いただきます!!   作:妖牙=飴んぼ

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一品目 放課後の鬼ごっこ

20XX年の八月のある日の午後零時、「桐野 竜也(きりの たつや)」はさび付いた脳を必死に回しながら社会のテストを受けていた。

 

回答欄はほぼ白紙、結果なんて待たなくとも分かる。

 

目の前のプリント用紙から目を背けると、たまたま視界に教室の時計が入った。その時計の針は竜也が目を向けた瞬間、「8」の数字に向けられた。

 

 

 

キーン コーン カーン コーン

 

 

 キーン コーン カーン コーン

 

 

 

担任「全員シャーペンを置け。テストは裏向きで後ろっから回してこい。」

 

 

 

・・・じ・・・だ・・

 

 

 

担任「名前は書いたな?よく確認しろよ。」

 

 

 

・・じか・・・ん・・・だ・・・

 

 

 

担任「おい桐野、何ぼーっとしてる。早く回しなさい。」

 

 

竜也は後ろっからきたテストの上にほぼ白紙のプリントを重ね、ただつぶやきながらテストを担任に渡す。

 

 

竜也「・・・終わった・・終わっt(ギュルルルル)っあ。」

 

 

担任「全員回収終わったな、じゃあ号令!」

 

 

生徒A「規律!」

 

 

合図で教室の生徒らが立ち上がる。竜也も少しゆっくりめに立ち上がる。

 

 

竜也「飯・・飯・・」

 

 

生徒A「礼!」

 

 

全員「ありがとうごz[竜也]「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」!?」

 

 

担任「おい待て桐野!号令くr・・・・はっや・・・。」

 

 

担任の言葉が届く前に、竜也の姿は教室から消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

ある者は授業から開放され背伸びをし、ある者は授業が終わっても寝たまま体勢を崩さない。

 

竜也の場合は多くの生徒が行く場所、そこにいち早く行かなければならない。理由は特にないが、一番乗りで食う満足感を味わいたいそうだ。

 

 

 

 

 

竜也が食堂まで走ってきたとき、目の前には体育帰りだろうか、号令の中を駆けてきた竜也よりも早く着た生徒がいた。それも一人ではない、総数六人。背が周りの生徒より高いから三年生だろう。ちなみに竜也は一年生、目の前の先輩方とは背丈の差が大きく見られる。だからと言って踏みとどまるわけではない。奴らも今は券売機に向かう途中、今まで多くの状況にあってきた竜也だからこそ分かる。

 

 

竜也(六人・・そんでこの距離なら・・!)

 

 

竜也は走り出した。相手がどんなに大きくて迫力があっても竜也には関係ない。

 

 

 

 

 

どんなところにでも隙はある。

 

 

 

 

 

俺は前の先輩方の間を跳ねるように抜かしていく。部活をやっていたわけではないが、昔から運動には自信があった。飛び抜けて良いわけでもないが、のろのろ歩いている人間の間を抜けるぐらいたやすい。

 

前方の集団を抜けたら、もう勝利は竜也に訪れたようなものだ。

 

竜也は直で入れておいた五百円玉を手にとり、券売機にぶつからないギリギリの距離で立ち止まり、小銭を入れる穴に挿入した。五百円玉が奥にチャリンと音がすると同時に、券売機に付いた多くのボタンが中心から赤く点灯する。もちろん俺は一番乗り、売り切れの赤いサインはどこにも点いちゃいない。ここの食堂のメニューは豊富な種類があるが、選んでいる時間も興味もない。竜也は今出せる限界の力を振り絞り、たった一つのボタンめがけて、突いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員「へい!牛丼定食お待ち!」

 

 

竜也の好物は牛丼。肉汁の染み渡った米と厚い牛肉とのコラボレーションが昼の楽しみとなっている。

 

竜也の場合、何時・何処にいても牛丼を食べたがる癖がある。親が時々作る家庭の牛丼、近辺の牛丼屋も数多く回った。それらの牛丼もうまいの一言だが、恐らく竜也の人生の中で一番うまいと思われるのが、この食堂で売られている究極の牛丼だ。

 

 

竜也「っあー!やっぱ頭使った後の牛丼はマジで最高だわ!」

 

 

?「白紙のプリント出しといて何が頭使っただよw、脳に油でも入れとけば良いんじゃないか?w」

 

 

竜也が一人楽しんでいると、見たことのある顔の奴がいつの間にか後ろで笑っていた。

 

 

竜也「うおっ!?いつの間に!?」

 

 

?「お前早すぎだろ。まあ、教室戻ったら先生にシバかれるんだろうなw」

 

 

この紫の髪色をした男の名は「那須田 育男(なすた いくお)」。ここに入学してから知り合った奴で、好きな食べ物は麻婆豆腐だそうだ。

 

 

育男「なんでそんなに用紙が白くなる?俺なんか真っ黒d[竜也]「あーはいはいすごいですねそんけいしちゃいますよー。」

 

 

育男の得意科目は社会、竜也とはまったくかみ合わない。かみ合うつもりも元からない、なぜなら・・・

 

 

竜也「おい、お前も牛丼食ってけよ。今日もここの牛丼は絶品だぜ!」

 

 

育男「・・・よく牛肉なんて食えるな、お前。俺はカレーでも食うよ、じゃあな。」

 

 

竜也「・・・」

 

 

奴は牛肉が大嫌いなのだ。子供みたいに好き嫌いがあるのもいらつくが、牛肉が嫌いと言われるだけで竜也の血が沸騰するほどむかつく。人がうまいうまいと言って食ってるところで嫌いとか言われると本当にむかついてくる。

 

そんな奴の言葉もさっきの社会のテストも、こうやって牛丼を食べていれば、一緒に消化できる。とにかく竜也は牛丼が大好きでいるのだ。

 

 

 

 

 

まあ、今となっては肉を確保すること自体、困難な状況になってしまったがな。

 

 

 

 

 

全ての授業が終わった放課後。竜也は喉が乾いたために食堂にコーラを買いに行っていた。たまたま校内には人が少なく、それぞれの大会に向け練習中であった。

 

 

 

それで良い、校内に人がいなくて本当に良かった。竜也はこの日、そんなことをふと思うことになった。

 

 

 

一階にある自販機に足を運んだのだが、なにやら鉄臭い匂いがする。普段は廃棄処分となる食物の集合体が異臭を出しているのだが、今だけはなぜか嗅いだことのない鉄の匂いがした。

 

 

竜也(・・新しい製品の匂いか?)

 

 

先日から新しい機械が調理場に導入されると先生は言っていたが、竜也は微塵も興味はなかった。でもこの時はなんとなく調理場を覗きたくなった。理由は特にないが、ただ新しい機械とやらがどんなものか見てみたくなったのだ。そうして調理場の方へと近づいて行くと、何やらガタンガタンと音がしてきた。

 

 

竜也(あ、設置中か?やけに音でかいけど、そんな大型なもの注文したのか?)

 

 

音は何かが床に何回もぶつかっているようにガタンガタンと聞こえてくる。新しく買ったものならもうちょっと丁寧に扱えないものかと思いながら進むと少しゾクッと寒気がした。

 

ガツンガツンといっている中、その音に混じってグチャッ、グチャッ、と何かが潰されている音が聞こえてきた。機械を設置する際にそんな音が聞こえてくる訳ないし、生徒らは部活の練習で食堂の周りには竜也しかいない、よって誰かの注文で料理を作っているわけでもない。

 

竜也は少し不安がりながらも調理場の扉の前まできた・・・でも、扉の下に空いたほんの少しの隙間から、なにやら赤い液体が漏れている。その液体からは、さっきの鉄臭い匂いが出ている気がする。そしてそれは扉の奥から流れてきていた。

 

 

竜也(・・血・・なのか!?)

 

 

調理場から真っ赤な血が溢れているなんて事態が起こる訳ない。どんなものを解体していたら廊下に漏れだすほど血が出るんだ、でもそんなこと言っていられない。

 

調理場からは相変わらずガタンガタン、グチャグチャと、もう機械を設置しているとは思えなくなっていた。

 

それでも竜也は額に汗を垂らしながら、中にいる何者かにばれないように静かに扉を少し開けて覗いて見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜也「・・・・さ、」

 

 

調理場でうごめいている生物。

 

 

竜也「・・・さ、く?」

 

 

高さは竜也と同じくらい、普通の高校生ぐらいの大きさだった。

 

 

竜也「・・さく、さくら?」

 

 

それには赤い球体が二つ付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜也「・・・・・さくらんぼ?」

 

 

 

グチャァァァ(汚い物が飛び散っている)

 

 

 

「さくらんぼ」。枝分かれした茎の先に赤い実のついた果物だ。甘みがあって竜也も果物の中ではまあまあ好きだ。最近はよくファミレスのパフェの上にちょこんと乗っているのをよく見かけるが、

 

 

 

目の前の1メーター60はあって、やけに光沢のある赤い実の下には、

 

 

 

 

 

・・・今日、清々しい顔をして牛丼をくれた店員の頭がグチャッと潰れて、中身がボロボロになって飛び出ていた。

 

 

 

竜也「!?!?」

 

 

本来茎である部分は、ボディビルダーの鍛え上げられた足のように、太く膨らんでいた。甘い赤い実は店員の頭の潰れ具合を見ると、相当の重さがあるように見受けられる。

 

 

竜也(えーと、全部まとめると。太い筋肉の足の先に付いた鉄球みたいな実で、店員の頭を潰して遊んでい・・た・・と・・・・。)

 

 

竜也は気づいた。さっきからそのさくらんぼは目の前で店員の顔を潰していたのだが、いつの間にかさくらんぼの動きが止まっていた。

 

 

 

 

 

さくらんぼが振り向いた。

 

 

 

 

 

正直さくらんぼの前と後ろが分かるのかと言われたら分かる訳ないが、竜也に気づいたから振り返る動作をしたみたいだ。

 

 

竜也「こ、こんちはー・・・」ダダダッ!(その場から逃げる足音)

 

 

ちょっとあいさつをしてみたが数秒後に駄目だと感じ取り、その場からとっさに逃げ出した。そもそも人の頭を潰していた意思疎通できそうもない未確認生物に言葉が理解してもらえる可能性がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜也は必死の思いでその場から立ち去ったから、奴(さくらんぼ)も簡単には追ってこないだろうと思った。

 

 

 

 

 

その考えは、さくらんぼの如く甘かった。

 

 

 

 

 

バゴオオオオンッ!!(扉が破壊される音)

 

 

 

竜也「!?」

 

 

いきなり調理場の鉄製の扉が宙を舞いながらこちらに吹っ飛んできた。竜也はなんとかそれを避けるが、それだけでは安心できない。

 

調理場の奥からドスンドスンと音を立てながら、さくらんぼが全力でこちらに走ってきた。

 

 

竜也「うわっ!?」

 

 

竜也もとっさに走り出した。既に分かっていることだが、あれに追いつかれたら間違いなくミンチになる。それだけは避けなければならない。

 

竜也は走った。廊下や階段を走り、後ろから迫ってくる恐怖に怯えながら、息が切れそうになっても足を止めずに、ただただ、走って、走って、扉を開けたら・・・

 

 

 

 

 

行き止まり、屋上。

 

 

 

 

 

竜也「うわ!やっば!」

 

 

奴が来る前に場所を変えなければ、そう思い戻ろうとしたとき屋上の扉が破壊された。

 

 

竜也「くっ!」

 

 

ガタンガタンと音を立てながら、それはジリジリと距離を詰めてくる。竜也も縮められないように後ずさりしたが、もうすぐ後ろには床はなくなった。

 

そして勝ったとでも確信したのだろうか、さくらんぼが急に加速し、跳んだ。

 

さくらんぼのボーリング玉のような足が宙を舞う、このまま行くと竜也の頭蓋骨は砕け、脳味噌が辺りに飛び散る悲惨な光景となるだろう。

 

 

竜也「(終わったか・・)くそおおおおっ!!」

 

 

竜也が死ぬと自覚し、あまりの恐怖でその場にしゃがみ込んだ。

 

 

 

 

 

その上をさくらんぼが通過していった。

 

 

 

 

 

竜也「・・・え?」

 

 

標的が突然しゃがみ込んだ事でさくらんぼは自身の重さで勢いが止まらず、そのまま屋上から落ちていった。

 

 

 

 

 

バゴンッ!(さくらんぼが地上に落下した音)

 

 

 

恐らく実の部分が衝撃で割れた音だ。もう追いかけては来れない、竜也の奇跡の勝利だ。

 

 

竜也は自分が助かったことをその場で喜んだ。

 

 

 

 

 

でも、その日が奴ら、「肉食物」と初めて出会ってしまった日であった。

 




〜図鑑NO.002〜

ダンベリー[桜桃鈴](元・さくらんぼ)

茎の部分が異常に発達し筋肉の足に進化してしまったさくらんぼ。実の方はボーリングの玉程の大きさと重さを兼ね備え、人間が蹴るような動作で襲ってくる。ダンベリーには栄養を取り込むための口がないため、茎の側面に葉緑素を作り出し光合成して生きている。
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