俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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ギリギリセーフ!
除夜の鐘、初詣の待ち時間にどうぞ。
なんもかんも

FGOレイドイベ(義務)
ガンオペ2(最近始めた)
各種ソシャゲのクリスマスイベ(使命感)

が悪い。
日記式の小説を読むのは好きだが、自分で書いてみると『あれ? これって日記か?』となる不思議。


ぼくの冬休み(無人島編)

 〇月×日

 

 冬休み前だが行動を開始する。

 まずは伐採。

 束さんから借りた高周波ブレードでログハウス建設予定地の木々を切りまくる。

 スパスパ切れるので気分は無双ゲーの主人公だ。

 代価として夕ご飯に松坂牛をと言われたが、普通にチェーンソー買うより安いので大助かり。

 記念すべき開拓初日の祝いにすき焼きにした。

 お肉美味しかったです( ¯﹃¯ )

 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 前回の作業の続きから始める。

 放置していた木をダナンの空き倉庫に運ぶ。

 いくらISでも一度に運べる量は1~2本だ。

 何往復もしなければと覚悟していたら、束さんが格安で牽引ロープ作ってくれた。

 これでスピードアップ! 

 大量の木をぶら下げながら島とデ・ダナンを往復した。

 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 待ちに待った冬休みに突入。

 大量の食糧とテントを持って島に乗り込む。

 今日はログハウス建設予定地の土地の整備だ。

 山をL字型に削り平地を作る作業。

 本来ならショベルカーの出番かな? ISならスコップで余裕でした。 

 ISは選ばれた存在だけが使えるでいいんじゃないかな?

 こんなのが普及したら失業率上がりそう。

 地面の均しはひたすら土をハンマーで叩く。

 ISの土木作業適正は高すぎない?

 今日は束さんが居ないので一人メシ。

 大人しく持ち込んだ焼きそばを食べたけど、明日は海の幸を頂きたい。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 人が踏み込んだことがない自然を舐めてないけない。

 ログハウス建設予定地から畑まで、木と雑草しかなく獣道さえ存在しないのだ。

 トロッコの線路を敷く為に木を切り地面を固める作業を開始した。

 根が残っていると繁殖しそうなので、地面を掘り返してスコップを縦に突き刺す。

 それからハンマーで叩く。

 ISでも大変な作業だ。

 アスファルトで土に蓋をした方が楽だろう。

 つまり田舎のあぜ道は都会の歩道より上等……高級志向の私はもちろんアスファルトなんて使いません。

 今日は漁に出る気力がなかったので適当に済ませた。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 ひたすら同じ作業を繰り返す。

 気分を前向きにする為に大音量でアニソン流しながら作業に没頭した。

 改めて思う、流々武は素晴らしいISだ。

 並のISならこうも長時間稼働できない。

 その点、自機でエネルギー回復が出来るのが素晴らしい。

 今日は焚火に当たりながら流々武の装甲を磨く。

 明日も頑張ろう。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 よしやるぞ! と思ったら昼頃には畑予定地に到着した。

 陸地だと正面は緑しかないのでゴールが見えてなくても仕方がないね。

 予定を変更して午後は休みとする。

 念願の海の幸を取る!

 なのでISを纏ったまま海に潜った。

 出来る男はその場所にどんな魚がいるか自分の目で確かめるのさ。

 根付きの魚は日本と変わらないか?アイナメっぽいのやカサゴ系がいた。

 だが彼らは煮物が最適解なので今日はパスする。

 やはり焼いて簡単に食えるのがいいよね。

 少し沖に出ると海面近くに魚影を確認。

 潜ってみるとサンマちゃんでした。

 サビキ投げたら簡単にヒット、ちょっと警戒心死んでない?

 今日のご飯はサンマの塩焼き!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 切った木が溜まってきたのでダナンに運ぶ。

 数日振りに束さんに会ったら物凄く不機嫌だった。

 いや束さんの存在は忘れてないですよ? 昨日のサンマのお裾分け? すみませんないです。

 放置されておこだったので平謝り。

 食いたかったなら来れば良かったのに――とは言わない。

 童貞の俺でも火に油だと理解できたので。

 倉庫の木の量も結構な数になったの乾燥を始める。

 木を並べ業務用の大型温風器のスイッチを入れる。

 人工乾燥だと急速に水分が逃げるので割れる木もあるらしい。 

 この内の何本が使えるかは不明だが、割れた木は薪として使えるので問題なし!

 その後は束さんのご機嫌取りに全力を注ぐ。

 なにか食べたい物ありませんか? サンマでいいなら今からでも釣りに……フォアグラと蓮根のフラン? 猪ロース肉のコンフィー?

 フォアグラの丸焼きとハンバーグなら……ダメ? ですよね。

 今日は束さんと顧客情報を絶対に守るお偉いさん御用達の店で優雅なディナー。

 場違い過ぎて味が分からなかった\(^o^)/

 

 

 

 

 〇月×日

 

 今日は農地の開拓を始める!

 まずは太い木を切って根を掘り出し、それから雑草やツル植物も抜いて整地。

 やる事が一杯で楽しいって意外と新鮮な感情だ。

 今日は珍しく束さんも一緒。

 高周波ブレード片手にやる気を見せている。

 勝手にやってるから気にするなと言うのでとりあえず放置する事に。

 たぶん楽しそうに土いじりする姿を見られたくないのだろう。

 気難しい年頃なのです。

 なので別々に行動を開始した。

 ご飯時だけ顔を合わせるが、いい汗をかいて笑顔なので好きにさせておく。

 きっと俺に見られない所で楽しんでるのだろう。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 森が燃えていた。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 森は燃え続けている。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 雨が降り、僅かに残っていた火が消えた。

 

 

 

 

 

 〇月×日

 昨日は火が消えた後、呆然と燃え跡を眺めていた。

 まぁ知ってたけど犯人は束さんだった。

 どうやら束さんは森を円状に切り、火が燃え広がるのを防ぐ対策をした上で焼畑農業をしたらしい。

 雨が降るのも計算の内とか流石だわ。

 ちまちま木を切ってる俺の姿に見飽きたのが原因らしい。

 しょんぼりしていたら束さんから新兵器を貰った。

 クワである。

 黒光りする三又がカッコよすぎたので束さんを許した。

 今日は新兵器を使って大きな石の除去と燃えカスと土を混ぜる作業。

 ……焼畑農業は楽だわ。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 農業のハウツー本を読みながら畑作り。

 土を盛り、田舎でよく見る畑が出来上がっていくのは楽しい。

 今日は束さんはダナンの方で自分の研究に熱中している。

 また体を動かしたくなったら来るだろう。

 でも放置し過ぎると機嫌が悪くなるので、晩御飯だけは届けようと思う。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 買い出し&お出かけの日。

 食料と肥料を買いに日本に戻る。

 調べて知ったが、育てる野菜の種類ごとに適した土があり、石灰などでph値を調節する必要があるのだ。

 流石に一度に運びきれるものではない、数往復必要……だと思ったのでプレハブ小屋を買うことにした。

 どっちにしろ農具や肥料を置くスペースが必要なので必要経費だ。

 プレハブ小屋もピンキリで、安いので5万、高いのだと60万くらい。

 空調の有り無し、コンセントなどの配線の有り無しなど、設備の違いで値段が変わる。

 で、俺が買ったのは20万のコンテナだ。

 大きな会社の製品ではなく、個人経営に近いお店の商品なんだが、これが面白い。

 中古の海上コンテナを買い取って補修、清掃をし、窓や出入口を取り付けて売っているのだ。

 一瞬自分で作るのも有りだと思ったが、あまりにも見事な出来栄えだったので衝動買いした。

 後悔はない!

 クワやスコップ、大小のプランターに肥料と各種野菜の種をコンテナに詰め込み、牽引ロープを巻き付けて輸送した。

 ついでにスーパーで焼肉セット買ってきた。

 今日は焼肉!

 

 

 

 〇月×日

 

 更地にそびえ立つプレハブ小屋が素晴らしい。

 今日中に畑作りを終わらせようとひたすた動き回る。

 ビニールハウスはまだ届いていないので今はまだ寂しい景色だが、畑の外側に桜などを植えれば良い感じになりそうだ。

 畑仕事が終わった後は桜の下でお茶を飲む。

 今から楽しみだ。ワクワク!

 晩御飯は海に潜ってアワビを採った。

 鉄板の上で踊るアワビに醤油を垂らして……最高だった、酒が超進んだ。

 これには束さんも上機嫌。

 畑は土が馴染むまで暫く自然に任せるとして、明日は畑から船着き場までの道を作ることにした。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 今日は木を切る作業。

 慣れたもんで作業速度はだいぶ上がった。

 右手の高周波ブレードで木を切り倒し、左手のスコップを斜め45度で刺し切り株を一気に持ち上げる。

 切り株は一度道の横に放り投げ、スコップで地面をザクザク刺す。

 右手の高周波ブレードを拡張領域のハンマーと切り替え、ハンマーで地面を叩く。

 その手順の繰り返しだ。

 今ではアニソン聞きながら無心でできる。

 意外とライン作業が向いてるのかもと思った。

 嘘です。これが一週間続いたら流石に心にクルかも。

 ゴールが見えてるから頑張れる事ってあるよね。

 今日は100円パスタと100円パスタソース!

 懐かしい貧乏学生時代を思い出す。

 ついでに遊びすぎて給料日前に金欠になった社会人時代を思い出す味だった。

 束さんが冷たい目で睨んできた。

 ちょっと舌が高級志向過ぎでは? 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 祝! 開通!

 家の前から船着き場まで、島に見事な一本線を描いた。

 まだまだ序盤なのにやり切った感が凄い。

 これは今夜ビールが美味いぞ。

 と感動してたら束さんから指摘を受けた。

 曰く、今のままでは線路を引けないとの事。

 地面が平らになるよう、雑草などが生えないようにする必要があるらしい。

 そこで提案されたのがロードローラーだ。

 地面を踏み固め、植物の生長を阻害する。

 それにはロードローラーが一番だと言われた。

 調べて貰ったら中古で安くても200万はするとかないです。

 整地する為にわざわざロードローラーを買う? 俺はそんな昭和の人間ではない。

 自分、専用機持ちの平成生まれなので。

 テニスコートなどを整地するコートローラーなる物が存在する。

 円柱型のデカいコンクリの塊を人間が引っ張るやつだ。

 廃校のテニスコートやグラウンドの隅でよく転がってるよね。

 ゴミ同然だとしても勝手に持ってくるもあれなのでネットで探したら、中古で1000円で売ってました\(^o^)/

 これから毎朝コートローラーを握ってランニングだ! もちろんIS着用です。

 束さんが何故かムスっとしたので今夜は海の幸フルコース!

 アイナメの刺身とメバルの煮つけ、骨や頭は鍋にぶち込んであら汁!

 めっちゃ美味かったけど束さんの頬は膨らんだままだった。

 なんで?

 

 

 

 

 〇月×日

 

 日本に戻ってコートローラーをさくっと持ってきた。

 それを押す。

 うん、引っ張るじゃなくて押すのだ。

 ISだと持ち手の中に入れないから仕方がない。

 森の中の一本道を走るのは気持ち良いものだった。

 これから毎朝が楽しみである。

 今日は木々の間引き。

 海岸から畑までは木々が適当に生えていて、人が歩ける場所ではない。

 木漏れ日ある森なんてものは人の手が入った森である。

 なので良い感じに木漏れ日が入るように木を間引き、背の低い植物などを排除する。

 これが終われば、柔らかい日の光が入る森の中を歩きながら海を見る――という素晴らしいシチュエーションが楽しめる!

 今日はツナマヨシャケ他人丼!

 材料――ツナ缶、シャケフレーク、半熟卵、マヨネーズ

 ひたすら白米をかきこめ!

 束さんは微妙の顔をしながらおかわりしてた。

 

 

 

 〇月×日

 

 今日は畑を仕上がる!

 土と燃えカスを混ぜて放置してたが、今日はそれらの整理。

 道と畑を分かりやすく区別する為にコートローラーで道部分を平らにする。

 意外と活躍の場があるぞコートローラー!

 家の前の道作りとかでも使えるな。

 買って来た肥料を土に混ぜた後、クワで畝を作る。

 ISだと疲れ知らずなので、畝を作るのに慣れれば作業自体は簡単に終わった。

 ご年配の農家の方や腰に不安がある人には是非ともISで農業して欲しい。

 楽過ぎて、スローライフってこれでいいのかな? と悩むくらいだ。

 もっと汗水流すべきか? と思うが、結局俺は現代っ子なのでISを手放せないのだった。

 夜はシイラの丸焼き!

 いやほんとシイラはどこでもいやがるな。

 ちょっと南下したら釣れました。

 そろそろ束さんのキレそうなので明日は豪勢にしよう。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 注文していたアースドームの発送準備が整いました! って連絡があったので今日は製造元のドイツに飛ぶ。

 適当な空き地で素知らぬ顔で受け取り、それはデータ化して拡張領域に。

 データ化には時間が必要なのでそれまではドイツを探索!

 束さんとドイツデート! なんか高級ブランド時計やバックを強請ってきたので、口に露店で売っていたチョコをねじ込む。

 ブランド品など興味ないクセに何を考えてるんだろう? 束さんの生態は不思議がいっぱい。

 断ったら不満げな顔でチョコを頬張っていた。

 たんに貢がせたいだけな気がする。

 食料品などを買い込んだら島に戻って穴掘り!

 畑の近くに穴を掘り、そこにアースドームを埋める。

 やー、設備が充実していく感じが嬉しい。

 今日は激辛カレーである20禁カレーとドイツで買ったソーセージの組み合わせ!

 明日の一日、下手したら今日の夜からトイレの妖精と化すが、それでもつい食べてしまう。

 そんな魅惑のカレーなのだ。

 束さんはソーセージと白米だけでいいとカレーを拒否した。

 解せぬ。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 深々と降るがいい。

 今日は雪! 慌ててダナンからブルーシートを引っ張り出してログハウス建設予定地に掛ける。

 地面がぬかるんだら作業に支障がでるので焦りました。

 花見の時のブルーシート捨てなくてよかった。

 新雪……誰も居ない無人島……となれば分かるな?

 今日はお休みで遊ぶ日!

 新雪ダイブしてたら束さんが鼻で笑ったので雪玉投げてやった。

 雪を握りつぶして氷化させて投げるのは反則だと思うの。

 二人で雪合戦した後は雪だるまを作った。

 束さん作、織斑千冬レディーススーツverはそのままフィギュア化したい出来栄えだった。

 日が暮れる前に日本まで全力で飛び食料を買う。

 戻った俺を束さんがかまくらで出迎えてくれた。

 雪×かまくら×鍋×熱燗!

 最強の掛け算だ。

 今日はてっちり鍋! 鍋セットを買って来たので素人でも安心!

 そしてお高い日本酒で熱燗!

 雪を見ながらのフグは最高だった。

 これには束さんもにっこり。

 気力も体力も回復したし、明日も頑張る!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 朝は除雪から開始。

 木の乾燥がそろそろ終わりそうなのでログハウス建設の準備を始める。

 夜な夜なログハウスの設計図を書いていた俺に抜かりはない!

 そして今日も穴掘り。

 地下室作成だのしー!

 スコップ穴を掘り、ハンマーで軽く壁を叩いて整える。

 これが意外と手間だ。

 床は平らに、壁は平面に。

 慎重に土を削り整える。

 忘れていけないのは階段だ。

 荷物を持って上り下りする事を考えると、少し緩やかに作りにしなければ。

 なんだかんだとやっていたらあっという間に日が暮れた。

 明日はモルタルを塗る!

 今夜はおうどん。

 安く、温まり、腹に溜まる。

 完璧な食材だ。

 だが束さんは今日も不満げ。

 もしかしてそば派だった?

 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 モルタルは自家製で! などと考えていたが、色々と手間なので今回は市販品を用意した。

 そして取り出したるはマイコテ!

 コテにモルタルを乗せて壁に塗りたくる時、多分俺は二割増しで輝いてると思う。

 モルタル塗りのハウツー本買ってて良かった! 緊張しながらも教科書通りを心掛ける。

 モルタル塗り初心者あるある。

 塗りムラがあるとモルタルを追加で塗って厚さにバラつきを生んでしまう。

 丁寧に、だが素早く手を動かす。

 最初はぎこちなかったが、後半はだいぶ慣れた。

 途中影が差したので上を見上げると、束さんが鼻で笑っていた。

 きっと束さんから見たら不格好な地下室なのだろう。

 だが笑うのはゆるさん!

 罰として今日もおうどん。

 無表情でうどんを啜る束さんもまたよし。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 木の乾燥が完了したのでダナンから運び出す。

 今日からログハウス建設を始める!

 目指すの3LDK。

 ログハウスとして考えるなら広めだな。

 木にノコギリを入れる瞬間は思いの外緊張した。

 脳内で練習を積んだ俺に死角はない!

 電動のこぎりで木を真っ二つにする。

 それを束さんが受け取り切り口にカンナを掛けてツルツルのピカピカに。

 うん、頼んでないのに手伝い始めた。

 熟練の大工並のカンナ捌きだよ凄い。

 削った木が透き通ってるよ。

 俺が作っているのはDログと呼ばれる木材だ。

 外は丸太、内は板状になっている。

 見かけがまんま“D”に見えるからDログらしい。

 木は大量にある。

 俺が木を伐り出し、束さんが整える。

 それだけで一日が終わった。

 晩御飯は取れたてカレイの刺身とホウボウの刺身!

 ISがあれば潜って手掴み余裕です。

 ホウボウとか高級魚ですよ? 味わえ! と思ったら束さんはまたふくれっ面だった。

 なんとなく分かってきた。

 これ、金掛けないご飯の時だけガッカリしてるな。

 でも何故ガッカリしてるのかは分からない。 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 考えても分からんので束さんに聞いてみた。

 食事の何が不満なのかを。

 で、答えはこうだ。

 曰く、『感謝の気持ちとしてお金を掛けるのは分かりやすいパラメーターだよね? 時たま手伝ってあげてるけど、しー君からは感謝の念を感じない。つまりそう言うことだよ』だそうです。

 まぁ理解できる。

 夫婦の記念日なんかで、夫が手料理を振舞うのと高級レストランの連れて行くの、奥さんはどっちが喜ぶかと言えば……個人の性格にもよるが3:7で後者の方が多そう。

 つまり手伝ってあげてるのだから、もっと分かりやすく感謝しろと。

 感謝の押し売り&お礼の強要ってどうよ? だが束さんの手伝いなしに無事完成するとは思えない。 

 ので、取り敢えずご飯だけは金掛けます!

 今日はトロッコのレールやらなんやらを取りに行く。

 ついでに食料も大量に買い込んだ。

 その後は各々が別作業。

 俺はログハウス建築の続き、束さんはトロッコのレールを敷く。

 一緒にやる? って聞いたら邪魔だからって言われた。

 レールを曲げたりしたかったのに……。

 だが時間が限られてるので分担作業は有効である。

 晩御飯はしゃぶしゃぶ!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 束さんに蹴られた。

 ログハウスを破壊された。

 一人海を見て体育座り。

 

 

 

 〇月×日

 

 海は良い。

 荒んだ心を癒してくれるパブみの塊だ。

 一日海を見て落ち着いたので束さんの所業をここに記す。

 昨日、レールを敷き終わった束さんが俺の元にやってきた。

 眉を寄せ周囲を見回した後……俺が建てた場所を壊しはじめたのだ。

 嫌がらせ、乱心、そんな理由だったら対応のしようもあっただろうが、もちろん違う。

 束さんはあまりの出来の悪さ、美意識のなさにイラっときたらしい。

 使用する木は天然もの。

 木の種類も様々だし、密度などの品質も違う。

 それらを考えて建てろと怒られた。

 そして俺が建てた場所を破壊してリセットし、自分一人でログハウス建設を始めてしまったのだ。

 ガンプラ初心者に指導する経験者、最初は口出しだけだけど最終的に手もだす。

 完成したら7割は経験者が組み立ていた。

 あると思います!

 人が住む大事な部分なのでもう全部任せよう。

 俺はアイデア係で。

 感謝の意を込めて今日は国産牛100%ハンバーグ!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 ログハウスは束さんに任せて俺は買い出しに。

 エアコンと冷蔵庫と洗濯機とテレビとレンジとトースターとホームベーカリーとドライヤーと生ごみ処理機――取り敢えず自分が欲しい物を片っ端から買い漁る。

 貯金がどんどん減っていくが、買い物が楽しい!

 買い物でストレス解消って理解できなかったけど、今なら少し分かる。

 散財がクセになりそうで怖い。

 無人島に戻ったらログハウス用の丸太を担いだ束さんが出迎えてくれた。

 なんで素手で丸太担げるの? って聞いたら『てこの原理』って返ってきた。

 なにか聞かれたらそう答えておけば良いと思ってるだろ?

 まぁ頼もしいからいいか。

 エアコンは束さんにパス! 設置作業お願いします!

 蔑んだ目で見られたけど、生きた伊勢海老を差し出しつつ土下座したら許された。

 今夜は色々な海鮮の鉄板焼き!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 寝起きは束さんのスタンピングから。

 目が覚めたら女性にお腹をぐりぐり踏まれるのって、ちょっとバカップルぽくて良いよね。

 そんなドキドキの朝だったか、甘酸っぱい雰囲気はすぐに死んだ。

 寝袋の上で正座させられた俺は束さんに説教された。

 『下水処理どうするか考えてる?』って。

 そうだね、そんな問題もあったね。

 下水関連で日本は進んでるから、自分で作るって考えは抜けてたわ。

 山奥のキャンプ場でも普通にトイレあるもんな。

 自分で作る……のは無理。

 排泄物なら魚のエサで済むが、洗剤などのをそのまま海に垂れ流しはよろしくない。

 そんな風に悩む俺の前に束さんが三本の指を突き出す。

 ――300万で完璧な下水装置を作ってくれる事になりました!

 俺の仕事はパイプを通す為の道を作ること。

 なんか、せっかくの無人島開拓なのに土を掘ってばかりだな。

 や、文句はないです束様。

 今日のご飯はごろごろお肉たっぷりカレー! 

 

 

 

 

 〇月×日

 

 メリークリスマスイブ!

 日頃の感謝を込めて束さんにプレゼントしてみた。

 ブツはカシミアのマフラーだ。

 束さんはブランド品などに興味はないだろう……だがしかし、ふかふか手触りが嫌いな人間がいようか? いやいない!

 これには束さんもにっこり、俺もほっこり。

 ついでに今日は作業を休みにして束さんを労わる日にする!

 そんな訳で朝から束さんにご奉仕。

 人体実験意外ならオーケーです! って言ったらラスベガスのカジノに連れていかれた。

 ドレスコード? ドレス着るの? えっ、俺が選んでいいの?

 なんか知らんがやたら乗り気だったので、背中がばっくり空いてる青色のドレスを選んだ。

 素晴らしく似合ってたけど、ウサミミが残っているので中途半端にコスプレ感があって残念。

 他人の金で賭けたかった? そうなんだ。

 まぁ束さんならポーカーで無双……なんでスロット?

 勝つと決まっている戦いはつまらない? 運ゲー楽しい? 他人の金を湯水の如く使うのが楽しい?

 少しは手加減してくれ。

 途中で止めたかったけど、キラキラした笑顔でスロットを回すので止めそこねた。

 てかやたらレートが高いと思ったら、VIP専用の金持ちしか入れない場所でやってた。

 通りで遠目に束さんを見る人が居ても静かな訳だ。

 若いお姉ちゃん連れてる政治家とか、騒がれたら自分も巻き込まれるから大人しいのだろう。

 束さん、ルーレットやるのもいいけど、せめて勝ってくれ。

 腕の振り方とかで玉が落ちる場所予測できたりしないの?

 それじゃあつまらない? あっそう。

 ディーラーが投げる前に賭ける場所決めて運ゲー楽しんでる。

 そんなこんなで束さんを楽しませた後、予約していたホテルに案内した。

 スイートルームです。

 いやイヤらしい意味はないよ? 別に間違いが起きるとか思春期みたいな期待もしてません。

 ただ束さんとイブの夜にホテルに泊まったという事実が欲しいだけです。

 ……部屋から追い出された。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 メリークリスマス!

 海岸まで飛んで夜釣りを楽しんだ!

 いやー海岸で肩を抱き合うカップルの横で釣り竿振るの面白いね!

 匂いが強いコマセ(小さなエビみたいの)を使って釣りしてたので、ちょっっっとだけ迷惑かけたかも。

 まぁ海岸でなにをしようが自由なので俺は悪くない!

 ホテルに戻ってスイートルームの部屋の中を覗いだら、束さんが優雅に朝食を食べていた。

 俺の朝ご飯、マックです。

 テラスに降り立ちガラスをノック。

 束さんが俺に気付いて開けてくれた。

 清々しい朝を迎えた貴女に生魚をプレゼントッ!

 サンタからの粋な贈り物だバカヤロー!

 テメェ―人に散々貢がせておいて部屋から追い出すとか人間がやる事じゃねー!

 同じ部屋が嫌なら拒否して別の部屋取るとかしろよ! なんで追い出して自分一人楽しんでるんだコノヤロー!

 お陰様で寒空の下でクリスマスデートを楽しむカップルたちに嫌がらせする事になったんだぞ!

 そんな思いを込めて束さんの顔面に生魚をボッシュート。

 クリスマス、俺はアメリカ国土全体を使って束さんとキャッキャウフフと追いかけっこした。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 アラスカの海岸まで逃げて束さんとキャッキャウフフした。

 冬の海はね、五分以上浸かるのは危険なんだよ。

 4分44秒で開放してくれた束さんはやさしいなー。

 今日はログハウス作りの続き!

 俺が適当に切った木を、束さんがカンナを掛けて組み立て行く。

 下手に手を出しても邪魔するだけなので大人しく指示に従います。

 凄い勢いでログハウスが完成間近。

 こて手際で建てられるなら、そりゃ俺の仕事なんて見ててイラつくだけだろうな。

 今夜はアラスカで買って来たキングサーモンのホイル焼き!

 一口食べるごとにアラスカの海のしょっぱさと冷たさを思い出しました。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 日本の冬と言えばコタツ。

 なら欧米の冬は?

 そう、暖炉だ!

 ほぼ出来かけたログハウスに意気揚々と入ってみたが、あまりの寒さに身震いした。

 ついでに窓ガラスと洗面台とお風呂の浴槽とシャワーホースとタンスとクローゼットとベッドと……ともかく足りないものを色々買い出しに出掛ける。

 やはり生まれ育った場所の物が良いだろうとイギリスに!

 束さんが俺の準備の悪さにジト目に睨むので、紅茶とスコーンでご機嫌を取る。

 メシマズで有名なイギリスだが、お菓子と紅茶にハズレはないのだ!

 いやまじスコーン美味かった。

 ただの小麦の塊かと思ったら別次元だわ。

 高級のホテルの紅茶セット、日本でなら焼肉食べ放題に行ける価格だったけど、納得できる味でした。

 その後はイギリスを散策。

 窓ガラスは簡単に決まったのだが……束さん、高級クローゼットとかタンスって必要? 何故かここぞとばかり俺にお高い家具を買わせようとしてくる。

 自分が泊まる事を考えたら一流品で揃えるのは当然だと言われた。

 そんな事を言われたら買うしかないだろうが!

 店主! 一番良い物を頼む!

 一回じゃ運びきれないのでホテルに一泊!

 もちろんスイートルームです束様。

 全部運び終わったら一緒の部屋に泊まっていい? 

 そんなんやるしかないじゃん。

 晩御飯はなし!

 束さんがホテルのディナーに舌鼓を打ってる中、俺はひたすら荷物を運んだ。

 深夜には作業を完了。

 部屋は別だけど、広義の意味で束さんとホテルに一泊!

 

 

 

 

 〇月×日

 

 束さんはお風呂場周りの工事に窓作り。

 俺は家具などの設置作業。

 引っ越し業者にISは必須と言えるくらい作業がはかどる。

 重い木のクローゼットも余裕でした。

 明日には完成かな? そう思うと感慨深い。

 俺、ログハウス作成にはほとんど手を加えてないけどね!

 しかしキングサイズのベッドとか羽毛布団、生前だったら絶対に買わない物だ。

 これでオルコット夫妻が避難を拒否したら泣くぞ。

 自分じゃ値段が高すぎて怖くて使えないんだよ。

 全体の作業は滞りなく進む。 

 束さんに掛かれば電気配線だろうが水道管設置だろうがあっという間だ。

 これは本気で感謝しないといけないな。

 俺一人じゃ掘っ立て小屋が精一杯だっただろう。

 明日には完成予定。

 ならば今夜は盛大に祝わなければ。

 束さんが喜びそうなご飯……考えても分からないので直接聞いてみた。

 

 なんでもいいよ。しー君の気持ちがこもってればなんでも(¥¥)

 

 とても冗談と言えない目力だった。

 ここで選択を間違えたらどうなるか……ただ高いものなら良いって問題じゃない。

 例えば世界三大珍味。

 トリュフやフォアグラなんてどう料理すればいいのか分からん!

 キノコとレバーじゃん。焼けば食えるよね? って言ったら俺が束さんに焼かれそうだ。

 キャビアは生で食えるから楽だけど、流石にキャビア単品じゃあね。

 うーん、自分で作る考えを捨てる? だが完成のお祝いはこの無人島でしたい。

 悩むなー。

 

 

 

 

 〇月×日

 

 祝! ログハウス完成!




し「よっしゃ! 気合入れて無人島開発頑張るぞ!」
た「邪魔だしセンスがない」

無人島のポツンと一軒家なのに都会の一軒家並に設備が整ってる不思議。
なお束さんはホクホク顔でお金を受け取ってた模様。

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