙るのやめてくれないッ!?」

 

 いやこえーよ。

 人の膝の上で死んだ目で一点見つめないで欲しい。

 

「ちーちゃんがご飯してる」

「はいケーキ」

「むぐっ」

 

 取り敢えず呪詛をまき散らすお口にケーキを突っ込む。

 

「ちーちゃんが楽しそうにしてる」

「おかわりもあるぞ」

「んぐっ」

 

 口が開くと怖いのでひたすらお菓子を食べさせる。

 よしよし、静かにおやつ食べましょうねー。

 

『上からファンサービスをするように指示されていてな。手を振ったりとかガラじゃなかったのでエラに協力してもらう形にした』

 

 ガリッ!

 

 ん? 束さんの口からフォークが抜けないんだが?

 

「フォーク離してくれません? ……聞いてる?」

 

 ガリッ! ガリリッ――

 

「ぺっ」

 

 カランと音を立てて三又の金属が床を滑る。

 

「ちょっと日本政府壊してくる」

「概念破壊はやめて!?」

 

 起き上がろうとする頭を無理矢理押さえつける。

 千冬さんの匂いで正気に戻れオラッ!」

 

「ふー! ふー!」

 

 太ももに熱い息が当たる。

 それでも全然嬉しくない。

 唸ってる猛犬の吐息が当たってるに等しいもの。

 

「うぐぐぐっ」

 

 なにやら我慢してるのは足をバタつかせながら唸る。

 可愛いかよ。

 これは今日一日の拷問も許せますわ。

 

「大人しく我慢しましょうね。モンド・グロッソが終わってから千冬さんに遊んでもらいましょう」

「……うん」

 

 これでモンド・グロッソ終了後は千冬さんに全てを投げても許されるな。

 覚悟しろよ織斑千冬。

 モンド・グロッソが終わった後は束さんをけしかけてやるからな!




モンド・グロッソ本番

中国代表「千冬サンと戦うのはアタシだぁ!(熱戦中)」


モンド・グロッソ控室

日本&イタリア&アメリカ&イギリス代表

「「「「みんなでご飯楽しい!」」」」


モンド・グロッソ裏

た「心の闇が溢れそう。死ぬか甘やかすか選べ」
し「甘える束さんは可愛いけど、それはそうと千冬さんは許さない!」

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