俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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前回までのあらすじ

た「あばばー(五徹目)」
し「あひゃひゃー(三徹目)」
ち「帰りたい(10連勤目)」


ブリュンヒルデな休日

 

 自分でも非常に珍しい事だが、私は一歩を踏み出踏み出す勇気を持てないでいる。

 素直に言えば怖気づいているのだ。

 

「んー、でもまだ束さんの魅力を100%発揮できてないかな。いい? 束さんは天災モードやお姉ちゃんモードなど多くの魅力あるキャラを持ってるけど、一番はおバカ可愛いモードなんだよ。だからさ……もっと全力で脳細胞を殺せ! 今ここでは誰も束さんの頭脳なんて求めてないんだよ!!」

「完璧過ぎて隙がないのが私の欠点だね。脳……死……たばねはてんしッス~!」

 

 この同じ空気を吸うだけで頭痛がしそうな空間に入るのは流石に二の足を踏む。

 しかし神一郎は凄いな。

 束に向かって脳細胞を殺せと言うのはお前くらいだよ。

 そして束の目から理性が消えた。

 嬉々として神一郎の助言を聞いてるようだが、理性のない馬鹿ははたから見るとただただ怖い。

 ……逃げるか?

 

 ジャリ

 

「「誰だッ!?」」

 

 気取られたか!? チッ、異様な空気に飲まれて足音を鳴らしてしまうとは不覚!

 

「……こんな場所に人? 迷子かな?」

「しー君がつけられたんじゃない? 取り敢えず処そうか」

「そうだね処そう」

 

 いや処すな。

 なんの冗談……ではないだと!?

 二人から闘気を感じる。

 本気で私に攻撃を仕掛けるつもりか!?

 

「待て! 私だ!」

 

 二人の気迫に危機感を覚え姿を見せる。

 なんだっていうんだいったい。

 

「お? ちーちゃんじゃん」

「ホントだ。仕事終わったんですか?」

 

 プスンと二人から闘気が消えた。

 もしかしてすでに酔ってるんじゃあるまいな?

 

「もう、隠れて見てるなんてちーちゃんのエッチ! どうだった? 私のおバカ可愛いは」

「怖かった」

「最高に可愛かったですよね?」

「怖かった」

「え? 怖いぐらい可愛かったって?」

「純粋に怖かった」

「分かります。身震いするほど可愛かったですよね」

 

 無敵か。

 なんで都合のいい方に取るんだよ。

 普段より様子がおかしいな……いや普段でもおかしいが、今は輪に掛けておかしい。

 ん? よく見ると顔色が悪いな。

 目の下のクマが酷いし髪もツヤを失っている。

 10連勤中の私より疲れた顔をしているんじゃないか?

 

「お前たち、もしかして具合が悪いのか?」

「あ、この顔? ちょっと寝不足でね」

「見ないでちーちゃん! 今の肌が荒れてる私を見ないで! うぅ……流石の束さんも寝不足では肌ツヤが……」

 

 つまり徹夜明けのハイテンションって事だな?

 ほんの僅かでも心配した私の気持ちを返せ。

 

「いったい何時間寝てないんだ?」

「俺は三徹目です」

「五徹目!」

「自殺でも試みてるのか?」

 

 馬鹿だろ。

 何度も言うが再度言おう。

 馬鹿だろ。

 

「モンド・グロッソが終わってから千冬さんのお陰で儲けたお金を使ってどんちゃん騒ぎしてたんですよ。んで三日前から徹夜自慢が始まって――」

 

 私はまだ一夏を外食に連れて行ってやれてないのに、お前らは遊び呆けてたと?

 

「何故か互いにムキになって今に至る……だったと思う……たぶん。ぶっちゃけ三日前の事だ から自信はないけどね!」

 

 束が記憶が曖昧って相当じゃないか?

 どう考えても徹夜のせいで脳がやられてるだろ。

 

「そうだちーちゃん聞いて! しー君てばたかが三徹で私に張り合おうとしてるんだよ? 無駄だって言ってやってよ!」

「だから子供の三徹は大人の五徹に匹敵するって言ってるでしょうが。束さんはフェアプレーをご存じない?」

 

 よく分からない理論でよく分からない勝負を始める。

 その点だけ見れば平和だ。

 私の心は平和とは程遠いけどな。

 

「まずは座らないか。色々と話したい事もあるんだろ?」

「そうですね。久しぶりの再会ですしゆっくりしましょうか」

「ちーちゃんは私の隣ね! しー君座布団!」

「ほいほい」

 

 殺風景な地下秘密基地の真ん中で三人仲良く腰を下ろす。

 徹夜テンションの二人を相手するのは苦だが、これで酒を飲みながらゆっくり出来るのならば……

 

「ちーちゃんちーちゃん!」

「鬱陶しいから引っ付かないでくれるか?」

「えへへー」

「束さんのだらしない笑顔も良いものだ」

 

 私の腕を抱きしな垂れかかる束とそれを見て頬を緩ませる神一郎。

 で、酒は?

 

「今日という日を待ち遠しにしてました! しー君と遊びながらひたすら時間が過ぎるのを待ってたんだよ?」

「色々やりましたよねー。暫くは束さんとの会話するネタはないってくらい駄弁りましたし」

「充実した毎日だったようだな」

 

 私が働いてる間ずっと遊んでいたとに文句は言わないさ。

 人の人生なんてそれぞれだからな。

 で、ツマミは?

 

「その顔は何をしてたか聞きたい顔だね! よろしい、語ってあげようじゃないか!」

「では俺も語ろう!」

 

 今の私の顔を見てそう思えるのが不思議だよ。

 久しぶりの再会で語り合う。

 それ自体は悪くない。

 だが酒もツマミもなしなのか?

 頼むから気付いてくれ神一郎、お前はこういった時は気が利く男だろ?

 

「どこから話ます?」

「ん~とね……あ、しー君発案の『篠ノ之束万能説』とかどうかな?」

「いいですね」

 

 こってちの話を聞かずに走り出すこの感じ……酔ってるのと同じだな。

 ダメだ、寝不足で脳が死んでるとしか思えん。

 私は素面でこの状況を乗り切らなければならないのか。

 今すぐ帰りたい。

 二人がなにしてたとか心底どうでもいいんだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇束さんは今日も気だるげ

 

「まずはこれです」

「ダウナー系美少女の日常ものかな?」

 

 あらすじ

 

 天才的な頭脳を持つ篠ノ之束にとって学校は退屈な空間だ。

 彼女は人生に退屈を感じている覇気なしやる気なし気力なしの女子高生。

 そんな彼女は今日も眠たげな顔で玄関に立つ。

 迫る登校時間、進む秒針。

 それでも束さんは動かない。

 

「いや自分で動け! 遅刻するだろうが!」

 

 だっておかん系幼馴染の千冬さんが迎えに来るから。

 今日も束さんは千冬さんに背負われ学校に向かう。

 これは無気力系女子とおかん系女子の日常アニメである!

 

「ちーちゃんに背負われて登校……そんな青春送りたかった!」

「束さんの青春は血生臭さそうですもんね」

 

 

 

 

 〇篠ノ之博士の今日ご飯

 

「王道は外せない」

「ご飯系って王道なの?」

 

 あらすじ

 

 とある研究所でひきこもりで働く篠ノ之博士。

 研究以外の趣味は……そう、ご飯だ!

 ビーカーでコーヒーを飲み遠心分離機でジュレを作る。

 科学と料理と天才が合わさった時、未知なる美味を世に生み出す。

 

「肉に電気を通電させイノシン酸を増やした電気肉こそ至高!」

 

 今日も深夜の研究室で篠ノ之博士は独り静かに食事を楽しむ。

 

「これ普段からやってるよね」

「素材をドロドロに溶かして後付けで味を付ける束さんの料理は違うと思う」

 

 

 

 

 〇束さんは勇者じゃありませんから

 

「これも王道ですな」

「まぁ私は勇者ってガラじゃないよね」

 

 あらすじ

 

 ある日気付くとクラスメイトと共に異世界に召喚されていた束さん。

 偉ぶった王様は勇者がどうたら魔王がどうたら話しているが興味がないので無視していた。

 召喚された者にはスキルが与えらると聞き喜び騒ぐクラスメイト達。

 そんな中、束さんのスキルは『科学者』という魔法世界では役に立たないものだった。

 常にクラスメイトを見下していた束さんはここぞとばかりに口撃され、ついにはお城から追い出されてしまう。

 だが王様もクラスメイトも知らなかったのだ――

 

「未知なる生き物! 不可思議な法則! 実にイイッ! まずはゴブリンでも解体してみようかな?」

 

 魔王より恐ろしい生き物を世に放ってしまった事を。

 襲い掛かるクラスメイトを返り討ちにし傲慢な悪魔をホルマリン漬けにする。

 これは一人の少女がのちに災厄の魔王と呼ばれるまでの物語である。

 

「ちーちゃんと離れ離れにされたら王様とか物理的に潰す」

「帰りたい一心で異世界転移魔法とか作り出しそうですもんね」

 

 

 

 

 〇ようこそ! 束さんの森へ 

 

「ここで少し変化球」

「んー、私の森……ほのぼの系かな?」

 

 あらすじ

 

 アメリカの特殊部隊【スカイフォール】の面々は困惑していた。

 任務を終わらせた帰り道、気が付けばジャングルの中で目を覚ましのだ。

 そして突如として響く天災の声。

 

『ようこそ人類の中でまぁまぁ強い諸君! ここは束さんが作り出したジオフロントだよ! ところで知ってるかな? 長い歴史の中で地球の支配者は何度か変わったことを。そこで誰しもが疑問に思うはずだ! 一番強い支配者は誰かってさ! 君たちに求める事はただ一つ、全力で戦え! なーに束さんは脱出の邪魔はしない。君たちの奮闘を眺めてるだけの安心したまえ!』

 

 太古の森に集うは古き時代の支配者たち。

 

 木々の間を這う巨大ムカデ。

 空を支配する巨大トンボ。

 川に住む巨大ワニ。

 そして大地の王者たる恐竜。

 

 人類VS太古の支配者! 近代兵器で武装した歴戦の戦士達の戦いが今始まる!

 

「……時間ができたらやってもいいかな?」

「やめてね? あくまで妄想の話だから絶対にやめて」

 

 

 

 

 〇篠ノ之束はくじけない

 

「やはり束さんらしさを前面に出すのも必要だと思うのです」

「ほうほう」

 

 あらすじ

 

 それが困難な道だと初めから分かっていた。

 諦めれば楽だと理解している。

 それでも……この気持ちは消せない…………消せないのだ!

 これは百合の花にまったく興味のないツンデレ幼馴染を百合の沼に引きずり込まんとする少女の物語。

 

「ちーちゃ~ん!」

「うっとおしい!」

 

 今日も彼女はあらん限りの愛を持って幼馴染を襲う!

 これはハイテンション百合ガールとツンデレ幼馴染の攻防を書いたスクールラブコメである! 

 

「ふっ、スクールラブコメか。なにもかも懐かしい」

「泣くなよ自宅学習者」

 

 

 

 

「とまぁ束さんはどんな作品でも主人公できる強キャラだと思うんですよね」

「まーね! 私ってば才能の塊だから! 日常系でもラブコメでもサスペンスホラーでも輝ける逸材なのさ!」

 

 神一郎が適当なタイトルとあらすじを語り束がツッコむ。

 ……なにが面白いのかさっぱりなんだが? 束が喜んでる理由もさっぱりなんだが?

 そもそもおかん系だの百合沼だのと私の扱いが酷すぎる。

 

「後はなにしてましたっけ?」

「しりとりとかしてたね」

「あぁ、そんなクソゲーしましたね」

 

 束相手にしりとりは無謀だろう。

 私だって勝てる気がしない。

 

「もう一回やる?」

「嫌です」

「私はちーちゃんに凄いって言われたい」

「踏み台ですね分かります」

 

 束が神一郎を蹴散らす場面を見ても私はなにも感じない。

 結果が見えてる勝負など見てどうしろと。

 それにしりとりは今から二人でやるのか? 私に見てろと?

 もう罰ゲームだな。

 なぁ神一郎、私は二人のしりとりより壁付近にある荷物の方が気になるんだよ。

 クーラーボックスとバッグ、そして【第三回ホルモン祭り】と書かれたプラカード。

 二回は私抜きでやったのかとか、なんで仲間内の集まりでプラカードがあるのかとか無粋な事は聞かない。

 ただ私にホルモンとビールをくれ。

 

「んじゃ行きます。しりとりのり」

「リン化ナトリウム」

「相変わらずの定石殺し。ムー大陸」

「クロム酸ナトリウム」

「ムササビ」

「ビスマス酸ナトリウム」

「虫」

「シアン酸ナトリウム」

「ムチ」

「チオシアン酸ナトリウム」

「ムース」

「水素化ホウ素ナトリウム」

「麦わら帽子」

「シアノ水素化ホウ素ナトリウム」

「麦」

「ギ酸ナトリウム」

「麦畑」

「ケイ酸ナトリウム」

「麦茶」

「ち? や?」

「どっちでも」

「チオ硫酸ナトリウム」

「無地」

「次亜塩素酸ナトリウム」

「無視」

「硝酸ナトリウム」

「村雨」

「メタバナジン酸ナトリウム」

「虫取り」

「リン酸水素ナトリウム」

「ムクドリ」

「リン酸二水素三ナトリウム」

「ムーンサルト」

「トリチタン酸ナトリウム」

「ナトリウムゥゥゥゥ!」

 

 ん、どんまい。

 

「ナトリウムが強すぎる!」

「だがまだ粘れるだろ?」

「ナトリウムを越えても次はアルミニウムが待ち構えてるんですよ!」

 

 アルミニウムも種類が多いもんな。

 

「ぶいっ!」

 

 余裕の勝利だな。

 だからといって束を褒める気はないけどな。

 知識量で束に勝てる訳ないだろ。

 

「どうだったちーちゃん!?」

「圧勝だったな」

「だよね! そんな私をどう思いますか!?」

「あぁ……凄いな」

「むふー、そうでしょうそうでしょう! あ、ちーちゃんも私としりとりする!?」

「やらない」

「(´・ω・`)」

 

 ここまで束の顔が崩れるのは珍しいな。

 脳みそが狂って感情の抑制が出来てないのか?

 

「あーあ、千冬さんはすぐ束さんをイジメるんだから。よーしよし」

「(≧▽≦)」

 

 いや喋れよ。

 なんで顔芸。

 

「やはりここは束さんの魅力を再確認させるしかないですね!」

「おバカ可愛いはさっき見せたよ?」

「ふっ、この数日で覚えた技があるでしょう?」

「忘れてた! これは勝ったな」

 

 束が私の正面に座りじっと私の目を見る。

 抵抗するのも面倒なので私は動かない。

 もう好きにしろ。

 

「ちーちゃんのこと好きだっちゃ」

「………」

「好きだっぺ」

「………」

「たった好きねん」

「………」

「好きやで!」

「………」

「好いとーよ」

「………」

「めっちゃ好きさ!」

「………………そうか」

 

 正しい反応の仕方が分からない。

 これどうすれば? そう思い神一郎を見るが、馬鹿その二は私の反応を見てため息を吐いた。

 どうやら不正解だったみたいだ。

 

「どうしよしー君!? 私の告白47手が通じないんだけど!?」

「束さんの方言×告白のコンボ技が効かないとは……プロジェクト・モザイカ産の生き物って感情死んでるのでは?」

「そんなまさか!? くっ、安心してちーちゃん! 私がちーちゃんに愛の感情を思い出させてあげるから!」

 

 今まで見せた事がない真剣な表情で私を見るな。

 それと神一郎、成長したお前に対して多少の暴力は有りだと思ってきたよ。

 いつまでも小学生という立場が盾になると思うな。

 

「しかししー君さえ魅了した告白47手が通じないとなると……」

「禁じ手のアレしかないのでは?」

「アレかー。アレやるとしー君の脳みそが溶けちゃうけど大丈夫?」

「二回目なので耐性は付いてるので大丈夫かと」

「ならばやるしかあるまい!」

 

 神一郎の脳はもう溶けてるから大丈夫じゃないか?

 そしていい加減この茶番から私を開放してくれ。

 

「見るがいい! これが三徹目……四徹目? に開発した対ちーちゃん用最終兵器!」

 

 記憶が曖昧……どう考えても開発当時は正常じゃなかったんだな。

 束がペタンと床に座る。

 所謂女の子座りだ。

 

「たばっ?」

 

 …………はい?

 

「たば! た~ば! たばば。たばー♪」

 

 私は、いったい、なにを、見せられてるんだ?

 

「たばたばたーば! たば! たばば?」

 

 親友がたばたば言いながら何かを訴えてくる。

 ……なんだこれ?

 

「たばたば言いながら身振り手振りで語り掛けてくる束さんマジぐうかわ」

 

 神一郎が泣きながらビデオカメラを構える。

 そうか、お前はこれを認めるのか。

 私は脳は理解する事を拒んでるよ。

 

「どうです千冬さん。これが俺が見つけ出した最強の篠ノ之束。『たば語しか喋れない束さん』です!」

 

 どうもこうもない。

 視覚情報を処理できない……いや、脳が理解を拒んでいる。

 

「あまりの可愛さにぐうの音もでませんか」

 

 すまん、らしくもなく思考停止した。

 今の私は悪い意味で言葉が出ない状態だ。

 

「お手」

「たば!(タシッ)」

「おかわり」

「たば!(タシッ)」

「ちんちん」

「たば!(ぷい)」

 

 良かった。

 最後だけは拒否してくれて本当に良かった。

 お手とおかわりも衝撃的だったが、最後のまでやってたら私は発狂しただろう。

 

「まだちんちんは出来ないか~。伏せ!」

「たば!(シュパ)」

「よしよし」

「たば~♪」

 

 伏せしてる束の頭を神一郎が撫でる。

 なにが凄いって束が拒否してないところだよ。

 脳みそが死んでるからか?

 正気に戻ったら神一郎の奴死ぬんじゃないか?

 私は助けないぞ。

 

「はい、束さん」

「たば!」

 

 神一郎が束の首に首輪を着ける。

 束は拒否することなく受け入れた。

 嘘だろ? いくらなんでも……

 

「はい、千冬さん」

 

 私の手に握らされるのはリードの持ち手。

 もちろんその先にいるのは束だ。

 

「たば♪」

 

 束が四つん這いで動きだすのでつい立ち上がってしまった。

 

「たば♪ たば♪ たば~♪」

 

 嬉しそうに四つん這いで歩く束と、リードを握って付いて行く私。

 

「今なら魅力だけで世界を支配できる! 最高だよ束さん!」

「たば~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 束はな、昔はそれはもう酷かった。

 冷徹で冷酷。

 常に他人を見下し、他の人間を下等生物だと本気で思っていた節がある。

 だがそれも変わった。

 私と友好を結び、箒や一夏と関わる様になってから丸くなったのだ。

 だがな、ここまでおかしな人間じゃなかった。

 分かるか神一郎、親友がたばたば言いながら犬の散歩の真似事をしてるんだぞ? 受け入れられる訳ないだろう。

 束がこうも変え、そして私の精神を追い詰める元凶、それは――

 

「お前だッ!」

「おごっ!?」

 

 私の拳が腹に刺さった神一郎が床に沈む。

 悪は去った。

 これで束も……

 

「たば?」

 

 リードを離された事か、それとも神一郎が落ちた事に対してか分からないが、首を傾げている。

 

「たば!」

 

 リードの持ち手を咥えて私に差し出してくる束。

 まだまだ散歩がしたいと?

 そうか……そうだよな。

 すまない神一郎、私が間違ってたようだ。

 悪いのはだいたい束。

 その法則を忘れてたよ。

 

「束、撫でてやるから頭を出せ」

「たば♪」

 

 私の前まで来た束は大人しく頭を差し出す。

 いいぞ、つむじがよく見える。

 では――

 

「眠れッ!」

「だばっ!?」

 

 束は頭を押さえて状態で倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 地下空間に静寂が戻った。

 僅かに聞こえるのは二人の寝息のみ。

 これでいい。

 クーラーボックスの中身はビールと各種ホルモンを中心にした肉類。

 バッグの中はアウトドアグッズか?。

 炭と変な金属の板。

 説明書はないが……簡単なパズルの様なものだな。

 よし、なんとかなった。

 ここに炭を入れて……この着火剤を点ければいいのか。

 網を置いて完成だ。

 では――

 

「今日までお疲れ様だ、私」

 

 ホルモンを網に乗せ、私はビールを一気にあおった。




 ホルモン祭り。
 それは一部の人間に熱狂的な支持を受ける祭事である。

し「…………。(返事がない。お腹を押さえたまま死んだように眠っている) 

た「…………。(返事がない。頭を押さえたまま死んだように眠っている)
ち「…………。(返事がない。ビールとホルモンに夢中のようだ) 

 これでモンド・グロッソ編は終了であります。
 主人公サイドに戻る訳ですが……圧倒的な主人公力を持つ千冬さんに勝てる気しないなーw
 
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