俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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白騎士事件の開始です。

「ちーちゃん、どこか不具合とかあるかな?」

「ふむ」

 

 ISを展開し、ギュギュっと手を握り感触を確かめる千冬さん。

 

「大丈夫だ。問題ない」

「ふっふっふっ、それじゃあ準備は良いかな二人共?」

 

 束さんはさっきからニコニコしっぱなしだ。逆に千冬さんは随分落ち着いている。白い装甲に顔を隠すバイザーをつけて静かに立っている。その様はまさに騎士。うん、格好良いな。

 

「待ってください。千冬さん、ちょっと、ポーズお願いします」

「お前は何をしている?」

「記念写真です。ん~騎士と言ったらお姫様抱っこですよね。束さん姫役お願いします」

 

 ケータイを構えながら指示をだす。

 

「えっ!? ちーちゃんと写真!? やるやる~」

 

 千冬さんに向かって、ぴよ~んと飛び付く束さん。

 流石にISを展開した腕で殴るのはマズイと思ったのか、千冬さんは苦々しい顔で抱きつかれた。

 首にぶら下がってるだけだから、お姫様抱っことは言えないが、まぁいいか。

 

「目線おねがいしま~す(パシャ)」

 

 片方はしかめっ面、片方は満面の笑み、この二人は本当に対照的だね。ただ――

 

「これからテロ行為をする人達には見えませんね」

「それを言うな」

「さーて、今度こそ良いかな? ポチッとな」

 

 千冬さんから離れた束さんがパソコンのキーボードを押す。

 早い、早すぎるよ束さん。今こっちの二人はおしゃべりしてたよね? どんだけミサイル撃ちたいんだよ。

 今頃、基地の皆さんは阿鼻叫喚だろうな。鳴り止まない電話、飛び交う怒号、責任問題、うっ胃が。

  

「では行ってくる」

 

 天井が開き青空が見える。

 まるでコンビニにでも行くかのような気軽さで千冬さんは出撃した。

 

「「いってらっしゃ~い」」

 

 それを二人で手を振って見送る。

 

「しー君、こっちでちーちゃんの活躍を一緒に見よーぜ」

「これは千冬さん視点の映像ですか? 良い絵ですね」

 

 画面一杯に広がる青空に白い雲。

 いいなぁ。俺も早くISが欲しい。

 

「ちーちゃん、聞こえてるかな?」

『聞こえている』

「手はず通りまずは西に向かってね」

『了解だ』

「世界よ、私とちーちゃんとISの力を思い知るがいい!」

 

 どこぞのラスボスの様なセリフを吐く束さん。本当にノリノリだな。

 さてと、大人しく見学するか。

 

 

 

 

「ちーちゃん次はそこから北に150キロ地点にミサイル135発」

『あと三分で到着する』

「よろしく~、おっと、生意気にも束さんからミサイルの制御を取り返す気かな? その程度で束さんに挑もうとは片腹痛いんだよ~」

 

 千冬さんに指示を出しながらキーボードをカタカタと打ち込む束さん。

 画面では白騎士がミサイルを切り払って無双している。

 さっきからこの繰り返しだ。まるで出来のいい映画を見ているかのような気分になる。でもこれ現実なんだよね。

 

「しー君さ、さっきからつまんなそうだよね?」

 

 心の内が顔に出ていたのか束さんが訪ねてきた。

 別につまらない訳じゃないんだけどな。

 

「つまらないって訳じゃないですよ。ん~なんて言えばいいのかな? 勿体無い?」

「“もったいない?” なにが?」

「ISの使い方……ですかね。あんなミサイルを追いかけ回すより、海に飛び込んでマグロの群れでも追いかけた方が面白そうじゃないですか?」

 

 俺の返事が意外だったのか、束さんは手を止めてクスクス笑っている。

 

「確かにそっちの方が面白そうだね。それで夜はマグロパーティーでもする?」

「良いですね。解体は千冬さんにお願いして、一夏と箒と俺で料理して、束さんは……あれ? 出番なくね?」

「束さんだって料理くらいできるよ!」

「それじゃあ料理対決でもしますか。束さん製ダークマターは千冬さんに処理してもらいましょう」

「しー君、束さんを料理できないキャラだと思ってない?」

「料理した事あるんですか?」

「ないよ?」

 

 それはメシマズフラグだよ束さん。

 

『束、終わったぞ』

 

 束さんと話しているうちに、千冬さんは全てのミサイルを撃ち落としたらしい。

 

「お疲れ様だよちーちゃん。んふ、お偉いさん達はどこもかしこも白騎士と軍施設へのハッキングの話題で持ちきりだよ~」

『その結果がアレか?』

 

 千冬さんを通して見る空には飛行機らしき物が見える。

 

「“某国の戦闘機っぽい正体不明の戦闘機”だね。目的は白騎士だよ。流石ちーちゃんモテモテだね」

『IS目的か、アレはほっといていいんだな?』

「ちーちゃん目的の奴らなんて落としちゃっていいよ?」

『このまま帰ってもいいが、白騎士を探して日本上空をウロウロされても邪魔だな。飛行不能にしてから戻る』

「ちーちゃんは優しいね。了解だよ。早く帰って来てね~」

 

 白騎士事件はこれで終了か。

 

「さて、俺は先に帰りますね」

「ちーちゃんが戻って来るまで待たないの?」

「俺が居ても邪魔でしょうし、束さんもこれから忙しいでしょ? 今回の騒ぎが落ち着いたら連絡ください」

「落ち着いたらしー君の体を調べたいしね。わかったよ」

「調べるのは構いませんが、手加減してくだいね? それと……色々頑張ってください」

「ふぇ? うん、がんばるよ?」

 

 何に対して応援してるのか理解してないっぽいな。でも口で言ってもしょうがない。とりあえず後で一夏に連絡しとくか。

 せめて俺みたいなダメ人間じゃない、ちゃんとした味方が現れる事を祈ってますよ束さん。

 

 

◇◇ ◇◇

 

 

 早いもので白騎士事件と呼ばれた出来事から一週間たった。

 事件の夜にはテレビに束さんが出ていた。そこで改めてISを発表、ISを認めなかった学者共を小馬鹿にし世間を沸かせた。その一方、篠ノ之家には連日テレビ局と野次馬が群がり箒は学校を休んでいた。

 しかし、今日になってやっと政府の介入が入り神社周辺からテレビ局が消え、野次馬は警察に注意され渋々離れて行った。そんなある日。

 

「お待たせしました。千冬さんからの呼び出しとは珍しいですね」

 

 俺は千冬さんに呼び出されて篠ノ之神社に来ていた。

 

「わざわざすまないな。実は柳韻先生から連絡があった。束が帰って来ているらしいんだが、どうも様子がおかしいみたいでな。箒の呼び掛けにも答えず部屋に引きこもってるようだ」 

「箒を無視するのは信じられないですね。それで様子を見に行こうと?」

「あぁ、お前の力が必要になるかもしれん」

「何が出来るかわかりませんが。了解です」

 

 二人で境内の家に向かいチャイムを押す。

 

『はい、篠ノ之です』

 

 インターホンに出たのは箒だった。ここ数日何人もの人が訪ねて来たのだろう、声は小さくどこか怯えている様だった。

 

「箒? 神一郎だけど開けてもらっていいかな? 千冬さんも一緒にいるよ」

『神一郎さん!? 今開けます』

 

 鍵が開く音が聞こえ、玄関から箒が出てきた。

 

「千冬さん、神一郎さんお久しぶりです。今日は姉さんに御用ですか?」

「うん、千冬さんと様子を見に来たよ。大変だったみたいだね。箒は大丈夫?」

「今は外出してますが、家に来た人の対応はお父さんがやってくれました。電話は全部雪子さんが出てくれましたし……私なんて全然役に立たなくて……」

「箒はまだ子供なんだから無理して大人の会話に混ざらなくてもいいんだよ。箒の仕事は別にあるよ――はいお土産。柳韻先生と雪子さんが帰ってきたら、お茶とお菓子を出してあげて」

「はい。ありがとうございます」

 

 箒を残して外出か、国のお偉いさんとでも会っているんだろうか?

 

「それで、束さんは部屋にいるのかな?」

「はい、昨日帰って来たのですが、いくら話しかけても部屋から出て来てくれなくて……私、姉さんに嫌われてしまったのでしょうか……」

「束さんが箒を嫌うなんてありえないよ。ね? 千冬さん」

「そうだな。あいつがお前を嫌うなど決してない。多方疲れて寝ているだけだろう」

 

 千冬さんがそう言って優しい顔をする。

 一夏以外にもそんな顔するんですね。

 

「千冬さん、ありがとうございます」

「何がだ?」

「一夏の事です。最近、毎晩電話をくれるのですが」

「それは神一郎の差金だ」

「そうだったんですか。神一郎さんありがとうございます」

「箒も疲れてると思ってね。好きな人とお話すれば少しは気も落ち着くでしょ?」

「はい」

 

 嬉しそうに微笑む箒、うんうん、一夏に毎晩の電話するように言っておいて良かった。電話料金代わりに干物詰め合わせを渡したかいがあったな。一夏も箒が心配だったらしくあっさり了承してくれし。

 

 箒を残し二人で束さんの部屋に移動する。

 

「束、入るぞ」

 

 ノックもせずにドアを開けようとする千冬さん。

 しかし、鍵がかかってるらしく、ドアはガタガタッと動くが開く気配はない。

 

「束、開けろ」

 

 千冬さんが呼びかけるもさっきから束さんの反応がない。

 本当に部屋に居るんだろうか? あまりの無反応ぶりにそう思っていたら。

 

「ちっ」

 

 舌打ちと共に、ドンッ! と何かを破壊する音が隣から聞こえた。

 なんて事はない、千冬さんがドアに向かってヤクザキックをかましただけだ。

 そのまま部屋に入る千冬さん、大きな音にビックリしたんだろう、箒の心配そうな声が聞こえる。それに大丈夫だよと答え自分も束さんの部屋に入る。

 

「千冬さん、流石に今のはどうかと思います」

「居留守する方が悪い。お前もそう思うだろ? 束」

 

 部屋には灯りが点いてなく、窓からの光も真っ黒なカーテンで遮光されいた。

 パチッと灯りが点く、千冬さんが壁のスイッチを入れた。

 改めて部屋を見回して絶句した。並んで置いてあったモニターは全て画面が割られ、あちらこちらに何かの機械であっただろう物が粉々になって床に転がっていた。部屋の中は破壊尽くされていたのだ。

 

 そして、その破壊を行ったであろう本人は体育座りで壁に寄りかかりっていた。

 

「こんにちは、ちーちゃん、しー君」

 

 髪はボサボサ、目の下ににクマを作り、悲しげに笑っている束さん。

 茶化す雰囲気でないのは百も承知だが、紳士としては見逃せない。

 

「とりあえずスカートでその座り方は止めましょう。パンツが丸見えです」

 

 自分の部屋だからか油断してたのか、外見を気にする余裕が無いのか分からないが、スカートが大きく捲れ、白い太ももと白いパンツが丸見えでしたご馳走様です。


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